「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第13話 『キノコみたいに生えてこないのよ⁉』

 スペスは言う。

「ボクはさ、()()()()()()()()のかもしれない」

 

 アルマは、なにも言わなかった。

 

「まず考えたのは、ボクが『どうしてここに来たのか』なんだ」

 スペスはそう言って指を二本立てる。

 

「浮かんだのは二つ、〝迷った〟か、〝遺跡を調べに来た〟か、だ」

 アルマがうなずく。

 

「まず〝迷った〟可能性なんだけど」スペスがつづける。

「――もしボクが道を外れて、森の中を歩いてきたのなら、草木をかきわけて進むんだから、服や身体に、傷や汚れがつくと思うんだ。でもあのとき、そんなものは無かった。自分でも、きれいな服だと思ったくらいだ」

 

「山の中を歩いてきたんじゃなくて、村から来る道をまちがえて登ってきたんじゃないの?」

 アルマが訊いた。

「その可能性はゼロじゃないよ」とスペスもうなずく。

 

「でも――街からくる道とくらべてここへ登る道はすごく狭いでしょ。もし、まちがえたのなら、すぐに気づいてもどると思うんだ」

「それは……そうよね」

 

「もし森の中を迷ってる途中であの道に出たとしても、ボクなら下におりると思うんだ」

「どうして?」

「上のほうに住むひとは少ないし、水場もない。道があるなら、下に行ったほうが助かる可能性は高いかなって」

「それはそうね」

 アルマはまたひとつ納得して、うなずいた。

 

 スペスが、サンドイッチをひとつつまむ。

「ふぉいでねこんふぉわ、しゅらべにきたふぉうなんだけど」

「コラ、食べながらしゃべらない」

 アルマが注意すると、スペスはコクコクとうなずいて、口に入ったサンドイッチを水で流し込む。

 

「……そんなに急いで食べなくても、待つわよ」

 アルマはあきれたように言ったが、

 スペスは飲みこむようにサンドイッチを平らげると、

「いいから、いいから」と、また話しだした。

 

「それでね……〝迷った〟可能性が低いなら、今度は、ボクがここに何かを〝調べに来た〟ほうを考えてみたんだ。でもその場合、行くまえに村に寄っていないのがおかしいと思うんだよね」

 

「それはそうよね」とアルマは同意する。「村に寄れば、水や食べ物が手に入るもの」

「そうだね、それに何かの情報も入るかもしれない。そう考えたら、村に寄るほうが利点は多いよ」

 

「なにかの理由でこっそり調べたかった、とかは?」

「それだったら、もっと装備をもってくると思う。特に水と食料あたりを」

「スペスは、水も持っていなかったものねぇ……」

 

「それに、この遺跡はあんまり知られてないんでしょ?」

「うん、ここに来る人は見たことがないわ」とアルマはうなずいた。

「そう考えたら〝調べに来た〟っていうのも、考えにくいんだよね」

 スペスの出した結論に、アルマは疑問を口にする。

 

「でも〝迷った〟のでも、〝調べに来た〟のでもないなら、スペスはどうしてここにいたのよ? 人は、キノコみたいに何もないところからは生えてこないのよ?」

 

「それは面白いね!」とスペスは親指を立てる。「キノコっていうのは、なかなかいいよ」

「おもしろいことを言ったつもりはないんですけどー」とアルマは口を尖らせた。

 

「まあまあ。もちろん人は生えてこない。だから別の可能性を考えてみたんだ。キノコみたいに生えたりしなくても、それに近いことが起きたんじゃないか、ってね」

「キノコじゃないなら、分からないわよ」

「じゃあヒント」とスペスは言った。

 

「ボクは山の中のどこも通らず、誰にも会わずに、ここまで移動してきた、のかもしれない」

「何よそれ……、それこそキノコじゃない、キノコ!」

「ハズレー。キノコは移動しないんでしょ」

「じゃあ空でも飛んだっていうの? 鳥じゃないんだし――。あっ!」

 とアルマが声を出した。

 

「――魔法?」

「正解!」とスペスが拍手する。

「やったぁ!」と手を上げかけたアルマは、

「いや、違うでしょ!」とスペスに言った。

 

「だってあなた、魔法は使えないじゃない。それとも『本当は使えたんだゼ』とか言うつもり?」

「いや、使えないよ」あっさりとスペスは認める。

 

「でも状況を考えると、それが一番可能性があるでしょ」

「うーん、たしかに……。それはそう、なのかしら?」

 よくわからないアルマは、首をひねった。

 

「正確には、誰かに魔法で連れてこられたか、なにか魔法に近い道具を使ったんじゃあないかな、って考えた」

「そっちほうが説得力はありそうね」

 

「ちなみに、移動する魔法ってどんなのがあるの?」

「そういうことを知らないで、よくその答えにたどり着けたわね……」

 感心しながらアルマは記憶をたぐる。

 

「たしか空を飛ぶ《飛行》の魔法はあるわよ。かなり高度な魔法だけどね。あとは勇者様だけが使えた《転移》っていう魔法があってね、それは遠くの場所へも一瞬で行けたらしいわよ」

「転移!」

 スペスは嬉しそうにうなずくと、腕を組む。

「転移かぁ……じゃあきっとそれだな!」

 

「なによ……なに一人でわかった顔をしてるのよ。ズルい、わたしにも教えなさい!」

 アルマはスペスの首を締める。

「いててっ、いや、もうとっくに教えたでしょ!」

 

「うそおっしゃい。はやく吐かないと、すこしづつ首がしまっていくわよ!」

「だ、だからっ、いちばん最初にこう言ったでしょ!」

「さいしょ?」

 

『……ボクはさ、この遺跡から来たのかもしれない』

 




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つまりスペスはこの遺跡から来てるってことォ!
(繰り返しただけ)

それでは次回、
第14話 『さびしくなるなぁって⁉』
で、お会いしましょう!
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