「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第22話 『ダメならやりません⁉』

「では質問だ」女が言った。

 

「アタシの知るかぎりじゃあ、このあたりに人族は住んでいない」

 人族()と言われて、アルマはすぐに緑の小人を思いうかべた。

 

「お前たちは何処からどうやって来た。

 正直に答えろ。もし嘘を言ったならすぐに叩き出す」

 

 疑心を隠そうともしない女に、アルマは思わずうつむいた。

 自分たちでも信じられないような不可解な出来事を、果たしてどこまで信じてもらえるだろうか。そう考えると言葉が出なかった。

 

 だが、この(ひと)に下手なウソやごまかしは通用しない気がする。

 どう言えばいいのか。

 どうすれば信じてもらえるのか。

 そんな事ばかりが頭のなかをぐるぐると回る。

 

 助けを求めて隣を見ると、同じように考え込んでいたスペスと目が合った。

 ちいさく肩をすくめたスペスが、表情をやわらげる。

 

「あったことを正直に話そうか。それで追い出されたら、またその時に考えればいいさ」

「うん、そうよね――」

 結局、それしかない――アルマは素直にうなずいた。

 

 

 覚悟を決めたふたりは、女にこれまでに起きたことを話した。

 自分たちの名前。

 リメイラ村から来たこと。

 丘の上で暗闇に包まれ、よく似た別の場所にいたこと。

 緑の小人に追われたこと。

 村があった場所まで来て、この家を見つけたこと。

 ここを追い出されたら、もうどこに行けばいいのかわからないこと。

 

 必死に、自分たちに分かることを説明した。

 そのあいだ、女はうなずきながら黙って聞いていた。

 

 話し終えると、女は何かを考えているようだった。

 ふたりは固唾を飲んで女を見つめ、その言葉を待つ。

 

 信じてもらえるのか、もらえないのか。

 助けてくれるのか、くれないのか。

 受け入れか、追い出しか。

 希望か、絶望か。

 

 この女の考えひとつで結果は真逆になる。

 黙りこむふたりに、ようやく女が口を開いた。

 

「よし、腕相撲だな」

 

「は……?」「……え?」

 ふたりが同時に訊き返す。

 

「だから、腕相撲だ。知らないのか?」

「いえ、それは知ってますけど……」

 困惑してアルマは訊き返す。

「――なんでいきなり、腕相撲なのかがちょっと」

 

「ボクはその腕相撲っての、よく知らないんだけど」スペスが手を上げた。

「あぁ、もじゃもじゃ頭のお前は、別にいい――」

「なんで⁉」

「アタシが用があるのは、そっちの安産型のやつだからだ」

「たしかに安産型だけど、名前はアルマだよ」スペスが言う。

 

「あ、あのー」と、アルマは声をかけた。

「その……わたし、おしりが大きいの気にしてるんですけど……」

 

「そうか――それなら安産型! アタシと腕相撲で勝負しろ」

「アルマです!」

 と言ってから、こんどは遠慮がちに手を挙げる。

 

「――あのぉ、できれば理由を訊いても?」

「お前……腕相撲をするのに理由が必要なのか?」

 意外そうな真顔で訊いてきた。

 

「で、できれば、あんまりやりたくないんですけどー」

 アルマはビクビクしながら答える。

 

「本当にか……?」

 信じられないものを見たような女は、すこし考えたあとで――急にニヤリと笑う。 

「それなら、こうしようぜ!」

「――お前がアタシに勝ったらここに泊めてやる! だが負けたら、外で野宿しろ!」

 

「そんな! そんなの無理ですよ!」

 アルマが抗議するが、女はニヤニヤ笑いを崩さない。

「なら話はおわりだ安産型。いますぐに出ていくといい」

 

――このひと……、完っ全に足もとを見てバカにしてるっ!

 アルマは思った。

 ほんのすこしだけ頭にもきた。

 

「う~!」

 と、くやしそうに唸るアルマを、

「ちょっとちょっと」と横からスペスが突っついた。

 

「なによ!」

 イライラするアルマに、スペスが耳打ちをする。

 

(聞いて――どうせダメでも、結果は同じなんだよ。だったらさ、やってみればいいんじゃないかな。ついでに条件でもつけてみなよ。たとえば――)

 

 スペスの言うことにうなずいたアルマは、女にむき直る。

「わかりました、腕相撲を受けます! そのかわり――」

 アルマは、正面から女を見すえて言った。

 

「勝っても負けても、わたしたちに食料をください! それがダメだったらやりません!」

 

 スペスから入れ知恵されたとおりに言ってみたものの――

 アルマは正直、『それなら出ていけ!』の一言で終わるんじゃないかと思っていた。

 だが――

 

「いいだろう――負けても食料はやる」

 女はあっさりと条件を呑んだ。

「ついでにアタシの使ってたテントを貸してやるよ」

 

――テントまで貸してくれるなら、泊めてくれたっていいじゃない!

 アルマはまた少しイラッとしたが、せっかくの好条件を失うこともなかったので、黙ってうなずいた。

 

 ここに勝負が成立した。

 




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次回、勝負の行方は⁉
第23話 『これじゃあ読まれちゃう⁉』
で、お会いしましょう!
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