「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第30話 『力の秘密⁉』

「――お前、なんで自分の力が強いのか、知ってるか?」

 

「えっ、なんで?」

 そんな事を考えたことのなかったアルマは、思ったままを答えた。

「えーと……生まれつき、だから?」

 

「まぁ、もともとの力もそれなりに強いんだろうがな――」

 メイランは、持っていた木剣を真っ直ぐにアルマに向けた。

 

「お前は力を入れるときに、魔力(マナ)で無意識に自分を(強化)してるのさ」

 

「えっ、そうですか?」

 アルマは意外そうな顔をする。

「……そんなこと、やってないですけど」

 

「〝無意識に〟って言っただろ――お前、小さい頃から手伝いとかで力仕事をしてないか?」

「あ、してます。水を運んだり、重たい道具や、患者さんを運んだり……」

 

「そういう経験で、ごく稀にだが、自然に《強化》が使えるようになる奴がいる。アタシの国じゃ《発勁》っていうんだがな。これは長く修行しても、お前のように自然に覚えた奴には、なかなか敵わないものなんだ」

 

「ふ~ん、《発勁》……?」

 アルマは木剣を持つ手を見る。

 いまいちピンとこない。

 

「実感がないのも無理はない。呼吸の仕方を意識するみたいなものだからな――、だが、無意識にやってきたものを意識することで、その効果は何倍にもなる」

「何倍……」

 

 アルマの頭に、昨日の腕相撲が思い出された。もし自分が《強化》を使いこなせていれば、少しは勝負になったのだろうか。

 

 メイランは説明をつづける。

「《強化》を自然にできるようになった奴は、逆に、その効果を実感しにくいのが欠点だ。そこでまず、自分が《強化》にどのくらい助けられているのかを教えてやる。ついてこい」

 

 そう言って、メイランは練習場の隅へ歩いていく。草の生えた練習場には、あちこちに丸太で作った器具が置いてあったが、アルマにはその使い方がまったくわからなかった。

 

「……あそこだ」

 足を止めたメイランが、木剣で草むらの一角を指す。

 

 まわりと違ってそこだけは、丸く切り抜かれたように草が生えていなかった。

 

「理由はわからんが、あのあたりは魔素(エレメント)が極端に薄くなっている。つまりあそこにいると魔素(エレメント)を使う魔法はバカみたいに弱くなるってことだ。自分の中の魔力(マナ)しか使えないってことだからな」

 

 アルマは、メイランがここに自分を連れて来た理由がわかった。

 

「つまり、あそこにいると《強化》が効きにくくなる、ってことなんですね」

「そうだ、理解が早いな」

 

「あ、でも魔素《エレメント》がないってことは、息ができなくなったりしません?」

「安心しろ、空気はいつも流れているから大丈夫だ。すこし息苦しく感じるかもしれんから、無理はするな。それと、その木剣は一度あずかる」

 

「わかりました。行ってみます――」

 アルマは木剣を渡すと、草の生えてないところへ、こわごわと一歩を踏み出す。

「えーと、特に変わった感じはしないんですけど……?」

 

「外側はあまり影響がない。真ん中が一番薄くなっているから、様子をみながら進んでみろ」

 

 アルマは言われたとおり、中心へそろりそろりと移動した。

 メイランも二本の木剣を持って入ってくる。

 

 どうだ、と聞かれて、アルマは身体をひねったり手足を上げ下げしてみる。

「えーと、大丈夫……みたいです。あっ、でも少し身体が……重く感じます」

 

「よし、これを持ってみろ」

 アルマは差し出された木剣の柄を握る。

「いいか、足の上に落とさないように気をつけろよ」

 

「……?」

 メイランが持っていた手をはなす。

 

「……きゃっ!」

 ドズッという鈍い音とともに木剣が落下した。

 さっきまで軽々と振り回せていた木剣が、重くてまったく持てなかった。

 

 持ち上げてみろ、と言われて木剣を拾おうとしたが、

「んっ……無理っ、ですっ!」

 顔を真っ赤にして(りき)んでも、木剣の片側をあげて地面に立てるのが精いっぱいだった。

 

「少しは理解できたか?」

「はぁっ、はぁっ……わかりました」

 

 うなずいたメイランは、落ちた木剣を軽々と拾い、膝に手をつくアルマに説明する。

 

「いつもは、まわりにある魔素(エレメント)を利用してるから体内の魔力《マナ》はあまり使わない。しかしここでは逆に、意識して魔力《マナ》を使わないと力が出せない」

 

 アルマは黙ってうなずく。たしかにそのとおりだった。

 

「まずは、ここでその木剣を振れるくらいになってもらう。いきなり真ん中でやるのはきついだろう、もう少し外側に行くぞ」

 

「は、はい!」

 と、アルマは慌てて移動する。

 

 その背中を追いかけるように、木々からすり抜けてきた陽の光が注いでいた。

 

* * * * * * * *

 

 アルマが特訓をしている頃――

 薪割《まきわ》りをしていたスペスは、必死になって一本の丸太を持ち上げようとしていた。

 

「お、重いっ!」

 その赤っぽい丸太はよく目がつまっていて、ほかの丸太とくらべて数倍は重かった。

 

「コレ、やたらと重いけど、なんの木なのかな?」

 しゃがみこんだスペスは、じっくりと観察をはじめる。

 

 前後左右から丸太をながめ、ぺたぺたと触ってみたスペスは、なにかに気づいて、となりの小屋を見た。

――あの小屋に使われてるのと同じやつだ――じょうぶな木だって聞いてたけど、こんなに重いのか……。

 

 関心しながら小屋を見上げたスペスは、近くにおなじ木の〝枝〟が落ちているをみつけて拾いあげた。その枝はかなり細いのに重さがあって、試しに曲げようとしてみても、折れるどころか、ほとんど曲がりもしなかった。

 

 どのくらい強いのか知りたくなったスペスは、地面に置いて、足も使って曲げてみる。

 だが、力をいれた瞬間、すべった枝がバチンッとスペスのあごを強打し、スペスは声も出さずにうずくまった。

 

 しばらくそのまま動かなかったスペスだったが、突然、勢いよく立ちあがり、あごの痛みもわすれて、あたりに落ちている他の枝をあさりだす。

 

 しばらくして、真っ直ぐなものを何本か選びだしたスペスは、グイグイと強度を確認し、良さそうな一本を握りしめて、小屋の中へ駆けていった。

 

 すでに、薪割りのことは頭のどこにもなかった――

 




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スペスはいつも通り。

それでは次回、
第31話 『特訓の効果⁉』
で、お会いしましょう!
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