「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第43話 『どこから来たの⁉』

 アルマは何かが気になった――が、スペスが『早く、食べようよー』と急かしたので、考えるのをやめた。

 

「はい、じゃあ食べましょ、いただきまーす」

「いただきまーす」

 ふたりがパンを口にしても、タッシェはパンをぐるぐると回し、あちこちから眺めている。

 

「食べられる物だから大丈夫よ」

「美味しいよー、大丈夫だよー」

 何度も声をかけながら食べて見せると、

「ダァイジョブ?」と、タッシェはためらいがちに口をつけた。

 

 ふたりが見守る横でタッシェはパンの端っこをかじると、一度大きく目をひらき、もごもごと一生懸命に噛んで、飲みこんだ。

「…………。」

 

 わずかな沈黙のあと――スペスに向かってぱあっと笑顔を咲かせたタッシェは、

「デリーシュ! オニィチャ、デリーシュ!」

 と叫んで、すごい勢いでパンを食べはじめた。

 

「あらあら~、どこかの誰かさんみたいね」

 とアルマはからかうように言ったが、スペスは真面目な顔で、

「わかる……」とうなずいていた。

 

「なんていうか、美味しいものって偉大だよね」

「このぐらいで、特別ありがたいとは思わないんだけど。……知らないっていうのは幸せなことなのかしら――」

 つまらなそうに、アルマは手元のパンをながめる。

 

「どうして?」とスペスが不思議そうに訊いた。

「――ありがたいと思わないくらいに食べてきたなら、それはとても幸せな事じゃないの?」

「それは……そうなんだけど。……そうじゃなくて」

 アルマは言いたいことが浮かばずに考えこむ。

 

「もしかして、ボクらと一緒に『美味しい!』って喜びたかったの?」

「そう、それ!」とアルマはスペスを指さす。

 

「ふーん……、アルマって、けっこう欲張りなんだね」

「ぐっ――。そ、そうなのかしら?」

 アルマが手にしたパンをじっと見ていると、よくわかっていないタッシェが、

「ダアィジョブ、ダアィジョブ!」と、笑顔で背中を叩いてきた。

 

「あれ……冗談のつもりだったんだけど、気にした?」

 スペスが、ふたつ目のパンに手を伸ばしながら訊いた。

「そ、そんなことないわよ――冗談よね……知ってた、知ってた」

 顔を赤くしながら、アルマは姿勢をなおしてパンを食べた。

 

 お腹いっぱいになるまで食べた三人は、そのまま食休みをとっていたが、やがてタッシェが退屈そうに足をぶらぶらしはじめる。

 日が出たことで気温も上がっていて、あたりは急速に乾き、土がぬかるんでいる以外に、雨の跡はなくなった。

 

「ふわぁ……」と陽気につられて、スペスがあくびをする。

「――それじゃ、この子を帰しにいこうか」

 

「そうね、遠くじゃないといいんだけど、ふぁっ……」

 アルマもつられてあくびをしそうになり、あわてて口を押さえる。

 

「まぁ、子供の足だからね」とスペスはタッシェを見る。「そんなに遠くじゃないと思うけど――」

「けど?」

 

「言葉が通じないのが心配かな。ボクらが連れ去ったなんて誤解をされたら、面倒なことになりそうだよね」心配そうにスペスが腕を組む。

 

「でも――このままひとりで帰らせるわけにもいかないでしょ?」

「そうだよね」とスペスがうなずく。

「……まぁとりあえず、どこに住んでるのか訊いてみようか」

 

 スペスはタッシェに向きあうと『お・う・ち・ど・こ?』と身振りを付けて訊いたが、タッシェは不思議そうに首をかしげた。

 

「絵にしてみたらどうかしら?」

 アルマは落ちていた木の枝を拾うと、まだ湿っている地面に、三角や四角で家の絵をかいた。タッシェがぱっと顔を輝かせて遺跡の向こうを指さした。

 

「やっぱりあっちか――」

 タッシェが指したのは、例の道がある方だった。

「じゃあ、ひとまず、あそこの道を行ってみようよ」

「そうね、そうしましょうか」

 

 そう言って、ふたりが立ちあがった瞬間、ドスッと音がして、なにか長いものがアルマのカゴに突き立った。

 

「矢だっ!」

 

 スペスが叫び、かぶさるようにタッシェをかばう。

 飛んできたと思われる方を見ると、道がある草むらのあたりに、弓を構える人影が見えた。

 

「ジュッリ! ヴレ、シノフォン!」

 叫んでいる言葉はわからなかったが、友好的な声音(こわね)でない事だけは分かった




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一難去って、また一難⁉

それでは次回、
第44話 『私の言葉がわかりますか⁉』
で、お会いしましょう!
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