「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~ 作:細矢ひろゆき
「あのさ、さっきより大きな火を出そうと思ったら、もっと全身から
スペスが訊いた。
「基本としては、そうですね。ただ、そのやり方では効率がよくありません」
「効率?」
「ええ、魔法の効果を大きくする方法は、いくつかあります。その中で、もっとも単純なのが使う
「それは、なんとなく練習したらできそうな気がするよ」
「そうですね」とイオキアはうなずいた。
「ただしこれは効率の悪いやりかたで、使う
「ダメなんだ……」
「ダメなわけではありませんよ。いい練習になりますし、とても大切な基本でもあります。まずはそこからやってみてください」
「わかった。やってみるよ!」
「ただし、効率は良くないので、すごく疲れると思います」
「そうなんだ……。じゃあさ、その効率ってのを良くするにはどうしたらいいの?」
「より少ない
「そんなことができるの⁉」
おどろくスペスに、イオキアは涼しい顔で、できますよと言った。
「さっきは腕全体から
「うん」
「それを例えば――手首から先の
「うん? でもそうすると、
「じつは魔法で大切なのは、
「量じゃなくて密度?」
「さっきは、
「うん」
「それで指先の
集める
逆に言うと、量が少なくても、密度さえあげられれば魔法はできるんです」
「つまり、
「強さのほかに、速さ、正確さも大切です。
より速く、より強く、正確に一点に
たとえば《点火》なら――私は指の半分の
「たったそれだけ⁉」
「極めた人なら、それこそ、爪の先ほどの
「それは、でも……すぐには難しそうだなぁ――ほかにはもう無いの?」
図々しく訊ねるスペスに、イオキアが笑う。
「もう一つありますが、こちらも簡単ではありませんよ。自分以外の力、
「いろんなものの中にある力、ってぐらいにしか知らないんだけど……」
「そうですね。燃えやすいものには【火】の
動く空気の中にある【風】の
他にも【水】、【土】、【光】、【闇】の
「いろいろあるんだねぇ……」
「ただまあ、これらは本質的には同じだという人もいまして、学者の出てくる話になるので割愛しますが――大切なのは、われわれはこの魔素《エレメント》をつかって魔法がつかえる、ということですね」
「うんうん。理論も興味深いけど、とりあえずは
イオキアがうなずいた。
「ではやってみせましょう。《点火》は火の魔法なので【火】の
ほかの
そう言うとイオキアは、さっきまで矢を作っていた材料箱から、手のひらくらいの木片を出した。
「こういう乾燥した木には【火】の
使う体内の
イオキアは左手に木片をにぎり、右手の指を立てた。
「いきます――」
イオキアがそう言うと、指の先端からボボォっと、人の頭ほどの炎があがった。
「おおっ!」
とスペスが声をあげる。
おおきな炎は、近づけないほど強い熱を発していたが、すぐに小さくなっていき、やがて消えてしまった。
「こちらを見てください」
イオキアが見せた左手の木片は、真っ白な灰に変わっていた。
「えーと……【火】の
「そういうことです。今のは分かりやすくするために、
「その木を持つ手は熱くないの?」
「熱はすべて指先から出た火につかわれますから熱くないですよ」
とイオキアは手を見せる。
「ボクもやってみたいな!」
「まだ無理だと思いますよ」
「いいからいいから。やってみるだけだからさ!」
とスペスは手を出した。
「わかりました」
とイオキアは、適当な木片をスペスにわたす。
「どうやるの?」
「木の中の
「うーん、なんとなく……?」
「それを
「一緒に動かすってこと? こうかな?」
「すこしでも
「えーとこうして、こうやってから、《点火》!」
やってみると、火は大きくなるどころか、まったく出なかった。
「だめだ! これは難しいよ! ふたつの力を同時に使うんだから」
「そういうことです――わかってもらえましたか?」
「うん……わかりました」
「それじゃあ感覚を忘れないうちに〝
「それもそうだね。やってみるよ」
「その意気です。おっと……さっそくコツを掴みましたね、さっきより
イオキアに乗せられて、スペスはよく集中する。
「《点火》!」
「おお、素晴らしい。二回目は一度で成功じゃないですか。飲み込みが早いですね」
「教える人がいいからさ」
「またまた、お上手ですね――」
そんな事を言いながら笑いあった二人は――ふと気がついた。
入り口に、人が立っているのを。
入り口に、昼間会った女隊長が立っているのを。
入り口に立った女隊長が、初級魔法でよろこびあう二人を、とても冷ややかに見ているのを。
「あー……」とイオキアはスペスを見た。
「――本当のことを言っても、絶対に信じてもらえないと思うんですけど……。どうしたらいいでしょう?」
「ふざけてたって事にしたほうが、短い時間ですむんじゃないかな。……ごめん」
「それでいきます!」
イオキアが、決意のこもった目で立ちあがった。
だがイオキアが口を開く前に、隊長はひとことだけ何かを言い残して出ていった。
「……食事の時間、だそうです」
振りむいたイオキアが言う。
「平気だったの……?」
「さあ? まったく触れられなかったのが逆に怖いですね……」
「それは、怖い……」
スペスがそう言うと、二人はまた顔を見合わせて笑った。
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すっかり打ち解けた二人、本来は相性がいいのかも。
それでは次回、
第52話 『アールヴの食レポ⁉』
で、お会いしましょう!