「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第54話 『神と門とアールヴ族⁉』

「まずはあの〝神殿〟について情報を集めたいかなぁ」

 とスペスは言った。

 

「それにあの〝神〟っていうのもよくわからないんだよねぇ」

「それよねぇ……」

 

「というわけで長老さん!」

 スペスが声をかけると、食事をしていた長老がこちらをむいた。

「なんでしょう?」

 

「あの〝神殿〟について教えてほしいんだけど、今いいかな?」

「もちろん、かまいませんよ」と長老は言った。

「それでどのようなことを?」

 

「えーとまず……神殿(あれ)はいつからあるものなのかな?」

「いつかはわかりません。はるか昔に〝神〟がつくったものです。私が産まれるどころか、アールヴがこの地に住みはじめた時からあります」

「ふーん……、気になってたんだけど、長老さんっていくつなの?」

 

「ちょっと! 女性に歳のことなんて訊かないでよ!」アルマが言った。

「えっ……、ダメだった?」

「いえ、いいんですよ――」

 と長老は首を振った。

 

「ただ、千を超えたころから数えるのをやめてしまったので、正確なところはもう分かりません」

 二千は超えていると思いますよ、と長老は言った。

 

「二千を超えて、この美貌……。わたしもアールヴに生まれたかったわ……」

「無いものをねだっても、しょうがないでしょ」

「でも、でもぉ――」

 と言うアルマを無視して、スペスがつづけた。

 

「とにかく、すごい昔からあるってことだよね――それで、あの〝神殿〟はまだ機能して使われてるんでしょ?」

「そのとおりです」と長老はうなずいた。

 

「ほら、やっぱりだ! ボクの見立てだと、アレは転移装置だと思うんだけど、どう?」

「そうですね。あれは神のいる場所へ行くための(ゲート)です」

「アレを通れば神って人のところに行けるってことか……ボクも行っていいのかな?」

 

「神はヒトではありませんよ」と長老は言った。

「そして残念ですが、(ゲート)は普段は閉じているので、神のところへ行くことはできません」

 

「でも、わたしたちはあれを通ってきたんです」とアルマは言った。

「確かにそう聞いています。しかも、此処(ここ)とよく似た場所からいらした、と」

「はい」

 

「それを疑うわけではありませんが――

 もし門が開けば、われわれにはそれがわかります。

 ここのところ門が開いた気配はありませんでした。

 その点が……よくわかりません」

 

「んー、でも〝普段は〟ってことは、開くことがあるんでしょ?」スペスが訊いた。

「そうですね。だいたい百年に一度くらいですが」

「開くとどうなるの? あと、次はいつごろ開く予定なのかな?」

 

「次は、まだ三十年は先でしょう」と長老は答えた。

「――門が開くと、まず、むこうから使者がやってきます。われわれは若い者を何人か使者に託し、神の元へ送ります」

「使者か、そういえばイオキアさんに、最初そんなことを聞かれたっけ……」

 

「ああ、あのときは失礼をいたしました――」

 イオキアがどこか可笑しそうに言う。

「万が一を考えると確認をしなくてはいけなかったので」

 

「それは別にいいけどさ、その行った人達は、神のところで何をするの?」

「神のお世話をする、といわれています」長老が答えた。

「そもそも――われわれアールヴは神の身の回りの世話をするために創られたそうです」

 

「その〝世話〟っていうのが具体的に何をしてるのかはわからないの?」

「残念ながらあちらの事はわかりません。神の元へ行った者は、ずっとあちらで暮らすため、戻らないのです」

 

「連絡を取る方法もないの?」

「ありません」と長老は言った。

「ただあちらは楽園、とても暮らしやすいところだと言われております。みな幸せに暮らしていることでしょう」

 

「うーん?」

 スペスが質問をやめて、考えこんだ。

「どうかしたの?」

「いや、うん。ちょっと……」

 そう歯切れ悪く言ったきり、答えない。

 

「じゃあ、わたしからも質問いいですか?」

 代わりにアルマが手を上げた。

「えっと……その神っていうのについて、よく知らないので教えてほしいです」

「もちろんです」と長老はうなずいた。

 

「神とは、アールヴも人族も、木も草も、動物も、そして大地も、すべての生き物と世界を創った創造主――父であり母である存在です」

「つまり、わたし達はみんな、神につくられたって事ですよね」

「そうです」

 

「でも……そんなにすごいのなら、なんで知られてないんですか? わたしも本当にいるなんて知らなかったし、たぶん街のひとも含めて誰も知らないと思うんですけど……」

 

「それはそうでしょう。人族ははるか昔に神のことを忘れ去りました。伝え聞くところによると、それは人族が、神を裏切ったせいだと云われております」

「うらぎり……ですか」

 不穏な言葉にアルマは表情を硬くする。

 

「そうです――太古、知恵のある生き物は、神のつくった楽園に暮らしていました」

 長老はよどみなく、唄うように語る。

「そこは飢えることのない、争いもない平和な理想郷でした――

 

 しかし、あるとき人族は欲を出し、結果、神を裏切ります。

 神は怒り、人族のみならず、楽園にいたすべての生き物を地上へと追放しました。

 

 そして神はこの世界に二度と姿をみせなくなったのです。

 この世界は神から見捨てられ、忘れら去られました」

 

 

「でも、アールヴ族はまだ――神を忘れてなくて、まだつながりがあるんですよね……?」

「そうです。アールヴ族(われわれ)はその時、神に許しを請いました。

 結果――神は、アールヴが神を忘れずに生きるなら、その子孫が楽園に戻ることを許しました。そしてわれわれに門を与えたのです」

 

 半信半疑でアルマは訊いた。

「だから――百年に一回お迎えが来るんですか?」

「そうです」

 長老は真面目な顔でうなずいた。

「……神のいる楽園に行くことがアールヴの願いであり、使命なのです」

 

「でもそれってさ――」

 いままで黙っていたスペスが、急に口を挟んだ。

「本当かどうかは、分からないよね?」

 

「どういうことでしょう?」

 長老が、感情を抑えた、低い声で訊きかえす。

 

 だが、スペスはかまわずに続けた。

 




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いきなりなにを言い出すの、スペス⁉

それでは次回、
第55話 『スペスと長老⁉』
で、お会いしましょう!
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