「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第56話 『三度めの神殿⁉』

 翌朝――

 スペスとアルマは、昼食用に残り物をもらって、日の出まえにアールヴの集落を出た。

 

 とはいっても、山に囲まれているせいで日が差すのが遅いだけで、すでに空は透きとおるように青かった。

 ふたりは草についた朝つゆで足もとを濡らしながら、木々を縫うような道を登り、ほどなく丘の上についた。

 

「三度目の正直って言うからねっ!」

 アルマは嬉しそうに、草地に並んだ巨石をながめる。

 

「二度あることは三度ある、とも言うよ?」

「嫌なこと言わないでよ……気持ちよく一日を始めたいのに――」

 

「それなら、二度あることは()()、にしとこうか」

「それって、同じような意味じゃない?」とアルマは言った。

「――ていうか、むしろ増えてない?」

 

「じゃあ……二度あることは山積(さんせき)は?」

「増えてるわね……もっと増えてる!」

 

「二度あることは散々!」

「たしかに散々な目にはあっているけどもっ!」

 

「二度あることは惨劇!」

「酷くなってる⁉ これ以上悪くするのはやめて!」

 

「あれもダメ、これもダメって――じゃあどうすればいいのさ?」

「……えっ⁉ んーと……なんていうのかしら。もっと前向きに『これから成功をつかみ取ってやるゼ』みたいにならない?」

 

「二度あることは……簒奪(さんだつ)?」

「権力の座をつかみ取ろうとするな!」

「いや、神の座を――」

 

「人族の罪を、さらに増やすなー!」

「いや、それなら大丈夫でしょ」とスペスは笑った。

「どうしてよ?」

 

「だって、もしボクが(これ)を使って来たのなら、ボクは神かその関係者で――人族じゃないはずだよ。あっちにはいないんでしょ人族は」

「あ、そっか……ってそうなの⁉ スペスが神の関係者⁉ た、たしかに……理屈では、そうなるのかな……?」

 

「だから、それはないってば」

「そうなの?」

「根拠はないけど、たぶん違うと思う。絶対ではないけどね」

 

「ふーん、そう言ってるのね、スペスのなかのアルマ氏が」

「ハ・ル・マ・スね」とスペスは言った。「いつからボクの中にアルマがいたんだよ……怖いからやめて」

 

「でも、そんなに言い切っていいの? だって、わたし達もこの神殿のせいでここに来たんでしょ?」

「それは、たぶん違うよ」

 

「ほら――だとしたら……って、違うの⁉」

 驚くアルマに、スペスは言う。

 

「だって考えてもみてよ。

 ボクの見立てでも、長老さんの話でも――この装置は《転移》つまり、はなれた〝場所〟をつなぐためのモノなんだよね。

 それなのにボクたちはどうやら〝時間〟を移動したらしい。

 しかも、そのとき〝場所〟はどうだった?」

 

「あっ――」

 とアルマは口に手をあてる。

「同じ場所……移動は――してない」

 

「そうだよね。長老さんも『このところ、門は作動していない』って言ってたし、合わせて考えると、この〝神殿〟は、ボクらには関係がないんじゃないかな?」

 

「えっと……、でも、どういうこと? この〝神殿〟が原因じゃないとしたら、わたし達はどうしてこんな所に来ちゃったのよ⁉」

「簡単なことさ」とスペスは言った。

 

「ボクたちはこの〝神殿〟の《転移》じゃない、別のナニカによって、過去(ここ)へ連れてこられたんだ」

「別のナニカ? なによそれ? そのナニカっていうのは、いったいなんだっていうの⁉」

 

「それはね――」

 と、スペスが意味ありげに間を空ける。

 

「ボクにもさっぱりわからない!」

「わからない事だらけじゃない!」

「だから調べに来てるんでしょ?」

「うっ……。確かにそうだけど……」

 

「なんにしてもさ、もう一度調べてみないと何も分からないよ」

「じゃあ、さっさと始めましょうよ。とりあえず、わたしは何をしたらいいの?」

 

「そうだなぁ、急ぎでやってもらうことは無いんだけど、しばらくは周りの警戒かな。あとは、なにか怪しいものを見つけたら教えて」

「わかったわ」

 

 話を終わりにしたふたりが丘の上を調べはじめると、しばらくして向かいの稜線からまぶしい太陽が顔をみせた。

 日差しが石の群れを照らし出し、すぐに上がりはじめる気温に、ふたりは上着をぬいでシャツの袖もまくった。

 

 それでも汗をかきながら、見落としがないかと神殿を端から端まで調べていったが――気がつけば、何の手がかりも見つからないうちに太陽は頭の上を越えていた。

 

 

「ダメだなぁ……。アルマ、いっかい休憩にしてお昼にしようよ」

「そうね。そうしましょうか」

 うなずいたアルマは、近くの石のうえに昼食をひろげはじめる。

「お茶も貰ってきたから、淹れるわよ」

 

 手ごろな石で(かまど)をつくったアルマは、拾っておいた枯れ枝や葉をいれる。

「はい、スペス。〝火〟をお願いね」

 

「えっ?」

 とスペスが意外そうな顔をした。

「放火するの? この神殿がボクらと関係なかったからって、丘ごと焼き払うの?」

 

「そんなことする訳ないでしょ!」

 とアルマは声をあげた。

「そうだよね――このあたりだけ焼いておけば、十分気は晴れるよね」

「このあたりも焼かないってば……。どれだけ焼きたいのよ、わたしは」

 

「焼けになったアルマは火を放った」

「字が違う! あとヤケにもなってないから」

「生焼けかぁ」

「違うし……いまは、くだらないことを言うひとに手を焼いているわ」

「上手いこと返された⁉ もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」

 

「なんでスペスがヤケになるのよ。いいからさっさと火をおこしなさい。お茶が飲めないでしょ! 火が急ぎで、火急よ!」

「わかった、まかせてよ!」

 とスペスは嬉しそうに竈の前に立った。

 

「華麗に踊りながら、火をつけてみせるよ!」

「べつに踊らなくてもよろしい!」

「ちぇっ――」

 と手を伸ばしたスペスは、素早く竈の中に《点火》した。

 集めた枯れ葉に火がつき、細い枝へと燃えうつる。

 

「へー、覚えたてなのに、だいぶ上手くなってるじゃない!」

 感心しながらアルマは鍋をセットした。

「まあ、ボクは百年にひとりの天才だからね」

 

「たしかに――」とアルマはうなずく。

「その歳で《点火》しかできない人は、百年にひとりかもしれないわね……」

 

「違うんだって! これから覚えるの! これから色々できるようになる予定なの!」

 スペスが、むきになって反論した。

 

「はいはいスペスの努力は認めてるわよ。わかったわかった、スゴイスゴイ……スゴクスゴイ。さぁ、食べましょ!」

「う、うん……」

 

 ふたりして石に座り、昼食を食べはじめると、アルマがため息をついた。




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それでは次回、
第57話 『スペスはなにを疑うの⁉』
で、お会いしましょう!
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