「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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7章 決戦⁉
第88話 『トロルを攻略する⁉』


 アルマが木剣をかまえてトロルに相対(あいたい)し、その後ろにスペスが立つ。イオキアと隊長は背後にまわった。

 

「待たせたねっ!」

 言うなり、スペスはスリングにつめた石を飛ばした。巨人は横に大きく動き、石をよける。

 

 体勢をくずしたトロルにアルマがかけ寄ろうとしたが、すぐにトロルが姿勢を戻したので、あわててまた距離をとった。

 

 うしろからは、イオキアと隊長から矢と、風の魔法が飛ぶが、トロルは意にも介さず、そのままアルマにむかって棍棒を叩きつけた。

 

 轟音と土煙があがり、一瞬アルマの姿が見えなくなる。

「アルマ!」スペスが叫んだ。

 

「へいき!」と言う声とともに、すぐにアルマの姿が見える。

 

 アルマはそのまま、棍棒の届くぎりぎりを、出たり入ったりしながら動きつづけた。スペスもスリングにセットした次の石を、巨人の頭めがけて飛ばす。

 

 だがトロルはこれも素早く身体をかがめてかわした。トロルがかなりの勢いで避けたので、首にかけている首飾りが、カチャーンと高く鳴る。

 

 

――おかしいな。

 戦いながら、トロルの動きを観察していたスペスは思った。

 

 この暗いなかで、飛んでくる石を避けるトロルの視力と反応速度には驚いたが、そもそも石が当たったくらいでは、トロルは怪我をしない。

 事実トロルは、イオキア達の弓や魔法を、避けようともしなかった。

 

――それなのに、ボクの投げる石は、体勢がくずれるほど大きく避けた。

  もしかして……。

 

 頭にうかんだものを検証するために、スペスはスリングに石をセットすると、さらにもうひとつの石を、手に持った。

 

 タイミングを図りながらスリングをクルクル回すと、トロルが避けやすいように、わざと横を狙って投げる。

 さらに、すぐまた石をセットし、トロルが避けそうな方向へ、連続で二投目を放った。

 

 果たして、アルマを攻撃しようとしていたトロルは、それをやめて最初の石をよけた。だが、よけた先にも次の石が飛んでいる。

 それを避けられなかったトロルは、片手で、石をたたき落とした。

 

――やっぱりトロルは、ボクの投げる石を嫌がっている。

 

 スペスは理由を考える。

 

――長老さんを助けるときに使った火焔草が原因なのは間違いない……。だけど怪我が治るトロルが顔ならともかく、それ以外のところまであんなふうにして避けるのは何故だろう?

 

 疑問を感じたスペスは、トロルを見上げた。

 夜空の星々を背景に、頭の形くらいはわかるが、暗い上に高さがあるので、細かいところまではよく見えない。

 

 

「聞いてくれ、アルマ!」スペスは言った。

「なによ! 忙しいんっ……だけどっ!」

 アルマがトロルの攻撃をかわしながら答える。

 

「あいつの〝頭〟をよく見たいんだ! なにかに《灯り》の魔法をかけて、頭の高さまで投げてくれ。

 時間は短くていいから、光の量を多くして! あと目が明かるさに慣れちゃうから、光は見ないように!」

 

「注文がっ……多いわ、ねっ!」

 動きながら、何かないかとポケットを探ったアルマは、たまたま手が触れた飴玉に《灯り》をかけて、そのまま空へ放り投げる。

 

 強く光りながら昇る飴玉に照らされて、灰暗色に見えていた集落が、わずかの間だけ、色をとり戻した。

 光源を見ないように手をかざして、スペスはトロルの頭を観察する。

 

 まぶしそうに目を細めているトロルの顔や頭は、焼け焦げて、(ただ)れていた。腕の一部の毛もなくなっていて、火傷の痕が見える。

 

 飴玉にかけられた光は、トロルの頭を飛び越えたあと、沈む太陽のように落ちる途中で消えた。

 あたりが暗闇にもどると、スペスが叫ぶ。

 

「火だ‼︎」

 

 スペスは、イオキアのほうへ叫ぶ。

「イオキアさん! こいつは火の傷が治りにくいみたいだ! なにか火で攻撃をしてくれ!」

 

 すかさずイオキアからひとつ、隊長からふたつの炎の矢が飛ぶ。

 トロルはふたつは避けたが、ひとつが腕に当たり、長い体毛の焦げる嫌なにおいがした。

 

 トロルの反応からして効果はあるようだったが〝弱い〟とスペスは思った。

「もっと強い魔法はないの!」。

 

「残念ながらありません!」

 イオキアが悔しそうに叫ぶ。

「もともとわれわれは、火の魔法をあまり好まないんです!」

 

「アルマは!」

「ごめんっ、わたしもできないっ!」

「くそっ!」とスペスは唸った。

 

 せっかく弱点がわかっても、有効な手段がなかった。火焔草の小瓶がポケットにはまだふたつあったが、強く警戒するトロルに確実に当てる方法がなかった。

 効果が大きいだけに、これだけは絶対に外したくなかった。

 

――やっぱり、倒して頭を狙うしかないのか……。

 

 スペスはすぐに次の策を考える。

「わかった! イオキアさんたちは魔法で牽制しつづけて! それと、しばらくのあいだ、あんまりこっちを見ないようにしてくれ!」

 

「わかりました!」とイオキアが答えた。

 

「アルマ! 五つあとに、()()()()()()()()で頼む!」

「ええっ⁉ なにっ?」

 

「五つあとに、時間最短で光量最大! ()()()()だっ! 数えてくれ!」

「わ、わかった……っ!」

 

 アルマはポケットの飴玉を握ると、遅延させた(灯り)をかける。同時に大声で数をかぞえはじめた。

 

「5、4!」

 イオキアたちから炎の矢がとび、トロルを牽制する。

 

「3、2!」

 スペスもスリングをとばしてアルマを援護した。

 

「1!」

 アルマが飴玉を真上に投げた。

 

 飴玉はわずかな光を放ちながら上がっていき、そこにトロルの目が吸い寄せられる。

 

 瞬間、アルマの真上で音のない光の爆発が起きた。




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スペスの策の結果はいかに⁉

次回、
第89話 『倒れろぉぉぉっ⁉』
で、お会いしましょう!
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