「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第90話 『アルマ対トロル⁉』

 あと少しで森というところで、伸ばしたトロルの手が、隊長の腕をつかまえる。

 

 隊長は腕をひき抜こうと、もがいたが、まったく抜けないばかりか、トロルが少し強く握っただけでパキポキと骨が砕けた。

 

 苦痛に顔をゆがめながら隊長は腰の剣を抜き、腕ほどもある太い指へ切りつける。

 だが、そのたびに傷は再生し、ふさがっていった。

 

 トロルは、必死にあがく隊長を広い場所へ連れて行こうとしたが、隊長が抵抗をやめないので、そのまま無造作に()()()

 

 

 隊長の身体が、人形のように空中で不規則に回転し、集落の中央まで飛んでいって落ちる。

「――――‼︎」

 イオキアが彼女の名をさけび走った。

 それを見てトロルもまた駆け出す。

 

 

「行っ……てくれっ! アルマっ!」

 治療を受けていたスペスが、苦しそうに言った。

 

「わ……わかった!」

 魔法を中断したアルマは、すぐに走り出したが、トロルはすでに隊長達の近くにいた。

 

 一番先についたイオキアが隊長を抱き起こすと、手をついて魔法をつかう。

 イオキアの前の土がぶ厚く盛りあがり、それは、壁となって二人を隠した。

 

 だが、駆けてきたトロルはかまわずに、その足で土の防壁ごと二人を蹴った。

 

 トロルの怪力に、土壁はまるで砂山のよう飛び散り、隊長とそれを抱えたイオキアの身体がくるくると宙を舞う。

 

 飛ばされるあいだもイオキアは隊長を離さず、二人が鈍い音をたてて地面にぶつかると、みるみるうちに赤い血がひろがった。

 

 

 蹴り飛ばされた二人のもとに全力で走ったアルマは、魔法をかけようとしゃがみこんだが、すぐにトロルがやってきた。

 アルマは、動かないふたりに悲痛な表情をむけながら立ちあがり、トロルに向かって木剣を構える。

 

 即座に、トロルが棍棒を振りおろした。それはアルマとともに、うしろのふたりまで潰そうという攻撃だった。

 避ければ、うしろのふたりが死ぬ。アルマには逃げることができなかった。

 

 

 ズガンッと空気を震わせて、ふたつの武器がぶつかりあい、棍棒がはじき返された。だが、トロルはまたすぐに棍棒を振り下ろす。

 ギャリンッと、どうにか弾いたアルマの手がビリビリとしびれた。

 

 そんなアルマに構うことなく、トロルは次々に攻撃を繰り出してくる。

 斜めから、真上から、横から。アルマは襲いかかるトロルの棍棒を、どうにか打ち返しつづけた。

 

 アルマを逃したくないのか、トロルの攻撃は必ずうしろの二人を巻き込むように出されていて、動きを読むのはそう難しくなかった。

 だが一方で、アルマには反撃の手がない。

 

 二人の命を背負ったアルマは、攻撃のために前に出ることも、トロルから逃げることもできなかった。

 

 

――このままじゃいつか、やられちゃう……。

 襲いかかる攻撃をどうにか(さば)きながら、アルマは焦った。

 

――早く治療しないと、ふたりとも。

 一瞬の隙に、ちらと後ろを見ると、地面にできた血溜まりはさらに大きくなっていた。

 

――さっきの怪我じゃスペスも動けない……いまわたしが倒れたら……。

 全滅――という恐ろしい考えが膨らんできたが、アルマは、それをふり捨てる。

 

――ううん、少しでもできることを考えなきゃダメよ! いまのわたしに残る可能性……できる攻撃……。

 考えをめぐらせながら棍棒をはじき返したアルマの頭に、ひとつの手がうかぶ。

 

――あったひとつだけ、わたしにもできる攻撃!

 すぐに思考を切りかえる。

 

――とにかく、やってみるのよ!

 アルマは魔力《マナ》をうごかして《強化》をさらに重ねがけする。

 

 アルマの身体が強く光を放ち、激しく打ち付けられるトロルの棍棒を、それ以上に強く打ちかえす。トロルも負けじと、さらに速く、さらに強く、攻撃は苛烈を極めていく。

 

 ガン! ゴン! ガイン! 

 

ふたつの武器がぶつかり合う音が、夜の森に走り、トロルの首飾りが囃したてるようにカシャンカシャンと鳴る。

 

 そんなふたりの打ち合いは、合わせて三十回以上もつづいた。トロルが荒く息をつき、アルマはすでに感覚の無くなった手を、かけた魔法で無理矢理に動かしていた。

 

「ガァァァァァアアッ!」

 トロルが叫んで大きく一歩を踏み込んでくる。

 

 強力な攻撃が来る。そう感じたアルマは、自分も魔力(マナ)を絞り出し一歩を踏み出した。

 

 トロルが棍棒を打ち下ろし、アルマが木剣を振りあげる。

 

「どぅおぅうりゃぁぁぁぁぁあああっ‼」

 

 ふたつの武器がぶつかりあった瞬間、暗闇に火花が散った。




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見届けろ、結末を!

それでは次回、
第91話 『ここを通りたかったら、ボクを倒してくれ⁉』
で、お会いしましょう!
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