「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第98話 『戦場に似つかわしくない声⁉』

「やあ兄弟! ひさしぶりだね! たしかアホタンとかいったっけ?」

 陽気な声で言う。

 

「ややっ、お前はモドカダラの頭に火をつケたアールヴ!」

 悪魔がスペスに気がついた。

「アチシはアブタノだわ! あンときはよクもやってくれタな! おかゲでひどい目にあっタのだワ!」

 

「ああ、あの時はわるかったね。でも仕方ないじゃないか。キミはボクらに戦いを挑んだんだ。なのに攻撃されて怒るなんてひどいじゃないか」

「だマれ! 勝てないカらって、だマし討ちをすルなんて、汚イのだワ!」

 

「おかしいなぁ? 戦いでは、罠もだまし討ちも当たり前のことだよ?」

 とスペスは首をかしげる。

「そのくらいのこと、頭のいいキミならわかっていると思ったんだけどなぁ……」

 

「ん……? そ、そウだな。そんナ事くらい、アチシもわかってたヨ」

 

「それにさ。ボクらは勝ったよ。見てみなよ、君たちの自慢の戦士はボクらに倒された!」

「なんダと! お前がモドカダラをやっタのか⁉」

 

「そうだよ。たしかに強かったし、ボクもだいぶやられたけど、それでもボクには敵わなかったね」

「ぬぬぬ……アールヴにそコまでの戦士がいルなんて思わナかっタのだワ!」

「だからさ」とスペスは余裕の笑みをうかべる。

 

「ここらへんでやめにしておかない? ボクにかかったら君も無事じゃすまないよ。ここで全滅したくなかったら、おとなしく帰って魔王サマに相談しなよ」

 

 そう言うスペスの膝はぷるぷると笑っていた。

「その状態で、よくハッタリが言えるわね……」見ていたアルマが関心する。

 

「ぬぐぐぐ、たシかにお前の言うトおりかモしれナいだワ……。だガ、強敵の情報も持たズにこのマま帰ったら、アチシは魔王様にあワせる顔がナいのだワ!」

 

 アブタノが口のあたりに手をやり、ピーッ! という音を出した。

 ガザガザと音がして、アブタノの背後にある森から、大きな影がふたつ出てくる。

 

「オーガ!」「それも二体も⁉」

 スペスとアルマが言った。

 

「さあサあっ、アールヴの戦士よ! こいつラと戦え! そノ強さをアチシに見せルのだワ!」

「い、いやぁ……」と急にスペスの腰が引ける。

 

「そいつら程度じゃボクがやるまでもないかな。相手なら、この子で充分だよ」

 スペスがアルマを指した。

「こいつラを相手にそンな小娘ひとりトは……やハり只者じゃナいのだワ」

 

「ちょっとスペス!」

 アルマが、悪魔に聞こえないように言った。

 

「わたし、もう魔力《マナ》がないって言ったじゃない。同時に二体はきついわ。せめて一体はひきつけておいてよ!」

 

 スペスが小さく首を振る。

「ごめんムリ……正直もう立ってるだけで精一杯――」

 

「まったく……しょうがないわね――こうなったら逃げるわよ」

「……そうしよう」

 

 ふたりが、こそこそと相談していると、後ろの森からも、ザカザカという音が近づいてくる。

 

「まさか……」

 と振り返ると、森から一体のオーガが姿を見せ、さらに別の場所からもオーガが出てきた。

 

「まずい……囲まれてる」

 と、スペスは周りを見る。

 加えて、ガザガザという音がもう一体近づいて来ていた。

 

「と、とにかく逃げないと――」

 アルマは、動けないスペスを肩にかつぎあげる。

 

「うーん? ずイぶん変わっタ構えナのだワ? 初メて見るケど、そんナので戦えルのだワ?」

 とアブタノはふたりを見た。

 

「ねぇ……どっちに行くのがいいかしら」

 そう訊いたアルマの膝が、がくんと落ちる。

 

 スペスをかついだまま、アルマがしゃがみこんだ。

「アルマ⁉」

 

「ごめん……、もう魔力《マナ》がない……かも」

 青ざめた顔でアルマは言った。

「ええっ⁉」

「どうしよう……スペス」

 

「どうしようって言ってもね……」

 スペスがひきつった笑いを浮かべる。

 

 

 四体のオーガが、遠巻きにふたりを囲み、じっと見ていた。

「どうシた、アールヴの戦士。ヤらなイのかイ?」アブタノが訊く。

 

「い、いや、今はちょっと体調がわるくてね……今日はヤメにしとかない?」

 スペスが言ったが、アブタノは聞く耳を持たない。

「そっチが来ないナら、こっちかラいくヨ!」

 

 アブタノの合図をうけて、オーガが一斉に歩きだす。

 

 威嚇するように牙を見せるもの。粗末な棍棒を振り回すもの。

 するどい爪をつき出すもの。 嬉しそうにヨダレをたらすもの。

 

 身動きのとれないふたりに、よっつの悪魔が近づいてくる。

 

「スペス!」とアルマが抱きついた。

「これはさすがに無理かもね……」

 顔に汗をにじませて、スペスは言った。

 

 

 その時、さっきからガザガザと音のしていた森から、よく通る声がひびいた。

 

「よう! 楽しそうなことを、やってるじゃないか!」

 それは、戦場に似つかわしくない明るい声だった。

 

 その声を聞いたアルマが、抱きついた手を離してスペスを見る。

 

 全ての者が動きをとめる中を、声の主はすたすたと歩いて近づいてきた。

「――アタシも、まぜろよ」

 そう言って、オーガの後ろから顔を見せたのは、黒髪の女拳士――メイランだった。




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ふたりの危機に現れたのは、心強い助っ人メイラン!

次回、
第99話 『遊んでやるよ⁉』
で、お会いしましょう!
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