ロマノ家によるサイエンス国の建国宣言に世界は驚愕、特に神聖帝国は未だ行方を追っている「ユハン・サイエンス」の名字である「サイエンス」が国名に使われていることからサイエンス国の指導者層にユハンがいるのではないか?と考えサイエンス国に調査隊を派遣、ロマノ家に対してユハン・サイエンスの身柄の引き渡しを迫った。
ロマノ家の館までやってきた調査隊に対してループはユハン・サイエンスは既にこの世を去っていることを説明、さらに自らユハンの墓まで調査隊を案内した。
最初はループの話を信じていなかった調査隊もユハンの墓を見た時にユハンは本当に亡くなっていることを理解、ループと一緒に墓に手を合わせたあと本国である神聖帝国に大人しく帰って行った。
この一件があったことでループはユハンの死をもはや隠す意味はないとしてユハン・サイエンスの死を世界に公表した。
ユハンの死をこれで知ったマギアは「私は彼の死が悲しいとは思わない。だが彼が死ぬ前にもう1回会って話がしたかった。」とコメントを残している。
神聖帝国はこの公表と調査隊の報告でユハンの死を受け入れたのだが帝国魔法教会の方はユハンが死んでいるのならその遺骨を引き渡せと言ってきた。
この要求はサイエンス国はおろか神聖帝国内の国民や諸外国にも非難された。これを受け皇帝マルグレート3世とマギアが話し合い正式にユハンの調査を終わらせることを発表しこの件に決着をつけさせた。
しかしループは念のためユハンの墓移動を極秘裏に行いサイエンス国首都「スキエンティア」にユハンの墓を移した。
ループはサイエンス国を一切魔法が存在しない国にする気ではあったが今は科学技術が魔法に対抗できる力がないのとかつてのスキエンティアから学び魔法を取り締まるのは未来の世代に任せることにし魔法研究と魔法学校を禁止しなかった。
だが魔法に対抗できるようにするため科学の振興を国策で推進、科学大学を設置し産業革命の下地準備を始めた。国民の識字率向上にも精を出し領内各地に学校を設立、子どもが等しく教育を受けられるようにした。
次にサイエンス国軍を創設、普段は志願者だけで構成されているが長期戦にも耐えられるようにサイエンス国民の次男以下の満18歳以上の男性を徴兵する「徴兵法」を制定した。しかし次男以下でも身体が不健康な者や大学進学者は徴兵を免除された。
徴兵された男性は陸軍か海軍のどちらかで1年間兵役についたあと「予備役」に編入となりサイエンス国が戦争状態に突入すれば召集される手筈となっている。
さらにスキエンティアのように後々神聖帝国に侵攻されないようにループは同盟国探しにも奔走しこの世界の三大超大国の1つである「都市連合」と攻守同盟を締結することに成功する。
だがそれでも心配だったループは部下に魔王軍幹部との接触を命令。部下は魔王軍幹部の1人である「ギガンテス」と接触に成功する。ループはそのギガンテスをパイプにして魔王と交渉、サイエンス国から毎年奴隷を提供するということを条件にサイエンス国が侵略を受けた際に魔王軍が侵略国に攻撃するという決まりを秘密裏に設けた。
この関係はループが亡くなるまで継続することになる。
こうしてサイエンス国の安全保障体制を完成させたループは国内の行政改革に乗り出した。ループはまず統治を効率化するために行政機関を刷新、これまで勤めていた役人の知能テストを実施し一定の点数に届かなかった役人をクビにした。
さらに役人の「世襲制」を廃止し知能テストと面接による採用の「官僚制」に変え身分を問わず有能な者を登用できるようにした。こうして領内各地に少しずつ官僚機構を構築した。
これら諸政策を実施したループは34歳となりその間に子どもも産まれていた。28歳の時に次男のアルフレート、30歳の時に長女のマーガレットが誕生していた。
そしてループが36歳の時にループの実家であるハプスルン家で重大事件が発生した。それはハプスルン家当主であるアロイス・フォン・ハプスルンが部下の反乱によって命を落としたということそしてループにハプスルン家当主になって欲しいというお願いであった。
ループとハイン、その部下たちを排除したあとのアロイスはこれまで通り暴政を働き民を大切にしなかった。それを部下が指摘してもその部下を殺害して恐怖で支配を継続していたがそれも長続きせず遂に不満が爆発した部下と領民が結託してアロイスに反乱を起こしたのである。
アロイスは反乱を鎮圧しようとしたがアロイス直属の兵士たちも反乱軍側に寝返りアロイスを襲撃した。アロイスは兵士たちに討ち取られその死体は見せしめに吊るされた。
そしてここで問題となったのが今後のハプスルン家の跡継ぎである。アロイスには妻はいたが子どもが1人もいなかったのである。これを受けハプスルン家の部下たちは唯一生き残っていたアロイスの弟であるループにハプスルン家当主になってもらおうと考えたのである。
このお願いを聞いてループは頭を抱えた。なぜならハプスルン家は神聖帝国の諸侯の1つでありそれをサイエンス国指導者でもあるループが継いだら神聖帝国領土内にサイエンス国の領土ができてしまい最悪の場合その領土を巡って戦争になるかもしてなかったからである。
しかし自分の故郷でもあり実家であるハプスルン家の領土を手放したくない気持ちもありループは悩んだ。
そこで妻であるマリアが「じゃあ、アルちゃん(アルフレート)をハプスルン家当主にしたらいいんじゃないかしら?」と提案した。
ループはそれを聞いて考えた。確かにロマノ家当主の座は長男であるアレクが継ぐ予定であり次男のアルフレートは兄のアレクが何らかの理由で廃嫡にならない限りロマノ家当主にはなれない。
それならアルフレートをハプスルン家当主にした方が家を継げないアルフレートにとってもいいことだし後継者が欲しい反乱軍たちも喜ぶことだろう。その代わりにアルフレートはサイエンス国ではなく神聖帝国のために働かないといけなくなるがアレクと連絡を取り合わせサイエンス国に神聖帝国の情報をいち早く仕入れることも可能になる。
考えた末にループはこの提案を受け入れた。しかしまだ7歳のアルフレートをまだハプスルン家当主にはせずアルフレートが18歳になるまでは当主不在のままハプスルン家には頑張ってもらうことにした。
こうしてアロイス殺害から始まったこの重大事件はアルフレートが将来ハプスルン家当主に就任するということで一応解決となった。
事件解決後、ループは遂に蒸気機関の開発に乗り出した。ループはまず自分が当主になってから10年が過ぎたので10周年記念の晩餐会を開催した。
この晩餐会でループは以前の晩餐会以来友人関係となったペロンやブラント、ドミニク、ジュラなどと再会。彼らに是非蒸気機関の開発に携わって欲しいとお願いする。お願いされたとき彼らは「蒸気機関?何だそれ?」状態だったがループが「これが開発できたら魔法にも追いつけるようになる技術さ。」と言ったらすぐに「わかった、是非協力させてくれ。」と承諾してくれた。
これは彼らがユハンの論文である「魔法のこれからの展望と科学の未来」の共感者であるのも大いに影響している。さらにペロンの友人である数学者パパンやジュラの弟子たちも蒸気機関の開発に加わることになった。
こうして開発メンバーを確保した次にループは館に開発メンバー全員を招き入れ「蒸気機関」についての勉強会を開始した。
この勉強会自体はスムーズに進みいよいよ開発に取り掛かろうした時に問題が発生した。その問題はユハンの作成した科学書には蒸気機関の説明と開発方法、必要な資源も全て書かれているのだが問題は文字だけだったことだ。
どういう事かと言うと科学書には蒸気機関のことが文字で説明口調で書かれていただけで蒸気機関がどういう形をしているのかの図面が全く描かれていないのである。ちなみにこれは他に書かれている銃なども同じである。
これを見た工学者ペロンは「図面がなきゃ組み立てようにも組み立てられないぞ。」と言い発明家ブラントは「我々の想像の蒸気機関を開発するしかないのでは?」と提案、それに対して物理学者ドミニクは「それは我々の想像での蒸気機関であってこの科学書に書かれている蒸気機関とは全くの別物なのではないか?」と指摘した。
技術者のジュラや数学者パパンもペロンと同じで図面がなくてはこの蒸気機関がどのような物なのかどうかもわからないと述べた。
ループは元となった科学研究の資料を地下室の保管庫から取り出して確認してみたが此方にも図面は一切書かれていなかった。
ループたちは悩んだ。そこでループはユハンの恩師である狭間なら蒸気機関がどんな形をしているか知ってるかもしれないと思い立ち狭間の館を訪れた。
しかしループを迎えてくれたのは狭間広域ではなくその子どもである狭間誠一であった。狭間誠一は来てくれたループを館の中に入れ少しの間お茶会をしたあと「お手紙ありがとうございます。父に用事があって来てくれたのですね?」と聞いた。
ループは「はい、そうです聞きたいことがありまして。ところで誠一さんその狭間広域さんは何処ですか?さっきから姿が見当たりませんが?」と答え狭間広域が何処にいるのか聞いた。
狭間誠一は少し下を向いて「父の狭間広域は1週間前に亡くなりました。」と答えた。ループはそこであっ...と思った。
その瞬間2人の間には気まずい空気が漂いお互い無言になってしまった。この状況が約10分ぐらい続いたあとループはこれ以上いても無駄だと思い狭間の館から出ていった。
当てにしていた狭間広域がいない以上蒸気機関の形はもうわからないことが確定してしまったためループは想像で蒸気機関を開発するしかないことを開発メンバーに伝えた。
それを聞いたメンバーも「それならしょうがない。」と言って同意した。ループは蒸気機関を開発する場所として「蒸気機関研究所」を設立、蒸気機関を開発する資金はユハンが莫大に残した資産を当てにした。
こうしてループが38歳の時に本格的に蒸気機関の開発が始まった。だがやはり想像で開発するため失敗作が続発した。
初号機である「ペロン型蒸気機関」はうまく作動せず失敗、二号機である「ブラント型蒸気機関」は試運転中に大爆発を起こした。この爆発のせいで試運転に居合わせたループとペロン、ブラント、ドミニクが火傷を負いジュラの弟子の1人が亡くなってしまった。三号機である「ジュラ型蒸気機関」は作動はしたものの効率が非常に悪く実用化までには程遠い産物であった。
だが失敗からも学び少しずつではあるがいいものができてきていた。開発メンバーが蒸気機関を開発している間ループは内政に注力、税制改革や司法改革を行いさらにサイエンス国の国防と治安維持を担っているサイエンス軍から治安維持の役割を剥奪し新たに「サイエンス警察」を配置しこちらの組織に治安維持を任せた。
将校の育成にも精をだし軍人育成学校である「サイエンス軍事大学校」を設立、この大学校は6歳から入学することができ入学したら18歳になるまでの12年間みっちりと軍事学と軍人訓練、愛国心教育を受けることになる。
そしてループが42歳の時に義父であるサラザールがこの世を去った。享年61歳。
サラザールが亡くなったあとループは自分の後継者であるアレクを「共同統治者」に任命、今の内にサイエンス国統治の実績を上げさせ問題なくアレクに権力移行を行うためであった。
共同統治者となったアレクはまず父であるループを倣って領内各地を巡察した。領内各地を巡察していく中でアレクは傘下の貴族たちが統治している土地の行政が全く機能していないことや魔法学校や魔法研究に当てられている予算が圧倒的に科学より低いことに疑問に思った。
アレクは父であるループになぜ傘下の貴族たちの土地ではサイエンス国の政策が行われていないのか、魔法関連の予算が科学関連の予算に比べて圧倒的に低いのか聞いた。
ループはアレクに説明し傘下の貴族たちにはサイエンス国の一部になることを条件に所有している土地の保証とその土地の統治は代々その貴族の家に任せたこと、そして魔法関連の予算が科学関連の予算に比べて圧倒的に低いのはサイエンス国を将来魔法が一切存在しない国にする予定だからと言った。
これを聞いたアレクは不満を抱きループに「傘下の貴族からは統治権だけ奪ったらいい。あっちの常備軍はせいぜい200〜300、もし傘下の貴族の家が全部離反しても6000ぐらいでサイエンス国常備軍10000に比べたら屁でもないじゃないか。それに離反した貴族を鎮圧したらその貴族が所有している土地をロマノ家の物にすることもできるからいいじゃないか。科学に関しても魔法の方が便利なのになんで便利じゃない科学に予算を割くのか僕には理解できないね。」
アレクは昔から科学より魔法に興味があった子どもだったためループはなんとか科学方面に興味を持って貰おうと幼少期から様々な手を尽くしていたが意味は無かったことをここで実感した。
結局ループとアレクの話し合いは平行線を辿りこの一件以降ループとアレクの仲は急激に悪くなって行くことになる。
ループとアレクの関係が悪くなって行く一方蒸気機関の開発は順調に進んでおりループが43歳の時に五号機である「ユハン型蒸気機関」が開発された。このユハン型蒸気機関は井戸の水汲みや鉱山の排水用として実用化が実現された。
しかしここで遂にユハンの莫大な資産が底をついてしまった。これを受けてループは蒸気機関開発費用を科学関連予算で負担することを決定し予算を増やそうとしたが共同統治者であるアレクがこれ以上の科学関連予算増額を許さず増額は叶わなかった。
それに長年蒸気機関の開発に関わってきたメンバーたちの高齢化も同時に重なり蒸気機関の開発は一旦止まることになる。これに伴って「蒸気機関研究所」も閉鎖となった。
これまでの開発で培った蒸気機関の資料は開発メンバーの1人である技術者ジュラの弟子の1人である「ワイド」に全て託された。ループに託されなかったのはループの死後アレクが資料を全部焼却処分にする可能性があったからである。
そのためループはワイドにユハンの科学書と自伝も渡した。これらの資料は再び蒸気機関の開発が始まるまで大事にワイドが保管しておくことになる。
蒸気機関研究所の閉鎖を受けループはサイエンス国指導者からの退任とロマノ家当主の座を退く決意を固めた。
そして研究所閉鎖から1ヶ月後にループはアレクにサイエンス国指導者の地位とロマノ家当主の座を譲りかつてサラザールが過ごしていた宮殿で隠居生活を送ることとなった。
ループはアレクに譲る際に「私は私の好きなようにこの国を統治した。これからはアレクが好きなように統治しなさい。私は一切お前がやる事に口出ししない。」と言った。
こうしてループの17年間にわたるサイエンス国統治は終わりを告げ新たにロマノ家当主となったアレク・フォン・ロマノによる統治が始まった。