二次創作一話集   作:青色のラピス

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FGOの二次創作です。
なろう作品とのクロスオーバー。
型月設定を読み込めないのでオリジナル設定にしたら色々破綻しそうになったからお蔵入りです。


Fate/cross order
第一話


一人の少年が床の上で眠っていた。疲れているのか固い床の上でぐっすりと眠っている。

 

どう考えてもおかしい状況である。普通人はそんな場所で眠ることなんて有り得ない。

実際、多くの人間がそう思っているようで通りかかった者は皆彼を無視して先を進んでいき、彼だけが取り残されてた。

 

そんな中ただ一匹彼の所へ向かっていく獣がいた。犬や猫そしてリスを足したようなその生き物は迷うことなく、人の流れに逆らうかのように彼の下へ向かう。

 

……この組織に属する人間がいればさぞかし驚く光景だっただろう。しかし、その場には彼と獣とその獣を追ってきた一人の少女しかいなかった。

獣は少年の頬をつつき、舌で舐める。起こそうとしているのだろうか。

 

少女がその光景を見て驚いていると少年がもぞもぞと動き、目を開ける。

少年の目には少女と獣が、少女の瞳には少年が、獣の眼には少年と少女の向き合う姿が映る。

 

―――この時、この瞬間、彼等は運命(Fate)に出会った。

 

 △▼△

 

「そうですか……。おそらく先輩は入館時のシュミレートを受けた際に慣れない霊子ダイブのせいで半ば夢遊状態となり無意識にここまで来たのだと思います。」

 

「そ、そうなんだ……。」

 

目の前にいる桃髪の少女がこちらに飲料水を渡しながら藤丸の疑問――どうして廊下で寝ていたのか――に答えていく。

 

「ありがとう。ええと……」

 

「あ、申し遅れました。私、マシュ・キリエライトと言います。よろしくお願いします、先輩。」

 

「ああ、俺は藤丸立香……って先輩? 君と俺は同い年くらいだと思うけど……。」

 

藤丸が困惑する。

そんな困惑を面白そうに一人の男が近づいていた。

 

「フフフ、気にしないで。彼女にとって君ぐらいの年齢の人間は皆先輩なんだ。」

 

「はあ、そうなんですか。」

 

そう藤丸が気の抜けた返事をするとタキシードとシルクハットを被った紳士然とした男が話しかける。

 

「おっと、私の自己紹介はまだだったね。私はレフ・ライノール。ここ人理保証機関カルデアの顧問をしている魔術師さ。」

 

「……カルデア? それに魔術師……?」

 

藤丸は何やら訳も分からぬといった顔で困惑を隠そうともしない。

その様子を不思議がったレフはゆっくりと尋ねる。

 

「おや、パンフレットも見ずにここに来たのかい……? ……いや、待てよ、そう言えば……。ああ、そうだ! ―――藤丸立香君、君か! 48人目のマスターは!」

 

「―――そうなのですか、先輩?」

 

そう二人が目線を向けるが、藤丸は困惑したような表情を返すだけだった。

それどころか人理保証機関? 魔術師? と前提知識すら足りていないようだ。

 

「いや、それが俺にもよく分からなくてさ……。」

 

「―――よく分からない、ですか?」

 

「……実は―――

 

そうして藤丸はマシュとレフにこれまでのいきさつを語る。

最初の方は興味深そうに聞いていた二人だが、次第に顔色は悪くなり、眉間を抑えたり、頭を抱えるようになっていった。

 

話が一段落したところでレフが藤丸の軌跡を纏め、マシュは一つの結論を出す。

 

「……なるほど、君の話をまとめる整理するとこうだね? たまたま献血に行った君はある男に家まで付きまとわれ、仕方なく男の頼みに頷いた途端にアイマスクとヘッドフォンを付けられて、そのままカルデア(ここ)まで連れてこられたと。……マシュ、どう思う?」

 

「紛うことなき拉致です! 裁判になれば負けます!」

 

「やはりその通りだなマシュ! ここは謝ろう!」

 

そう言って二人は頭を下げる。何なら土下座しそうな勢いだった。

だが、それは正しい行いだった。

 

藤丸が問題視していないだけで立派な犯罪行為。例え世界の救済を免罪符としていても裁かれるべき悪質行為なのだ。

 

「いや、別に過ぎたことですから……。」

 

しかし、藤丸は気にしていないのかレフとマシュの謝罪を受け取らなかった。

これだけでも少年のお人好しが伝わってくる。

 

だが二人も引くわけにはいかず、謝罪を続ける。しかしやはり藤丸も受け取らず、一種の無限ループが生まれていた。

 

そうやっていると不意にレフが思い出したかのように声を上げる。

 

「―――しまった! 藤丸君、急げ! ブリーフィングがある!」

 

「え? でも場所が……。」

 

「大丈夫です。私が案内します!」

 

そう言って少年少女は駆け出す。

それを見送った男も、またどこかへ歩き出していった。

 

 ▼△▼

 

藤丸はトボトボと廊下を歩いていた。

ブリーフィングに参加したはずの彼が何故かブリーフィングルームを追い出され、自室へ向かっていた。

 

理由は単純明快、所長の有難いお話の最中に眠ってしまったのだ。

所長は当然、大激怒。そのままブリーフィングルームを追い出されてしまった。

 

当然、この後に予定されていた第一回レイシフトも不参加が決定しており手持無沙汰になっていた。

 

することも無くなった藤丸は追い出される直前にマシュから知らされていた自室へ向かっていた。

荷物は前もって運ばれていたため、そこで時間を潰そうと考えたためだ。

 

ふと、藤丸は扉の前で足を止めた。

些細な音が聞こえたためだった。耳を扉につけて神経を研ぎ澄ませ、集中する。

 

「―――? ―――。」

 

「――!? ―――――!」

 

「「――――――!!」」

 

声の質感からして男と女の二人か。

藤丸は一度、後ろに下がりネームプレートと部屋番号を確認する。

 

間違いは無かった。

目の前の部屋は正真正銘、藤丸立香の部屋だった。

つまり、この部屋の中にいるのは―――

 

「―――成程、不法侵入者か……。」

 

部屋の中にいる人物達の顔を拝もうとドアノブに手をかけ、一気にドアを開ける。

 

「どわあああ!? 誰だい、どうしてボク達の秘密の休憩部屋に!?」

 

「ん、誰だ? ……おい、ロマニ、驚きすぎじゃないか?」

 

ドアを開けると其処にいたのは何処かふわふわした雰囲気の白衣の男と瓶底眼鏡を付けた黒髪ロングの女だった。

 

白衣の男は大層驚いたのか、椅子から滑り落ちそうになっていた。

流石の醜態にベッドの上で寝転ぶ女も呆れた目線を隠そうとしなかった。

 

「……って、ちょっと! 貴方達、俺の部屋で何してるんですか!?」

 

思わず気が抜けそうになった藤丸だったが、追及は忘れない。

藤丸の追及に二人は思い出すような仕草を始め、同時のタイミングで指を鳴らす。

 

「……そうか、君が藤丸立香! 48人目のマスター!」

 

「そうか、今日到着したのか。てっきり、もう来ないものかとな……。」

 

「取り敢えず、部屋から出て行って下さーい!」

 

何処か呑気さを感じる二人に堪忍袋の緒が切れた藤丸の怒号が響き渡った。

 

それを受けた二人は―――

 

「「すみませんでした! もう二度としません! 許してください!」」

 

―――極東(ジャパン)の究極奥義『DOGEZA』だった。

 

生粋の日本人かつ突然の行為に藤丸は目を回すしかできない。

混乱の極みの中にいる藤丸は何が何だか分からず取り合えず頭を上げさせるのだった。

 

「分かりました、分かりましたから! 取り合えず頭を上げて下さい!」

 

 ▼△▼

 

「―――じゃあ自己紹介から始めよっか。僕はロマニ・アーキマン。このカルデア医療班の責任者をやってる。皆からは愛称でDr.ロマンって呼ばれているよ。君もできたらロマンって呼んで欲しい。」

 

たたずまいを正し、藤丸に紅茶を振る舞うゆるふわな男―――ロマニ。

成程確かに愛称で呼ばれそうな人だと藤丸は思った。

動作の一つ、一つに何処か愛嬌があり、親しみやすい。

不法侵入でサボっているのはどうかと思ったが悪い人ではなさそうだと感じていた。

 

「じゃあ、次は俺だな。俺は三上サトル。技術班の責任者だ。俺は綽名とかは無いから気軽にサトルでいいぞ。」

 

瓶底眼鏡をした黒髪ロング。

眼鏡で分かりずらいが、きっと背筋が凍るほどの美貌を持っていた。

女子中学生程の身長と体型をしており、色々と藤丸が驚いていると()()はニヤリと笑った。

 

底意地の悪い、思わず背筋が凍るような表情だった。

具体的にはその美貌が台無しになる位には。

 

「悪いが、俺は男だぞ。それに成人している。」

 

「え、嘘!?」

 

「嘘じゃないぜ、ほら。」

 

そう言って免許証を手渡すサトル。

その渡された免許証は確かに彼が成人男性であることを示していた。

 

「そういえば僕も初見は吃驚したよ。流石にもう慣れたけどね。」

 

「そうだったなぁ……。全員初見で同じような反応するんだぜ?」

 

そう言って肩を竦めるサトル。

しかし藤丸は仕方が無いと思う。

立ち振る舞いは兎も角、その外見だけは絶世の美少女なのだから。

 

(そういえばここは何なんだろう? 二人とも結構偉い人っぽいし……。)

 

振る舞われた紅茶を一口飲みながら二人を観察している藤丸。

二人とも肩書は勿論だが、立ち振る舞いにつけている品々も何処か品を感じさせ、一般家庭出身の彼でも分かる程、別世界の人間だと感じさせる。

そして、ようやく落ち着いた少年が口を開けることにした。

 

「あの、すみません。ここ、何なんですか?」

 

「「へ?」」

 

予想もしていない質問に二人は間抜けな声を出すしかなかった。

 

 △▼△

 

「……成程、人類最後のマスターは何も知らせらていないときたか。なあ、藤丸。お前を連れ出した奴の名前、憶えているか?」

 

「ええっと……確か、ハリーさん。ハリー・茜沢・アンダーソンっていう人だった気がします。」

 

「そうか。減給だな。」

 

憐れな事に一人の職員の減給が決まった瞬間である。

臨時収入のボーナスを貰ったはずの彼がこれからの生活が苦しくなる事は言うまでもないだろう。

ましてや高級外車を購入した彼の家計がどうなるのか……それは彼があくせく働く様子から察せるが。

 

「……じゃあ、説明するかロマン。」

 

「そうだね。流石に何も知らないのは不味いかな……。」

 

そして二人は藤丸にこの施設―――『人理保証機関カルデア』を説明しようとする。

しかし、急にロマンへ通信が入る。

 

『やあ、ロマン。ちょっといいかい?』

 

「ん……やあ、レフ。どうしたんだい?」

 

通信をしたのはレフ。

古めかしい恰好をした自称魔術師の男。

少なくとも藤丸にはそう認識していた。

 

『Aチームは兎も角、Bチーム以下、特に慣れていない者に若干の変調が見られる。恐らく不安から来るものだろう。』

 

「成程ね。コフィンの中はいわば戦闘機のコクピットだ。それなら少し麻酔をかけてあげようか。」

 

『頼むよ。君は今、医務室だろう? 其処からなら二分で着くはずさ。』

 

通信が切れる。

しかし、最後のレフの台詞でロマンの表情はこわばった。

 

「おいおい、不味いんじゃないか?」

 

他人事なのだろう。

サトルは楽しそうにニヤニヤとロマンを揶揄う。

しかしロマンはその揶揄いを流している余裕も時間も無かった。

 

「あわわわわ……不味い。ここからだとどうやっても五分はかかるぞう……!」

 

そう言ってバタバタと駆け出していった。

 

そんな様子に藤丸がついて行けず眼を回しているとサトルが口を開いた。

 

「ははは。まああいつがああなのは何時ものことだから気にしないでくれ。」

 

「そ、そうなんですか? でも責任者がそんなんじゃ大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫か大丈夫じゃないかじゃあ大丈夫さ。ああ見えて決める所はきっちり決めるタイプだからな、あいつは。それにこのカルデアは閉鎖的で堅苦しい奴ばっかりだからああやって気を抜いてくれる存在は稀有なのさ。」

 

「成程……。」

 

確かに形式ばっているであろうこの組織にロマンのような人物は稀だろう。

居るだけで空気を弛緩させるのは最早才能の域だ。

硬いばかりでは疲労ばかり溜まる。

上手い事気を抜かなければ潰れてしまうだろう。

 

「じゃあ、話を戻すか。いいか、藤丸。この『カルデア』はな――――――

 

サトルが満を持して説明をしようとした。

 

()()()()()()()

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所及び中央管制室にて火災発生。中央区画は30秒後に防壁で閉鎖されます。主電源は停止しますが予備電源を使用します。そのため優先度三以下の施設及びシステムは総て停電します。』

 

『優先度三以下の施設はシュミレーター、個別ルーム、休憩室、食堂及びそれらに面した通路になります。60秒後に停電しますので周囲にいる人員はそこから離されてください。』

 

『中央管制室での火災鎮火、及び人員救命の為に空間凍結を実行します。凍結が完了するまで職員は接近をしないでください。凍結終了は120秒後になります。』

 

『凍結終了後全ての防壁は撤収されます。防火班はその後に鎮火及び人員救助をお願いします。中央管制室に医療班が集中し、今回の非常事態で壊滅しているため医療班の救助を優先してください。』

 

『「疑似天球(カルデアス)」は強制停止……成功しました。緊急事態解決後に再起動を行います。再起動には各班の責任者三名以上又は所長のコードが必要となります。』

 

けたたましくなる警報。

それと同時に発せられる緊急事態。

幸い施設に備えられた設備が問題なく作動したようで何とか大事になる前に食い止められたみたいだ。

 

しかし不意に響いた警報はサトルの台詞を掻き消すには十分で、注意を奪っていくには過剰だった。

 

「……予定通り、だな。」

 

「……え? サトルさん、何か―――

 

「いや、何でもねぇよ……悪いな藤丸。非常事態だ。メインの電源がやられたからここら一体もうじき停電だ。それにこんな状態だ。現場は猫の手も借りたいだろうし、お前も来てくれないか?」

 

「は、はい! 分かりました。」

 

サトルの提案に頷く藤丸。

そして勢いよく扉から飛び出し、サトルを先頭に非常事態が起きた現場へと向かう。

だがカルデア内部に明るくない藤丸でも分かるほど人の流れが出来ており、迷うことなく到着する。

 

そして集まっている人だまりを見つけたサトルが大声で確認を取る。

そしてサトルの存在を認識した職員たちは知り得る現状を彼に報告し始める。

 

「状況は!?」

 

「空間凍結は既に終わり、防火班が救助を行っています。幸いにもDr.ロマニを始め何人かの医療班が無事だったため救命活動は想定よりもスムーズです。」

 

「そうか……それでコフィンは? マスター47人は無事か? あと、管制室のいた職員は?」

 

「救命システムは問題なく稼働しています。電力の大半を注ぎ込んでいますから一年間は持つはずです。職員の方では現在、犠牲者はゼロです。」

 

「……そうか。出火の原因は掴めたか?」

 

「……恐らく火薬類をつかったのではないかと推測します。魔術的痕跡がない、という理由ですが。」

 

「よし、十分だ。消火が終わったらシステムの復旧と設備の修理を行う! 管制室は最低限でいいから発電室を優先するぞ!」

 

「分かりました! ……所で『万能の天才』は?」

 

「勿論呼べ! この緊急事態で()()()を遊ばせておく必要はない!」

 

「技術班! 管制室の消化は完了したぞ! 特に怪しいものも無かった! システムの復旧を頼むぞ!」

 

防火服に消火装備を纏った職員が管制室から出てくる。

どうやら消火と二次災害の防止を終えたらしい。

自分達の役割を全うした彼等は次を待っている者達にそのバトンを繋げたのだ。

 

「よし、分かった。発電室も頼むぞ。」

 

「ああ、分かってる。直ぐに消し止めてやるさ。」

 

防火班と後退するように管制室に入って行く技術班。

先頭には黒髪をたなびかせるサトルがおり、有りっ丈の機材と共に復旧に取り掛かかる。

 

二転三転する現場に藤丸が目を回していると、ふと呼び止められた。

 

「ん、藤丸くん!? どうして此処に居るんだい!? ……いやいるなら倒れている職員を運ぶのを手伝ってくれないかい?」

 

「分かりました!」

 

白い手袋を赤く染めたロマニに頼まれ、管制室に入る藤丸。

 

そうして入った空間は酷い物だった。

あちこちが黒焦げており、火災の凄まじさがうかがえる。

そして焼き付いた柄の上にはシートが引かれており、その上で怪我をしている職員の応急処置が行われている。

怪我の具合は些細なものから大怪我と呼べるものまで千差万別であった。

 

「う……っ。」

 

普段の生活では到底見ることのない光景に圧倒される藤丸。

しかしこの場で一人立ち止まる訳にはいかないと足を進める。

倒れている職員をシートの上に運び、怪我が酷い物は医務室に運ぶ。

 

何人運んだか分からなくなって、少しの余裕が生まれた時。

 

「……先、輩……?」

 

少女の声が、聞こえた。

か細く、弱弱しいが少し前に聞いた声だった。

 

「―――マシュさん?」

 

思わず目を見開いた。

半身に火傷を負い、息も絶え絶えな少女がシートの上に倒れていた。

火傷だけではない。

瓦礫にぶつかったのか打撲にその破片による裂傷もあった。

 

近くにいる医療班の職員に瞳を向ける。

しかし彼は無念そうに顔を横に振るばかりだ。

 

「治癒のスクロールを使っても駄目、もう手遅れだ。……運が無かった、という他ない。」

 

「そんな……。」

 

少年の顔が悲痛に歪む。

 

「……先輩。手を握ってもらっても、いいですか?」

 

少女の声がした。

死に瀕し、生命を零すしかない少女の最後の願いだった。

当然、少年の答えは一つだ。

 

「―――うん、いいよ。」

 

ゆっくり、優しく少女の手を両手で包む。

柔らかく、温かい感触が少女に伝わる。

 

最後の瞬間、きっと彼女は安らかに逝くのだろう。

 

周囲の人間がそう思った、瞬間の事だった。

 

『特異点を観測しました。レイシフトを開始します。座標、西暦2004年1月30日、日本、冬木。ラプラスのよる転移保護……成立。特異点への因子追加枠……確保。アンサモンプログラム、セット完了。』

 

『緊急事態発生、カルデアスの状態に変化発生。シバによる近未来観測情報が書き換えます。』

 

『近未来100年までにおける地球にて人類の痕跡は発見不可能です。人類の生存、及び未来の確認と保証が不可能です。』

 

「何だ、カルデアスが赤く……いや、停止したはずの設備が何故動く……?」

 

天球の表面が赤く変色している。

まるで炎上しているかの様だった。

しかも停止したはずなのに勝手に再始動を始めていた。

 

『コフィン内部の凍結停止を確認しました。レイシフトの規定人数に達していません。そのため代替手段として中央管制室から該当者を検索……発見しました。』

 

『適応番号48藤丸立香をマスターへ認証します……成功しました。』

 

「ッ!? 不味い、藤丸! この部屋から出ろ、早く!」

 

サトルが叫ぶ。

しかし何もかもがもう遅かった。

 

『アンサモンプログラム、スタート。量子変換を開始……成功しました。』

 

虚しくも響くアナウンス。

その場にいたはずの少年と少女はその場から掻き消えていた。

『レイシフト』が成功した、その証明だった。  

 

 ▼△▼

 

目を開けたら地獄があった。

何処か侘しさを感じさせる日本の地方都市。

だがそれに似つかわしくない炎と廃墟が広がっている。

 

「何処だ、此処は……。」

 

その中に一人の少年が呆然と立ち尽くしている。

近未来じみた空間から一転して地獄のような場所になれば仕方のない事だが。

しかし呆然としているだけでは火に巻かれて死ぬだけだとその場を離れる藤丸。

 

だがまさか、危険を遠ざけるはずの行為が危険をおびき寄せていたとは誰が想像できるだろうか。

 

「―――おや、まさかまだ生きている人間がいたんですね。」

 

女の声だった。

 

艶やかさと玲瓏さを含んだよく通る声だった。

 

無意識に目線を奪われてしまう不思議な声だ。

思わず視線を動かしたが藤丸だが、視点がある場所に届いた瞬間動かなくなった。

 

「魔力を感じるという事は『聖杯』を狙う魔術師ですか? それにしては不用心な事ですが。」

 

電柱の天辺、本来は鳥が掴まっているはずの場所に女が立っていた。

顔はフードで隠れている上に距離が離れていて正体は分からない。

しかし女が持っている大鎌―――到底、日本の街中でお目にかかれるものではない。

 

「まあどちらにせよどうでも良い事ですね。」

 

女が跳躍した。

10m以上はある高さから跳んだのだ。

本来なら着地できずの地面に激突必至であろう。

だが女の動きはそんな当たり前を無視した動きだった。

 

だがそれ以上に異常だと藤丸に思わせたのが女の跳躍力だ。

 

僅かな足場からオリンピック選手以上の力を叩き出す。

100m以上はあったはずの距離は一瞬にして潰されて、眼前に女の顔が現れる。

命の危機であるはずなのに思わず見とれてしまう程に美しい顔だった。

 

「それでは―――やさしく、殺してあげます。」

 

鎌が振りかぶられる。

大きな戦鎌が空気を裂き、少年の首を刈り取りにかかる。

 

(―――死んだ。)

 

回避は不能。

防御は考えられない。

正に、絶体絶命。

 

目を瞑り、何れ来るであろう刃へ構える。

しかしいつまで経ってもその刃は、冷たい殺意は降りかからない。

 

「―――お待たせしました。先輩。」

 

思いもしない声が聞こえた。

まだ会って一日も無いが、それでも聞きたいと思った声が。

恐る恐る瞳を開ける。

 

―――そして、驚愕した。

 

騎士を思わせる鎧に四肢を通し、円卓を想起させる大楯を担う少女の姿を見て。

そしてその奇怪な姿よりも藤丸が気を引かれたのはその正体だ。

 

桃色の短髪、しかし前髪は片目が隠れる程に長い。

さらにその小さな唇から零れる声は確かにもう聴けないと知った()()()

格好こそ想像もつかないが、それ以外の要素で一人の少女を当てはめる。

 

「―――マシュ?」

 

「はい、マシュ・キリエライトです。」

 

 △▼△

 

「え……マシュ、さん?」

 

「はい、マシュ・キリエライトです。……すいません、失礼しますね。」

 

状況を把握する間もなく藤丸は華奢な少女に抱えられる。

その外見からは想像もできない程の膂力に驚く暇もなく、異次元の跳躍を見た。

風を切る感覚を感じながら必死に何が起きているのかを掴もうとするが既に非日常に叩き込まれたことを知らない彼は全く正答を導くことはできずに混乱するばかりだ。

 

「ここでいいでしょうか……?」

 

数分程歪な空の旅を経験し、ようやく地面に足をついた。

藤丸は混乱する頭を押さえながら取り合えず彼女に問うた。

 

「ええと……マシュ、さんなの?」

 

「はい、マシュ・キリエライトです。」

 

少女はそう言うが藤丸には理解できなかった。

訳の分からない国連組織に拉致されたと思ったら燃え盛る廃墟に移動し、コスプレじみた格好をした美少女が目の前にいる。

確かに藤丸じゃなくても混乱することは必至だろう。

 

『―――通じているかい、藤丸君!?』

 

『おい、システム復旧完全じゃないんだから焦るなよ! また壊れたらどーすんだ!』

 

騒がしい声だった。

意識せずとも簡単に覚えられたゆるふわ系と黙っていたら美少女にしか見えないオッサン系。

直ぐに声と姿格好が合致した。

 

「ドクター、それにサトルさん。何処にいるんですか?」

 

『僕等はカルデアさ。君の着ている礼装―――カルデア制服の効果さ。状況が限定されるけど音声通信が出来るんだ。取り合えず状況を教えてくれるかい?』

 

『音声だけだからこっちは映像が見えないんだ。『シバ』も止めて再起動してないからな。』

 

「はい、ドクター。私達は既に『特異点』にレイシフトしました。そして『サーヴァント』の襲撃を受けました。何とかその場から離脱し、現在に至ります。」

 

『その声、マシュかい!? 君が其処にいるって事は……分かった。取り合えず状況は把握した。』

 

マシュの声を予測していなかったのかカルデアの喧騒がマイクが広い、藤丸達に伝わる。

だがそれでもドクターは動揺を見せずに彼等に次の行動を示す。

 

『藤丸君、マシュ。今の君たちが「サーヴァント」を相手取るには不十分だ。魔術師未満の藤丸君は言うまでも無いけど「デミ・サーヴァント」であるマシュは防御特化だから攻め手に欠ける。』

 

「『サーヴァント』……?」

 

『過去の偉人や英雄を英霊として召喚した使い魔……とりあえずはそんな認識でいいよ。マシュ、「盾」はあるね?』

 

「はい、ここに。」

 

マシュが大楯を地面に突き刺す。

重量物がぶつかる独特の音が鳴り、それだけでカルデアはマシュの言葉に偽りがない事を理解した。

 

『よし、なら大丈夫だ。藤丸君、指示はこちらから出す。君はそれに従ってくれ。』

 

 ▼△▼

 

大楯が地面に鎮座し、その周囲には不可解な魔方陣や記号がちりばめられている。

準備にかなり時間がかかったように見えるが実際に書き記したのは一部で、残りは勝手に浮かび上がったものだ。

一分も満たない準備だがそれでも逼迫した状況には致命的な時間消費だ。

 

『簡易式だからこんなもんか……。藤丸、詠唱は俺に続けてくれ。マシュは周辺の警戒を頼む。魔力のうねりが起きれば「サーヴァント」はそれに絶対に勘づくだろうしな。』

 

「……分かりました。」

 

「了解です。サトルさん。」

 

『「―――告げる(セット)。」』

 

その瞬間、魔力(オド)が鳴動する。

大気中に霧散していた無色の魔力が藤丸立香の意志に支配され、彼の為のものに移り変わる。

 

だが、それでは自分が此処に居ると自白しているようなものだ。

其処にいると分かったのなら彼を殺したがっている者が来るのは自明の理だろう。

 

「―――見つけました。」

 

大鎌を携える女が現れる。

異常とも言える敏捷、そして執着だ。

藤丸を察知するや否や最短距離を駆け抜け、彼の命を刈り取るべくその獲物を振るう。

 

「させません!」

 

しかし周囲の警戒を担うマシュがその凶刃を弾く。

勢いづけられた一撃は何とか大鎌の軌道をそらす事が出来たが、その凶器は未だ女の手の上に健在だった。

 

「あら、貴女も結構イイですね。では貴女からいきましょうか!」

 

蛇を思わせる瞳が少女を射抜く。

それだけで身体が竦み、背筋が硬直する。

まるで蛇に睨まれた蛙だ。

 

だがそれでもマシュは退くことなく女の攻勢を必死に凌いでいる。

 

『「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」』

 

焦りが藤丸の心中を焦がすが、それでも紡がれる言葉が詰まることは無い。

彼の詠唱が進むたびに魔力のうねりは大きくなり、行使する術が強大である事が伝わる。

 

うねりは渦に変わり、竜巻の様に天地を繋ぐ。

簡易式による召喚儀式とは思えない程の現象に今すぐ中断したい思いに駆られるサトル。

だが既に『サーヴァント』の襲撃を受けてしまった以上は鬼に蛇が出ようとも進めるしかないのだ。

 

『「聖杯の寄るべに従い、抑止の轍より応えよ。汝、星見の言霊を纏う七天。」』

 

加速する詠唱に比例して大気の魔力も加速する。

いつの間にか手の甲に刻まれた赤い紋様が鈍く光り、契約が成立したことを静かに告げている。

藤丸の魔力が大気の魔力と混ざり合い、英霊(サーヴァント)の『霊基』と『霊核』を構成する霊子に移り変わる。

そして霊子は顕現する英霊の情報に従い、その器を作り上げる。

 

『「降し、降し、裁きたまえ、天秤の守り手よ―――!」』

 

詠唱が完成し、作り上げられた器に英霊の人格が宿る。

切り取られた一側面のみ、しかし確かに其処に在る過去の存在。

本来はあり得ない過去の人物の再臨、あるいは召喚。

 

『聖杯戦争』において『魔術師』と共に駆け抜ける英雄の残り香。

境界記録帯(ゴーストライナー)』或いは『サーヴァント』と呼ばれる存在。

 

『世界』によって成立する奇跡が、其処に降り立った。

 

 △▼△

 

「―――うぐっ!?」

 

その召喚されたサーヴァントは状況を確認する間もなく、女を蹴り飛ばしていた。

陸上選手でも敵わないであろう瞬発力は女の意識外も合わさり、綺麗な痛打(クリーンヒット)となり後方まで大きく後退させた。

 

「……『英霊召喚』……呼び出したのは『槍兵(ランサー)』か『暗殺者(アサシン)』といった所ですか。」

 

あらゆる視線が召喚された存在に集まる。

しかし土煙が起こり、その姿は明らかにならない。

 

「……否……否である……! 我は暗殺者に非ず……ましてや武芸を誇る槍兵に非ず……!」

 

少年の声だった。

だが少年には似合わない威厳に満ちた声であった。

 

「『世界』を見渡す星見台の魔術師達よ、そして泥に塗れ誇りを失った女よ、聞くがいい……我が『クラス』はエクストラクラス、『詐称者(プリテンダー)』!」

 

腕が土煙を払い、その姿が現れる。

猪を模した仮面を被り、現代軍人が着ているような将校服にマントを付けた小柄な少年だ。

 

「我が真名は―――『オーク仮面』! 闇より生まれ出で、闇を喰らう暗黒の魔獣である!」




名:オーク仮面 
レア度:星5
クラス:プリテンダー
性別:男性
身長・体重:168cm・54kg
出典:『おれの名を呼ぶな!』
属性:混沌・悪・星
隠し属性:人型・王・魔獣・愛する者
筋力:D+ 耐久:D+ 敏捷:B+ 魔力:EX 幸運:B+
コマンドカード:QQAAB


クラススキル

単独顕現 B++

救済の獣 EX
自身にダメージプラス(250)&行動不能無効状態&即死無効状態を付与。


宝具

冥き神の猛威(オーク・ダイナミック)
対人宝具。ランクはEX。
敵単体の強化状態を解除&超強力な悪特攻(OC・200~300%)攻撃(Lv)+自身に『オーク属性』を付与。
コマンドカードはQuickの多段ヒット攻撃。


スキル

フォーウォーンの化身 EX  CT7-5
味方全体の攻撃力をアップ(3T・Lv)&防御力をアップ(3T・Lv)+自身に攻撃時『オーク属性』(5T)付与状態を付与(3T・付与数は最大10個)。

怪人幻談 A  CT9-7
自身に重複可能なガッツ(1回・5T・Lv・1000~3000)を付与&NPを30%チャージ+スターを10個獲得。

オーク・パワー A++  CT8-6
自身の『オーク属性』を全て解除した後、味方全体のクリティカル威力(3T・Lv・『オーク属性』の数だけ更に上昇)&宝具威力アップ(3T・Lv・『オーク属性』の数だけ更に上昇)を付与+味方全体のNPチャージ(Lv・10~20%)+スター獲得(Lv・10~15個)。


プロフィール1
オーク仮面、あるいはフォーンウォーンの化身と呼ばれる存在。
悪を以て悪を打倒し、暗闇より子を追いやる森の魔獣。

プロフィール2
救済の獣:EX
オーク仮面、それも最高位である彼は最高ランクで保持している。
状況は限られるがあらゆる因果を無視することが可能。
その力は、神の権能が如く。

プロフィール3
???

プロフィール4
???

プロフィール5
???

プロフィール6
???
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