元・追放された逆行経験ありゲームの中の悪役令嬢が、TS転生してケモ耳生やしたおっさんになったら最強目指して成り上がる 作:クレイジーエコロジー
雪を踏みしめ、歩く。歩く。歩く。
街はまだ見えない。行けども見えるは雪と岩ばかり。
男は限界を感じ始めていた。
空腹か?否。
では疲労か?それも否。
(―――おしっこしたい)
意外!それは尿意!
第三者が見ればこう言うのかもしれない。
「そこら辺で立ちションでもしてろ」と。
しかし待ってほしい。極寒の野外で立ちションするのは大変なのである。
まず、ブツを取り出すのが手間なうえ、ブツは外気の寒さで縮こまっているときた。
首尾よく取り出せたとして、その後どうするのか?
男は悩んでいた。
こんな所でおっぴろげて局部を晒せばどうなるか?
(おちん×んが凍ってしまうかもしれない・・・)*1
まだアッチの用途で使用してもいないのに、使用不可能になる。そんなリスクは男には負えなかった。
男は童貞だった。
この世界に生まれ落ちて40年。そのほとんどを奴隷として過ごした。
まるでド●クエⅤかのような肉体労働。
来る日も来る日も岩を運んで、床を塗って壁を塗って、柱を立てて。
どこへ行くのも監視。何をするにも監視。
そんな環境で女とチョメチョメする暇なんてありゃしない。
そもそも、相手がいない。
肉体労働現場に美少女?ないない。
美少女美女は‟そっち”の用途に回されるのが通例だった。
居るのは老いも若きも男ども。
まぁ性交渉の機会が無かったわけではない。
もっとも、男同士だが。
男は全力で拒否した。初めては女がいい―――それだけは譲れなかった。
おかげで男は童貞で、そして処女*2である。
出来るだけ風が来ない岩陰を探して、男は首尾よく用を足した。
お×んちんは凍らなかった。
男は少しほっとして、身なりを元に戻してまた歩き出した。
4時間程歩いて、何とか次の街に辿り着いた。
リベラの街。そう入口に書いてある。
ほぼ無学で無教養な男だが、簡単な共通語くらいは何とか読めるのである。
「おい、そこの。止まれ、顔を見せろ」
入口の衛兵の一人に呼び止められる。
「聞こえたか?フードを外せ。男か?女か?通行証は?」
大人しく防寒具からフードを外し、顔を見せる。フード内に残っていた雪と氷の塊が、ばらばらと地面に落ちていく。
無精ひげに覆われた中年の男の顔が見えた。頭の上には熊耳が乗っている。獣人の証だ。むくつけき大男の癖に、ちょこんと無駄に可愛らしい熊耳が衛兵を少しイラつかせた。
「ふん、獣人か。それで?通行証はあるんだよなあ?」
コクリ、と頷くと男は外套の内を探り、しなびた一枚の紙切れを見せた。
文無し甲斐性なしの男だが、この紙こそが彼にとっての『とっておき』であった。
「これは・・・身分証だな。獣人、男、42歳。名前は・・・おい、この文字獣人語か。これなんて読む?」
「―――アデル。アデル・ベアード」
「はいはい。アデル・ベアード、と。えーーっと。なになに―――
この男の身分は、当代勇者ファウエル・エル・ハイルゼルが保証するものである―――はぁああああ??」
「お、おい。俺にも見せてみろ・・・うげ、マジか。印章まで付いてやがる!?」
衛兵の男たちは代わる代わる身分証をのぞき込むが、それで内容が変わるわけもない。いや、むしろ―――
「お、おい。更に下になんかちっこく書いてあるぞ?」
「え?・・・あ、本当だ。なんだって・・・
―――ついでに。当代聖女アリス・リェーゼも保証しちゃいます!印章はないけど、サインだけ書いておきますね・・・って、何じゃこりゃあ!!?」
「―――これで、通してくれるか」
更に後ろに引っ付いたとんでもない
勿論、通してくれなくては困る。
勇者の保証付き身分証の効力は並大抵ではない。各国の関所は勿論、国の行き来にも絶大な影響力を発揮する。その筈だが・・・
「いや、無理」
「え」
なんか無理らしい。
駄目らしいです。