「……あ、あの?僕に一体何のご用でしょうか……?」
「その顔……間違いない。貴様、『死の盗賊団』残党アルだな?」
「え?死の……なんですか?あの、たぶん誰かほかの人と勘違いしていると思うんですが……だって僕の名前はザザと言ってアルなんて名前じゃないですし……」
「フン、あくまでシラを切るつもりか。なら、その右腕を見せてみろ。貴様が『死の盗賊団』の残党ではなければ見せれるはずだ」
「そ、それは……」
「どうした?見せられないのか?見せられないのだったら『死の盗賊団』の残党として貴様を連行させてもらおう」
「っ、離してください!僕は本当に残党じゃ……!こ、このっ……!」
「おい、なにやってんだ?」
「!?」
「!」
自分の追及に明らかに狼狽えている青年の腕を掴み、ラインハルトがそのまま青年の腕に錠を掛けようとした瞬間。唐突に間延びした甲高い声が響き、思わず振り向けばそこには……まるで小動物を思わせるようなくりくりとした漆黒の瞳、綿菓子のようなまろやかな白い頬をした幼い少女が青年の腕を掴むラインハルトを怪訝そうな目で見ていた。いつものラインハルトなら「ああ、空気の読めない平民の少女か」と思い、そのまま少女を無視して青年の腕をへし折って無理やり連行することも厭わなかっただろう。しかし、ラインハルトは少女を見て絶句した。なぜなら目の前の少女から放たれている魔力が敬愛するアイザックの魔力と似て……いや、もはや瓜二つのものだったからだ。
(は?え?アイザック様の、魔力……?ど、どういうことだ……?魔力の質と量には個人差があって誰一人として同じ魔力の持ち主はいないはず……なのにどうしてアイザック様と似ても似つかない幼い少女からアイザック様と瓜二つの魔力を感じて……?)
目の前の少女からアイザックと瓜二つの魔力が放たれている事に気付いたラインハルトは動揺する。が、しかし、そんなラインハルトの様子に気づいていないのかラインハルトに腕を掴まれている青年が焦った様子で少女に向かって叫んだ。
「っば……!おいクソガキなんでてめえがこんなところに!?」
「え?いや『おい、クソガキ。こんな虫が這っている汚物の塊みてえな台所で作った茶を俺に出したことは許してやる。だから俺が買い出しから戻ってくるまで絶っっっ対綺麗に掃除しとけよ!?くそっ、いますぐ飲んだやつ吐きてえ…』って言って買い出しに行ったのにいつまで経っても買い出しから戻ってこないから迷ったんじゃないかと思って迎えにきたんだが……そこの如何にも貴族みたいなヤツ誰だ?お前の知り合いか?」
「はあ!?こんなやつ知り合いなわけねえだろう!?騎士だよ騎士!王国のクソッタレの!!」
「王国の、騎士……?」
「っ!」