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「……ここに来るのも久しぶりだな」
そう呟くおれの眼前には貴族の居城かと思うほど立派な石造りと建物と重厚な鉄の扉。ここは俺が所属している冒険者ギルド『黄金の剣』。この国で知らぬものはいないと言われるほど有名な冒険者ギルドで、抱える冒険者の数は支部も含めて1000人超。かつてこの世界を救った勇者の仲間が創設したと言われており、
難攻不落の魔要塞を攻略した『魔術師ツーヴァルツ・ダルク』
千年前の魔族との戦いで失われたとされていた世界樹を再発見した『僧侶カナリア』
大竜巣食う死の島に単身乗り込み攫われた大国の王女を救った『大剣士ショウ・ハツカ』
……などなど数々の著名的な冒険者を輩出している、王国で一番人気の冒険者ギルドなのである。まあ、その分駆け出しの頃は色々とノルマとかが厳しいんだが……
「……と、こんなところで物思いにふけっている場合ではないな。早くギルド長のところに行って治療費をもらわなければ」
俺は軽く頭を振り、鉄扉に手を掛けた。そして重厚な扉を押し開けると、懐かしい喧騒が耳に飛び込んできた。 ガシャガシャと金属がこすれ合う音、汗と鉄と少し埃が混じった独特の匂い、依頼提示版の前であーでもないこーでもないと騒ぐ新人たちに、奥のテーブルで地図を広げて真剣な表情で作戦を話し合うベテランたち。そしてそんな様子を横目に大きく膨らんだ報酬袋を受付から受け取る古参の冒険者。
(なにも変わっていないな)
数カ月ぶりに訪れるギルドの様子に安堵し、一歩ギルドの中に足を踏み入れた、その時だった。
「おお?誰かと思ったらアイザックちゃんじゃん。久しぶり~、元気にしていたか?」
「! この声は……ユアン先輩?」
「おう、お前のユアン大先輩だぞお~」
唐突に声を掛けられて振り向けばそこにはだらしなく服を着崩した見知った顔の男がいた。彼の名は……ユアン。一見するとヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべるどこにでもいそうなうだつの上がらない冒険者に見えるだろう。が、彼はこう見えて史上最年少で冒険者の最高位である『白金等級』に上り詰めた冒険者であり、ギルドの中でも指折りの実力者だ。そして軽薄な見た目とは裏腹に意外と面倒見の良い男で、かくゆう俺も駆け出し冒険者だった頃、不良冒険者パーティに騙されて危うく魔物の餌にされるところを助けて貰った経験があり……
「それにしても本当に久しぶりじゃん。依頼でかなりひどい怪我をしたとは聞いていたけど……もう動いて大丈夫なのか?」
「ええ、まあ……ギルド長が国内でも腕利きの治療士と魔毒の治療に長けている診療所を紹介してくれたお陰で治りも早くて……」
「ふーん。そうだったんだな。でもアイザックちゃんも災難だなあ。まさか荷物運びとして依頼を受けた筈なのに例の毒龍討伐に参加させられて、その上に依頼者である騎士団には『荷物運びではなく護衛任務として依頼した。報酬金?治療費?なぜ護衛対象を守れず死なせた無能に払わなければならん』ってごねられたせいで、身売りすることになるなんてさ……」
「……ん?身売り……?あの、何を言って…?」
「え?何をって……だって、お前治療費を肩代わりして貰う代わりに貴族に身売りすることになったんじゃなかった?」
「はあ?いや、本当に何を言って……」
「あ、ほら噂をすれば……」
そう言ってユアンが顎で示した先はギルドの入口。そこに立っていたのは――場違いなほど上質な衣服に身を包んだ男だった。そしてその丸々と太った男は妙に湿った視線を俺に向けてニチャアと笑った。
「でゅふふふ!ま、まさかあのアイザックたんがぼくのものになるなんて!!こ、これからよろしくね!アイザックたん!でゅふふふふ!!」
「いっ」
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「うわああああああっ!!……はあ、はあっ……ゆ、夢か……」