Regain Journey   作:G-ラッファ

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前回までのあらすじ

 サザンの町を復興すべくツケンサで活動していたエイジャーは、あの日の襲撃を逃れた騎士団 ミーシャや討伐隊の無事を確認する。
 ルルの魔力コントロールを指導しエイジャーに運命を感じちゃった行き倒れ少女 アリッサと再会の約束をした2人は再びサザンへと帰還するが…


20話 帰還報告

「あっちでも新種の魔族と出会うなんて運がないね。にしてもエイジャーすごいなぁ、どんどん女の人を誑かしてる…おっと」

 

「誑かすって…それより族長との決闘はどうだった?」

 

 アリッサと別れてから数日後、エイジャーとルルは復興資材を乗せた船に乗り、再びサザンへと向かっていた。

 前回の航海と同じくガラナに棒術の指導をつけているのは、早速族長へ決闘を挑むも、手も足も出ずに打ち負かされたからであった。

 

「もうボッコボコ。その意気は認めるが弱すぎる!もっと鍛えねば認めてやらん!だってさ…」

 

 踏み込み斬りをバックステップで避けつつ、体を一回転させながら長棒で反撃する…突き一つに及び腰だった前回の動きに比べ、ガラナの立ち回りは驚異的な速度で上達していた。

 

「まだカタさはあるけど応用が利くようになったな。じゃあこれはどうだ!」

 

 反撃をいなしつつ間合いを取り直すエイジャー。背後のマストを蹴って空中へ飛び上がると、その勢いのまま棒を振り下ろそうとする。

 

「それじゃ隙だらけでしょ!…うわっ!?」

 

 空中で回避はできない…その油断から甘い突きを放ったガラナの長棒を掴むと強引に奪い取った。エイジャーは長棒で着地位置を調整しつつ、武器を奪われ姿勢を崩したガラナの足を掬った。

 

「いてて…あの体勢から武器を奪うなんてアリ?」

 

「正しく突いてれば奪えなかった、勝ちを焦って集中力が切れたな。それを踏まえてもう一戦やってみる?」

 

 ガラナは差し伸べられた手を取り立ち上がる。そして位置について再び…というところで、ポリプとルルが戦いを止めた。

 

「治す練習したいからケガしてたら教えて!」

 

「そろそろ準備した方がいいって!2人の荷物を持ってきたよ」

 

 振り返ればサザンの港が近付いてきていた。エイジャーたちを出迎える人々の中にはよく知る顔…討伐隊の面々もいた。

 

──────────────

 

「んー!んー!」

 

「あなたがルルちゃん!噂には聞いてたけどか…かわいい〜!白銀の髪はサラサラで青い目も宝石みたい…!」

 

 港に到着した一行は…ルルはミーシャの熱い抱擁に身動きが取れなくなっていた。

 彼女を見るやいなや飛びつくその挙動に不意を突かれ、一瞬反応が遅れたエイジャーが慌てて引き剥がす。

 

「急に抱きついたらびっくりするだろミーシャ!ルル大丈夫?」

 

「いい匂いだった…」

 

「ガッハッハ!いやはや私の部下が申し訳ない…彼女はかわいいモノを見ると理性が飛んでしまうのですよ」

 

 ミーシャを退けて現れたのは金髪を後ろに流した恰幅の良い中年の男…王都騎士団の副団長にして討伐隊の最高責任者 グレナルド・ベルコであった。

 

「君の活躍は聞いていますよ。よくやってくれているようですね、エイジャー君」

 

「…!副団長、俺は…王様やみんなの家族を差し置いて、たった1人生き残ってしまいました。どんな罰も受け入れる所存です」

 

 グレナルドの前に跪くエイジャーの声は震えていた。ただならぬ空気を察し2人の間に入ろうとするルルの腕をミーシャが掴み首を横に振る。邪魔をしてはいけない、と。

 

「まだ何も言っていないのに罰を求めるとは…今から30秒だけ鬼になりますから歯を食いしばりなさい。皆さんは離れるように」

 

(グローブを外した…あの人まさか!?)

 

 ガラナが次に起こる出来事を想像するよりも早く、グレナルドの拳がエイジャーの顔面を捉え大きく吹き飛ばしていた。あたりに血が飛び散り、出迎えに来ていた町の人たちが一斉にざわめく。

 

「王を死なせた上に誰一人救えなかっただと!?貴様というものがありながらなんたる醜態だエイジャー・グラム!!!そんな!そんな情けない戦士だったのか貴様は!!!」

 

「あのおじさんエイジャーを…!放して!止めないと!」

 

 制裁の鉄拳が顔へ、腹へ、背中へ何度も降り注ぐ度に、一切抵抗しないエイジャーの体は風に弄ばれる枯れ葉の如くふらふらと動き回る。

 凄惨な制裁を止めるべくミーシャの手を振り払おうとするも、華奢なルルでは鍛えられた彼女の握力から逃れることはできなかった。

 

「大丈夫、グレさんも手加減してるから後遺症は残らないよ。それにこれはエー君のためでもあるから」

 

「あんなに殴るのがエイジャーのためなの!?そんなのおかしいよ!」

 

「ルルちゃんなら知ってるんじゃない?王都壊滅の件で誰にも責められなかったこと。そういう気遣いがかえって苦痛になるタイプなんだよね、エー君は」

 

 ルルは黙ってしまった。確かに最初に訪れた村の人たちも責めるどころかエイジャーの心を案じていたし、ここサザンやアルフ族の集落では救世主扱いだった。

 一方で救えなかった人たちに強い負い目を感じ、何度も魘されていたこともよく知っている。

 

「エー君を裁ける立場のあの人が制裁することで、わたし達騎士団も本人も納得して次に進む"理由"ができるの。それに…ほら」

 

 ミーシャが2人の方向を指差す。そこにはボロボロになったエイジャーを抱き止めるグレナルドの姿があった。

 

「…30秒経ちました、ここからは私個人として話します。エイジャー君、また家族を失った辛さ、自身の無力さへの怒り…きっと君の心に深い傷を残したことでしょう」

 

「ですがあの日何もできなかったのは我々も同じ…その痛みは君だけが背負うものじゃない。それに可愛いお嬢さんを守る使命があるのでしょう?前を向きなさい。立てますか?」

 

 その言葉に大粒の涙を流し子供のように泣きじゃくるエイジャーの背中を叩くと、肩を貸して立ち上がらせ、グレナルドはそこにいた人々に叫んだ。

 

「ここにいるエイジャー・グラムは王都壊滅で1人だけ生き残った!王を、民を守るという使命を果たせなかった罪は重い! だが強大な魔族を打ち破ってこの町を救い、今も命を賭け皆のため奔走している!」

 

「そして制裁はもう終わった!これ以降の個人的な報復は王都騎士団副団長 グレナルド・ベルコへの挑戦とみなす!…我々は残された貴重な仲間同士です。それだけは忘れないでいただきたい」

 

 あたりがしん、と静まり返る…永遠にも感じる数秒の静寂を破ったのは、姿の見えない1人の騎士団の声だった。

 

─ここからやり直そうぜ!エイジャー!

 

「…!」

 

─あんたがこの町を救った騎士だったのか!言わずに出て行くなんて水くさいぞ!

 

─こっぴどくやられたなぁ!おい!誰か包帯持ってきてやれ!

 

─エイジャー!また稽古つけてくれよ!

 

「みんな…俺は…」

 

─お前だけ責める気なんかねえよ!俺たちも同罪だ!

 

─お兄ちゃん泣いてるの?あ、お菓子あげる!おいしいよ!

 

─男がいつまで泣いてるんだい!シャキッとしなよ!

 

(王様…あなたが蒔いた優しさの種は確かに芽を出し、人々に根付いていますよ…あなたがいなくなった後も)

 

 目の前に広がる光景を眺めながら、グレナルドは亡き主に想いを馳せる。そして血と涙でボロボロになりルルやガラナに支えられているエイジャーに手を差し伸べると、おどけた様子でこう言った。

 

「そういえば…君からまだ聞いてない言葉がありますね?おかえりなさい、エイジャー君」

 

「エイジャー・グラム…ただいま戻りました」

 

 王都壊滅から約一ヶ月。ようやく伝えることができた帰還報告は大勢の温かい声援の中で行われた。

 

───────────────

 

「それでね!その時もエイジャー手をぎゅってされて嬉しそうにしてて…」

 

「いや誤解だって…そもそもルルの角度からは表情見えなかったでしょ…」

 

─それは酷いな!ルルちゃんが正しい!

 

─最低だぞエイジャー!またベルコさんの鉄拳制裁を受けた方がいいんじゃねえのか?

 

 夕方…あの時できなかった防衛記念も兼ねた宴が町をあげて開催されていた。

 当初は町を防衛したエイジャーらの功績を称えつつ励ますのが目的だったのだが…酒場の給仕が微笑みかけたのをきっかけにルルの愚痴が始まり、団員や町の人々を味方につけて店はエイジャーの女性関係を追及する法廷と化していた。

 

「みんな楽しそうですね〜!ルルちゃんの隣で縮こまってるエー君と、空気に耐えられずここにいるガラナ君以外は…」

 

「こういうノリは苦手なんだ…もう少し隠れさせて」

 

「痴話喧嘩の仲裁をするほど暇じゃありませんよ!まったく皆はしゃぎすぎです…それにしてもあの子の力は目を見張るものがありますね。治癒の秘術とは…」

 

 グレナルドは罪状を語るルルを見て感心する。酒で赤くなりつつも、弁解の余地を与えられず小さくなっているエイジャーの顔には殴られた傷がほとんど残っていない。

 後を引かないよう手加減したのもあるが、魔力の使い分けを少しずつ会得しているルルが指輪の治癒秘術にブーストをかけ、短時間で怪我を治癒してしまったのである。

 

「おじさんも許してないからね!」

 

 エイジャーをボコボコにした事に納得していないルルが釘を差しそっぽを向く。反抗期の娘を前にした父親のように居心地の悪そうなグレナルドを見て、ミーシャがからかうように笑った。

 

「あーあグレさん嫌われちゃいましたね。ぷぷぷ…それにしても愛されてますねぇエー君」

 

「ミーシャ、不敬罪に問うてもいいのですよ?…種族を超え行く先々で味方を増やす、彼の強みは健在のようですね」

 

 グレナルドは王都があった頃の事を思い出していた。どれだけ不利な状況であっても仲間や民間人より後ろに立たなかったエイジャーと、彼の背中に感化された若い騎士たち。

 

 己の命を軽く見ているが故の行動であることは咎めつつ、新王政下での騎士団が目指す理想の姿として評価もしていた。妻や部下を持つことで少しずつ欠点も改善し、そろそろ昇進を認めようか…そう思っていたところだったのに。

 

「それでどうするんですか?…エー君のこと」

 

 真剣な話をしてもよい空気になったのを見計らい、ミーシャはグレナルドへ耳打ちする。

 これまでは事態が事態なので許されてきたエイジャーだが、ついに討伐隊と合流してしまった。それは勝手な単独行動の終了を意味する…ルルを保護し、故郷を探すという目標も含めて。

 

 その質問にグレナルドは息を漏らした。王都襲撃の犯人と接点があり、未知の魔族との交戦経験もあるエイジャーは貴重な戦力、1人で遊ばせておくには惜しい。

 だが彼の報告…人前に滅多に姿を見せないアルフ族が王都の近くで倒れていたという、なんとも下手な嘘をついたことが気になっていた。

 

 極秘でもたらされた"とある人物"の目撃情報や、王都が滅ぶ前に調べていたことを踏まえると…このまま騎士団に再編することが正しいとも断言できない。

 

「…もう少し考えます。残された人員で最善を尽くすのが私の務めですから。それに─」

 

─おらエイジャー!ルルちゃんのことどう思ってんのか白状しろー!

 

─そうだそうだー!

 

 ヤジに振り返るとルルがエイジャーの頬をつまみ、野次馬たちが囃し立てている。みんなの酒もだいぶ回っており、どうやら裁判は佳境に突入しているようだ。

 

「分かった!後で2人の時に話すから今は…」

 

─お前のお姫様は今答えろって言ってんだぞ!逃げるなー!

 

─サーヤさんに続いてルルちゃんにも苦労かけさせる気か!この人誑しめ!

 

「ああもう分かったよ!その代わり話し終わるまでヤジはやめろ!いいな!?」

 

(エー君もだいぶ酔ってるなぁ…ヤケクソモードはレアだし目に焼き付けとかないと)

 

 エイジャーは深呼吸すると、ルルの肩を掴み真っ直ぐに見つめた。先ほどまでの勢いはどこへやら、その真剣な空気に野次馬もみな静まり返る。

 

「…俺はあの日以来夜が怖い。この目に焼き付いた光景がまた繰り返されて…皆がいなくなるんじゃないかと怖くなる」

 

 その言葉に騎士団は目を伏せた。襲撃以降、団員の中には夜を過度に恐れるようになった者もいる。彼らにしてみれば、あの場に居合わせたエイジャーの心境は察するに余りある。

 

「夜はいつも傍にいて、朝は隣で幸せそうに眠ってる…そんな君を見て今日は過ちを繰り返さなかった、失わずに済んだって安心するんだ」

 

「君がいなかったらとっくに壊れてたと思う。なのに俺は何度も情けないとこ見せて、戦いにも巻き込んで…守るどころか苦労をかけさせてばかりだ」

 

「君はあの夜に一度死んだ俺を蘇らせくれた特別な人なんだ。だから今度こそ失いたくない。他の誰でもなく、俺が君の失くしたものを取り戻して…幸せになってほしいと思ってる」

 

 ルルは最後まで聞き届けるとエイジャーの胸元に頭突きをお見舞いし、何度も手で叩く。その声色には怒りが滲み出ていた。

 

「…エイジャーのバカ、分からず屋。やっぱり"皆"とか"私のために"ばっかり…なんでカッコつけるの?何でも1人でやろうとしないでって言ってるじゃん」

 

「…これでも周りを頼ろうと努力はしてる。前に泣かせてしまったことは何度も…」

 

「うるさい!私が特別ならもっと大事にしたい、甘えてほしいってワガママを聞いてよ。もっと頼ってほしいのに子供扱いして限界まで我慢するんだもん…寂しいよ」

 

 ルルの声は怒りから悲しみに変わっていき、強く擦り付けていた頭を胸に埋めている。

 誰もがこのまま和解して終わると思っていたはずがケンカになり、さらに片方は泣く寸前…そんな触れられない空気を破り2人の前に立ったのはミーシャだった。

 

「あのー、横槍無しルール破ってごめんなさい。ちょっといいかな?エー君が遠慮してる1番の理由ってたぶん…サーヤだよね」

 

 エイジャーは頷く。すでにだいぶ許してしまっているし彼女の気持ちも嬉しいが…己が不甲斐ないばかりに妻を喪った身、いかなる理由、相手であれ自分から踏み込むことは許されないと考えていた。

 

「サーヤがなんて告白したか覚えてる?自分のせいでいつまでも凹むエー君より、ワガママでも前を向いてくれた方が喜ぶんじゃないかなって。…あの場にいた親友からのアドバイス」

 

「ただし!頼るのはあくまで相棒として。夫としていつまでもサーヤを忘れないこと!不純なのも禁止!あとすべてが終わったらちゃんと謝る!…で、どうかな?」

 

 忘れるわけがない。何度も親しい人を亡くしもう二度と繰り返さぬようがむしゃらに、己の命も厭わず剣を振るっていた青年時代。

 そんな時に彼女からかけられた言葉は、いつまでも心に残っている。

 

『エイジャーはいっつも他人の事ばっかり!そんなんじゃお母さんも心配するよ!だから私が家族のいる幸せを教えてあげる!大丈夫、いなくなったりしないよ。私が強いのは知ってるでしょ?』

 

─なんとも強引で、愛に満ちた言葉に救われた恩を忘れることなどできるはずもない。だからこそ他の女性に現を抜かすなどという真似はしたくなかった。

 だがミーシャの言う事も一理ある…今の自分は幸せを願ってくれた彼女の想いに応えられているだろうか。安心させているだろうか…

 

「サーヤの言葉はずっと…俺の中にある。幸せを求めるべきだってミーシャの提案も理屈では分かってる。…でもその提案はルルを都合よく利用してるだけに…うおっ!?」

 

「この分からず屋は私が幸せにする!後でエイジャーといっぱいごめんなさいしに行くから今は任せて!…ください!」

 

 ルルは言葉を最後まで聞かずに抱き締め、勢いに体勢を崩されたエイジャーは床に押し倒される形になる。

 そんなのお構いなしにしがみつき、周囲に見せつけ、天にいるサーヤへ宣言した。その熱烈な愛情表現に進言したミーシャさえも頬を染めている。

 

「どうしてそこまで…俺の手を繋いでくれた人はいつもいなくなる。だから…」

 

「そんなの私だって分かんないよ。でもエイジャーが無理をしてるのを見ると…そのまま遠くへ行っちゃいそうで怖くなる」

 

 ルルの声が震え、顔を擦り付けられた部分が濡れていく。

 

「私には知り合いなんていない。私のことを1番知ってるエイジャーまでいなくなったら1人ぼっちなんだよ?だからどこにも行かないで…今回はちゃんと約束するまで絶対に離してあげないから」

 

 その言葉でエイジャーは今までの言動を少しだけ理解できた気がした。精神が幼くなり正しく出力できないだけで記憶を失い、知り合いがいないルルは孤独を極度に恐れている…他の女性に嫉妬するのも、取られてどこかに行ってしまうと思っているのではないかと。

 

 彼女から見た自分は親か、相棒か、それ以外の何かか…きっと本人の中でも定まっていないのだろう。ただ1つ言えることは彼女が繋がりを実感できる瞬間は"頼られること"…それを自分に求めていること。

 

(俺もルルも色んなことがあって、歪になって…素直に誰かと繋がれなくなった似た者同士なのかもしれない。それに…)

 

 エイジャーはそっと抱き返し、しがみつくルルの頭を撫でてやる。密着した身体にお互いの心音が伝わるのを感じながら、極めて穏やかな声で語りかける。

 

「…1人になる辛さ、理解してたはずなのにな…これからは自分の幸せもちゃんと探す、その隣には君にいてほしい。でもサーヤは怒ると怖いんだ、もし許してもらえなかったら…その時は一緒に懺悔しに行ってくれる?」

 

「うん。…もう浮気もしない?」

 

「…そのことなんだけどルル、あれは浮気じゃなくて相手からの一方的なスキンシッ…」

 

「し な い っ て 言 え !」

  

 さっきまでの涙はどこへやら、ルルはマウントポジションを取ったまま頰をつねり倒す。再び始まったケンカに大人しくしていた野次馬も再燃し始める。

 

─おっ第2ラウンド開始か?俺はルルちゃんにつくぜ!

 

─オレもだ!そんな浮気者やっちまえルルちゃん!

 

「違っ本当に浮気とかじゃなくて…!手を握られても俺は靡かないって話を…痛い!聞いて!」

 

「まだ言うか〜っ!」

 

 2人のケンカと囃し立てる野次馬たちの騒ぎをガラナとグレナルドは呆れたように、ミーシャはどこか楽しそうに眺めていた。

 

「そこはイエスって答えるべき…僕でも分かるよエイジャー」

 

「あーあまた始まっちゃった…どうしますグレさん?止めますか?」

 

「好きにさせてやりなさい…暴れて壊さないように食器を回収してしまいましょう。ミーシャ、ガラナ君。手伝えますか?」

 

「了解でーす♪」

 

(おっきい貸し1つだよ、エー君。…勝手に焚き付けたわたしもサーヤに謝りに行かないとかぁ)

 

 ミーシャは喧騒の中心にいる2人を眺めて微笑む。浮気を詰められるエイジャーの顔には襲撃以前のような生気が戻ってきていた。その宴は夜中まで続き、町を賑わせ続けていたという…

 

 

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