Regain Journey   作:G-ラッファ

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前回までのあらすじ

 アラクネ盗賊団の尻尾を掴むためにやってきたロックリフ鉱山にて、見習い時代にエイジャーが面倒を見ていた2人のギャル アゲハとランヅキに再会する。

 外と坑道の二手に分かれて調査を始める一行だったが、それぞれの分担で不穏な動きがあり…


42話 2つの秘策

 

─お前たち組の者じゃないな。…痛い目を見る前に出ていってもらおうか!

 

 坑道内部へ潜入したエイジャー、ルル、アゲハの3人は光源であるランタンを破壊され、視界の利かない暗闇の中で見えない何かの襲撃を受けていた。

 

「グラセン!これが噂の喋る魔族ってヤツ!?」

 

「今のところ友好的じゃないのは確かだ…アゲハ!絶対にルルから離れるなよ!」

 

 現在の状況はアゲハがルルを抱き寄せて身を屈めつつ、踵同士をエイジャーと触れ合わせることでお互いの位置をなんとか把握している。

 3人がいるのは坑道のかなり奥、外からの光は期待できない。下手に動けばお互いの位置すら分からなくなってしまうだろう。

 

(相手は俺たちが見えているのか?それとも他の何かで感知を…?)

 

 魔族の中には暗闇でも活動できる者が何種類かいる。以前エイジャーが戦った、フクロウのような姿のバンプゥルもその1つだ。

 だがほとんどの魔族は意思疎通ができないし、わざわざ光源のみを破壊するなどといった回りくどい真似はできないはずである。つまり魔族ではないか、そうだとしても比較的攻撃性が低い個体ということになる。

 

 地の利は相手側で状況は圧倒的に不利、意思疎通ができるならばやりようはあるはずである…エイジャーは剣を鞘に収めて戦闘の意思がないことをアピールしながら、暗闇へと叫んだ。

 

「勝手に入って悪かった!ここで働く作業員の出入りを見たことがないと通報があり調査に来た者だ!君たち何か知らないか!」

 

 するとまた暗闇の中で何かが這う音…それも複数が聞こえた後、囁きよりもさらにボリュームを落として話し合う声が聞こえてきた。

 

 これまで出会ってきた特殊な魔族は基本的に単一の存在であったことから、エイジャーはおそらく魔族ではない何かであるという推測を立てていると、最初に警告してきたリーダー格と思われる男の声が返ってきた。

 

─その落ち着きよう…ただの調査員にしては場馴れしすぎている。お前は何者だ!本当の目的を言え!

 

 どうやら声の主も頭が回るようで、こちらの態度から証言を疑っているようである。

 しかし同時にこれまでの魔族には希薄だった"警戒心"がある事を把握できたのは大きな収穫である。エイジャーはもう少しだけ正解に近い身分を晒そうと再び叫び返す。

 

「調査員なのは本当だ!魔族や人に仇なす者の専門家だが…できれば戦いたくない!ここで採掘している者たちと行方を教えてくれないか!」

 

─なるほど…では我らの敵、ここで見逃してはならぬ存在ということか!

 

 交渉決裂─複数の足音は敵対と同時に激しくなり、こちらに向かってくる音がする!

 

 エイジャーは渋々剣を抜き、暗闇に目を凝らしてみるもののやはり何も見えない…と苦戦していると、突然横から頬を殴りつけられた。

 人肌とは明らかに違う感触…その正体を考察する暇もなく、腹や足…少しずつ位置を変えながら次々と打撃が加えられていく。

 

「エイジャー!」

 

「大丈夫!ルルは絶対にそこから動かないで!…ぐっ!」

 

 何発か一方的に殴られた後、タイミングを見計らって伸ばしたエイジャーの手は空を掴んだ。反撃に出ると同時に複数の足音も遠ざかっていくのが聞こえる…どうやら武器を持たずヒット&アウェイで攻めてきているようだ。

 

「アゲハ、何かされたら方向を叫べ!俺がそこに攻撃する!それとこれを!ナイフの扱いは覚えてるか!?」

 

「こんな場所での使い方は習ってないけどね!」

 

 暗闇の中ではナイフ一本渡すのにも手探りである。アゲハが受け取った事を確認すると、耳をすましながら先ほど殴られた時の事を思い出していた。

 

(地上を歩く時は二足、壁を這う時は四足歩行になる…だから大きな武器は持っていないんだ。殴られた感触はナックルガードをつけているか、硬い皮膚を持っているような気がする…)

 

 不可解な点はまだあった。同じ無防備でありながら、ルルやアゲハに手を出す様子がないのである。

 売り飛ばすために傷をつけていない、とも解釈できるが、それならば闇に紛れてさっさと連れ去ってしまえばいい。盗賊ならそうするだろう。 

 

 盗賊といえば…以前テンガロンで出会ったネンバという盗賊が、吸着するグローブを使って建物を這い回っていたことを思い出した。

 状況は似ているが、もし彼らが盗賊ならば交渉などせずに殺しに来ているはずである。この状況、やはり何かが引っかかる…

 

「ぐっ…!」

 

 …などと考えている間にも見えない殴打は続いている。1人が頭へ放った一撃がクリーンヒットしたエイジャーは思わず膝をつき、吐血した。

 

「ちょ、グラセン大丈夫!?」

 

─詮索などするからこうなるんだ。行くぞ─

 

「…があぁぁっ!!!?」

 

 トドメを刺そうと近づいてきた1人が突然叫び出し、同時にバチバチと弾けるような音があたりに響き渡った。

 電磁網…エイジャーは膝をつき、相手が勝利を確信したことで生まれる一瞬の隙を利用して、電気の網を薄く放射、通った者を感電させる罠を貼っていたのだ。

 

 これはもちろん反撃のためでもあるが、本当の目的は他にあった。それは電撃が発する光で敵の正体を確かめること…わずかな光で確実に確かめられるよう、直接電撃を浴びせられるこの魔法を使ったのである。

 

 一瞬浮かび上がった姿は人間とは程遠く、頭部はまるで蛇のようだった…壁を這い回る性質、そして容姿。エイジャーは闇に潜む者の正体を確信し、アゲハに叫ぶ。

 

「彼らはレプター族だ!たぶん皮膚で熱や振動を感知してきてる!」

 

「ってことは…ウチの出番じゃん?ちょっと危ないからルルちゃんはグラセンにくっついてて〜!」

 

─ドルルルルルルン!!!! 

 

 ようやく来た出番に張り切ったアゲハが持っていた筒のレバーを勢いよく引くと、あたりに攻撃的な駆動音が鳴り響く!

 彼女がイソーから持ち出した試作品とはランヅキのチェーンソーと同じ技術者から生まれた、魔力で展開しながら動くドリルであった。

 

「うりゃりゃ〜!!!」

 

 足元に突き立てられたドリルは硬い岩盤を削り取りながら、耐え難い轟音を坑道内に響き渡らせる。

 

「すごい音と破片だ…!ルル!俺の後ろに!」

 

 人間ですら耳を押さえる手が力みっぱなしになるほどの音量である。感覚を研ぎ澄ませている彼らが無事なはずもなく、次々と天井から重い物が落ちてくるわずかな衝撃が続く。

 

「あいつら落っことしたけどどうすんのグラセン!ウチら見えないから反撃できないよ?」

 

「広範囲にまとめて攻撃すればいいだけだ!2人とも!ちょっと冷えるぞ!」

 

 レプター族は優れたセンサーを持つ代わりに、極端な環境の変化に対して特に弱い性質を持つ…エイジャーはかつて座学で習ったことを思い出しながら、白い光を発している指輪を前方へと差し出した。

 

(細かい制御はまだ難しいけど…死なない程度の冷気を放つくらいなら!カッチン!COOLに決めるから俺に力を!)

 

「行け!『フラウズン・パーロスト』!!!」

 

 エイジャーの叫びに呼応した指輪が凄まじい冷気を放ち、周囲の温度をみるみる下げていく…

 冷気はたまらず抱きついてくる2人もお構いなしに吐き出し続け…本人たちには暗くて見えないものの、一撃が終わった頃には壁や地面には霜が降りていた。

 

「うーさむ…作業着ちゃんと着とけばよかった…いつの間にこんな事できるようになったんだねグラセン」

 

「原理の分からない借り物の力だけどね。これで向こうも動けないはず…とりあえず松明を作ろう。見えない相手とは話もできない」

 

 こうして闇の刺客を退けた3人はバッグを開き、手探りながらも明かりとして使えそうなものを探し合うのだった…

 

───────────────

 

─ギャギャギャギャギャギャ!!!!

 

(クソッ…出し入れできる回転鋸だぁ!?どこでこんなもんを!それよりも…)

 

 一方こちらは鉱山の外、ランヅキは新作のチェーンソーを自在に操りながらアラクネ幹部であるヒボゥと渡り合っていた。

 互いの得物がぶつかり合う度に不快な金属音と無数の火花を撒き散らし、対応を間違えた際に訪れる死がとても間近に感じられている。

 

「このシャベルかった…マジボスが言ってたやつかな〜」

 

 そのような恐ろしい場面の中でもランヅキは一切の緊張感を見せず、纏わりつく羽虫を振り払うかのような態度で責め立てていく。

 武器としても使えるよう、通常よりも頑丈な金属で作られたシャベルが半分ほど食い千切られている状況にヒボゥは焦りを感じていた。これが破壊された時、目の前にいる小娘は躊躇なく己の腹を突いてくるだろう…と。

 

「あいつらまさか横流ししてんじゃねえだろうな…?おい!『この女を殺せ』!早くしろ!」

 

 チェーンソーは殺傷力が高すぎる得物である。薬漬けにした民間人が押し寄せればさすがに躊躇するだろう…そんな考えのもとに指示を飛ばすも誰1人としてやってこない。

 わずかな隙で後ろを振り向くと先ほどの生意気なガキ…アルジードが鎖を操りなから、こちらへ来るはずの大群を器用に次々と無力化していた。

 

「ざんねーんアンタはあーしとタイマンなの。アルちんあとでチューしてあげるね〜!」

 

「いらねぇよ!!!…にしてもクズじゃない相手ってのはやりづれぇな」

 

 ランヅキからの熱いウィンクを突っぱねたアルジードはある者の足を鎖で叩きつけ、またある者を前から倒れ込むように突き飛ばし、ゾンビのように押し寄せてくる民間人たちを処理していく。

 

 体を鍛えていない素人、それも判断力を奪われ防御や受け身を取れない者たちを沈黙させるのは殺すよりも遥かに困難であるが、エイジャーから習った体術や損傷しても命に関わりにくい箇所を的確に突くことでそれを実現していた。

 これは持ち前の器用さもさることながら、直近の戦いで魔族の大群と戦った経験が生きているのも大きいだろう。

 

(今までのオレだったら何人か殺っちまうところだった…甘い考えも使いようだな)

 

─あ゛ぁう゛ぅぅ…

 

「っと囲まれちまった!アンカーセット!『地旋脚』!」

 

 アルジードは地面に打ち込んだ鈎つきの鎖を軸に円を描きながら、スライディングで大群の足元を掬っていく。顔面の強打は後頭部の強打に比べると死ににくい…そんな優しいのか雑なのか分からない教えを思い出しながら。

 

─こっちはもう少しかかりそうだ!無理すんなよ!

 

「はいは〜い!あーマジでカワイイ…♪今からでもグラセンの部下になろうかな〜」

 

(なんなんだこのイカれた女は!それにコイツもあと何発も受けられそうにねぇ…"アレ"を使うしかねえのか…!)

 

─ガキンッ!

 

 なんとも緊張感のない言葉を口にしながらもランヅキの熾烈な攻撃が緩むことは一切なく、鉄の歯で肉を食い千切らんと様々な軌道から振り下ろし続けていく。

 攻撃を受ける度に感じる衝撃はどんどん強くなっていき…いよいよシャベルの限界が訪れていたのを察知したランヅキは、腕力に任せた大振りな一撃でついに破断することに成功した。

 

「やっと壊れた〜腕いて〜。で、オッサンまだやるの?あーしはどっちでもいいけ…っ!?」

 

 次の瞬間。何か大きなモノがぶつかる音とともに、ランヅキの体は言い終えるよりも早く後ろへ吹き飛ばされた。

 軽装だった彼女は樹木に強く叩きつけられると初めて苦悶の表情を見せ、吐血しながら力なく横たわる…

 

「チィっやりすぎたか…ハァ…ハラ潰しちまったら価値が下がるってのに…フゥ…」

 

 武器を破壊したランヅキにほんの少しの気の緩みがあったことは否めないが、ただの反撃を受けるほど彼女も間抜けではない。ヒトが攻撃に用いる手や足とは違う部位からの、不可視の攻撃に被弾したのである。

 

 しかし獲物を仕留めたヒボゥの顔に笑みはなく、大量の脂汗を垂れ流しながら苦悶の表情で胸を押さえていた。

 

「テメェ…!やりやがったな…!」

 

「ハァ…残念だったな…お前らが切り札と勘違いしていたシャベルは…ハァ…むしろリミッターだったんだよ…!」

 

 アルジードに向き直ったヒボゥは上着を脱ぎ捨て、彼女を壊した"新作"を見せつけながら不気味な笑みを浮かべてみせた。その体を見た途端、仲間をやられた怒りは動揺へと塗り替えられていく…

 

「オレ様にこいつを使わせたんだ!今さら命乞いなんざするんじゃねえぞ!!!」

 

─────────────

 

「すみません大きな炎が作れなくて…動けそうですか?」

 

「仕掛けたのは我々だ、文句を言える立場ではあるまい…」

 

 彼らの無力化に成功した3人はトロッコレールの枕木を間引いて焚き火を作り、カッチンの技により急速に冷却された刺客…レプター族たちの体を温めていた。

 炎に照らされ露わになった体表の鱗はみな逆立っており、より攻撃的な印象を受ける。

 

 しかしおとなしく火に当たる彼らの背中からすでに敵意は消え失せており、先ほどまでの戦いが嘘のようにみな思い思いにくつろいでいる。

 

「皆さんの体が温まったら外へ出ましょう。外の2人が心配だ」

 

「うむ…しかし我らを拘束しなくていいのか?体温が上がり、元気になればお前たちをまた襲うかもしれないのだぞ」

 

 黄土色の鱗を持つレプター族の男…ヒバァが口を開く。視線の先には先ほど何度も殴りつけ、傷だらけのエイジャーの姿があった。

 

 彼の言う通り無力化した者たちは誰一人として拘束されておらず、思い思いに体を動かして温めている…先ほどまで敵対していた相手への甘すぎる対応に警戒するヒバァに対し、ルルに密着されながら薪をくべるエイジャーはいつもの調子で返事をした。

 

「そうしたらまたアレで爆音を響かせて、こいつで氷漬けにするので大丈夫です。次はもっと強い冷気を浴びせます…と言えば抵抗する気も失せるでしょう?」

 

 そう言って白い光を放つ指輪と回転するドリルを見せつける2人に対し、男は観念したように両手を挙げる仕草を取ってみせると、エイジャーも肩をすくめて笑ってみせた。

 

「それに皆さんからは本気の殺意を感じませんでした。後ろの2人には手を出さなかったことも含め…何かやむを得ない事情があるんじゃないかと思って」

 

「視界を奪い、1番強そうな者を叩きのめせば言うことを聞くと思ってな。ご推察の通り我らは皆訳アリだ…お前になら話していいかもしれないな」

 

 見た目で警戒するどころか危害を加えても自分たちをある程度信用してくれるエイジャーに対し、短い付き合いの中で気に入りつつあったヒバァは己の身の上話を始めた。

 

 彼らはとある地域で暮らしていたが魔族の襲撃に遭い、故郷を追われて新たな住処を探すことになった。

 生まれつきの威圧的な姿もあり人里からは拒否され続け、放浪の途中でいくつかのグループとも離れてしまい…アラクネ盗賊団の元へ流れ着き、今は坑道の用心棒としてこき使われているのだという。

 

 彼らは闇夜でも問題なく活動ができるため、他の鉱山作業員がいなくなった頃に外へ出て食料を調達する生活を続けていたから誰も姿を見たことがないのだった。

 

「まったく不便な生活だよ。雨風を凌げるし、滅多に荒事をしなくていい分前の配置よりは楽だけどな」

 

 彼の話す身の上話に既視感を覚えていると、いつの間にか離れていたルルが自嘲気味に笑うヒバァの顔を覗き込む。そして何かに気付いたように指を差し、叫び声が洞窟内に響き渡った。

 

「この人似てる!ほら!大きい倉庫にいたツルツルのおじさん…えぇと…」

 

「もしかしてガァラさんのこと?確かに鱗の色は同じだけど、逆立ってるしそれだけじゃ…」

 

「待て!今ガァラと言わなかったか!?あいつを…弟を知っているのか!?」

 

 ガァラ…その名を聞いたヒバァは立ち上がり、ものすごい速さでエイジャーへと詰め寄った。興奮しているのか瞳孔はキュッと細くなり、シャーッという蛇特有の威嚇音が漏れ出ている。

 

 その気になれば頭を噛み砕ける距離─尋常ではない事態にアゲハの体は無意識に動き、気がつけばヒバァの頭にドリルを突きつけていた。穏やかな時間が流れていた坑道内に再び緊張が走る…

 

「ヘビっちとりあえず落ち着けし。急に動かれるとウチらもビックリするじゃん」

 

「…すまない、まさかその名を聞くとは思わず取り乱してしまった。お前たちガァラを知っているのか?今どこに?元気にしているのか?」

 

「え、えぇ。とある商人の下で倉庫番をしています。気まぐれな主人に振り回されていますが…充実している様子でしたよ」

 

 引き気味に報告するエイジャーの話を聞いたヒバァはようやく落ち着き、「良かった…」と呟いてへたりこんだ。

 

 敵意がないと分かってるとはいえ、迫られるとやはり威圧感がある…彼らを拒絶した人々を正しかったとは言わないが、無理もない事であろうとエイジャーは複雑な思いを抱く。

 同時に優秀なら誰でも良し で穏便にまとめ上げているガァラの雇い主…グルーノイの手腕に改めて感心するばかりだった。

 

「頼む、あいつに会わせて…いや、声だけでも聞かせてくれないか。我らはお互いが生きていた事を知らないんだ。頼む…」

 

「でもさグラセン、この人が本当に兄貴って証明できなくない?いちおー盗賊団の構成員だし…テキトーに話を合わせることだって出来なくもないっしょ」

 

 これから取るであろうエイジャーの甘い対応を予知したのか、アゲハはドリルを持ったままで釘を刺した。

 咄嗟の反応はどう見ても本物のそれだが、彼女の言う通り演技という可能性もゼロではない…それにガァラの身の上話では生き別れの兄弟は出てこなかったはずである。

 

 普段はチャラチャラしている彼女だが敵対していた者への警戒心は忘れない…つかえている隊長の教育方針を忠実に守っているようで、こんな状況にも関わらずエイジャーは成長を嬉しく思っていた。

 

「それは…そうだな。名前を知っているだけではなんの証明にもならない。我の記憶をお前たちに見せることができればいいのだが…」

 

 記憶を見せる…密かに練習していた"アレ"ならば近いことはできるかもしれない。

 外では戦闘が始まっている可能性もあり、あまり問答で時間をかけたくもない…エイジャーは何かを決心すると、俯いているヒバァに手を差し伸べた。

 

「証明できる方法があるかもしれません。まだ不完全でかなり痛いですが…俺を信じてくれますか」

 

 

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