クレイヴモスに寄生された人々を治療する中で、エイジャーは盲目の少女リタと出会う。
以心電心の新たな力"リアルタイムの視覚共有"とアリッサの活躍で生きる希望を見出したリタと再会を誓う中、彼女の父親から王政下にない地域での寄生情報を聞く。
ガラの悪いレプター族 ナダンを加えた3人は件の村へ馬車を走らせるが…?
「具現化した魔力の調整は上手くいかない。いっそ座標との間に道を作って…さすがに現実的じゃないか。うぅんどうすれば…」
アリッサは大きなため息を吐いて天を仰ぐ。小気味よく揺れる荷台の中で幾度となく繰り返されているそれを、同乗している男が不思議そうに眺めていた。
(なァ旦那、姐さんはさっきから何をブツブツ言ってるんだ?)
(従属呪文の理論を組み立ててるらしいよ)
説明を聞いたナダンは肩をすくめる。魔力の扱いに疎いレプター族にとって従属呪文は理解の範疇を大きく超えており、興味すらわかない"他人事"の領域だった。
副団長グレナルドが彼女に課した役割…それは"大跳躍"によってエイジャーを各地へ運び、寄生体の除去作業を補助すること。
だが複雑な技術であるそれをアリッサはモノにできておらず、これまでの"大跳躍"はすべて不時着。その負担はすべてエイジャーの肉体が肩代わりしている。
エイジャーも役割分担、具体的には減速と着地を手伝えないか模索はしているものの、魔力を触れる形に変換することは出来ずにいた。曰く、出せる命令には個人差があり、エイジャーは"傾向が違う"らしいが…
(故郷のトラウマもある、これ以上の失敗は彼女の心にも良くないけど…何か打開策はないものか)
「皆さんそろそろ着きますよ。あれがフネラルカ村の目印です」
案内役のノシューが指差した先には巨大な塔がそびえ立っていた。岩でできたそれは孤立した村に存在するにはあまりにも大きく、精巧である。
その圧倒的な存在感に目を奪われていると、役目を終えた馬の嘶きによってエイジャーは我に返る。村の入口には人々が出迎えに来ており、先頭には腰の曲がった老人が立っていた。
「この方は村長のヤードゥさん。彼らがお話した者たちです」
「フネラルカ村へよくぞいらっしゃった。患者は一箇所に集めておりますのでご案内いたしましょう」
(ここはあたしたちを邪険にしないみたいですね)
(オレを見ても誰もビビってないぜ!やりやすくて助かるゥ!)
2人が言う通り村人たちは騎士団であるエイジャーや、外見で忌避されがちなナダンに否定的な反応を示さない。やりやすい事には変わりないものの、しばらく触れていなかった寛容な心にむず痒さを覚える。
カラカラと妙な音を立てながら先導する村長の後をついて行った先には塔と同じく石で出来た建物…この辺りで最も広く、集会所と思われるそこにはクレイヴモスの鱗粉を吸ってしまった人々が横たわっていた。
「今日は村にとって重要な宴の日、彼らも憂いなく参加したいはず…どうかお願いいたします」
「お任せくださいすぐに取りかかります。ナダンさんは位置の特定、アリッサは紙への記録を頼む」
「「了解!」」
3人は早速寄生体の除去に取りかかる。村長のヤードゥは手頃な椅子に腰掛けながら、目の前で繰り広げられる除去作業を見守るのであった…
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「…内臓に目立った損傷ナシ、完璧だ。旦那の手際にはホレボレするぜ」
ナダンは患者の腹部に拳を当てながらニヤリと笑う。ぶっ通しで行われた除去作業が終わる頃には日が傾いており、力を使いすぎた2人の顔には疲労の色が強く滲み出ていた。
「この早さで終わったのはナダンさんのおかげです。アリッサも1人でよく書類をまとめてくれた。ありがとう」
「これだけの人数をたった半日で、それも傷つけずに治してしまうとは…村を代表してお礼を申し上げます」
ヤードゥは深々と頭を下げる。老齢にも関わらず半日にわたる作業をひたすら見守っていた彼も少し疲れた様子であり、エイジャーは座り直すよう促した。
「元はと言えば我々の不始末ですから…これで彼らも宴に参加できそうですね」
「そういえば宴って何をするの?あたし達が乗ってきた荷台には新しい服ばかり、お祭りって感じのものは無かったような…」
「あの服も宴に必要なものですよ。…さて、我々も合流しましょうか」
そう言ってヤードゥは集会所の扉を開ける。3人後に続いて外に出ると、村人たちも続々と同じ方角を目指していた。
「ここへ来る途中に塔が見えたでしょう。宴はあれを囲んで行われます。村との境界線に立ててあるのでちと遠いですがの。ほほほ…」
自嘲気味に笑う小さな背中を追いながら、エイジャーはいくつかの違和感を覚えていた。
集落のシンボルは土地の中心か身近な場所に建てられる事が多い。必ず、とは言えずともこれまで訪れた集落かまほとんどそうだったことからも一般論と捉えてよいだろう。
だがこの村の塔は民家が集うエリアのずっと先にあるようだ。何よりも気になるのが"境界線"という言葉…シンボルに対する扱いとしては些か妙な表現である。
違和感の正体を考察する間にもカラカラという音がやかましく鳴り響いている。ヤードゥから発せられている音の正体がちらりと顔を覗かせるのとほぼ同時に、隣から息の詰まる音がした。
「アリッサどうかした?…アリッサ?」
「だ、ダーリンあれ…ひ、人が…!」
「おいおいマジか…」
何かに怯えるアリッサと絶句するナダン。反応は違えど2人が見ているものは同じ─彼らの視線を辿った先にあるものを見て、エイジャーも衝撃で言葉を失う。
そして音の正体─紐で繋いだ何かの骨をローブの下に身に着けているヤードゥが振り返ると、持っている杖を使って整列したミイラ群を指さした。
「ここに並ぶのは最後の旅立ちを待つ者たち…今宵の宴"送魂祭"は彼らを天に還すためのものなのです」
フネラルカ村には遺体をミイラにした上で丁重に保管する風習があった。これは「人の死は肉体の停止に非ず。魂が運命を受け入れ、天に還ることで成就される」という言い伝えを守り続けているからである。
村は塔を挟んで生者が住む"陽陣"と遺体を保管する"陰陣"に分けられており、遺族や世話役を除いて両者が交わることはほとんどない。これも己の死を理解し、向き合うために「生者に近付きすぎるのは良くない」と代々伝えられていることだった。
「ここでは非業の死によって家族と引き裂かれた者の遺体も受け入れ、心の整理がつくまで世話をしております。時間を必要とするのが死者だけとは限りませぬ…」
"送魂祭"は数年かけて運命を受け入れた魂を改めて弔うための最後の宴であり、積荷の服はまっさらな気持ちで旅立ってもらうための餞別に用意されたものであるとヤードゥは語る。
だが外から受け入れた者の遺族は宴の前に別れを済ませ、立ち会うことは許されていないらしい。これは土壇場になってお互いの覚悟が揺らがないためのしきたりだが、心苦しさも感じているという。
死者たちは元の人相が分かるほど保存状態がよく、いかに丁重に扱われているかは一目瞭然である。ヤードゥの語りも含めてこの村の"死"との向き合い方を知った一行は、多少なりとも身構えてしまった己を恥じていた。
「村を救った恩人としてお招きしたつもりだったのですが…驚かせてしまい申し訳ない。ノシュー殿が宴の詳細を知らずに説明していることを念頭に置くべきでした」
ヤードゥは再び頭を下げる。視線の先には死者の群れにショックを受け脱力し、エイジャーにもたれかかるアリッサの姿があった。
「こちらこそ申し訳ありません。村の教えも知らずに失礼な反応を…穏やかな旅立ちをお手伝いする、本当に素晴らしい考えだと思います」
「た…大変です村長!陰陣に…陰陣に屍蝋犬たちが現れました!」
1人の男が塔の向こう側、死者が眠るという陰陣の方角から血相を変えて逃げてきた。報告を聞いた村人はざわつき、村長も恨めしげに喉を鳴らす。
話の流れから望ましいものではないと理解したエイジャーが詳細を聞くと、その特徴はミイラのような魔族"ライミー"と一致していた。
「なんてことじゃ…我々が供養を誤ったばかりに祟りが!」
「落ち着いてください村長。そのライ…屍蝋犬は各地に現れる魔族で戦い方も分かります。ここは任せて皆さんと避難を!」
「旦那ァ!オレはどうすればいい?」
「奴らは火や水に弱い!動ける人と協力して水と松明の用意、近付いてきたら反撃を!」
ナダンはサムズアップを返すとアリッサを担いで集会所へと駆けていく。死にかけた獣のような唸り声に振り返ると、ライミーたちがすぐそこまで迫ってきていた。
エイジャーは遺体たちの前に立つとライミーの大群に狙いを定める。そうして多くの個体が射程に収まるようギリギリまで引き付けると、柄を強く握り込みつつ振りかぶった。
「みんなの旅立ちの邪魔はさせない!『特式・雷斬波』!!!」
纏わせた雷による飛ぶ斬撃はライミーの群れを上下に分断し、広範囲を一気に薙ぎ払った!だが斬り捨てた個体がすべてではなかったようで、陰陣の奥からやってくる群れが見える。
以心電心の連続使用により消耗し、一気にカタをつもりだったエイジャーの頬を冷や汗がつたっていた。
「数が多いな…ここで迎撃してもジリ貧だ。村へ散る前に元を叩くしかない、行くぞ!」
─ア゛オ゛ォ゛ン゛ッ!
ライミーの表皮は非常に硬く、鍛錬を積んだ戦士でも刃を通すのは至難の業である。そこでエイジャーは攻撃の瞬間のみ雷を纏わせ一気に引き裂く"火喰鳥裂傷"を使うことで、残り少ない魔力を節約することにした。
(ここではルルやアルを頼れない。もってくれよ俺の魔力…!)
「うぅん…あれ、あたしは何を…?」
「あっ起きた。村長!客人が目を覚ましました!」
石の天井、慌ただしい声、虚脱感。頭がはっきりしないアリッサは重い身体を起こすと周囲を見渡す。村人からここが集会所であること、連れのナダンが運んできてくれたことを聞いていると、火が灯っていない松明を持ったヤードゥがやってきた。
「あっ村長…そういえばあたし、ショックで気が遠くなって…ごめんなさい」
「こちらの不手際でもありますゆえ…それよりも今は魔族のことです。エイジャー殿が対処に当たってからしばらく、こちらは静かですがどうなっているのか…」
「かなり消耗してるのにたった1人で…!?ダーリンが危ない!」
「お待ちくだされ!件の魔族は非常に硬いと仰っていました。体調の優れないあなたでは…」
「あたしは炎の魔法が使えるから大丈夫!それに寝ていた分スッキリしてるの。教えて村長、ダーリンはどこへ向かったのかを」
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村人たちの護衛をナダンに任せたアリッサは陰陣を目指し走っていた。それはいち早く駆け付けるためだけではなく、日が落ちてより死の気配が濃くなっている村の中で立ち止まるのを体が恐れているからでもある。
夥しい数のライミーの死体はすでに霧散を始めており、それは塔の向こうへと続いている。月明かりを頼りに遺体を避けながら、アリッサの鼓動は加速を続けていた。
(乾いた犬…?初めて見る魔族。ここで戦ったのはかなり前みたい。ダーリンの魔力も底を尽きているはず、早く見つけないと)
「…いた!」
歩みを進めるごとに真新しくなっていくライミーの死体を追った先にエイジャーはいた。刀身に雷を纏わせるのは首を断つほんの一瞬のみにとどめており、予想通り限界が近付いてきている様子。
幸いライミーたちはこちらに気付いていない…不意打ちで一掃するチャンスに燃えるアリッサの髪は赤みを帯び始めていた。
「邪魔な魔族は吹き飛びなさい!『ピアノ・プレスト』─きゃあっ!?」
「アリッサ!?どうしてここに…ぐっ!」
アリッサは火球を放つため群れに手のひらをかざしたものの、変換と圧縮に失敗した魔力は手元で突如爆発し、逆にアリッサの身体を小さく吹き飛ばした。
存在に気付いたエイジャーだが構っている余裕はなかった。増援こそ止まったもののライミーの群れは依然として脅威であり、隙を見せればあっという間に形勢逆転されかねない状況だからである。
(どうしてこんな時に失敗するの!?イソーの時も火力の調整以外は上手くいってたのに!)
─魔力を扱う才能がないお前は嫁に出すしかない。サレム=フェグレの連中のような雑用は嫌だろう
ふと脳裏に響くは父親の声。アリッサは失敗する度に聞こえてくる幻聴を振り払うように地面を殴ると自らの体を持ち上げていく。
「あんな奴らに縋って生きたくない…!だから今だってあたしが─」
「アリッサ!俺は
「!」
顔を上げた先にはライミーたちをなんとか捌きながら、こちらに視線を向けるエイジャーの姿があった。
「君の悩みや自立への執念は知ってる。だけどすべてを1人でやる必要はないはずだ!それともダーリンと慕ってくれてるのは言葉だけで、本当は頼りないと思われちゃってるかな」
「そ、そんなことは…!」
「だったら聞いてほしい!君もルルと同じで"考えすぎ"なんじゃないかと思うんだ!だからこいつらに当てることは考えなくていい…空に向かってありったけをばら撒いてくれないか!」
「空にばら撒く…そんな当てずっぽうでいいんですか?それにここには死んだ人たちが…」
「そのための俺だよ。いや…俺たちだ」
エイジャーの指差す先、陽陣の方角から台車を引いたナダンがやってきた。荷台には樽が載せられており、ガタガタと揺れる度に水しぶきをあげている。
「ちょっ…アンタまでこっちに来てどうすんの!」
「気配は覚えた、オレたちの探知能力ならここからでも気付く。帰りは早ェし心配すんなってことでじゃあな!」
それだけ言い残すとナダンは踵を返して陽陣へと戻っていく。四足歩行のレプター族は人間の数倍早く動けることもあり、あっという間に闇に消えてしまうのだった…
嵐のように去っていったナダンに唖然とするアリッサだったが、それは熱くなりすぎた頭を冷やすことにも一役買う。気付けば体の力が程よく抜けており、魔力のゆらぎも穏やかになっていた。
死者たちが眠る建物は石造りのため簡単には燃えず、背後には水の入った樽。そして予め聞いているエイジャーの手の内…把握できる現状のすべてを咀嚼したところで、先ほどの要求の意味を大枠で理解すると、手のひらを空へとかざす。
(
「今度こそ吹き飛びなさい魔族たち!
アリッサの手のひらから放たれた火球たちは放物線を描きながらライミーの群れへと飛来する。名付けの通り流星群と見紛うそれらは広範囲に広がっていき、大群を次々と炎上させていった。
「これだけの攻撃を1人で…俺も!」
─ギャイン!?…ア゛ァ゛オ゛ォ゛!!
エイジャーは飛来する火球に、あるいは着弾してできた火の海へとライミーたちを投げ込んでいく。アリッサの膨大な魔力のままに放たれる雑な攻撃を、底を尽きたエイジャーが利用することで撃ち漏らしを確実に潰す…即席のコンビネーションは功を奏し、あれだけいた大群をあっという間に壊滅させてしまった。
だが今度は別の問題が発生していた。大量に生み出された火球の熱量は凄まじく、燃えにくいはずの生木にまで火の手が回り始めているではないか!
「や、やりすぎたかも…ダーリン!」
「ああ!力を借りるぞガラナ…『ダーナクア・ヴォルヴィーク』!!!」
エイジャーは樽になみなみと注がれた水たちを操ると辺り一面に広がった炎を消していく。うねるように宙を舞い、炎を食らう姿はまるで大海蛇…当初は少量の水をぶつけるだけだったこの技も、エイジャーの成長に合わせて進化しつつあった。
「アリッサが来てくれて助かった。今度こそ底を尽きたよ…中のみんなが傷ついていないか確認したら戻ろうか」
「ダーリンはそこで休んでいてください。大丈夫、もう怖がったりしませんから」
「アリッサ…分かった。少し休ませてもらうよ…っ」
安心し、気を抜いた途端に崩れ落ちるエイジャーはまだ熱が残る燃えカスに手をつきながら、戦いの中で心身の成長を見せたアリッサの背中を眺めているのだった…
─────────────
「─ジャスレイ、アミア、ルッタ…以上28名は運命を受け入れ天へと還ります。導きの神ナヴィーラよ、彼らが最後の旅で躓かぬよう見守り給え…」
経典を読み終えた祭司は松明へと持ち替え、遺体たちが運び込まれた塔の入口に火を灯す。村のシンボルにして遺体を焼却する釜でもある塔は赤熱し、闇夜の中に浮かぶそれは妖しくも美しいものであった。
「皆様のおかげで送魂祭を終えることができました。治療だけでなく屍蝋犬まで撃退するとはなんとお礼を言えばいいのやら…」
「こちらこそ貴重な経験をありがとうございました。皆さんの魂が無事に還れるといいですね」
「ふむ…先ほどの説明を聞いていた時の態度といい、エイジャー殿は人の生死に強い関心があるようだ。失礼ながら…あなたは多くの別れを経験してきたのではありませぬか?」
長い時を生き、村をまとめあげてきた審美眼は伊達ではないようだ。エイジャーは自身が王都壊滅の場に居合わせていたことを説明する最中、ヤードゥは目を閉じ、ただ静かに頷いていた。
「なるほどそれで…遠く離れた王都で散った魂たちが安らかに眠れるよう、微力ながら村をあげてお祈りさせていただきましょう」
「ありがとうございます。それと…これまで倒してきた魔族の中に前世の記憶を持つ者がいたんです。彼らもここで弔ってよろしいでしょうか」
「ほほぉ…かつての敵をも弔いますか。エイジャー殿が望むのであれば。あの燃え盛る塔のように踊り狂い、残された我々が健在であると天に届けて差し上げましょうぞ」
「はい。…え?」
「さあ皆のもの!送魂祭の総仕上げじゃ!いくぞおぉぉぉ!!!」
「うおおおおおおっ!!!」
─ドン!ドン!ドドドンドン!
ヤードゥの号令を受けた村人たちの目の色が変わった次の瞬間、全員がローブを脱ぎ捨てて踊り出した!先祖の骨を削って作られた飾りをカラカラと鳴らしながら、一心不乱に松明を振り回す村人たち。
燃え盛る塔を囲んで行われているそれに先ほどまでの厳かな空気は欠片も存在せず、まるで地獄の宴会である。
あまりの豹変ぶりに口が塞がらず高速の瞬きを続けるエイジャーたちに対し、老齢とは思えぬほど引き締まった肉体を晒したヤードゥが手を差し伸べてきた。
「ボーっと眺めていても届きませんぞ!さあご一緒に!」
「…そうですね、確かにこれならみんなに届くかもしれない。2人はどうする?」
「熱すぎて気分悪くなってきたからオレは離れてるぜ…若いモン同士楽しんできな」
「あたしも!?ダーリンと踊るならもっとエレガントな…ああもう!やってやるわ!」
アリッサはヤケクソ気味に松明を受け取ると、村人たちとともに一心不乱に踊りを捧げる。過去ではなく今に全力な彼女に微笑みながら、エイジャーは今日のことを振り返っていた。
(村の人達は魔族を祟りと呼んでいた。それに異常な数のライミーたち…人の死を尊ぶフネラルカ村で起きたのは偶然だろうか?それとも…)
「ダーリン大丈夫ですか?やっぱり無理しない方がいいんじゃ…」
「…いや、余計な事を考えていただけだよ。でも確かに体が痛いや…エレガントなダンスとやらを教えてもらってもいい?」
「…!はい!喜んで!」
アリッサはエイジャーの手を取ると狂騒の中へと駆けていく。死者へ捧げるどんちゃん騒ぎは日が昇るまで続いたそうな…