Regain Journey   作:G-ラッファ

83 / 94
前回までのあらすじ

 拘束したアラクネ盗賊団のロウン、そしてサイタン教の教祖にして元王国軍のキデルからもたらされた情報をもとにエグリ=マティアス教なる団体を訪れたアルジード。
 『人は生まれながらにして罪人』という教義のもとに贖罪の日々を送る彼らからは盗賊の気配がなく、ガセ情報を疑い始める中。敷地内にある宿舎についての質問にフリーズする牧師にただならぬ何かを感じる。

 明らかに堅気ではないロギンなる人物の目を掻い潜り宿舎を調べるアルジードは、わずかなミスから侵入を勘付かれてしまう。
 迎撃にあたった薙刀を持つ筋骨隆々の男は己の名がロレンツであること、そしてアラクネの大幹部であることを告げるのであった…








81話 "カメリア&フルスタ"ロレンツ・バラスティア

(こいつがアラクネの大幹部…ボージャンに繋がる手がかり!)

 

「そんなにアツい視線を送られたら恥ずかしいわ♡よほどアタシを探していたようだけど…どちら様かしら?」

 

 赤い瞳の瞳孔がギュッと絞られ、放つ殺意は龍の如し。ついに見つけたアラクネの大幹部を前に、先ほどまで浮かんでいた撤退の二文字はすっかり消え失せている。

 敵意を剥き出しにするアルジードとは対照的にロレンツは余裕綽々といった風である。掌を頬に添える演技がかった素振りで思案すると、視線で舐め回しながら推理を始めた。

 

「まずは人数…ボウヤのようなコが探りを入れていたらすぐに気付く、よって他に協力者がいるわね。違う?」

 

 ロレンツは沈黙を貫く侵入者に肩を竦めると、さらに続ける。

 

「アタシを"大幹部"と決め打ちしたことから内情にも触れてるわね。最近の出来事と照合すると…この場所はイソーの襲撃に失敗したロウンとマビンから漏れたってところね。どうかしら?」

 

(なるほど。これまでのチンピラとはワケが違ぇ…大幹部ってのはガセネタじゃなさそうだ)

 

 侵入者のわずかな痕跡に気付いて即座に迎撃、情報の入手先もほぼ当ててきている…余裕を崩さぬままこちらを追い詰める能力の高さは、敵ながら認めざるを得ない。

 この戦いが一筋縄ではいかないことを確信していると、ロレンツが突き破った壁の穴から若い女性たちが顔を覗かせた。

 

「びっくりしたよママ〜急に壁を壊して…誰それ?」

 

「アタシのファンみたい♡ほら、この通りカラダが大きいでしょ?だから戦ってみたいってコがたまに来るのよ〜」

 

「「「「へぇ〜」」」」

 

 なんとも間の抜けた女性たちの相槌からは一切の疑念を感じない。まるで危機感がないロレンツの口振りも含めて彼らの間に流れる空気は異常であり、何らかの洗脳を施されているとしか思えなかった。

 

「アタシは彼のお相手をするからピルマ、あとはお願いね」

 

「はいっす。ママはしばらく席を外すらしいから…うちらだけで飲み直すっすよ〜!」

 

─早く戻ってきてねママ〜!

 

─そんなやつボコボコにしちゃえ〜!キャハハハ!

 

 ロレンツは困惑するアルジードをよそに女性の中の1人に視線を向ける。先ほど財源について尋ねていた女性─ピルマは一瞬の間の後に振り返ると、好き勝手に言葉を投げかける女性たちを先導していった。

 

「あの女どもはなんだ?それに教会にいた牧師の反応…一体何をしやがった?」

 

「意外とお喋り好きなのね、嬉しいわ♡でもねボウヤ…あまり焦らさないで頂戴!!!」

 

 ロレンツの瞳がギラリと光り、臨戦態勢に入ったのを認識した次の瞬間、彼の巨体が一瞬にして目の前に迫る。そして反応が二手遅れたアルジードの胸ぐらを掴むと抉る勢いで床を一蹴りし、そのまま宿舎の壁ごとぶち破った!

 

 あまりの衝撃と激痛に呼吸が詰まり、口から飛び出してしまいそうな意識を必死に手繰り寄せる。木造とはいえそれなりの層をまとめてぶち破る怪力である。鎖を装着していなければ背骨ごと折られていたかもしれない。

 

「クッ…ソッタレ!」

 

「!」

 

 気絶必至の一撃を加えてもなお侵入者はこちらを睨みつける。機械的な何かが作動した音を辿った時にはもう遅く、腹部へと向けられた右腕の袖から何かが飛び出した!

 しかし何か─火薬玉が命中することはなく、背後の家具を軽く吹き飛ばすのみ。さらなる追撃を警戒したロレンツは大きく振りかぶると、たった今開けた穴からアルジードを投げ飛ばした。

 

(服の下に鎖帷子を仕込んでいる?それにあの射出装置…きっとイソーで作られたものね。服の下にどれだけのオモチャを用意してきたのかしら?ああ、困ったわ…)

 

(アタシ、コーフンしてきちゃった)

 

 薙刀を持つ手には力が入り、思わず吊り上がる口角もそのままにロレンツはこう考えていた。久しぶりに骨のある若者と出会えた、今日はツイている、と。

 

「今ので気絶しないなんてなかなかタフじゃない♡ねぇボウヤ、アタシの部下にな─」

 

─ドドドォン!!!

 

 興奮気味で迫るロレンツの足は、すぐ横をかすめた爆弾によって止められた。爆風が耳を劈き、不快な熱波と火薬の臭いが背中に叩きつけられ、今度は牽制用ではないことを悟る。

 目の前の侵入者は未だ起き上がることが出来ずにいるものの、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ハァ…これが答えだクソ野郎。ざけた事ぬかしてないでさっさと来いよ」

 

「いいわ…すごくいい!じゃあこうしましょうか。ボウヤが勝てば知りたいことを教えてあげる。ただしアタシが勝ったら…」

 

「その時は…分かってるわよねェ!!!」

 

 戦いはロレンツが地面スレスレを薙ぎ、アルジードが飛び上がって回避することから始まった。自身に迫る凶刃をかわしつつ棒手裏剣で牽制すると、距離を取り直して敵の動きを伺う。

 

 間合いは概ね槍と同じ、ただし攻撃手段は突きではなく斬撃。距離の優位を取られ続ける一方で、その攻撃範囲には空白が多い…

 薙刀は初めて見る武器だったが、勝手が分かれば立ち回りも見えてくる。突き、振り下ろし、横薙ぎ…放たれる攻撃は空を斬り、アルジードに傷を負わせるには至らなかった。

  

─いいかアル、憎い相手こそ観察するんだ。絶対に相手をぶちのめすというモチベーションを糧に集中している分、より細かいところに気付けるはずだよ

 

(とか言ってたっけなぁ団長…あの時は変なアドバイスしやがると思ってたがなるほど、オレに一歩引かせるのが目的か。それに…)

 

 ロレンツの太刀捌きは見事である。攻撃の頻度は長物とは思えぬほど高く、怪力のせいで防御を許さない。十分に訓練を積んだ兵士でも切り抜けるのは至難の業だろう。

 それでも未だ致命傷を受けずに済んでいるのはエイジャーのアドバイスで我に返ったのもあるが、ジャスミンとの組手で動体視力が向上しているのも大きかった。

 

 とはいえいつまでも受け身でいてはジリ貧である。反撃の方法を考えていると、ロレンツは薙刀を置いてストレッチを始めた。

 

「まだ本気を出してねぇとでも言いたげだな」

 

「鉄火場は久しぶりだもの、少しずつ調子を上げていかないと。みんなが好き勝手やるせいで人の管理はほとんどアタシがやってるんだから」

 

(ようやく実のある話をしたな。こいつが人の管理をしているなら…残りの大幹部も居場所を知ってるはずだ)

 

 指をバキバキと鳴らし熱い吐息を漏らすアルジード。ロレンツはそんな彼の様子を涼しい目で眺めつつ、その素性を改めて勘案していた。

 

 相手の素性は重要だ。個人の襲撃者であれば殺せば終わりだが、組織だった場合考えねばならない事が増える。大元への報復や内通の可能性、その他諸々…

 だからこそロレンツは餌を撒く。あえて相手のフィールドに立ちつつ、欲している情報を混ぜて反応を見るのだ。

 

(騎士団にしては野蛮すぎる、傭兵が単独で仕掛けてくるとは思えないわ。コソコソ嗅ぎ回っていた連中の仲間かもしれないけれど…何にせよ原動力はアタシたちへの憎しみ)

 

 アラクネを憎む者など世の中にはいくらでもいる。だが怨敵を討つために自ら立ち上がり、ここまで乗り込んでくる者となると話は別だ。

 痛めつけても即座に反撃を企て、仕切り直しさえ出来ればこちらの攻撃を躱せるだけの場数を踏んでいる青年。そして多くの人間を見てきたロレンツにとっても珍しい、小麦色の肌と赤い瞳。

 

 記憶にかかった薄靄があと少しで晴れる─そんな期待はわずかな鈍りを生じさせた。目の前にいたはずのアルジードが消えている!

 

─バンボ・チャク!!

 

 パンッという空気が弾ける音とともに走る胸部への衝撃。アルジードは姿勢を下げて一気に接近しつつスライディングで懐へと潜り込み、片足をバネにして真下からの急襲蹴りを放ったのである。

 竹の成長の如き鋭い一撃は教わったばかりとは思えぬほど綺麗に決まった。…がロレンツの巨体が揺らぐことはなく、顔には余裕の笑みを浮かべていた。

 

「ッ抜けねぇ…!?」

 

「確かにいい蹴りね、踵に刃を仕込むのもいい発想だわ。だけどアタシをヤるには…軽すぎるんじゃなくって!?」

 

 仕込み刃を胸筋で止められたことにより片足の自由を失ったアルジード。ロレンツは差し出された足を掴むと体ごと回転させ、ハンマー投げの要領で放り投げた!

 

(刃を筋肉で止めるかよ普通!だったら…!)

 

「アンカーセット!『地旋脚』!」

 

 空中へ投げ出されたアルジードは鎖の先端にアンカーを装着すると、左手の分を地面へ射出して体を繋ぎ止め、右手の鎖を木に固定し手繰り寄せる。

 いくつかの木を経由して勢いをつけながら先端を刃へと換装、コマのように回転しながら地面スレスレに突っ込んでいく。意図を理解したロレンツは身構えつつも、満足気に鼻を鳴らした。

 

(上半身への攻撃は筋肉で止められるから足を、それも簡単に反撃できないよう刃を振り回しているわけね。即座にこちらの嫌がる手を思いつくのはお見事…だけど)

 

 ロレンツは再び手にした薙刀を地面に突き刺すと、アルジード目がけて土を巻き上げた!

 

「小手先だけじゃどうにもならない事だってあるわよねぇ!?『土の大蛇(ビジョーネ・デッラ・テラ)』!!!」

 

「なっ…魔法!?」

 

「魔法禁止なんて言われてないでしょ?」

 

────────────────

 

 驚くべきはその質量である。行く手を阻むは大蛇とでも形容すべき大量の土、たかが刃で巻き込める量ではない。常人よりも優れた魔法の使い手であることは間違いないだろう。

 

 砂利が混じった土の大蛇、このまま突っ込めば大怪我は必至。アルジードは減速しながら展開していた鎖を戻すと、『プリズンウォール』で防御姿勢を取る。

 石がぶつかる鈍い音、砂が噛むジャリジャリとした音に包まれながら抜けた先には─ロレンツが自らを刻むべく待ち構えている!

 

(あまりポンポン使いたくねぇが…仕方ねぇ!)

 

 アルジードは火薬玉を取り出して前方へとばら撒く。自爆覚悟で放たれた火薬玉は次々と連鎖爆発を起こし、さすがのロレンツも退避を選ばざるを得ないほどの衝撃と熱量を生み出す。

 爆風に晒されつつも仕切り直しに持ち込んだアルジードは、今の反応を見てさらに分析を進めていた。

 

(さすがに爆発はタダじゃ済まねえようだな。とはいえこんなペースで使ってたらもたねぇ…他の手を考えねぇと)

 

 アラクネの大幹部を相手取るにあたり、暗器は潤沢に用意してきた。それでも生半可な物理攻撃を無視する筋肉に知略、魔法まで兼ね備えたロレンツに想定以上の消耗を強いられているのは事実。

 ジャスミンから教わった武術もあくまで身についた段階であり、有効打となるものは少ない。

 

 限られた手札で戦略を組み立てる中、アルジードはロレンツが妙な動きをしていることに気付く。振り上げた右腕をクルクルと回した後、手のひらをパッと広げたのである。

 

「信者たちを遠ざけるよう指示したの。彼らにはまだまだ役目があるからね」

 

「前に見た奴隷は自分の名前も言えない状態だったぜ。あいつらとは洗脳の方法が違うのか?」

 

 アルジードが言っているのはロックリフ鉱山で保護した奴隷のことである。神経に作用する劇薬を投与された彼らは目が虚ろで、主の指示にのみ反応する生ける屍のようだった。

 しかし牧師たちは違う。会話は滞りなくできるし、奉仕作業を通して外と関わりを持てるだけの社会性もある。今までの洗脳とは何かが違う─

 

 ここまで推理したところであることを思い出す。それは牧師の言葉と、彼らが信心深い教徒であることだ。

 

「…牧師がこの辺りは土砂崩れが多いと言っていた。テメェまさか…」

 

「御名答♪ただでさえ思い込みが激しい宗教団体、刷り込みは簡単。アタシの一存で天災の行く末が変わるのだから、邪険になんて出来るわけがないわよね」

 

 口元を隠しながら笑うロレンツ。その上品な所作とは裏腹に、瞳には邪悪なものが見え隠れしている。

 

 あくまで推測ではあるが…昔からという牧師の言葉から察するに、土砂崩れが多いのは地質上の問題。

 そこへこの地に目をつけたアラクネがロレンツを介入させ、魔法によって意図的に天災を起こすことで教団を恐怖で支配した、といったところだろうか。

 あるいは砂防ダム工事のアドバイザーとして接触し、彼の予想した通りに災害を防げていたとするならば。それもまた逆らうことができない上下関係を生み出すことだろう。

 

 ロレンツがその先を語らないため真相は分からない。ただ1つ言えるのは、この男を野放しにはできないということだ。

 

「じゃああの女たちは何だ。ここの教徒でも力で支配しているようにも見えなかったぞ」

 

「あの子たちは力ではない…アタシの"愛"で心を支配しているの♪」

 

 『愛』…突然飛び出してきた似つかわしくない言葉に怪訝な表情を浮かべるアルジード。ロレンツは短い距離を右往左往しながら、子を諭すようにこう問いかけた。

 

「ねぇボウヤ、アナタが崇拝しているものは何?」

 

「…はぁ?」

 

「超常存在、組織、思想、あるいは個人…生きる上で縋っているものはある?」

 

 神など信じるはずがない。そんなものがいるならば、両親にあのような死を押し付けた連中がのうのうと生きている事実と矛盾するからだ。

 

 組織への忠誠など馬鹿馬鹿しい。あれは利害の一致で組むもので委ねたり、ましてや人生を捧げるものではない。

 

 思想…報復心は確かに絶望から立ち上がる起爆剤となった。だがそのためだけに生きているわけではない。

 

 しかしその考えを持つに至ったのは決して自分だけの力ではない。それを教えてくれたのは─

 

「思い当たったようね?人は誰しも心の支えを持っているもの…それを否定することは、アイデンティティの消失を意味する」

 

「…それが何だってんだよ」

 

「縋るものを間違えたと認められる、心の強い人間はそういないわ。彼女らは他所で馴染めなかった爪弾き者…ここが最後のオアシスで、アタシに縋るしかないのよ」

 

 アルジードには思い当たる節があった。それはノブリス率いるギャル軍団と呼ばれていた若者たち…異様に軽い彼らの空気は周囲から浮いており、行き場がなかったところをまとめて拾われたと聞いている。

 

 先ほどの女性たちも似たような理由でコミュニティを追われ、アラクネが流した噂に釣られてきたのだろうか。もっとも、厳しくも大事に想ってくれるノブリスではなく、悪意を持って甘やかし、依存させるロレンツに拾われたのは大きな違いであるが。

 

「テメェがどうやって洗脳したかは分かった。だが女どもを依存させる理由はなんだ?売り飛ばすだけならそんな真似をする必要もねぇだろ」

 

「アナタ盗賊みたいなこと言うのねぇ…女と子供を大事にするのは人として当然でしょ?」

 

「ハッ!白々しい野郎だぜ。クズが女子供を集めるのは変態に売る時か人質と相場が決まってる。その上で─」

 

─ヴウル゛ゥゥゥ…

 

 突如聞こえてきた唸り声に追及を止めるアルジード。こちらへ向けられた獣のような殺気は宿舎から放たれており、それが野生動物によるものでないことを裏付けている。

 だんだんと強くなる殺気に吸い寄せられる視線。そして壁の穴から顔を出した"何か"と目が合った次の瞬間─"何か"がこちらへ飛び込んできた!

 

「『プリズンウォール』!なんなんだよこのクソ犬、いや…」

 

「…ガキ!?」

 

────────────────

 

 凄まじい殺気とともに飛び込んできた何か─鎖越しにアルジードが視界に収めたのは、なんと子供であった。

 

「スマリット!部屋から出ちゃダメと言ったでしょう?それに今は大事なケンカの最中なの。2人だけで楽しませてくれるかしら?」

 

「黙れ!こいつ煩せぇんだよ!!!」

 

 スマリットと呼ばれた少年は背後のロレンツに吠えつつも、プリズンウォールを突破すべく一切力を緩めようとしない。素手と鎖でこちらにアドバンテージがあるものの、タガが外れたような怒りは年に不相応な圧力を放っていた。

 

(こいつも洗脳されている?いや、その割に肉ダルマにも反抗的だ。1つ分かるのは…)

 

「テメェが邪魔になるってことだけだ!」

 

 アルジードは一瞬だけ防御を解いて半分ほど突破させると、即座に鎖を張り直して腕を飲み込む。そしてそのまま鎖を振り下ろして体勢を崩させると、ガラ空きの側頭部へ回し蹴りを叩き込んだ!

 子供とはいえ大幹部のアジトで襲ってきた敵、アルジードとて過剰に手を抜いてはいない…にも関わらずスマリットは即座に体勢を立て直すと、怒りの形相でこちらを睨みつける。そして…

 

「いっっ…てぇなあ!!!!!」

 

 先ほども見せた突進力を活かしたタックルを仕掛けてきたのである。鎖による拘束はそのまま向かってくる者には後手に回る…図らずも弱点を突かれた形となったアルジードは反撃をモロに受け、2人揃って地面へと倒れ込んだ。

 しかしスマリットは止まらない。アルジードがいくら鎖で殴りつけ、蹴り飛ばし、抑えつけても。手すきとなった部位で執拗に反撃を試みてくる。

 

「死ねよ!死ねよ!死ね…よっ!!!」

 

(なんなんだよこのガキは!クソッ…肉ダルマだけでも厄介だってのに!)

 

 ロレンツに動きは見られないものの、仮にいま加勢されたら命はない。この状況を脱する道はただ1つ…生半可な暴力では止まらないこの子供を"沈黙"させること。

 アルジードはなんとか右腕をフリーにすると、スリンガーに爆薬をセットした。

 

(後味は悪くなるが仕方ねぇ。こいつを─)

 

─ちょっと待ったあああ!!!!

 

「「「!?」」」

 

 3人の意識は突如耳に飛び込んできた声に吸い寄せられる。そしてその出処は─上だった。

 

「躱さないとケガしますよ!『破隷彗星脚』!!!」

 

 声の主による可視化されるほど凝縮された氣─もとい魔力を纏った急襲蹴りをすんでのところで躱す2人。わずかな地響きと大量の土煙の中から姿を現したのはアルジードもよく知る顔だった。

 

「なんだお前ぇ…声がでかいんだよ…殺してやらぁ!!!」

 

「私の名前はジャスミン・パーラー!王都騎士団の名の下に、アラクネに鉄槌を下しに参りました!!!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。