「死後の世界へようこそ、【白威 日乃】さん。不幸にも貴方は亡くなりました」
突如俺の視界に映ったのは真っ暗な世界、黒と白の一松模様のタイル床。
天から降り注ぐ一筋の光が示す先はポツンと佇む椅子に座る一人の女性。
どうしてこうなったのか、それは(俺の体感的に)数十分程前のこと・・・
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俺が暮らしてたのは平和な現代の日本、戦時中でも歴史の教科書に載ってるような大昔でもなく、寧ろその時代のことを学ぶ“平成”の時代。
裕福でも無くかと言って貧しくも無く、両親がいて姉弟がいて友人がいて、俺自身も五体満足で持病などもない、そんな充実した日々を暮らしていた。
ある日の事だった、一緒にいる時間が多い3人で下校しようとした折に偶然校門前で姉とその友人に遭遇した。
姉もその友人も眉目秀麗で学年問わず人気で先生からの評判も高い、告白された回数は手足の指を合わせても足りないときた。
そんな2人の寄り道の誘いに俺の友人2人が断れる訳もなく、俺自身断る理由もなかったので5人で少し歩いたとこにあるデパートによることになった。
誘われた1番の理由は荷物持ちだろう、どうやら今日2人が使ってる化粧品ブランドの新作が出るようで、それ以外にも服や小物を購入しては次々俺たちに渡してくる、学生ではあるがモデル活動をしている2人は同年代と比べてもかなり持ってる方である。
1時間経った頃には既に腕が吊りそうな位には荷物が嵩張っていた、このまま俺の家に帰って2人で見せ合いっことかするみたいだ。
しかしその帰りに予想だにしないことが起こった、ナイフを持った男が俺たちに近づいたのは。
後ろから近づいてきたそいつに俺たちは誰一人として気づくことは出来ずに呑気に談笑していた。
「オイあんた!!何してんだ!!」
たった今通り過ぎた男性と思わしき声がほんの少し後ろの方から聞こえて俺たちはなんだなんだと振り向いた、その瞬間だった強烈な痛みが俺を襲ったのは。
「・・・あ・・・?」
ぶつかってきた男に押され荷物を落とし床に倒れる俺、その胸部には深々と1本の刃物と思わしきものが突き刺さっていた。
状況を理解したものたちが悲鳴をあげ、俺の友人たちが荷物を投げ捨て犯人を取り押さえるように動いてるのが見えた、さっきの男性もまた男に掴みかかり男は数秒もしないうちに取り押さえられていた。
姉さんとその友人はその場にへたり込んでいた、そこからどんどん意識が遠のき始めた、力が抜け、視界が暗くなり、周りの音も聞こえなくなり始めた。
最後に聞こえたのは俺を呼ぶ友人二人の声、俺は14という若さで、そのままその場で息を引き取ったのだ。
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これが俺が死んだ時の様子だ、その後の事は分からないが状況的にはあれ以上被害は広がらなかっただろう。
そして再び目を開いたらいたのはここだ、目の前には大きな翼をつけたショートカットの女性がニコリと微笑みこちらを見ている。
「えーっと聞いてもいいですか?」
「ハイなんでしょう?」
俺は一通り聞きたいことを聞いた、ここは本当に死後の世界で俺は本当に死んだのか、貴女は一体誰なのか・俺が死んだあとどうなったのか・・・など。
“天使”と名乗った彼女は懇切丁寧に一つ一つ説明してくれた、現世のその後は実際に不思議な力で映像としてみせてくれた、予想通り俺以外の被害はなく犯人は捕まったらしい、犯人の動機も姉の友人を好きだった同じクラスの男子生徒が振られて傷心のところ仲良く話す俺たちを見たことでその俺と振った彼女に思い知らせてやるという思いで行われたものらしい。
そんなくだらないことに巻き込まれたのかと少々ブルーな気持ちになる、そんな気持ちを察してか“天使”は俺にこんな提案をした。
「今の貴方には2つの選択肢がございます、1つは貴方がたの言う天国へ行くこと。ここではただ流れゆく永遠の如き長い時間をのんびり過ごして頂き、記憶等を摩耗し忘れていただいた上で新しい命として再び現代へと生まれ落ちる道。もう1つは貴方がいた世界とは異なる場所・・・所謂“異世界”に今の姿と記憶を持った状態で転生していただく道。」
「“異世界”?どんなところなんです?」
「魔法や魔物が存在するファンタジーの世界になります。転生した皆様には魔王の討伐を目標として頂き、それを達成した方になんでも一つ願いを叶える権利を贈呈しております」
「何でもって言うのは本当に何でも聞いてくれるんですか、かなり無茶な要求も」
「私たちが可能な限りは如何様な願いでも」
「皆様と言っていましたが俺以外にも転生者はいるんですか?」
「正確な人数はお教え出来ませんがいらっしゃいます。道半ばであちらの世界でもなくなってしまった方、魔王討伐を諦め平穏な生活を送った方、今なお魔王討伐に尽力してくださっている方・・・数えればキリがありませんね」
「つまりそれほどまでに長い時間、誰も魔王討伐をなしえていないわけですね」
「残念ながらそういうことになります」
「貴女がたはその魔王に直接手を出せないんですか?」
「そうですね、天界の規定により直接手をくだせません。全くできないことは無いですが進んでする者はまず居ないでしょう」
「なぜ?」
「ここからでは世界に干渉できない点、世界に降りても力が制限され魔王を倒せない点、我々にも死の概念がある点が大きな要因でしょうか。そもそも我々の仕事は天界の雑事です、貴方のような死した魂を異世界へと送り出す事も我々の業務のひとつです」
「・・・マジ?」
「大マジです、意外と変わらないものですよ?人間と我々神族の社会は。ノルマやボーナスの概念もあります」
「知りたくなかったな、天界のそんな裏事情」
「もっと言えば我々としては異世界に行っていただいた方がノルマが達成できるので有り難いのですけれど」
「やめて!これ以上はやめて!!」
衝撃のあまりどんどん敬語が抜けていくのが自分でもわかった、天界も色々と闇が深そうだ。
俺はひとつ大きくため息し、今もニコニコ微笑んでいる“天使”に異世界に行くとを告げた。
「まぁ本当ですか!ありがとうございます♪ではこちらをどうぞ」
そう言って渡されたのはカタログのような書類だった。
「流石に魔力のない現代から転生して異世界へ行っても直ぐに死んでしまいかねないので我々からサービスとして何か転生特典をひとつプレゼントしています。その資料に書かれている魔剣や特殊な武器は勿論、そこに書かれていない物も基準内であれば特典とすることは可能です」
「・・・それはすごい助かる、少し考えさせてください」
「えぇ、どうぞじっくりとお悩みください。・・・とは言っても1時間もしないうちにそろそろ交代なのでそれまでにお願いしますね」
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・・・30分後、俺は考えついた力を特典に出来ないか交渉しているところだ。
「・・・成程、異世界のシステムに則りスキルポイントで徐々に力を解放していくようにすれば基準的には問題ないでしょう。分かりました、ではこの力を貴方に与えます」
すると体が光り、黒かった髪は白く染まった。
「こっちの方が能力に似合うでしょう?向こうの世界は様々な髪色があるので変に目立つことは無いでしょう」
「ありがとうございます」
「・・・フフ、では最後に1つ」
“天使”はひとつ咳払いをし、席を立って、翼を広げて声高らかに言い放つ。
「さぁ勇者よ!願わくば数多の勇者候補達の中から貴方が魔王を倒す事を祈っています!」
「・・・それ、転生する勇者全員に同じセリフ言ってますよね?」
「・・・」
“天使”は変人する訳でもなくただニコリと笑いそして俺は・・・
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目を開けるとそこには街の景色が広がっていた。