適当に生きたいだけなのに俺の個性がそうさせてくれない 作:論 外之助
番外編では主にスターレイルキャラの日常を書きます。
べっ!別に騎馬戦の後半書くのちょっと難しいってわけじゃないんだからね!
時系列は第1話のちょっと前のお話。
アベンチュリンのオール・オア・ナッシングな一日
「ふあぁ…今日は土曜日か…暇だなぁ…」
朝7時30分、星穹黎流はいつものようにベッドから体を起こし、体操を行う。
といっても至極簡単なものでちょっとジャンプしたりスクワットをしたり。
「さて…今日は何をしようかな…って…ん?」
ふと机の上を見ると何故か一枚の紙が置いてあり、
『マイフレンドへ、たまには一人で外を歩いてくるよ。夜には帰ってくる』
と書かれていた。
「マイフレンド…アベンチュリンだな?この書き方は…まあ別にいいか。ずっと個性内で居続けるってのも窮屈だろうし。たまにはアイツも羽を伸ばしたいだろ」
と呟き、朝食を食べるために一人リビングへと向かった。
そう。今回のお話はいつもと一味違う。
今回のお話は星穹黎流…ではなく、その良き(?)友。
生粋のギャンブラー、アベンチュリンの一日である。
「…ふう。静かに家を出るっていうのも結構難しいね。でも成功してよかった。マイフレンドもグッスリ寝てるし」
時刻は星穹黎流が起きる一時間ほど前、朝6時30分。
アベンチュリンは一人静かに家を出ていた。
「鍵もかけたし置き手紙も残したし、マイフレンドも文句は言わないだろう。さて、どこに行こうかな?」
そう。この男、一人朝早くから家を出たにもかかわらず全くのノープランなのである。
「うーん…この時間じゃお店とかもそんなに開いてないだろうし…まずは散歩にでも行こうか」
そう呟き、彼は20分ほどかけてとある海岸に来た。
その海岸は以前までゴミが積もりに積もっていて現地住民でもまったく寄り付かない場所だったのだが誰かがそのゴミを片付けたことによりデートスポットとしてネットなどに名を馳せている。
「へぇ…朝日で海がキラキラ輝いてる…デートスポットってだけじゃなくて軽い絶景スポットとしても良さそうだね。写真とか撮っても良さそうだ」
その美しさに彼は思わず見とれてしまい、感想をつぶやく。
彼の周りには誰もいないため彼だけがその景色を独り占めしている。
気づけば海岸に来てから30分程経過しており、次の場所に向かうべく足を動かした。
「…それにしても誰が海岸を綺麗にしたのかな?案外近くにいたりしてね」
そう呟いた時、前方から緑色でボサボサした髪を持つ少年が走ってきていた。
「やあ。おはよう(シャツ凄いな…ランニングシャツってデカデカと書かれてるよ…)」
「えっ?あっ…おはようございます!(服すご…胸元スペードの形に空いてる…)」
アベンチュリンとすれ違った少年、緑谷出久。
お互いが次に顔をあわせるのは体育祭のお話。
午前9時。次に来たのはとあるショッピングモール。
「さて、ここでは何をしようかな?」
「あれ?アベンチュリン?」
聞き覚えのある声を耳にし後ろを振り向くと、そこに居たのは金髪の女性、セーバル・ランドゥーが居た。
「おや、セーバル。奇遇じゃないか」
「それはこっちのセリフ。あんた黎流が寝てる間に家を出たそうじゃないか」
「まあね。たまには一人の時間を過ごしたいのさ」
「まあその気持ちは分からない訳では無いかな。私も一人の方が気楽になる時もあるし」
「だろう?ところで君は何をしに来たんだい?」
「私はここにある楽器屋に用があるんだよ。買うお金とかは持ち合わせてないけど、ギターとかを見ときたいのさ」
「なるほど。それにしても楽器か…僕はそういうのに疎いからよく分からないや」
「おやそうかい?だったら私が教えてやろうか?」
「フゥム…まあお昼まで暇だしね…よし、せっかくだしご教授頂こうかな」
「任せて!」
それから2人は大きめの楽器屋に移動し、彼は3時間ほどセーバルからロックについて色々聞いた。
その間、彼は嫌な顔を一切せずにただただ新しいことを知る子供のように話を聞き入っていた。
時刻は正午、お昼の時間である。
「さてと…せっかくだ。ここは僕が奢るよ」
「おや良いのかい?」
「ロックとやらについて色々知れたからね。そのお礼に」
「悪いねぇ!それじゃあ遠慮なく!じゃあ…ここ!」
「ここは…喫茶店?もっと高いところでも構わないんだよ?」
「この店、私のお気に入りなんだよ」
「なるほど。じゃあここにしようか」
喫茶店に入り、アベンチュリンとセーバルはコーヒーとトーストのセットを美味しく頂いた。
彼に関してはショッピングモールの喫茶店のクオリティに少し驚き、テンションがちょっと上がったとか。
「ふぅ…凄く美味しかったよ。特にこのコーヒー、深みのある香りが僕好みだったよ」
「それは良かった。来てよかっただろ?」
「まあね。さて、僕はまだここをぶらつくかな」
「そっか…あ、じゃあお代だけここに置いといてくれないかい?実はここで待ち合わせの約束してるんだ」
「そうなのかい?君の弟さんか…妹さん?」
「ああ、違うよ。最近仲のいい友達ができたんだ。その子もロックが好きでね」
「なるほど。お互い話があって楽しいって訳か。OK、それじゃあお代はここに置いておく。それじゃあまた家で会おう」
「だね。じゃあまた」
会話を終え、彼はまた一人になった。
まさか知り合いに会うことになるとは思っていなかったが、彼にとってはとても有意義な時間を過ごしたと言えよう。
「さて…午後1時…まだまだ時間があるな。何をしようか…」
そう悩んだ時、彼の耳に子供の楽しそうな声が聞こえてきた。
「…?なんの賑わいだ?」
気になった彼は声のする方へ足を進める。
その賑わいの正体はすぐに分かった。
彼が足を止めた先にあるのは…ゲームセンターだった。
「ゲームセンターか…なになに?『イベント開催!メダルゲームのスロットで一番多くメダルを獲得した人が優勝!』…イベントか…時間的に…まだ参加できる。よし、次の予定が決まったね」
彼は今日一番の笑みを浮かべ、ゲームセンターの店員の元へと向かった。
午後4時、イベントがスタートする時間。
壇上では個性の関係で猫のような姿をしている店員がアナウンスを行っている。
『さあ!やって参りました!『ワクワク!スロット大会!!』のお時間です!!ルールは至ってシンプル!そこに並んであるメダルゲームのスロットで制限時間までに一番多くのメダルを集めた人が優勝となります!!制限時間は1時間!!席に着いてください!!』
アナウンスを聞き、スロットの前の椅子に座る参加者達。
そこには子供連れの大人や休日を謳歌する高校生などの姿があった。
「おとーさん!僕絶対優勝するからね!」
「ああ!頑張れよ!!」
「今日のイベントマジ頼みにしてたんだよねー!」
「私もー!!」
「おっしゃ!ぜってー優勝してやるぜ!」
「熱くなってんなぁ切島!でも勝つのは俺だ!」
「よし!なら勝負だ上鳴!」
「舐めんなよォ!勝つのはオイラだァ!」
純粋にイベントを楽しむ者、友人とイベントに挑む者、互いをライバルと認識して競い合う者。
様々な思いが入り乱れる中、彼はただただ真剣な表情で席に着いていた。
「(たかがゲームだと思われるかもしれないが…全力で勝ちに行くとするかな)」
彼の目に浮かんでいるのは勝利への欲求。
ただそれだけだった。
イベントが終わり、時刻は午後5時30分。
「なんだかんだ楽しめたなぁ。メダルゲームのスロットなんて子供の遊び道具としか見てなかったが…あれはあれで中々奥が深い。つい真剣にプレイしちゃったよ…それにしてもこれどうするかな…」
彼は右手に引っ提げている大きな紙袋に目を向けながら呟いた。
紙袋の中には、少し大きめのペンギンのぬいぐるみが入っていた。
「まさか優勝賞品がぬいぐるみだとは…いや、別に構わないんだが…帰ったら絶対冷やかされるだろうし…かと言って捨てるのも忍びないし…」
ぬいぐるみをどうしようか思考をめぐらせていたその時、たまたま通りがかった公園で一人の女性が何かを必死に探しているのを見つけた。
「…あのー、そこのお嬢さん」
「え!?あ…私ですか…?(服すご…)」
「何か探しているのかい?」
「え?あ…実はその…写真を落としてしまって…」
「写真?」
「はい…財布から取り出した所をたまたま風が吹いて…この辺りに落ちてると思うんですけど…」
「なるほど…仕方がない、手伝うよ」
「え!?いいんですか!?」
「おいそれと見捨てるほど人は捨ててはいないからね」
「ありがとうございます…!」
紙袋を近くのベンチに置き、彼は茂みの中を探し始めた。
自分の服が汚れることも厭わずに、困っている女性のために一心不乱に写真を探し始めた。
彼自身も何故そこまで一生懸命になって探しているのか分かっていなかった。
ただ目の前の女性を助けなければ。
その思いだけが彼の心の中にあった。
「ありがとうございます!本っ当にありがとうございます!!」
「いやいや、別に構わないよ」
結局写真を見つけるのに一時間ほど時間を費した。
公園が結構広かったというのがあり、探し出すのに時間がかかったのだ。
「見つかってよかったよ」
「はい!大事な写真なんです!」
「…本当に大事そうに握っているね…少しだけ見えちゃったんだけど…そこに写っているのは君と…家族かい?」
「あ…はい…そうなんです…」
「やっぱり。それは大切なわけだ」
「…」
「…もしかして…何か思い悩んでいるのかい?」
「え…?」
「僕には…君は今喜びと同時に…どこか悲しんでいるように見えるのだけれど…」
「あ…」
ここで彼はしまったと思った。
本当になぜ自分は目の前の名も知らない女性にペラペラと喋っているのか。
普段の自分なら絶対にやらない行為だった。
「失礼…踏み込んだ質問だったかな?」
「あ…いえ…その…」
「…良かったら話してくれないかい?」
「…はい…」
二人は近くにあったベンチへと座った。
「実は…家族で少し悩んでて…」
「家族で?」
「実は…母が入院してるんです。理由は…その…家庭内の問題と言いますか…」
「…そうだったのかい…じゃあその写真は…」
「まだ母が入院する前の写真です…優しい母でした…だけど…あんなことがあってから…」
「…」
「この写真の後にもう一人弟が産まれて…それから…家族はだんだんおかしくなってったんです…私ともう1人の弟は詳しくは知らされていませんでしたが…本能みたいなものがそれを感じ取って…でも私…上辺を取り繕うことしか出来なくて…だから…家族と腹を割って話すことが…出来ていないんです………すみません…もうこれ以上は…」
「…いや…そこまででも十分だよ…」
この時、彼は遠い過去の記憶を思い出していた。
母と姉、自分の家族と呼べる二人の記憶を。
それを思い出して少しだけ俯いたが、すぐに女性の方へと顔を向き直した。
「…僕は幼い頃に…家族と呼べる存在を失っていてね…」
「え…?」
「ああいや…別に不幸比べをしようって話ではないよ?ただ…今もたまに…夢に出るんだ…母と姉の…姿が…」
「…」
「もし姉さんと母さんが今も生きていて…僕の目の前にふらっと現れて…話が出来たら…どんなにいいことだろうかって…時々考えてしまうんだ…」
「…」
「でもいくら考えたところで…死者が蘇ることは無い…でも…生者なら…まだ間に合うんじゃないかな?」
「あ…」
「きっとそう簡単に解決出来る問題なんかじゃない…でもまずは…一歩踏み出してみたらどうかな……君はどうしたい?」
女性は俯き、少し間を置いてから思いを吐露した。
「…まだ…よく分かりません…」
「…そうかい…」
「でも…なんだか少し前に進める気がします」
「………」
「まだ気持ちの整理とかよく出来てないですけれども…ちょっとでもいいから…前に歩こうと思います…」
「…それは良かった」
「その…ありがとうございました」
「いやいや…僕の方こそ…ありがとう…」
「え…?」
「……そうだ」
何を思ったのか、彼はペンギンのぬいぐるみが入った紙袋を女性に差し出した。
「これ、君にプレゼントするよ」
「え?これ…ぬいぐるみ?しかもこれって…今かなり人気のある…」
「君が前を歩くきっかけができた記念日ということで、それをあげるよ」
「や…悪いですよ!こんな…」
「いいからいいから…っともうこんな時間か…そろそろ帰らなくちゃ」
アベンチュリンはベンチから立ち上がり、公園を出ようとした。
「…あの!」
「ん?」
女性は彼を引き止め、
「その…何から何まで…ありがとうございました!!」
周囲にも響き渡るくらいの声で感謝の気持ちを伝えた。
それはあまりにも大きくて、そして力強く、決意に満ち溢れた声だった。
それを聞いた彼はフッと笑って帰路につき、
「…」
ただ無言で、背後の女性に歩きながら右手を振っていた。
午後7時30分。
「ただいま帰ったよ。マイフレンド」
「ああ…おかえり…」
アベンチュリンが部屋のドアを開けると、そこに居たのはげっそりとベッドに横たわっている黎流の姿だった。
「…どうしたんだい?僕がいない間に何があったんだい?」
「いや…星の嘔吐剤とリンクスのシュールストレミング…そして極めつけに姫子のコーヒーを食らってな…しかも無理矢理」
「激しく同情するよ。マイフレンド」
「はあ…そういうお前は何かあったのか?」
「え?」
「いやなんかお前…嬉しそうだぞ?」
そう、黎流だけが見えていた。
アベンチュリンの微かに嬉しそうな表情を。
それを聞いた彼はそっぽを向き、
「いや…別に?」
分かりやすく、照れを隠すように呟いた。
「そうか?…そうかぁ?お前マジで何があった?」
「だから何も無いって…」
「嘘つけって!絶対なんかあったって!」
「本当だって!というかそんなに気になるのかい?」
「正直結構気になるよ!というかお前が一人でどっか行くってだけでも不思議だったんだぞ!!」
「嘘だろ…?」
「まじだって!ほら早く言えよ〜!さもないとブラックスワン呼ぶぞ!」
「そこまでして知りたいのかい!?」
土曜日、夜の星穹家。
男二人の賑やかな声が夜空へと消えていく。
おまけ 『一方その頃あの女性は』
「…」
「…ん?あれ?姉ちゃんそんなぬいぐるみ持ってたっけ?」
「あ、夏…今日貰ったの。心優しい人からね」
「そっか…良かったね」
「うん!」
とまあこんな感じでスターレイルキャラが主人公の番外編でした。
次はねぇ…騎馬戦の後半投稿出来たらいいねぇ…
もしかしたらまた番外編投稿するかも…