とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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幼馴染は動物好き

 

 ウェザエモンとの決戦の前日。ここ数日、レインはリアルの方でも色々あったのだが、ゲームの方ではオイカッツォと共にレベリングに励んでいた。

 

 というのも、大前提としてウェザエモンとの戦いはレベル50は必要になるからだ。ペンシルゴンから説明を受けてから地道にレベルを上げていたものの、レインのログイン時間の大半は、数日前NPCのウェザエモンとの最期の手合わせを行った日までは、ほぼ特殊エリアである『征桜領域』でのことに使っていた。

 

 『征桜領域』での戦闘。つまり、NPCであるウェザエモンとの戦闘においては、デスペナルティやロストなどは発生しないが、経験値も発生しない。よって、レベル上げは別でやる必要がある。以前レインが戦った、黒い霧を纏う鎧との戦いで莫大な経験値を獲得したおかげで、レベルが40半ばほどにはなっており、数日前から地道にレベリングを行っていたのだが、それでもまだ足りず。結局、オイカッツォに頼んでレベリングに付き合ってもらった。

 

 現在のレベルは52。決戦に向けた準備も完了し、今日の夜に最終確認のために一度集まろうという話になっていた。しかし、それまではまだ時間がある。サンラクは自発したユニークシナリオの関係で、別エリアに行くと言っており、オイカッツォはと言えば、実は近く開催される大会の関係で外出。

 

 なので、レインは一人サードレマの街の外のエリアを探索することにした。思えば、最初の街のファステイアを出てからはずっと迷子であり、気がつけば現在地不明のエリアに到達しており、そしてその先が『征桜領域』だったこともあり、碌に探索をできていない。サードレマまでの道もオイカッツォに案内してもらったものであり、道を歩きながら二人で話して、そのついでに風景を見るくらいしかしていなかった。

 

 念の為にシャングリラ・フロンティア ネットワークパネルを確認して、ログインしているペンシルゴンにメッセージだけ送ったのだが、『プレイヤーキラーには気をつけるんだよー、まあ私が言えたことじゃないけど。いや、むしろ何も知らずにレインちゃんに襲いかかるPKの御冥福をお祈りします』などと返答が来た。

 

 折角なので周辺の観光スポットなどを聞いてみれば、かなり詳しい説明とともに幾つか場所と行き方をペンシルゴンは教えてくれた。とても丁寧でわかりやすく、お礼のメールをすれば、『追記:前に返り討ちにしたって言ってたから知ってるかもしれないけど、PKは今歩く宝箱だから、見つけ次第やっちゃっていいよ』と返信が来る。

 

 歩きながら周辺の景色を眺める。主要街の付近であるからなのか、モンスターは殆どおらず、心地のいい風が吹き抜けている。散歩にはもってこいだなと思いつつ、サードレマへと続く街道を逆方向に歩いていく。

 

 そういえば、あの二人はどうなったのだろうかと思う。ダクアヴェでの友人にして、ライバルだった二人。先日来たメールでは、少し前に始めており、『ちょっと慣らしたりしてある程度落ち着いたら会おう』と連絡が来ていた。もしかしたら、セカンディル周辺くらいに居るのかもしれない。色々と個性的な二人だから、全く違う方向に進んでいる可能性もあるが。

 

 そこそこ長い時間更に歩き続けて、気がつけば道を外れて森の中に来ていた。以前はそのまま彷徨って、所在地不明のエリアに迷い込んだこともあったので反省を活かしてちゃんとマップを確認する。すれば、サードレマからは結構な距離がある巨大な森林の中だ。自由気ままに歩きすぎて、ペンシルゴンが教えてくれていた観光スポットからもルートを外れている。

 

 

 戻ろうか。そう考えていると。

 

 

 

 

「ひ、卑怯者!戦闘意思のない非アクティブの小動物モンスターを人質にするなんて……最低!」

 

 

 

 

 突然、そんな大声が聞こえた。

 

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

 

 状況は最悪と言わざる得なかった。確かに、油断をしていた自分にも責任はあるだろう。思わず歯を噛み締めて、Animaliaは目前のプレイヤーの集団。プレイヤーキラー達を睨みつける。

 

 

「お?どうした?モンスター撮影クラン『SF-Zoo』のリーダー、園長サンよォ?」

 

 

 思わず毒を吐きたくなるが、ぐっと堪える。もし変なことをしてしまえば、目前の男が首を絞めるようにして人質にしている子猫のモンスターが何をされるかわからない。

 

 相手は4人。恐らく『阿修羅会』の下っ端メンバーだ。いくら自分が対人を基本的にやらないクランのリーダーだとしても自衛の心得はある。今の状況でなければ、戦えなくはない。

 

 だが、自分の後ろには人質にされている子猫と同じ非アクティブモンスターが2匹。レベル差も考慮すれば戦えなくないかもしれないが、少なくともこの状況では意味を成さないだろう。ましてや自分は後衛職で、デバフに特化したビルドだ。今の状況で抵抗しようものなら、最悪自分の攻撃で後ろの2匹や人質の子猫を巻き込みかねない。

 

 自分にとって、動物とは愛でる対象。それこそ、シャンフロにおける自身の命よりも重いものなのだ。今の状況に、子猫たちに罪はない。狙われて、警戒をしていなかった自分の落ち度だ。

 

 自分がそこに巻き込んでしまっただけなのだ。それが、Animaliaにとっては悔しくてたまらない。

 

 

「わ、私は」

 

「あぁん?」

 

「私はどうなってもいいから!好きなようにキルしてくれてもいいから!だから……その子達だけは放してあげて!」

 

 命乞いなど本当はしたくない。だが、もしそれでこの動物達の命が助かるなら、と。誠意を見せるように保有していた武器を、遠くに投げ捨てて武装解除して見せた。

 

「くっ……はは!おい聞いたか!?」

「自分はどうなってもいいから、その子達だけは?傑作だな!」

「やっば!そういうロールプレイなの?」

「ゲームの世界で何言ってるんだか、たかだかデータの塊。それもモンスターだぞ?」

 

 嘲るように、煽るようにそんな言葉が飛ばされ、笑い声が聞こえる。

 

 違う。確かに、ゲームの世界で、データの存在なのかもしれない。

 

 それでも、自分にとっては――リアルでそれが叶わない自分にとっては、この世界の動物達こそ本物なのだ。

 

 俯き、悔しくて仕方ない。どうやっても、どれだけ何かを差し出してもこのプレイヤーキラー達は止まらないだろう。

 

 人間と人間。プレイヤーとプレイヤーの諍い事に、動物を巻き込み、それをどんな状況であれ解決できない自分が嫌になりそうになり、ただ諦めとともに目を閉じそうになった。

 

 

 その時だ。

 

 

「この子をお願い」

 

 声が聞こえた。感情を感じさせない、女性の声だ。

 

 同時に風が吹き荒れる。その瞬間に、プレイヤーの赤い破損エフェクトと共に子猫を人質に取っていたプレイヤーキラーの首が飛んだ。

 

 慌てて子猫をキャッチし、状況を確認するとすべてが終わっていた。プレイヤーキラー4人全員。その全員の身体は此方を向いたままであり。全員の首が飛び、数秒後に破損エフェクトが全身に広がり、消失した。

 

 

「大丈夫?」

 

 

 我に返って正面を見れば、そこにはプレイヤーが一人。

 

 黒い皮の軽鎧に、白い腰くらいまでの長さのコート、黒のショートパンツにブーツ。そして、白の長髪。その相手は、赤黒い鞘に刀を納刀しながらそう言葉をかけてくれた。

 

 それが、Animalia。『厳島 真里亜』と、かけがえのない友人となる相手。レインとの出会いだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 レインは激怒した。必ず、この悪逆非道のプレイヤーキラーを始末しなければならないと決意した。

 

 今の彼女をオイカッツォが見れば『やっべ……ガチギレしてる……』と言っただろう。そしてペンシルゴンは『あいつら……とんでもないことをしてくれた……!』と頭を抱えただろう。無表情ながら黒混じりの碧の瞳が細められ、左手は左腰の刀の鞘へと添えられ。右手は柄へと手をかけていた。

 

 彼女は動物好きである。実際に、今は"二人で共同生活"をしているが、家族の居る家や、両親の実家では動物を飼っており、それを彼女も可愛がっていた。犬、猫から始まり両親の実家のほうでは、何故か境内の奥にいつも居るとても大きな狼などがそうだ。

 

 だからこそ、今。木の陰から見ているこの状況が許しがたかった。無抵抗な子猫を人質に取り、それを攻撃できないプレイヤーを嬲る。すぐさまレインは状況を確認する。

 

 相手は自分に気がついていない。これだけ近づいて気がついていないあたり、探知系のスキルの発動はない。4人全員が近接武器であり、内一人は人質を取っている関係上両手が塞がっている。周囲を確認しても、嫌な気配はない。

 

 状況はクリアされている。ダクアヴェをやっていた頃は、もっと過酷な対人環境だったからか、あまりにもこのプレイヤーキラー達の戦術管理は杜撰だと思えたが、今はそのほうが都合がいい。

 

 居合の構えを取ると、そのままレインは加速した。

 

 まず狙うのは、子猫を人質に取るプレイヤー。背後から最大加速で接近して、抜刀。刀で子猫を傷つけないように、首だけを飛ばす。

 

 すぐさま鞘から手を離した左手で子猫を回収すると、次のプレイヤーを始末するために加速しながら、視界の中に映る頭に角飾りのパーカーを着ているプレイヤーを確認する。先程のやり取りから、きっとあのプレイヤーは動物に対して優しい人だ。そう思って、できるだけ優しく子猫を宙へと投げ、『その子をお願い』とだけ言った。

 

 そのまま続けざまに横並びに。間隔を開けて居た残りの3人の首を順番に刎ねる。そして、全員のキルが完了。プレイヤーキラーだったからか、その場には大量のアイテムがドロップした。

 

 一息ついて、【彼岸ノ太刀】を納刀する。そして、頭に角飾りのパーカーを着ているプレイヤーに向き合い。

 

「大丈夫?」

 

 そう、声を掛けた。

 

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

「本当にありがとう!正直、どうしようもなくて……レインが来てくれなかったら、きっとどうしようもなかった」

 

「ん、気にしないで、あーちゃん。かわいい動物をあんな風に扱うプレイヤーは敵。生かしてはおけない」

 

 森の木陰。空からは夕日の光が降り注ぐ樹の下で二人はそんな会話をしている。

 

 レインがプレイヤーキラー全員をキルした直後、Animaliaは錯乱していた。何故なら、助けられたのはいいが突然プレイヤーキラー全員の首が飛んだのだ。突然のこと過ぎて唖然とすると同時に混乱して、『お、お願いしますこの子達だけは!』と叫んでいた。そしてレインも困惑して、『なにもしないよ、大丈夫』などと言って彼女を冷静にさせるまで暫くの時間を要した。

 

 緑の生い茂る芝のような地面へと腰を下ろす二人の近くには、子猫型のモンスターが3匹。1匹はレインに抱きか抱えられており、2匹は二人の近くで丸くなったりしている。

 

 レインとAnimaliaは落ち着いてから話してみると、すぐに意気投合した。最初は通り名と同じように『園長』と呼ぼうか、とレインが言ったのだが、別の名前で読んでほしいと提案された。なので、『アニマリア』という名前から簡単に取って、別ゲーのライバルであり友人への呼び方を考えたときと同じように『あーちゃん』と呼ぶことにした。

 

 互いに動物が好きで、こうやって触れ合うのが大好きなのだ。そのまま子猫たちと遊びながら、現実の動物談義から始まり、Animaliaによるシャンフロにおける動物談義。そして、自分が動物を愛でたりスクショを取るのが好きなクランのクランリーダーであることを話していた。

 

「実は私、リアルではこうやって動物に触れられない体質でね。だから、こっちが私にとっての本物というか……あ、あはは。やっぱりおかしいかな?」

 

「おかしくないよ。だって、仮にデータだったとしても、この子達や動物達はシャンフロっていう世界に生きている。それって、世界が違うだけじゃないのかな?とも思うから」

 

「うん……うん!そうだよね!だって、こんなにかわいくて、みんな生きてるんだから!」

 

 鼻声になりながら彼女は言う。目元を拭くようにして擦ると、すぐに笑顔を作ってレインへと返す。

 

「あ、あのね。お願いがあるの」

 

「うん?」

 

「私と、フレンドになってください!」

 

 その言葉の後に送られてくるフレンド登録の通知を見て、レインは口元に笑みを浮かべる。そのまま、左手で子猫を抱いたまま、右手でウィンドウを操作し。『はい』のボタンを押した。

 

「こちらこそ、よろしく。あーちゃん」

 

 これは先の話だが、レインとAnimaliaが非常に仲の良いことはシャンフロ中に広まることになる。

 そしてレインは動物好き。時には彼女と動物観察に行く姿も目撃される。

 

 つまり、友人として。そして用心棒として彼女や彼女のクランの活動に同行していることがあるのだ。

 そして、同行していなくともフレンドコールがある。これが何を意味するのか。

 

 クラン『SF-Zoo』やAnimaliaに手を出すと、修羅に首を斬られる。

 

 そんな噂が広まったという。

 

 

 





 レインのシャンフロでの身内以外での最初の友達はAnimalia。お互い動物好きでとても仲良しです。レインからとても大きな白い狼が両親の実家にいるという話を聞いて大興奮したとかなんとか。

 『SF-Zoo』は超優秀なタンクとデバッファー集団でしたが、たまにゲストでレインちゃんが同行するようになりました。なお、レインちゃんは悪質なPKが大嫌いです。『生かしてはおけない』というくらいには嫌いです。

 とりあえずもう一話だけ0時半頃に投稿して暫くの間不定期になります。
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