とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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 ウェザエモン戦終わりまで一気に駆け抜けて投稿しようか悩み中。


彼岸より未来へ願いを込めて 其の三

 

 

「なっ……!?」

 

「んなのアリかよ!?」

 

 悪態をつくサンラクとオイカッツォ。そして、流石のペンシルゴンも想定外だった。

 

 どうする、と。焦る頭で考える。最悪のパターンなのは現在戦闘中の誰かひとりでも落とされることだ。現状は騏麟、そしてウェザエモンが3体。合計4体の状況。本来なら『対価の天秤』の準備を完了し、万全の状態にしたいところだが自分も前に出るしかない。そう考えた時だ。

 

 

「カッツォ」

 

「レイン?」

 

「信じてる。――だから、そっちお願い」

 

 一瞬、不意を突かれてポカンとしたようにしたオイカッツォだったが、すぐに『……ははっ』と笑って見せた。

 

「ああ、信じろ。 この馬モドキは、俺がなんとかしてやる」

 

 拳を構え、騏麟のターゲットを取りに行くオイカッツォ。それを見てペンシルゴンもまた、どちらかの対応に向かうべきかと考えていると、

 

 

「ペンシルゴン。そのまま準備を進めて。こっちは、私とサンラクでなんとかする」

 

「ははっ、中々きついことを言ってくれるなレイン だけど、悪くない。ゲーマーたるもの、これで燃えないほうがおかしい」

 

 目前でゆっくりとした動きで3体のウェザエモンが構える。

 

「……わかった。私は準備を継続する。けど、気を付けて。少なくともこのフェーズ変化は、私も知らない。完全に未知だ」

 

「未知ならそれを学び未知じゃなくすればいい、違うか?トライアルアンドエラーはクソゲーマーの必須スキルでもある」

 

「いいね、なんだか偉人の言葉みたいだ ――二人共、頼んだ」

 

 

 ペンシルゴンが後方に下がる。そして、再び準備を再開する。

 レインとサンラクもまた真剣な目で3体になったウェザエモンを見据える。

 

「あれは私の師匠よりも動きが遅い。だから、私が二体受け持つ」

 

「それは助かる。ターゲット位置はどうする」

 

「下手に離すと【雷鍾】のトリガーを連続で引くかもしれない。お互いの距離は10メートル以内で」

 

「オーケー、【入道雲】はどうする」

 

「警戒しなくていいと思う。……もし、来た場合は片方の対応してる方向に擦り付ける」

 

「んん?それは……なるほど、同士討ちか」

 

「うん、でも私が敵なら【入道雲】は相当距離があって味方と距離が離れてないと使わない。撃ってきたらラッキー」

 

 

 レインの推測は当たっていた。シャンフロにおいて、モンスターの攻撃判定とは殆どの場合、周囲のモンスターに対しても判定がある。モンスターの攻撃が、同じ他モンスターに対して判定がないなど、特殊なケースを除いてまずこのゲームではない。つまり、今の状況下の場合誘導性やある程度の制御が効く【雷鍾】はともかくとして、一気に広範囲を薙ぎ払う【入道雲】を使用するとどうなるか。

 

 もし、その範囲内に他のウェザエモンがいる場合、攻撃が当たることになる。仮にダメージが入らないとしても、あれだけの威力だ。当たり判定によってノックバックは避けられないだろう。そして、【入道雲】の発生もタイムラグが有り、見てから走ることで回避できる。

 

「悪いが、二体頼む。流石に今の俺だと一体が限界だ。そのかわり、ちゃんと完璧にやって見せる」

 

「まかせて。――来るよ」

 

 複数体に増えたウェザエモン。未知の状況との戦闘が開始された。

 

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

「……流石に、ちょっときつい」

 

 珍しくレインが無表情ながら、そんな言葉を漏らす。

 

 慌てている様子はない。だが、その目は真剣そのものであり、絶え間なく襲い来るウェザエモンの攻撃を凌いでいた。

 

「師匠ほどじゃない。……でも」

 

 そう、厄介なことに変わりはないのだ。

 

 少なくとも今敵対してるこのウェザエモン。戦術機甲【斉天】の防衛機構と推測される相手の攻撃は、予備動作やパターンが有るだけで、速度はとてつもなく早い上に一発でも掠めれば終わりだ。

 

 二体のウェザエモンによる、偏差的に放ってくる2度の【断風】。1度目のそれを最低限の動きで回避し、2発目をパリィで受ける。

 

 同時。パリィのバトルエフェクトが発生した瞬間。空間に弾けるようにして発生したそれが、刀へと吸収される。だが、それをレインはわかっていることのようにして気にすることもなく戦闘を継続した。

 

 ちらり、と。レインは二体のウェザエモンの攻撃を捌きながらサンラクを見れば、彼にも焦りが見えていた。

 

 現時点で戦闘不能回数は全員ゼロ。事前のレインとペンシルゴンの情報から想定できる対応策。そして、第一フェーズの内にサンラクとオイカッツォの二人が敵対者についてデータを集めたのがかなり大きく、極めて良い状況ではある。

 

 だが、このあたりに来て雲行きが怪しくなってきた。ウェザエモンの動きが活発化したのである。極端に動き方が変わったわけではない。問題なのは、まるで人間のような挙動に近づいているという点だ。

 

 例えば、プレイヤーの攻撃に対してのカウンター。第1フェーズでは、一方的にスキルを打ち込むだけだったウェザエモンが今は、フェイントやカウンター、崩しなどの対人戦での駆け引きのようなことをやってくるようになった。

 

 そのどれもに引っかかれば即戦闘不能だ。確実に硬直や隙に対して攻撃を打ち込まれて終わる。それをサンラクも理解しており、苦い顔をしながら今にも悪態をつきそうな状態で捌き続ける。

 

「カッツォくんしっかり!『キャバクラ』とかいうゲームやり込んでたでしょ!?」

 

 そんなウェザエモンの攻撃を捌き続ける中。二人の耳に慌てながらそう叫ぶペンシルゴンの言葉が聞こえた。

 

「なんだそのクソゲーは!?聞いたことないぞ!?   ……あっ アノ、レインサン?」

 

「なに」

 

 とてつもなく冷めた目で、遠方。騏麟のモーションを誘発し続けながらなんとか背中に跨った状態を維持しようとしているオイカッツォを見ているレインを、サンラクは見てしまった。

 

 

「ペンシルゴンお前……!違う、おい違うからなレイン!?誤解だぞ!?」

 

「そういうゲームが好きなんだね、大丈夫、わかってるよ。『男は狼なのよ、気をつけなさぁい』って、【神拳】……ジンねぇが言ってたし」

 

「あの人は……!『キャバリー・クライシス』っていう乗馬格闘ゲームだ!」

 

「大丈夫、私は理解があるから」

 

「ペーンーシールーゴーンー!」

 

 騏麟に考古学者のスキル、縄傀儡【蛇】により轡をはめたような状態にしてなんとか抑え込んでいるオイカッツォは、『お前ふざけるなよ、ちゃんと弁明しろ』というようにペンシルゴンへと叫んだ。

 

 流石に慌てていたとはいえ、言葉選びがまずかった。そう反省したペンシルゴンは急いでの準備を継続しつつ弁明する

 

「ごめんレインちゃん、私の言葉が悪かった……。『キャバリー・クライシス』。割と有名なVR乗馬格闘ゲームなのよ。カッツォくんはそこで全国ランカーらしくて、ならその暴れ馬くらいなんとかしろって意味合いだったんだけど……。うん、ごめん私が悪かった」

 

「そっか、そうなんだ。ん、わかった」

 

「えっ、なんかお前ペンシルゴンに対しての好感度妙に高くない!?」

 

「ペンシルゴンはいいプレイヤーキラー」 

 

 

 おかしい。どうしてうちの幼馴染はこうもあの外道の化身とも言えるペンシルゴンに懐いているのか。後日、一体何をやったのかペンシルゴンを問い詰めなければならない。そう心に決めつつ大暴れしている騏麟を抑え込むことを継続する。

 

 なお、サンラクはといえば『なんだ、クソゲーじゃないのか』と若干しょんぼりとして、ウェザエモンの攻撃を捌くのを継続した。

 

 

 そうして、第二フェーズ開始から5分が経過しようとしていた時。

 

 

 

「……対象の、脅威レベル…更新。再稼働(リブート)再稼働(リブート)。使用者の生体記録を読み込み。エラー。……脅威レベル更新により記憶を部分的に読み込み。成功。 ―――『記憶展開(インストール)』。 発動、『分け身』!」

 

 

 

 ふざけるなよ、とサンラクは思った。レインもまた、本格的な焦りが徐々に表情に出てきていた。

 

 

 

 3体居たウェザエモンが合計5体に増えた。よって、レインのターゲットが三体。サンラクが二体となる。

 

 

「おまっ……!クソ強ボスキャラが分身するのは反則だろ!?」

 

「流石に、面倒……!」

 

 遂にレインの表情が歪む。それはそうだろう、このウェザエモンはNPCのウェザエモンと比べて理不尽な攻撃をしてこない。しかし、NPCの方には及ばないものの、かなりの速度で攻撃を繰り出してくる。それを複数体が偏差や多方面から繰り出してくるのだ。

 

 いくらレインが本来のウェザエモンと戦えるほどの実力を有していても、ユニークモンスタークラスの攻撃を多方面から繰り出されるのを余裕を持って対応はできない。

 

 サンラクも動きを把握して、一体のウェザエモン相手ならば対応が可能であったが複数体となれば事情が変わる。全滅に繋がりかねない【雷鍾】の発動トリガーを引かせないために、全てのウェザエモンの距離を一定範囲内に収める必要がある。かつ、それをしながら後5分耐えるのだ。

 

 最大の問題は、ユニークモンスタークラスの攻撃が多方面から飛んでくるという点にある。加えて、相手にダメージは発生せず、戦闘距離の制限まである。

 

 問題はまだあるのだ。もし、現在ターゲットを受け持っているレインとサンラクのどちらかが戦闘不能となった場合どうなるか。すぐにリカバリーをしなければ、ターゲットが切れて自分の受け持っていたウェザエモンが全てもう片方へと移る。

 

 つまるところ、この状況下での戦闘不能は許されない。もし片方が落ちれば、その時点で全滅コースなのだ。

 

 現時点ではなんとかなっている。だが、残り時間の間、全員がそれぞれのターゲットに対しての対応をノーデスで出来るかどうかと言えば、かなり厳しい。レインにも焦りが見えており、サンラクもかなり息が上がっている。オイカッツォもなんとか騏麟の背にしがみついているが、必死の状況。

 

 このまま誰かが倒れればその時点で壊滅に繋がりかねない。そんな時だ。

 

 

 

「……よし!みんな、おまたせ!この私の全財産を叩いた切り札。これで状況を打開する! 全部持ってけ!」

 

 

 

 状況を打開する切り札が遂に切られる。ペンシルゴンの持ち出した『対価の天秤』。その準備が完了したのだ。

 

 今回、ペンシルゴンがコストとして用意したのは3000万マーニ。そこにレインがプレイヤーキラーから回収した物資の分配が加算され、合計4000万マーニとなっていた。そして、ペンシルゴンはそれを余すことなく一時的なステータスブーストに割り振った。

 

 よって、一定時間の制限はあるものの合計400ポイントの割り振りが可能。そして、今この瞬間合計300ポイントを使用して三人へと割り振った。

 

 サンラクはSTMとLUCを。オイカッツォはVITとSTMを。レインはAGIとDEXを。ステータスブーストによる影響はすぐに現れる。サンラクはSTM増加に伴い、行動のリソースが増えた。よって、限界近かった二体のウェザエモンへの対応を捌き切れるほどまで状況が改善された。

 

 オイカッツォも同様だ。振り落としのモーションを誘発させ、抑え込むのに苦労していたがサンラク同様STMに余裕が出たことにより安定が出てきた。レインも焦りを見せていたものが、AGIのブーストによってより高速な対応が可能になった。

 

 戦況が好転する。不利に傾いていた状況が、一気に拮抗まで戻った。なんとか準備が間に合ったことにペンシルゴンは安堵するが、ある疑問が湧いてくる。このウェザエモンの見たことのない行動パターン。そこから考えるに、この先のフェーズがとてつもなく嫌な予感がするのだ。

 

 フェーズ3以降はペンシルゴンも未知の領域だ。しかし、もしもウェザエモンの行動が何らかの要素で変化しているとしたら?間違いなく激戦となるだろう。

 

 『対価の天秤』を発動後、オイカッツォのフォローに回ったペンシルゴンにより、彼女の想定していた作戦は考えうる通りの布陣となった。ウェザエモンをサンラクとレインが、騏驎を自分とオイカッツォが。ステータスフルブーストに加えて、ありったけのバフアイテムなどを投入して二人に分かれる『双璧作戦』。蘇生アイテムも現時点では一度も消費されていない。状況はかなりいい状態だ。

 

 

「……なんだ?止まった?」

 

「さて、問題はここから……!みんな、集まって!」

 

 そうして、定められた時間が訪れる。第二フェーズの10分が終了したのだ。ウェザエモンが項垂れるようにして沈黙すると同時、それまで大暴れしてた騏驎は静かに沈黙し、分身していたウェザエモンは本体を残して消滅した。

 

 ペンシルゴンは全員に集まるように指示すると、アイテムを準備しながら言葉を続ける。

 

 

「倒した……というわけじゃないよな」

 

「ここからが多分本番で、完全に未知。まだメンバーがマシだった頃の阿修羅会でもここまで来たのは一度っきり。便宜上第三形態と呼ぶけど……その時は墓守のウェザエモンの初手で全滅した、って説明はしたよね」

 

「ああ、確か全体攻撃で成すすべ無く全滅……だったか?」

 

「ええ。いくら防御バフを固めてもダメだった。けど……言ったでしょ?対策はあるって」

 

 そうしてペンシルゴンはアイテム。意匠の凝ったポーションの瓶のようなアイテムを全員に見せる。

 

「多分だけどあの全滅攻撃はギミック。それを攻略しないと全滅するっていうものだと思う。そして……サンラクくんの話とレインちゃんの話から、ある可能性に行き着いた」

 

 ペンシルゴンは二人の話からある可能性を考えていた。サンラクからの『死に損ない』と言い表された言葉、レインが出会ったNPCのウェザエモンの話。そこから想定されたのは

 

「ウェザエモンの正体はアンデッド!シャンフロの聖女ちゃん特製の聖水。対アンデッドとしては最強クラスのこれを喰らえ!」

 

 ペンシルゴンがポーション瓶をウェザエモンに投げつける。パリンと小気味の良い音を立てて墓守のウェザエモンに瓶が命中し、瓶が割れて中身のうっすらと青く発光する水を墓守のウェザエモンは浴びることになる。 

 

「……ォォォオオオオオオオ!!!」

 

 変化はすぐに現れた。俯くようにしていたウェザエモンの鎧には所々ヒビが入り、大気を震わせるほどの咆哮をあげると同時、悶えるような動作をする。

 

「ペンシルゴン!」

 

「ビンゴ!大丈夫、全体攻撃のモーションじゃない!」

 

 悶え苦しむ動作を止めた墓守のウェザエモンの肩、腕、腰。各部の装甲が割れるように弾け、全身の亀裂から血が噴き出すように青い炎状のエネルギーが噴出する。

 

 

 

 そう。本来ならば、ここからが最終フェーズ。

 通常のフラグの状態でのウェザエモンの場合に進行する最終フェーズに入る、筈なのだが。

 

 

 今回は訳が違った。なぜならば、特定のフラグを進行させているプレイヤーが存在しているからだ。

 

 

 

「……ああ。漸く、実体のある身体で会えた」

 

 

 突然、ウェザエモンが喋りだした。苦しんでいたと思ったら、ゆらり、と。幽鬼のように立ち上がり落ち着いたような声でそんな言葉を言ったのだ。サンラク、オイカッツォ、ペンシルゴンは困惑した。

 

 しかし、レインだけは別だった。

 

 

 

「師……匠?」

 

「……驚くことはないだろう、レイン。言ったはずだ、この身体は俺でもあると」

 

 マシンボイスのような声。だが、それは確かに聞き慣れた、レインにとっては師の声だった。

 

 

 

 

 





 実はレインちゃんはとても独占欲が強い。そしてペンシルゴンへの好感度もかなり高い。めっちゃ懐いてる。サンラクとオイカッツォからしたら信じられないというレベルで懐いてる。ペンシルゴンからすれば、忠犬系後輩。とてもかわいいと思ってる。

 そして本性を表しました、ウェザエモン。本来、NPCフラグが成立していなければアニメとか原作の『墓守』ルートです。ですが、今回はNPCフラグをレインが成立させているため、『窮極』ルートに入っています。この先生きのこれるのか。

 実はウェザエモン戦終了して、クラン結成までは肉付けとか終わってます。なのでとりあえずウェザエモン編終わりか、ウェザエモン戦終わりまで駆け抜けるか考え中。

 
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