とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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 最終決戦、開幕


彼岸より未来へ願いを込めて 其の四

 

「……何故、俺が今此処にいるのか。そんな顔をしているな」

 

「だって、それは。師匠はあの日を最期に、あの場所には――」

 

「……ああ、そうだ。俺はあの日、全てを託すことが出来た。そう感じたからこそ、消えた。そして、俺の意識は本来の身体へと戻った」

 

 ふむ、と。ウェザエモンは考え込むようにすると

 

「……サンラク、オイカッツォ、アーサー・ペンシルゴン。なるほど、お前たちが我が弟子の仲間達か。いい面構えだ、ああ。強者の顔をしている。彼らは、俺のことを何処まで知っている?」

 

「私の知ることは、できる限り話した」

 

「……なら、話は早い。恐らく疑問だろう。例えば、何故、俺という意識がこうして出てきているのか。今の状況は、ウェザエモンが二人いるという状況ではないのか」

 

 その通りだった。サンラク達はレインからNPCのウェザエモンの話を聞いている。何故、NPCのウェザエモンが存在しているのか。ユニークモンスターのウェザエモンは何者なのか。どうしてそうなったのか。

 

 だからこそ疑問なのだ。NPCのウェザエモンは、神代にウェザエモン本人が己の意識を分けて、別次元に封印した存在。つまり、オリジナルの一部なのだ。そして【墓守】のウェザエモンもまた、オリジナル。かつての時代に未来永劫、天津気刹那の墓を守り続けるという誓いを立てたオリジナル。

 

 今表に出ているのは、レインが師匠と表したところを見ると封印された意識のほうだ。なら、今の状況は"本来の身体の2つの意識が存在している"ということになる。

 

「……この身は。【墓守】としての我が身は、いわば防衛機構だ。鎧の力によって無理矢理身体を動かし、刹那の墓を守り続けるいわばシステム。そうなることを選んだのは俺自身の選択だ。だが、」

 

 ウェザエモンがレインを見た。鎧のフェイスガードにより表情を伺うことは出来ない。だが、レインには向けられているそれが、かつて師が見せた諭すような。安堵したようなものに思えた。

 

「……俺は、未来を望んだオリジナルの意思だ。未来へと継ぎ、道を示し、育み、託す。それを望んだ意思。だがそれは、本来の俺が持っていたものでもある。そうだな、託すことが出来て、本来の身体に戻ったと言えばいいか」

 

「じゃあ、今の師匠は」

 

 

 

 

 

「……いかにも。今の俺は、ウェザエモン・アマツキ本人だ」

 

 

 

 

 

 緊張が奔る。つまり、今対峙しているのはただのシステムとしてのウェザエモンではない。ましてや、ペンシルゴンが推測していたシステムとして己を組み込んだ存在でもない。神代における英雄、それが目の前に居るのだ。

 

 

「……俺は、託すことが出来た。そして俺自身もわかってはいるのだ。きっと、刹那はただの生きる屍のように永遠という時の中、ただ墓守としてあり続けることを望まないと。俺と、刹那が本当に望んだのは"停滞"ではない。未来に繋ぐ可能性だ。未練はもうない、託すことが出来たからだ。 ――故に」

 

 

 ゆっくりと。だが、確かな意思を込めて。ウェザエモンが地面に突き刺していた大太刀を引き抜き、構えてみせた。

 

 

「……俺を、終わらせてくれ。眠らせてくれ。未来にはこんなにも可能性があるのだと、我が志と想いは受け継がれるのだと教えてくれ」

 

 空気が変わる。絶対的な強者の威圧感。大気が震え、身体で感じる空気は痛みを感じるかのように、刃のように鋭い。

 

「……ああ、そうだ。レイン、騏麟の話だけはしたことがあったな。聞かせてはくれまいか、我が愛馬の感想を」

 

「すごく強いね。強くて、とても凛々しくて、かっこいい」

 

「……はは。そうか、それは嬉しいな。一度、見せたかったのだ。あれほど目を輝かせて機獣の話を聞くお前に。 さて」

 

 

 ブオン、と。大太刀を一度横に払った後、ウェザエモンはそれを正眼に構えた。

 

 

 

「――征くぞ。『二号計画』の末裔、未来を紡ぐ者達よ。 我は空、我は鋼、我は刃!我が刃は『窮極』にして、総てを断ち切る!我が名はウェザエモン・アマツキ。過去にありて、未来を望む者」

 

 

 全員が武器を構える。同時、沈黙していた騏驎が再起動して、まるで頭と胴体のない甲冑のような形態に変形する。

 

 

 

 

「――いざ、推して参る!」

 

 

 

 最終フェーズが開始される。

 

 

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

「な……!?」

 

 

 開幕、オイカッツォとペンシルゴンは目を見開くことになる。

 レインと隣合わせで構えていたサンラクが斬られた。それも、ほぼ反応すら許されずに。

 

「サンラ――」

「……油断はいかんな」

 

 サンラクが斬られたことを理解したペンシルゴンは、即座に『再誕の涙珠』を使用しようとするが、瞬間。目前にはウェザエモンの刃が迫っていた。

 

 慌てたことにより既にアイテムの使用モーションに入ってしまっている。回避は、間に合わない。

 

 

「ペンシルゴン、サンラクを!」

 

 珍しく大きな声。それも、焦りの見える声がレインよりした。同時、ペンシルゴンの前に割り込んだレインが抜刀し、ウェザエモンを迎え撃つ。

 

 

「……ほう。今の俺の状態でも、対応してくるか。流石我が弟子だ」

 

「正直、気を張ってないと厳しいよ」

 

 レインが、刃をパリィではなくジャストガードで受けた。

 しかも、ガードだけではその勢いに耐えられず、後方へと後退する。

 

 この戦闘が開始されて、今までレインは一度たりとも、ウェザエモンの攻撃で後ろに退くことはなかった。大抵がパリィ成功からの前方への踏み込み。攻撃的な動き方であった。

 

 その彼女が、下がった。しかも表情には取り繕ってはいるが焦りが見ている。

 

 レインのお陰でリカバリーには成功した。ペンシルゴンの『再誕の涙珠』使用により、サンラクが復帰。再度体制を整えるまでの時間は稼げた。

 

 

「……諦めぬ限り立ち上がる力、か。サンラクと言ったな。死合の最中ではあるが、聞きたいことがある」

 

「俺に……?」

 

「……その首の首飾り、それをどこで手に入れた?」

 

 全員の視線がサンラクへと向けられる。サンラクはといえば、困惑しっぱなしだった。何をされたかもわからず斬られたのもそうだがウェザエモンがこうして意思疎通を図ってきたこと、お守りだと言って預けてくれた首飾りについて言及されたこと。

 

 理由はわからない。だが、これはエムルから預かったもので、お守りとしか聞いていないのだ。

 

「あんたとの決戦に行くって俺の連れに言ったんだ。そしたら、お守りだと言ってこれを預けてくれた」

 

「……そうか。それを持つということは、きっと奴だろうな。はは、そうか  ――成し遂げたのか、アリス」

 

 アリス、その言葉に対してサンラクがどういう意味だと考える中、満足気にウェザエモンは頷いた。

 

「……ひとつ、頼みがある」

 

「頼み?」

 

「……ああ。お前達が俺を超え、未来へと進むならば。俺の末路をそのお守りの本来の持ち主に伝えてくれないか」

 

「――ああ、わかった。あんたをぶっ倒して、ちゃんと終わらせて、それでその頼みを完遂してやる。さっきは不覚を取ったけど、絶対諦めない。俺、負けず嫌いなんでね」

 

「……はは。ああ、良いな。その強さと意志の輝き。それこそ俺が、俺と刹那が求めていたものだ」

 

 ドスン、ドスンと音がした。変形した騏麟も本格的に動き始めたようで、二足歩行となった姿で此方へと進行してきている。

 

「ペンシルゴン、カッツォ。向こうを頼む」

 

「ッ……でも、」

 

「冷静になれよペンシルゴン。いつもの外道っぷりを発揮させる余裕と冷静さはどうした? 『双璧作戦』。当初の作戦通りにしないと全滅する、わかるだろ」

 

 ペンシルゴンもそれは理解している。元々、騏麟が出てくるのはわかっていた。つまり未知であるフェーズにおいても騏麟が介入してくるのはほぼ間違いない。だからこそ戦力を2つに分けたのだ。ウェザエモン担当と、騏麟担当。それぞれがサンラク・レイン、そしてペンシルゴンとオイカッツォ。

 

 そうすべきなのは理解している。だが、明らかに今のウェザエモンは常軌を逸している。レインが焦りを見せ、サンラクが何をされたのかも理解できずに斬られた。

 

 そして、焦りを見せているのはオイカッツォも同じだ。

 

「レイン、お前まさか」

 

「……ん。ごめん、カッツォ。でもそうしないと、勝てない」

 

「頼む、やめてくれ」

 

 珍しくオイカッツォが弱気な言葉を吐いた。

 

「大丈夫。こっちなら、あんなことにはならないよ」

 

「だとしても、身体への負担は出る」

 

「うん、理解してる。……きっと、終わったら疲れて寝てるかも。 ――大丈夫だよ。私は、もう二度とカッツォを忘れたりなんてしない」

 

 『信じて』、と。言葉の最後に言われたオイカッツォはどこか辛そうに、歯痒そうに俯き、目を閉じるがすぐに顔を上げる。現実ならば、どんな手段を使ってでも止めるだろう。そして本人も、現実では今まさに行おうとしているそれをしないように意識している。

 

 VRの中でなら問題はない。問題はない、が。負荷は発生する。それによって極度の疲労状態になって、時には意識を失ってそのまま寝てしまうこともある。だから、こっちでも無理だけはさせないようにしていたし、ちゃんと言っていた。

 

 

 

 

「――ああ、もう! 約束だ、ちゃんと休んで起きてこい!暫くの家のことは、俺がやってやる」

 

「ごめん。それと、ありがとう」

 

「俺も、お前のことを信じてるからな。 ……そっちは、頼む」

 

 足を止めたい衝動を抑えながら、本当は彼女が心配でたまらないという想いを持ちながらもオイカッツォは背を向けて自分の成すべきことを成すために、二足歩行の巨体へと加速する。ペンシルゴンも同様だ。ウェザエモンを担当する二人。その二人を案じるように一度見た後、彼女もまた騏麟へと駆ける。

 

 残った二人は改めてウェザエモンと相対すると、再び武器を構え直す。

 

 レインにはある確証があった。今のウェザエモン。己の師は、自分が死合いをし、教えを請うていた時よりも強い。いわば、その師が戦術機甲【斉天】を纏った、まさに神代の英雄の姿。

 

 それを超えるには、リスクなしでは超えられない。だから、無理をすると決めたのだ。

 

「2対1。卑怯とは言わないよね、師匠」

 

「……こちらとて、戦術機甲に騏麟まで使っている。戰場は高潔な場ではない。卑怯であろうと、勝たなければならないこともある。それに、俺は嬉しいのだ。我が弟子と、その仲間である強者とこうして死合うことができるのが」

 

 

 故に、と。ウェザエモンは言った。

 

 

「……さあ、再開と征こう。見せてくれ、お前達の輝きを。未来へと紡がれる希望を!」

 

 

 再び決戦の幕が上がる。今度は、決着がつくまで続く、その幕が。

 

 故に。レインもまた全力だ。無理を通してでも超えなければならない相手が。至らなければならない境地がある。

 

 だからこそ。彼女もまた、今まさに己の全てを以て相対してくれている師に対して、同じように自分のすべてを以て相対すると決めた。

 

 

「――うん、見せるよ。私の、私達の力を。ちゃんと師匠が安心できるように。 だから、」

 

 

 『私も全力』と、呟いて。静かに目を伏せ。

 刹那の後、再び目を開くと、

 

 

 

 

 

 

「征くよ、『天征』」

 

 

 

 

 

 ドクン、と。何かが脈動する。彼女の持つ刀は形状は変わっていない。目に見える何かが起こっているわけでもない。だが、確かに。確かに『ナニカ』が目を覚ました。そしてそれは、彼女に応えるように、世界そのものを震わせた。

 

 

 

 怯えている、世界が。

 震えている、世界が。

 

 

 幾多の年月を超え、共に在る存在を見つけたそれが目覚める。

 未来への願いと祈りを持ち、されどかつて世界の敵となった――最凶の存在が。

 

 

「……目覚めさせたか。それを。『天征』、その刀の真の名を。そして、その中に存在するものを」

 

「うん。いい子だよ」

 

「……本当に底が知れないな。奴を従えるか」

 

「違うよ、師匠。従わせてるんじゃない。 ――"私とこの子は共に在るの"」

 

「……なるほど。俺達では、俺達の時代ではできなかった答えだ。 ああ、本当に」

 

 

 『どこまでも期待の上を征ってくれる』と、彼は呟いた。

 

 

 

 

 





 その刀に与えられた本当の名は、天を征するモノ、『天征』。
 

 正直、ノーリスクではどうやっても『窮極』ルートの【斉天】を纏ったウェザエモンには勝てません。剣戟ではレインが追いつけるかもしれませんが、他の部分ではあらゆる面で追いつけない。なので、自分の限界を超えた無理をしてでも至ろうとする。至るために一人で無理なら、仲間や刀の中の存在に助けを求めることだってする。

 勝つためのキーワードは、限界突破と仲間との絆。そして、刀の中に居る『ナニカ』。

 作者は大好物なんです。愛、勇気、友情。そして勝利。勝利までの過程でのその輝きこそが最も美しく尊いものであると信じている。だからもっと魅せてくれ、君達の輝きを!


 と、大体こんなテンションで書いてました。
 絶望しそうになりながらも諦めていない、そんな輝きは素敵だと思いませんか。


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