とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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彼岸より未来へ願いを込めて 其の八

 

 

 

 ――『ユニークシナリオEX「彼岸より未来へ願いを込めて」をクリアしました』

 

 ――『職業クエストEX「継承」を完了しました。『侍』が特殊職業(ユニークジョブ)『剣神』へと変化しました』

 

 

『『剣神』の解放により、全スキルが変化しました』

 

『『窮極』を継承したことにより、『晴天流』のスキルが使用可能になりました』

 

『『名のない獣』が目覚め、あなたを共に在る者として認めました。スキル【分け身】が使用可能になりました』

 

『称号【窮極の継承者】を獲得しました』

 

 

 ウェザエモンが消え、世界が崩れていく。桜の木が枯れていき、そして崩壊の後に4人が立っていたのは『秘匿の花園』だった。

 

 見渡す限りの彼岸の花。星星が存在する夜空と。枯れた桜の木。そして、無機質に表示されたシステムメッセージが現実へと意識を戻していく。

 

「……っ」

 

「レイン、もういい!今日はログアウトしろ!」

 

「もうちょっとだけ、がんばらせて。セツナに、会わなきゃ。ちゃんと、伝えないと」

 

 心配の声をあげるオイカッツォに対して、レインはもう少しだけ頑張らせてほしいと伝えた。それを聞いた彼は、苦い顔をしつつも無言で頷いて、ふらつく彼女に肩を貸す。

 

「終わった、のか?」

 

「クエストクリア表示はまだみたい ―――ッ!」

 

 桜の木の下へと視線を移したペンシルゴンが驚いたようにして、『せっちゃん』と呟いた。

 

 全員がペンシルゴンの視線の先を見る。そこには、崩れて空に散っていく、ウェザエモンの大太刀、そしてそれの上に手を添えるようにして立つ、セツナの姿があった。

 

「アーサー、レイン。それにオイカッツォとサンラク。 ……成し遂げてくれて、ありがとう」

 

 儚げな笑顔。だが、感謝の想いを込めてセツナは告げる。そんな彼女に対して、レインがオイカッツォに肩を貸してもらいながら歩み寄る。

 

「……師匠は、満足して逝ったよ。託せた、って言ってくれた」

 

「そう。それは本当によかった。 ……きっと、『刹那』も安心してくれたと思う。怒っているかもしれないけど。もしかしたらきっと、あの人は向こうですごく叱られてるかもしれないわね」

 

 その言葉に対して全員が違和感を持つ。まるで、その言い方では自分が刹那ではない、という言い方だからだ。

 

「セッちゃん……セツナって貴女のことでしょ?」

 

「いいえ、アーサー。私は確かに『セツナ』ではある。けれどあの日死んだ刹那本人とは違うの。彼女の願いが、「もしも恋人がずっとずっと私の死に囚われるのなら、どうかやめてほしい」という想いが生み出した残滓、謂わば筆跡まで完全に再現された写本のようなもの。役割を終えれば消える存在。それが、私」

 

 その言葉の後、彼女の半透明だった身体が少しずつ薄くなっていく。

 

「待って、セッちゃん!」

 

「悲しまないで、アーサー。彼女の願いに世界が応えた時点でいつかはこうなることは決まっていたの」

 

 消えゆく身体で4人を見回した後、真剣な表情になって言葉を続ける。

 

「貴方達は開拓者。『二号計画』の末裔。……もし、あなた達が自身のルーツを。世界の真実を知りたいと願うなら、バハムートを探しなさい」

 

 そして、と続けてセツナはレインを見た。

 

「レイン、あなたは『窮極』を継承した。それはあの人の望むことだった。本当にありがとう。 ……きっと、この先貴方たちには数々の困難が待っていると思う。多くの謎にぶつかることもあると思う。そんな時は、レイン。その刀の中に居る、『名のない獣』を頼りなさい。きっと、力になってくれることもある。彼女は、『終焉』でありながら『未来』を願った優しい子だから」

 

 サンラク達はどういうことだ、という顔をしていたがレインは力強く。約束するようにセツナへと頷いてみせた。

 

 彼女はウェザエモンから、その刀。『天征』の真実を聞かされていた。だからこそ、今のセツナの言葉はよく理解していた。

 

「大丈夫だよ。この世界では、誰にも彼女を傷つけさせない。犠牲になんて、絶対にさせない ――私が、そんなこと許さない」

 

 それを聞いて、セツナは笑った。今度こそ、心底安心したというように。

 

「バハムートが何なのかって疑問は在ると思う。でも、私からはそれについて答えることは出来ない。だからどうか、此処から先は自分で見つけ出して、自分で答えを見つけてほしい。きっと、それが未来を切り拓く者。『開拓者』だと思うから」

 

 身体が殆ど消えかかっている状態。残されている時間はもう少ないのだろう。

 そんな中、今度はペンシルゴンを見て

 

「……最後に。アーサー、これはセツナとしてではなく私自身が貴女に贈る言葉」

 

 それはただの写本としてではなく。自分を想い、願いを叶えるために全力を尽くしてくれた彼女への言葉。

 

 きっと、同じ世界で生きていたなら。かけがえのない親友となれただろうという想いを込めた言葉。

 

「いつも「私」に会いに来てくれてありがとう。大好きよ、アーサー」

 

 その言葉に対して、ペンシルゴンは何かを言いかける。だが、すぐにその言葉を飲み込んで、笑顔を作る。

 

 見送らなければならない。ちゃんと前を向いて、自分の言葉を伝えてくれた『彼女』に。

 

「……こちらこそ!」

 

 目元には涙を浮かべ、だが笑顔で手を振るように。見送るようにしながら言葉を送る。そんなペンシルゴンに対して彼女もまた、笑顔で。そして手をふるようにして。

 

 光の粒となって、消えていった。

 

 

『墓守のウェザエモンは永い眠りについた』

『セツナの残滓は遠き日の願いを終えた』

『ユニークシナリオEX「此岸より彼岸へ愛を込めて」をクリアしました』

 

 セツナが消えると同時。クエストクリアのメッセージとシステムメッセージが表示される。ちゃんと、セツナを『天津気刹那』ではないが、未来を想っていた『セツナ』を見送れたと。そう思った瞬間、安心して。そこが限界だった。

 

 力が抜けて、意識が遠くなる。隣で、大切な相手がとても心配するような声で自分を呼んでいる。

 

 『だいじょうぶ、ちょっと疲れただけ』。それだけなんとか言うと、そこで意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……ん」

 

 目を覚ますと自室であり、ぼんやりとする頭で小さな本棚の上に在るデシタル時計を見れば時刻は昼過ぎ。ウェザエモンとの決戦が深夜だったはずなので、少なくとも12時間以上は眠っていたことになる。

 

 ヘッドギアデバイスは外されており、テーブルの上にある専用のホルダーに片付けられていた。見れば、自身の上にはちゃんと布団が掛けられている。この部屋に入れるのは自分以外だと一人しか居ない。つまり、意識を失ってから彼が色々とやってくれたのだろうと推測する。

 

 疲労感は、かなりある。ふらつきもあるし、ぼんやりとしている頭は暫く経過しても中々改善されない。だが、それだけだ。ちゃんと彼のことは覚えている。向こうの世界の師のことも、刹那のことも。サンラクやペンシルゴンのこともちゃんと。

 

 目が覚めたはいいが、体を動かすには暫くかかりそうだった。だから、ベッドの小物置き場に置いているスマホを取り起動すれば、知り合いからの通知が沢山来ていた。

 

 その中でも目を引いたのは、自分が意識を失ってから何があったのかを大まかにまとめて送ってくれたペンシルゴンからのメッセージ。ライバルであり友人二人からのメッセージと、シャンフロでの初めての身内以外の友人である『Animalia』からのものだった。内容は、どうやら自分達がウェザエモンを倒したことはワールド全体にアナウンスされたようで、大騒ぎになっていること。そして、ユニークモンスターを討伐したプレイヤーと接触を図ろうと血眼になっているプレイヤーが居るということだった。

 

 彼女としても是非話を聞きたいようだったが、文面からはそれ以上にこちらを心配するような内容が多かった。『後ろ盾はあるのか』『面倒なプレイヤーに対してどうするつもりなのか』『とにかく心配だから、ログインしたら連絡してほしい。すぐに助けに行くから』というようなものだった。

 

 余談では在るが、Animaliaにとってはウェザエモンは別に動物に関わることではないから周囲ほど関心が強くないのだ。確かに初のユニークモンスターレイドというのは興味はあるが、それ以上に自分の理解者であり友人の身が心配で仕方ないのだ。

 

 『返事遅れてごめん。そのあたりのことは、ちょと疎いから助けてくれると嬉しい』とメッセージを送ると、即座に返事が来た『うちのクラン総出でもレインには手出しさせない』と簡単なものだったが、妙に熱が篭っているように感じた。ともあれ、心強い限りだと思う。

 

 次に。自分が意識を失った後についてのことを書いてくれたペンシルゴンのメールを見れば。

 

 

 

「……二人共、やりすぎ」

 

 

 思わずそんな言葉が漏れた。そして、『これ、私ペンシルゴンに謝ったほうがいいかな?』と呟いた。

 

 自分が意識を失いログアウトした後、『秘匿の花園』から出た三人を待ち受けていたのはPKクラン。阿修羅会の残党と、クランリーダーであるオルスロットだった。最終的に、こちらに対してプレイヤーキルを仕掛けてきたのだが。

 

 そこに現れたのは、『サイガ-0』。そして、入口の場所をレインから教えられていた、ライバル二人だった。

 

 どうやら【魔弾】と【神拳】の二人は、阿修羅会の拠点で地獄を作り出して大量のアイテムなどを迅速に回収後、逃げたと思われる残党を追撃することにしたようだ。最初から一人も生かしては帰さないつもりだったようで、とある方法で逃げた残党を追跡していた。

 

 するとどうだろうか。残党は、『秘匿の花園』の入口の方向へと逃げていく。なので、入口前でひたすらにボコボコにして、出てくるレイン達をお迎えしてドッキリでもさせようという魂胆だった。だが結果として、レインはログアウト。追撃するとそこにはサンラク、ペンシルゴン、オイカッツォに加えてサイガ-0が居るではないか。そこに二人が参戦する状態となり、再び地獄以上の何かが出来上がった。

 

 そのPKKの内容が本当に酷かったようだ。オルスロット達はガタガタと震え出し、立つことすらままならない者まで居た。最終的にPKの始末は二人に一任されたので、二人は容赦なく叩き潰しに入ったのが、『助けてくれ!』『い、いやだ……もう許してくれ!』『あいてむも、おかねもあげます……だから、たすけて』などという言葉が聞こえてくる惨劇。見ているサンラク達とサイガ-0をもってして、どちらが悪人なのかわからないという状態だった。

 

「とりあえず、ペンシルゴンにもメール……。『心配かけてごめん。もう大丈夫。 なんか、本当にごめん。やりすぎだと思う』うん……送信」

 

 すると、ペンシルゴンからもすぐさま返事が来た。そして、その内容を見て唖然とすることになる。

 

 

 『身体は大丈夫?カッツォくん超焦ってたし、私もサンラクくんも心配したよ。無理しないでね。 愚弟の件だけど、気にしなくていいよ。確かにえげつなかったけど、まーなんというか、自分で撒いた種だし。当の愚弟なんだけどさ、実家……ああ、愚弟が暮らしてるとこね。なんか、いきなり心入れ替えたみたいに反省したって連絡があってさ。私にも『ねえちゃん、本当にごめん。俺頑張るから』ってメール来てた。ちょっとした騒ぎになってるけど、多分大丈夫でしょ』

 

 

 それは大丈夫ではないやつではないだろうか。そう思ったが、深く考えることは辞めた。ひとまず、ゲーム内部のことは色々大変そうだ。そう考えながら身体を動かそうとしてみれば、大分楽になっていた。

 

 ベッドから降りると立ち上がり、身体の調子を確認する。まだ気だるさはあるが、先程よりかなりマシだ。動くことも出来る。そのまま自室の扉を開けて、リビングに行く。すると、

 

 

 

 ――『ええ、はい。すみません、ご心配を。 はい、それでは』

 

 

 

 慧がスマホを片手に立ちながら電話をしていたようで、そのまま後ろから声をかけた。

 

 

「慧?」

 

「え?あ……玲?」

 

「うん、今さっき目が覚めて。心配かけて、本当にごめ ――わっ け、慧?」

 

 言葉は最後まで続かなかった。目を見開いた彼は、そのまま慌てるようにして自分の近くまで歩いてきて。

 

 

 そのまま、抱きしめられた。

 

 

「えっと、慧。その、」

 

「本当に、心配したんだ。あの後色々あって、できるだけ急いでログアウトして。そしたら、お前が部屋で意識失ってて」

 

「……うん」

 

「朝になっても目が覚めなくて。ずっと不安だったんだ。ちゃんと、目を覚ますのかなって。不安で、心配で。俺は……ッ」

 

「ごめん。ちゃんと……ここにいるから。大丈夫だよ」

 

 突然抱きしめられたことには驚いた。だが、彼の身体は震えていて。声だって、心配させていたことが痛いほど分かるものだった。だから、ここにいるとちゃんと伝えるように。そっと、手を背中に回して胸元に顔を埋めた。

 

 彼を安心させるためにそうしたつもりだった。だが、彼の心臓の音が確かに感じられて。自分の肌に直接温かさを感じられて。とても。とても、暖くて、安心した。

 

 

「とにかく、本当によかった。頼むからもうこんな無理は ――あ」

 

「ん?どうかした?」

 

「あ、いや、その。わ、悪い。俺動揺してて。それで……すぐ離れるから!」

 

「……ん。いいよ。もうちょっとだけ、このままで居させて」

 

 動揺と、困惑と。他にも色々な感情が混ざり合う慧をよそに玲はそんなことに構うことなく慧の身体に身を委ねた。確かめるように、安心するように。そして、ちゃんとここにいるともう一度彼に伝えるように。

 

 

 まだこの気持ちがなんなのか、というのはわからない。それでも。これは間違いなく、未来を託して消えていった己の師が言っていた、大切にしろと言っていたものだということは理解できた。

 

 

 これがどんな気持ちなのかはわからない。どう向き合うべきなのかというのもわからない。それでも、今はただ。自分が思うままに心を委ね、安心したいという気持ちで一杯だった。

 

 

 

「慧は、あったかくて。安心するね」

 

 

 

 ただ笑って。心の底からの笑顔で。玲は慧へとそう伝えた。

 

 

 





 ということで、ウェザエモン編はこれにて完結です。
 次回からウェザエモン戦後の幕間話を幾つか挟んだり、後日談をやったりした後にGGC編に突入します。原作とはちょっと時系列とかが変わると思います。


 一応、ちょっとした題材とか理由とかをこの場を借りてつらつらと書こうかなと。ただの後書きなので、スルーしても問題ありません。


 最後に。評価をいただけたことや誤字報告などについてこの場をお借りしてお礼申し上げます。

 感想など貰えると作者がとても喜ぶ。それでは、また次回で。







■本筋に大きく関わるユニークをウェザエモンにした理由について

 元々、原作からウェザエモンという存在が好きだったから。アニメ化して、とんでもない情報の波と感情の奔流が大暴れして遂に書いた。

 振り返って考察してみると、アリスとか諸々の存在が居る中でウェザエモンと刹那は神代の未来をどう考えていたのかなとか、未来を考えていたとしたらその上でウェザエモンはどんな選択をするのかなとか、色々考えた結果こうなった。結局のところ、誰もが未来を望んでいて、二人もそうだった。例え悲劇や絶望に倒れようともその志だけは未来につなぎたいと想ってたんじゃないかなと。

 【墓守】となる直前、彼が何を想ったのかなとも考えたらきっと、絶望してても刹那との誓いや己が望んだ未来だけは捨てきれないんじゃないかなと思いました。それ故の窮極の継承と未来へ紡ぐという可能性に賭けた。


■ヒーロー(ヒロイン?)を魚臣慧にした理由について。

 作者の趣味。サンラクやペンシルゴンは割と掘り下げられたり色々されることが多い中、彼はそんなに多くないよなと思い決めた。後、単純に彼の覚悟完了して見せる男らしさを考えたら『素晴らしいですッ!(変態ウマ娘記者並感想)』となったため。

 ウェザエモン編はレインとウェザエモンの話でしたが、GGC編は慧と玲の話になるので頑張って書きたい。



 過程は大事だけどはやくイチャつかせたいし、それを見て弄り倒す他のメンバーも書きたい(本音)



■レイン(玲)について

 才能的にはレイドボスさん、富嶽おじいちゃんクラス。この世界線では、「五七桐竹紋」の所の関係者。

 本人の才能はまだ未完。昔、両親の実家の関係者から島津についての伝承を聞いたことがキッカケで島津スタイルに脳を焼かれた。元々剣に関わる血筋ということもあってか才能もあったため、現代版島津豊久のようなものが出来上がった。なお、本人の強い希望でシャンフロ世界線の島津家と関わりもある。熱田(剣の血筋)に島津の伝承が混ざった刀剣使いのサラブレッド。


 近接戦闘では無類の強さなんですが、遠距離と遠距離武器の扱いが壊滅的に下手。実は一度ライバルの空とFPSをやったことがあるが、空の目が点になるほど射撃が壊滅的。具体的には、数メートル先の対象に射撃を当てられない。銃器を持ってプレイすると頭がオーバーヒートして知能が下がったような状態になる、リロード作業にテンパり対戦相手に心配され挙句の果て手順をレクチャーされる。などなど。結局空が見かねて実体剣渡したら人外の動きをするようになった。対戦相手も空も『なんで?』と首を傾げた。

 シャンフロではPKが嫌い。見つけたら絶対に生かして帰さないというほどに嫌い。
 
 詳しいことは設定鍵でも作ってそこで書く予定。

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