とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

21 / 47
灰色兎は月を見上げ、天に問う

 

 これは、少し前の話。まだレインが目を覚ましていない時に陽務 楽郎。サンラクは、ラビッツにある兎御殿である人物と会っていた。

 

 ラビッツを収める首領にして、鍛冶師の頂点たる「神匠」でもある存在。ヴァイスアッシュである。

 

「そんじゃあ聞かせてぇもらおうかい……あの死に損ないは、どうだった?」

 

「強く、武人の鏡とも言えるほど気高い相手でした。一瞬でも油断してたら、間違いなく負けていた。それほどの相手でした」

 

「ほぉ……。そうだな、あいつはそんな奴だった。堅苦しくて意地っ張り、嫁さんの気なんて知らずいつも無理をする。誰よりも責任感が強かったんだ、あいつは。 どうだった。あいつぁ……満足して逝けたかい」

 

「託されました。未来を。そしてその姿に諦めずに前に進む、未来へと歩む男気を魅せてもらいました。 ……天晴、と。褒めてもらいやした」

 

「そうかぁ……そうかぁ……」

 

「安心して逝けた、と思いやす。『窮極』を継承できて、安心しているようでした」

 

 ピクリ、と。感慨に耽っていたヴァイスアッシュがそこで顔を上げた。

 

「お前さん、今なんてぇ言った?」

 

「え?ええと。『窮極』を継承できた、と」

 

「詳しく話してはくれねぇかい」

 

 しまった、とサンラクは思う。プレイヤーの情報、しかも相手がNPCとはいえ仲間の情報を簡単に開示するのはあまりよくはない。だが、こうしてヴァイスアッシュが反応を示したということはユニーククエストに関わる可能性も高い。

 

 少なくとも、ヴァイスアッシュは悪いNPCではないと思っているし、何かユニーククエストや、セツナの言っていたバハムートに関する情報があるかも知りれない。そう思って、自分が知ることをできるだけ内容を要約して伝えることにした。

 

「自分の仲間の一人が、ある偶然から別次元に存在していたウェザエモンの意識とやらに出会ったんです。そしてその仲間は、その意識のウェザエモンを師と仰ぎ、継承者として認められました。そして決戦の刻にて、その力を開花させ真の後継者へと至り、ウェザエモン本人からも認められました。と、こんなところですが」

 

「くっ……ははっ。ははは!そうか、そうか! ああ……そうかぁ」

 

「あ、兄貴?」

 

 話を聞いたヴァイスアッシュは高らかに笑うと、再び目を伏せて口元に笑みを浮かべた。

 

「あの馬鹿野郎め……大往生じゃねぇか。完全に打ち負かされて納得し未来を託し、自分の継承者まで見つけて至らせやがった。ああ、それはもう安心したろうよ」

 

「その、兄貴。もし聞かせてもらえるなら、なんですが」

 

「ん、おう。言ってみろ」

 

「ウェザエモンの継承者、というのは……それほどに凄いことなんですかい」

 

「そうだなぁ……俺等の知る限り、奴の想いと力を継承できる奴は居なかった。そもそも、奴に認められるほどの奴が存在してなかった。だからこそ驚いたのよ、奴に認められ。そして継承するに至る存在が出たということにな」

 

 『とんでもねぇことだぞ』、と続けて言って、ヴァイスアッシュは再び満足そうに。楽しそうに笑う。

 

「奴に認められる、ということは刀使いだろうな。……俄然と興味が湧いた。お前さん、教えてはくれまいかい。その継承者の仲間は、どんな奴だい」

 

 会話の流れから、恐らく話しても問題はないとサンラクは判断した。まず、相手はヴァイスアッシュ。此処で話したことは外に漏れる、ということはまずないだろう。そして、ヴァイスアッシュが何らかの形でウェザエモンと関わりがあったのも事実だろう。なら、ここでさらなる情報を得るために話す価値はある。

 

 ただ、後日レインには謝らなければならない。最悪土下座だろうし、あの決戦の時に命を預け、信頼までしてくれたことを思い出すと途方もなく心が痛む。オイカッツォにも殴られる覚悟だけはしておこうと心に決めた。

 

「強い奴です。直感型の天才、と言っても過言じゃありませんし、悔しいですがあいつほど武器を使った近接戦で強い人間を俺は知りません。一度刀を抜けば全身全霊で前へと進み、相手を斬り伏せ首を獲る。その刃はどんなものが相手だろうと斬り、ただ前へ。未来へと進む。そんな奴です」

 

「お前さんがそこまで言うほどか!そいつぁたまげたな!」

 

「本当に強い奴です。継承、と言うならその仲間の持つ刀も、ウェザエモンから渡されたと言ってました」

 

 

 

 

 

 

「―――なに?」

 

 

 

 

 

 

 ヴァイスアッシュの声のトーンが変わった。それまでの楽しげな、嬉しそうな声から一転。一瞬で真面目な声となり、サンラクを鋭い視線で射抜いた。

 

 しまった。何か変なことを言ってしまっただろうか。頭をフル回転させ、思い当たる節を探す。あるとすれば直前の刀の話だ。では、なんでそれがヴァイスアッシュをここまで。今まで見たことないほどの真剣な眼をさせたのか。それがわからなかった。

 

 

 

「何度もすまねぇが、お前さん」

 

「う、うす」

 

「その刀は、どんな刀だった?」

 

「え?ええと。ウェザエモンの持つ刀とよく似ていました。赤黒い鞘の刀、だったと思いますが」

 

「何かその刀、変わったことは無かったかい?そうさな……例えば、妖刀。有り得ないようなことを引き起こしていた、とかな」

 

「あー……そうですね」

 

 流石に、会話の中にあった『名のない獣』のことを言うのは不味いだろうとサンラクは判断した。ウェザエモンやセツナの話から、恐らくあれは簡単に言ってはならない内容だ。それ以外で、となると。

 

 

「そういえば、ですが」

 

「なんだ」

 

「随分と頑丈な刀だな、とは思ってました。耐久……ええと、刃こぼれをしないとでも言いましょうか。後はその仲間は、とても使いやすいと言ってました。軽くて、まるで自分の身体の一部になったようだとも」

 

「……ほう。それで、他には」

 

「他には、ですか。……そうだ。ウェザエモンとの決戦の時、不思議な光景を見ました」

 

「不思議な光景?」

 

 

 

 そうして、言ってしまった。

 致命的なことを。ヴァイスアッシュがある確証に近いものを得るためのヒントを。

 

 

 

 

「エフェクト……なんと言い表したらいいのか。剣戟を受け止めたり、攻撃を切り払ったりした時に、何かを刀が吸収していました」

 

 瞑想するようにして目を閉じていたヴァイスアッシュが、目を見開き。その表情は驚愕に染まり。そして、いつも手に持っていたキセルを、地面へと落とした。

 

 落としたキセルを慌ててヴァイスアッシュは拾い直す。そして、サンラクに問いただした。

 

「な……!お、おめぇさん!それは間違いないかい!?」

 

「うえっ!?う、うす。間違いないと思います。俺や、他の仲間もそれを見ています」

 

 そしてサンラクは聞いた。まるで、呟くように言った彼の言葉を。

 

 『馬鹿な、ありえない』と。

 

「確認したい」

 

「な、なんでしょう兄貴」

 

「あいつは。ウェザエモンは、満足して逝ったんだな」

 

「それは間違いないと思います。本当に安心したようにしていました。悔いは残していない、と思います」

 

「……そうか。なら、奴はお前さん達の味方ってことだ。 ははっ、そうか。奴もまた、願いを果たしたか」

 

 まるで自分を落ち着かせるように。ヴァイスアッシュはキセルを一度口へと運び、煙をゆっくりと吐いた。

 

「ありがとうよ。色々聞いてすまなかったな」

 

「い、いえ。納得できる答えがあればよかったですが」

 

「納得どころか大満足だ。ああ……本当に。そうだな、これだけは言っておかねぇとな。 ――俺等の名、『ヴァイスアッシュ』の名において、そのお前さんの仲間を害することは絶対にしねぇと約束する」

 

「それは、どういう意味で」

 

 つまり、結果次第では敵対していた可能性があるのかとサンラクは思う。そうなったとして、自分がどちらの味方であるということは決まっている。命を預けられた。背中を任せられた。そんな仲間に害を成すなら、例え相手が誰だろうと相手になってやると、そう思っているのだ。

 

「落ち着け、お前さん。俺等には最初からその仲間と敵対するつもりはねぇよ。ただ、気になることがあっただけだ。それも、確認できた。むしろ、その仲間の力になってやりたいと思ってる。 ……そうだ」

 

 いいことを思いついた、というようにヴァイスアッシュは笑った。

 

「お前さん、本当に何度もすまねぇが」

 

「なんなりと言ってくだせぇ、兄貴」

 

「はっはっは!流石にこれだけ何度も言えば察せられるか! 時間がある時で構わねぇ、そのお仲間をラビッツに、この兎御殿に連れてきてくれねぇか。どうしてもそのお仲間に会ってみたい。こっちには、エムルを通して連れてきて貰えばいい」

 

「それは、本人に聞いてみないことには……ちょっと今、大変なことになってまして」

 

「何?まさか、どこかから何かされているのか?それなら俺等も黙ってはいられねぇ。何処のどいつだ?」

 

「ち、違うんですよ兄貴!えーっとその……リアル、ではなくて。ちょっとウェザエモンとの決戦で、疲労が限界になったようで。今、休んでるんですよ。なので、本人が元気になってからじゃないと、確認が取れないので」

 

「おう、そうか……。そういうことなら、身体を大事にして欲しいもんだ。なら、そのお仲間に伝えてくれ。『元気になってからでいい。時間がある時で構わない。一度、ラビッツを訪れて欲しい』とな。エムル、そのお仲間は大事な客人になる。失礼のないように対応してやってくれ。委細は全て任せる、頼んだぞ」

 

 目を輝かせたエムルが『は、はい!おとうちゃ……カシラ!』と返答する。

 

「繰り返しになるが、何度も色々と聞いて悪かったな。 ……それと、改めて礼を言う。あの馬鹿野郎を眠らせてくれて、なんの悔いもなく終わらせてくれたことに。また何かあったら訪ねて来い」

 

 そうして、サンラクとエムルが退出する。残されたのはヴァイスアッシュだけであり、彼は今一度目を閉じ、キセルを吸い、空を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

「なあ、『終焉』よ。きっとお前さんは、共に在る相手と世界を歩み、寄り添い続けるだろうよ。そんなお前さんは今の世界を見て、何を思うのかねぇ。なにせ、かつてお前が望んだのは世界の終焉ではなく――未来だったんだからよ」

 

 

 

 懐かしむように、ヴァイスアッシュはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 





 サンラク、やらかす。

 これによってヴァイスアッシュには感づかれました。とはいえ、彼はまだ確証がなく、仮に推測が当たっていてもどうこうするつもりはない模様。

 ただ、ヴァイスアッシュに報告したことでレインのラビッツへの入国フラグが立ちました。会ったら間違いなくバレる。ヴァイスアッシュから警戒されるくらいには獣ちゃんはヤバイ存在でした。今はレインの味方。

 前の話含めて短めだったので2話更新。ついでに設定鍵も更新しました。設定鍵のほうは作者の癖を爆発させてるだけのページなのでご注意ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。