とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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 嘘だろ……GWが今日で最後なんて……まだやりたいことも、書きたい話もたくさんあるのに、どうして……。どうして世界はこんなに残酷なんだ……。

 タイトルがネタっぽいけど、割と真面目な話。少し前に書いてたやつなので諸々整えてからの時系列調整が難しくなったので、『幕間』としました。時期的にはウェザエモン踏破後少ししてから、GGCが始まるまでの間の話。



 


幕間:魚臣慧は屈しない

 

 

 

 ――『慧はあったかくて、安心するね』

 

 

 

 あの時の声が、言葉が。自分に向けられた笑顔が。ずっと頭から離れない。

 

 

 責任追及されるとすれば間違いなく非は自分にある。動揺していて、自分でも自分のことがわからなくて。それでも、やるべきことをやらなければという思いで彼女の家への連絡や、安静に寝かせるために彼女の部屋に入りデバイスを外し、ちゃんと休ませた。

 

 不安と焦燥、そんな中で彼女が目を覚まして。声をかけてきて。その時にもう、限界だった。張り詰めたものが切れたみたいに、自分は思うままに彼女を確かめるように抱きしめ、普段絶対に吐かないような弱音を吐いていた。

 

 動揺していた、というのは言い訳だろう。だからこそ、嫌われても仕方ないと覚悟していた。だが、返ってきたのは拒絶ではなかった。

 

 彼女が自分を抱きしめるようにして背中に手を回し、確かにそこに居るのだと理解できた。『ちゃんとここにいる』『大丈夫だよ』。その言葉だけで、どれだけ自分が安堵したことか。

 

 冷静になって自分が何をしたのか理解した。慌てて、謝罪してすぐに離れようとした。

 けれど。彼女が告げた。『もう少しこのままがいい』、と。

 

 冷静になったからこそ頭の中が動揺と焦りと、理性を保つのでいっぱいだった。

 

 自分の胸元には、背中に手を回して顔を埋める彼女。まるで確かめるよう瞳を閉じ、こちらに身を任せていることに対してどうすべきか悩んで、結局そっともう一度彼女を抱きしめた。

 

 そうして、再度理解する。ちゃんと彼女は。玲はここに居るのだと。自分の胸元に顔を埋めている彼女が、本人にはまだ告げていないが――どうしようもなく愛おしかった。

 

 

 それからだろうか。

 

 

 彼女との距離が、以前より近くなったのは。その度に自分がそんな彼女に対して言い表せない感情や感覚を覚えるようになったのは。

 

 

 そうして。自分の理性を必死に落ち着かせるようになったのは。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ただいまーっと。 ……ん?玲、取り込み中か?」

 

 

 GGCの打ち合わせがあり、そのため朝からに外出していたため、昼過ぎに戻ると同居人の反応がない。いつもなら、『おかえり』と言って出迎えてくれるのだが、取込み中だろうかと思い慧はリビングへと向かう。

 

 

「……なんだ、寝てたのか。疲れてたのかな」

 

 リビングに向かえば、そこには彼女の姿があった。

 

 本でも読んでいたのか、ソファの前に置かれているガラステーブルの上には栞の挟まれた本が置いてある。著者名は『燐堂 報ノ介(りんどう ほうのすけ)』という人物のようで、考古学に関する本のようだ。

 

 リビングはよく玲と話をしたりする場所なので、調度品については慧はかなり力を入れて購入した。ソファも3人から4人座れる大きめのもので、座り心地のいいものにしていた。そこに横になって、クッションを枕にしながら心地よさそうに寝息を立てている。

 

「起こすのも悪いか」

 

 適度な温度とは言え現在は夏。エアコンが効いている。そして彼女は部屋着だ。風邪を引いてしまうかも知れないと思い、ブランケットを取ってくると慧は眠っている玲の元に再び向かう。

 

 GGC前ということもあって、随分と気を遣わせているな。そう思いつつ、心の中で『いつもありがとう』と言いそっとブランケットをかけようとした時だ。

 

「……流石に、目に悪いな。いや、良いとも言えるんだが。 ――って、何考えてるんだ俺」

 

 自宅で着ている服なのだから、当然私服か部屋着である。

 

 そして、現在の季節は夏。玲はよく部屋着で薄手のパーカーを羽織っているが、その下に着ているのは俗に言う女性用のルームウェア。そしてショートパンツといった装いである。

 

 今まではあまり意識しなかったが、先日の一件以降どうにもこういった無防備な姿は目に悪い、と思うようになった。自分とて男である。それは確かに理性を抑えるつもりではいるし、何かあった時は責任を取る覚悟でも居る。だが、異性。それも自分の大切な相手が無防備な部屋着で安心しきった様子で眠っている。それで何も感じないほど、慧は男を辞めていない。

 

 負けるな理性。頑張れ理性。そう自分に言い聞かせて、きっとお疲れでぐっすりと昼寝中の同居人に対してそっとブランケットを掛ける。

 

 理性を失ってはただの獣である。自分は決して獣などにはならない。

 強い気持ちを持って慧は頭を左右に振ると、自室に向かうことにした。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「いや本当、あの人人間辞めてるよなぁ……あれで本業は芸能関係者兼デザイナーってマジかよ」

 

 本番前の調整、ではあるのだが。地獄の特訓を終えてダイブを終了すると、フルダイブチェアのリクライニングを起こしながら慧はぼやく。

 

 自分の目的、過去の負けを清算するためにある相手に勝ちたいということ。

 そして、もっと強くなって、自分に自身を持って玲と向き合うために。

 

 そのために、慧はジンに調整と言う名の指南を頼んだ。それも、自分から限界まで厳しくやってくれと言って。

 

 彼には勝てない。だが、いつか勝つために挑み続けたい。そう思うほどに、ジンは強い。

 

 2本先取の試合を3試合でワンセットとして、それをインターバルを挟みながら繰り返す。だが、自分は1本も取れない。確実に成長している実感はある。『全米一位(シルヴィア)』を打倒するために、また一歩近づいているのはわかる。だが、それでも。この相手をしてくれている存在の背中はまだ遥かに遠かった。

 

 ただ、ジンからは一日あたりの練習量を定められている。理由は、コンディション管理のためだ。管理するあらゆる部分に支障が出るようでは本末転倒である、そう言われてしまい自分が冷静でなかったことに気がついた。焦っている、とも思い知った。

 

 今日の分は終わった。相変わらず人外染みた実力だと思いながらも伸びをして、フルダイブチェアから立ち上がる。時刻を見れば、7時前だった。

 

 少し早いが、頭をサッパリさせる目的でもシャワーを浴びよう。そう思い、部屋を出てシャワールームに向かう。

 

 そういえば、リビングに玲の姿がなかった。基本的に玲は本を読む時は、寝る前以外の時間はリビングで読んでいるので、居ないということはダイブ中、もしくは買い物だろうかと考える。シャンフロのほうも聞く限り、中々に慌ただしいことになっているようだった。自分は今はGGCを優先としたいためログインは控えているが、落ち着いたら手伝えることは手伝おうと思う。

 

 

 そう思い、シャワールーム。脱衣所に浴槽、高性能なドラム式洗濯機も完備されており、浴室としてそこそこいい設備が揃っているそこへ入るための横開きの木製扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

「――え?け、慧?」

 

 

「は……?え、玲?」

 

 

 

 目を見開く、頭がフリーズする。思考が停止してしまい、動けなくなる。

 

 それはどうやら相手も同じようだった。普段感情を表にあまりの出さないその顔には驚愕の表情。その後、すぐに恥ずかしそうに俯いていた。

 

 風呂上がりなのだろう。潤いを帯びた銀灰色の長い髪に、白磁のような肌。整ったスタイルに、着痩せするのか、決して小さくはなく、そこそこにある女性らしさの象徴。そんな彼女を着飾るのは、彼女の好きな色でもある白のインナーウェア。

 

 

「……えっと。慧。あんまり見ないで ……はずかしいよ

 

「ッ!?わ、悪い!本当に悪い!鍵も空いてたから大丈夫だと思って――すぐ出るから!」

 

 最後の方を、消え入りそうな。小さな声で言われる。だが、その言葉は確かにこの場に響いた。

 

 俯きながら、恥ずかしそうな声で言われ我に返る。同時、止まっていた頭が大慌てで動き出す。最悪だ。やってしまった。事故とはいえ、風呂上がりの着替え中の彼女が居る所に入ってしまった。大慌てで自室へと戻り、ベッドに身を投げて頭を抱える。

 

 どう謝ろうか。嫌われたんじゃないだろうか。そう考える中で、頭の中から離れないことがあった。確かに自分と玲は同居しているが、ああいった姿を見ることは基本的にない。"まだ"そういう関係ではないのだから、あってはならないのだが。

 

 事故とはいえ、彼女のそういった姿を見てしまった。記憶の中にある、昔見た夏の時期の休みに海へ遊びに行った時の水着姿と比べると――とても、大人らしくなっていた。

 

 普段見せないような焦った顔、恥ずかしそうにしている表情。事故とはいえ、記憶に焼き付いてしまった彼女のインナーウェア姿。そして、先程見てしまった彼女があの時、自分の胸の中に居たのだと。あんな言葉と笑顔を向けてくれたのだのだと、そう思うと。

 

 

 理性がどうにかなりそうだった。冷静さを失いそうだった。

 

 

 もしかしたら。冷静さを失って自分が手を出しても、彼女ならあの時と同じように。自分を抱きしめてくれたときと同じように受け入れてくれるのではないか――

 

 

 

 

 

「……大馬鹿野郎がッ!」

 

 

 

 

 パアンッ、という大きな音が自室の中に響いた。

 

 音は自分からのものだ。同時、鈍い痛みが自分の両頬を襲う。

 

 今、自分は何を考えようとしていた。最低なことを考えようとしていなかったか。

 二度と彼女の手だけは離さない。大切にすると決めたんじゃないのか。

 

 自分へのケジメと精算がちゃんと終わったら、伝えようと決めていたのではないのか。

 

「最ッ低だ……ああ、本当自分が嫌になる」

 

 

 自分に告げる。冷静になれ、自分の想いと誓いを思い出せと。

 

 暫く冷静になるために頭を冷やそう、そう考え。同時、ちゃんと彼女には謝らなければと落ち着いていく頭で慧は思った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 夜の11時過ぎ。リビングに二人の姿はあった。

 

 慧はとにかく頭を冷やしてリビングに戻ると、そこそこの時間が経過していたためかキッチンで夕食の準備をしている玲の姿があった。

 

 謝った。どう言い訳しようと、自分が悪かったと誠心誠意込めて謝った。対して玲はといえば、驚いたようにしたが、すぐに

 

『びっくりしたけど、大丈夫だよ。気にしてないし、気にしないで。 ……そもそも私が、慧が暫くダイブから戻らないだろうなって思って鍵掛けてなかったのが悪いよ。私こそ、ごめん』

 

 

 と。逆に謝罪されてしまった。

 

 

 その後は、いつも通りだった。夕食を二人で話しながら作って。食事を食べて。片付けが終わったら、リビングでテレビや、丁度今日は、友人である空が出場するFPSゲームの企業大会中継があったのでそれを見ながら応援して。やはりと言うべきか、圧倒的なタクティクスと射撃能力で勝ってしまった空にお祝いのメッセージを送って。

 

 そうしていると、11時過ぎとなりテレビを見ながら、他愛のない話をしていた。

 

 昼間に玲が読んでいた考古学関係の本、『燐堂 報ノ介』という人物は実は以前一時期ではあるが、玲の家庭教師をしていたこと。その人も両親の実家と関わりのある人であるということ。

 

 シャンフロのことについても、慧は最近ログインできてないので玲から話を聞いた。やはりというべきか、ウェザエモンを踏破した自分達と接触したいと思うプレイヤーは多いのだという。そのために、ペンシルゴンが色々と頑張ってくれているということも。

 

 そして。最近はもう二人でいる時は当たり前のようになっているが、ソファで二人並んでテレビを見ていたりする時。玲が自分の肩に寄り掛かるようにしてくるのだ。曰く、そのほうが安心できるかららしい。『ごめん、嫌なら辞める』と言っていたが、大丈夫だと慧は返答した。嫌ではないのだ、ただ、距離が近すぎて冷静さを失いそうになるが。

 

 しかし、今日に限っては慧は冷静だった、というのも、先程最低なことを考えかけて自分に言い聞かせ、冷静にさせたからだ。そして冷静な状態だからこそ、わかるのだ。玲はそれだけ、自分のことを信用してくれていると。

 

 

「ん……」

 

「玲?」

 

 雑談の後、暫くの間寄りかかられた状態でテレビ、GGC前の特集番組を見ていると彼女から呟くような声が聞こえた。

 

 暫くお互い特に喋らずテレビを見ていたため気が付かなかったのだが、見れば寄りかかっていた玲は心地よさそうに、安心しきった様子で眠っていた。

 

「まったく。俺も男なんだけどな」

 

 仕方ないな、というような声で慧は呟く。玲は一度眠ってしまうと、簡単には起きない。それは彼女の体質故でもある。このままずっとこうしている、という訳にもいかないので慧はそっと。寄り掛かり眠る彼女を。

 

 

 横向きにして、抱き上げた。 

 

 

 俗に言うお姫様抱っこである。そのまま、玲を抱えたまま彼女の部屋に向かう。そのまま部屋に入り、玲をベッドに寝かせると布団をかける。そして、慧はある言葉を伝えることにした。

 

 眠っているが故に、本人に伝わることはないだろう。だが、それでいいのだ。あくまでこれは自分の独白。そして、覚悟に向けての宣誓なのだ。

 

 

「……暫くは無理させて欲しい。それと、もう少しだけ時間が欲しい。ちゃんと自分にケジメをつけて、覚悟を決めさせて欲しい。そうしたら、」

 

 

 告げる。それは、魚臣慧という人間の誓いを。

 想いを伝え、歩いていきたいという願いを。

 

 

「ちゃんと伝えるよ。俺の想いを、全部。 その時は――答えをくれると、嬉しいかな」

 

 

 独白とも呼べるそれは、きっと眠っている彼女には聞こえないだろう。

 だが、それでも、その時が来ればちゃんとそうしようと決めたのだ。

 

 誰にも渡したくない。傍に居て欲しい。

 その笑顔を、自分に向けて欲しい。

 

 今の関係以上のもの、それを望まないわけではないのだ。

 だから、先に進みたいと願うからこそ。覚悟と、前に進むための勇気が必要なのだ。

 

 そのために、自分は弱さと過去を清算するのだ。

 

 

「いつもありがとう、玲。 ……おやすみ」

 

 

 GGC。魚臣慧という人間が前に進むための日。

 それは、もう近くまで来ていた。

 

 

 

 





 なお、作者はこの時点でGGC編を執筆中。おかしいな、ブラックコーヒーが甘いぞ。無糖のハズなんですが。買い間違えたんですかね。

 はぁ~過程も大事ですけど二人のイチャつく姿とそれを見て弄る『旅狼』メンバーと関係者の話が早く書きたいですわ~!なんかこの紅茶もクッッソ甘ぇですわ~!

 玲はそこそこにある。少なくともペンシルゴンのリアルくらいはあります。何がとは言わない。

 燐堂 報ノ介……なんか聞いたことある名前ですね。一体何処のキョージュなんだ。


 本当は書きたい話もネタも沢山あるんです。シャンフロ二次創作者様の作品を巡ってたら面白くてつい読んじゃったり、読んでたらインスピレーションが湧いてきて新しくネタが浮かんだりするんです。なお、時間が足りない。こればかりは仕方ないので、ネタは書き留めておいてのんびりとやっていくことにしました。

 今日は本編続きの1話と、予告編を投稿する予定。俺のGW……終わっちまったよ……。なんとか6月までにGGC編終わりまで書けたらいいなぁ……(エルデンリングDLCにとあるハクスラFPSの拡張に光の戦士としての夏休み予定が待ち構えている)







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