とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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黒き獣は過去を想う

 

「私じゃないと開けられない巨大な箱?」

 

「そう、そうなのよ。だから一度確認してほしいなーって。 あー……後。聞いていい?」

 

「ん。どうしたのペンシルゴン」

 

「その後ろの……すっごく仲良さそうに抱きついてる子って、誰?」

 

 現在、クランでログインしているのはサンラク、ペンシルゴンのみである。他のメンバーはといえば、オイカッツォとクゥはイベント。GGCと呼ばれるイベントが既に目前のため、その関係の事と調整に行っている。そして、ジンはといえばオイカッツォの練習相手である。

 

 【神拳】の名は飾りではない。ジンの武器は自分の身体そのものであり、別の格闘ゲームなどで手合わせしてもらっている総合戦績9割のオイカッツォでさえ一度たりともジンに勝てたことはない。そして、レインもまた、ジンに勝ったことはないのだ。

 

 それほどまでにジンは強かった。そして、レインとオイカッツォにとってはリアルの知り合いでもある。ジンはオイカッツォが何者なのか、ということも当然知っているため、時折練習相手をしているのだ。特に最近は、オイカッツォから練習を頼むことが多かった。ジン曰く、GGCできっとなにか負けられない理由があるのだろう、ということらしいが。

 

 そして現在。ログインしているサンラクとペンシルゴンの疑問はもっともである。一瞬目を離したらいつのまにかレインの後ろから笑顔で抱きついているレインと瓜二つで色違いの少女が居たのだから。

 

 名前が出ていないことから、NPCなのは理解できた。では、NPCだとして彼女は何者なのか。少なくともサンラクとペンシルゴンはプレイヤーを模倣するNPCなど聞いたことがなかった。 

 

 

「この子はクロ」

 

「どうもー、はじめましてシロ……ああ、今は敢えて主様って言ったほうがいいかな? そのお仲間の開拓者さん達に会えて光栄だよ。今紹介してもらったけど、私はクロ。そうだね、貴方たちならこう言えばいいかな? 『名のない獣』ってね」

 

「それって確か」

 

「……セッちゃんの話に出てきた、名のない獣。それが、あなた?」

 

「そ。安心して、今の私はシロが居ないと存在できないし、それに貴方たちの味方のつもりだから。まあ、ただの旅の同行者だと思って」

 

 最初、『名のない獣』と聞いた時サンラクとペンシルゴンは身構えそうになった。ウェザエモンの口ぶりやセツナの話から、『名のない獣』とは脅威度だけで見れば恐らく神代において最高クラスの存在ではないのかと推測できたからだ。だが、実際に現れたのは殆どプレイヤーと変わらないような、レインと瓜二つの少女だった。

 

 話し方からも『終焉』と言われるような存在には思えなかった。そして何より、レインが完全に心を許している。しかも、自分達が沈黙している間には二人仲良く

 

 

『シロ、この世界の食べ物っておいしいよねぇ……私今日のご飯はメンチカツがいい』

 

『じゃあメンチカツカレーにしよう』

 

『えっ、カレーにメンチカツをのっけてもいいの!?』

 

 

 そんな会話をしている。忘れてはならないが、クロはかつて世界を滅ぼしかけた存在である。そんな存在がこの世界の食事に完堕ちしているのである。どこぞの神代の生物学の権威や、刹那に並ぶ天才と呼ばれた彼女が今のクロを見れば理解が追いつかず固まるだろう。

 

 なにはともあれ、心を許している。それだけで判断しても彼女は味方であると理解できた。 ただ。NPCにしては本当に人のような挙動をすることから、とんでもないAIが入っているのではないかと思ったが。

 

「ああ、なるほど。レインが白基調の装備だからシロで、その対色だからクロか」

 

「お、鋭いね。サンラク?でいいのかな。この時代の人間……いや、開拓者ってなんというか、うん……個性的、なんだね?」

 

 クロは苦笑いしながらサンラクを見る。それはそうだろう。鳥頭の被り物、半裸。それだけ見れば、幾多の変人が居た神代から見ても、オブラートに包んで個性的としか言いようがなかったからだ。

 

「クロ、サンラクはいい人だよ。……個性的だけど」

 

「今の時代って色々と進んでるんだねー。うん、ひとつこの時代について勉強した」

 

 

「レインの精一杯の気遣いがすごく心にクリティカルするし、確かに鳥頭は趣味かもしれんが半裸はあのクソ犬のせいだって……。絶対許さんからなリュカオーン。 まあ、ともかくよろしくな。 ――って、エムル?なんでお前そんな隅っこに居るんだ?しかもなんかガタガタ震えて」

 

 リュカオーン、という単語にクロは口元に笑みを浮かべていた。だが、それに誰も気がつくことはない。何故なら、エムル。サンラクが連れ歩いている、ヴォーパルバニーである彼女がどうしたらいいのかわからない、というようにガタガタと震えている。その視線はレインに抱きつくクロを捉えており、何かを喋ろうとしては思いとどまる、ということを繰り返していた。

 

「エムル?おいおいどうしたよ。ペンシルゴンはよく知ってるだろうし、レインもウェザエモンとの一件の前から顔合わせてるだろ?どうしたんだよ一体」

 

「あ、う……サ、サンラク、さん。その、方。い、今……名のない獣、って」

 

「ああ、まあ俺やペンシルゴンも話には聞いてるけど……。どうかしたのか?」

 

 しかし、エムルは答えない。どうしたらいいのかわからない、というようにしてただ動けず。しかし、ずっとクロを見ている。

 

「――ああ、そっか。そうだよね。まあ警戒もされる、か。 ……昔は昔。今は今。今の私は、まあ世界の味方ではないけど開拓者の味方だよ。一番はシロの味方だけど。だから安心していいよ。困ったな、そんなに怖がられるなんてちょっとショックかも」

 

「人参でもあげてみるか?食いつくぞ」

 

「なんというか、親が親なら子も子というか……。いや、多分この子の親ってどことなく面影あるしアイツだよね……?まあ、今はいいか」

 

 サンラクからの提案に、懐かしいものを思い出すようにするクロ。彼が気を使ってどこからともなく取り出した人参を受け取りお礼を言うと。クロはそのまま隅で縮こまるエムルに近づく。

 

「ほらウサギちゃん。新鮮な人参だよー、おいしいよ?」

 

「人参!? あ、う……でも」

 

「今の私が当時の私に見える?って、キミは知らないか。今の私はただの開拓者。きっと、キミの家族に『名のない獣』から人参もらいました、なんて言えば大爆笑だよ」

 

 『ちなみにその人参、結構いい値段する食材アイテムだぞ』とサンラクが補足するように言った。というのも、サンラクとしてもウェザエモン戦にあたりエムルには心配もかけ、ヴァイスアッシュには武器を作ってもらうなど大変な世話になっていた。だから、とりあえずエムルには心配もかけたその詫びということで、1本数千マーニする高級な人参を何本か買ってやっていた。

 

 

 

 

「に、にんじん……高級にんじん……パ、パクパクですわぁー!」

 

 

 

 エムルは屈した。そのままクロの持つ人参を大喜びで受け取るとそれはもう幸せそうにしてそれを食べた。そしてまた、そんな姿を見たクロは懐かしいものを見るような目でエムルを見ていた。

 

「っと。とりあえず話を最初に戻すか。インベントリアになんかロックかかってる巨大な箱が見つかってな、既に俺達三人は試したけどだめだったんだ。そうなると後はレインだけだから、時間がある時にでも確認して欲しい……ってのが、まあ報告だな。後はなんかあったっっけ、ペンシルゴン」

 

「あー……後はそうだ。あるにはある、んだけど……。うーん」

 

 ペンシルゴンは言っていいものか悩むようにして考え込んだ。

 

「レインちゃんさ、『黒狼』に知り合いとかいたりする?」

 

「いないよ?身内以外でのフレンドは今のところあーちゃんだけ」

 

「だよねぇ。 ……だとしたら何でだろ。ちょっと警戒すべきかな? サンラク君、一応確認なんだけど。サイガ-0ちゃんとすごーく仲が良いとか、そういうことないよね?」

 

「あるわけないだろ。悪いやつには見えないけど、俺だって突然フレンドになってくださいって言われたんだぞ?助けてもらったりはしたが、俺の中ではまだ警戒対象だよ」

 

「んー……まあ、頼まれたものは頼まれたものだし。実はね、サイガ-0ちゃんからレインちゃんに伝言を預かってるの。『祭の件では、お世話になりました。狼様はお元気でしょうか』だって。なんかリアル関わりそうな話っぽいけど、でも内容的にカッツォくんじゃないなーって思ってさ。だから、レインちゃんの知り合いかなって  ……あれ、どうしたの」

 

「ペンシルゴン」

 

「はい、ペンシルゴンだよ?どしたの」

 

「……カッツォからは、サンラクやペンシルゴンはリアルのことを伝える仲とは聞いてるから、いいかな? そのサイガ-0さんだけど。多分私の両親の実家の関係者かも」

 

「ごめんちょっと落ち着かせて。サンラクくん、ちょっと深呼吸して」

 

「え、俺も?それはいいが、なんで?」

 

「落ち着いて、冷静になって聞くのよ。多分私の予想あってるから」

 

「おう……? ――よし、深呼吸した落ち着いた。ドンと来い」

 

 ペンシルゴンは以前、レインの立ち振舞から育ちの良い子ではないのかと推測していた。そして、レインと交流していくことである可能性。そんなことはないだろうなと思うほどの可能性に行き着いていた。

 

 まず、育ちが良さそうな立ち振舞。天性とも言える剣の才能はまるで、彼女の今のジョブのごとく剣の神様に愛されているかのようだった。そして、雑談として以前、日本の祭りの話をすることがあった。今は夏であり、夏祭りの話題や花火など、そういった日常的な会話はペンシルゴンとレインはよくしている。その内容で、明らかに専門的な知識や関係者でないと知らないようなことを知っていたこと。つまり、彼女は神事や宮司関係者に縁があるのではないのか。ということ。

 

 

 そこから万に一つもないだろうな、とペンシルゴンが推測していたのが、剣に関わる神事、宮司の関係者。そしてその方面での礼儀作法や育ちの良さがうかがえる立ち振舞。つまり、絞り込まれる情報からある所の関係者ではないのかという推測だった。

 

 しかし、そんなことはあり得ないだろうと思っていた。そんなお嬢様、というよりはとんでもない血筋の人間がシャンフロをしているだろうか?ないだろう。と、思っていたのだ。そもそも、オイカッツォは一般家庭と聞いている。なら、まさかオイカッツォの将来の相方候補とも呼べるこの忠犬系後輩が、そんなことは絶対にないと、思っていたのだが。

 

 

 

「レインちゃん、ここプライベートエリアで外には会話も漏れない。リアルのこと聞くのはまあ、よっぽど仲がいいとかじゃないとマナー違反なんだけど……えーっと、聞いていいのかな?」

 

「ん。カッツォからはいいんじゃないかって言われてるし、二人は信用してる。いいよ」

 

「あー……じゃあ、ちょっとぼかして聞くけど。もしかしてレインちゃん、なんかとてつもなくすごい剣を御神体として祀ってる所の人?」

 

「よくわかったね、両親の実家がそうだよ」

 

 ペンシルゴンの目の前が一瞬真っ白になった。だがそうなら色々と納得がいく部分はあるのだ。唯一わからないのは、なんでオイカッツォはプロゲーマーでそんな所と繋がりがあるのかということだ。

 

「うん……?どういうことだ?」

 

「サンラクくん、君頭いいよね確か」

 

「いいかどうかはわからんが、成績ならまあそこそこだと思ってるぞ」

 

「中部地方、五七桐竹紋」

 

「なんだよいきなり、それって確か天叢雲……ん? ――は?え、ちょ、え?」

 

 どうやらサンラクも気がついたらしい。青色の鳥頭は徐々に驚愕した表情になっていき、暫く固まった後にレインを見た。そして彼は思う。自分の周辺の人間関係どうなってるんだ、と。知る限り、オイカッツォがプロゲーマー。ペンシルゴンがカリスマモデル。そして今発覚したが、レインが大学生で有名な所の神職関係者。一般人は自分だけかと思う。

 

 なお、後に彼が知ることではあるが、現時点で所属している他の脳筋二人。ジンとクゥについても、クゥがオイカッツォも知るシューティング系の有名プロゲーマー、ジンに至ってはペンシルゴンが頭が上がらないほどの大物と判明することになる。

 

 

 

「両親の実家がそうってだけだよ。カッツォから聞いてると思うけど、私はただの学生」

 

「ただの学生にしても相当頭良かったよねレインちゃん……。まあ驚いたけど、それは置いておいて。サイガ-0ちゃんが、ご実家の関係者の可能性ってことは、知り合いってことだよね?」

 

「その伝言から思い当たる節がある。ちょっとプライベートなことだから、リアルで連絡取ってみる」

 

「オーケー。まあ、私はそれ伝えただけだから」

 

 なんとも不思議な縁もあるものだ。そうペンシルゴンは思うと、話題を変えて他の連絡についての話を伝え始めた。

 

 

 

 

 





 ジュリウス・アリス「「なんであいつ幸せそうにメンチカツカレー食ってんの」」

 エムルはクロのことを概要だけヴァイスアッシュから聞いてます。要約すると『世界滅ぼしかけた滅茶苦茶ヤバイ黒い鳥』という内容。



 ちなみに作者、楽玲派です。なのでサンラクくん、君にはサイガ-0ちゃんと仲良くなってもらう。

 オラッ、レジギガス!お前も(メイン)ヒロインになるんだよ!『旅狼』入ってサンラクとの距離詰めてイチャつけオラッ!なーにが【最大火力】じゃ、恋愛で一度でいいから最大火力発揮せんかい!


 でも、合流するの多分GGCの後なんですよね。

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