とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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レイン(熱田玲)サイガ-0(斎賀玲) / かくして少年は、想い自覚し前に進む

 

 久しぶりに彼女とは話すな、そう思いつつも玲はスマホの連絡先一覧から目的の相手を探す。

 

 思えば、最後に会ったのは数年前。自分がまだ高校生の頃だ。両親の実家、そこで会って、境内の奥で神社の守り神と言われている、住み着いてる白い大きな狼と戯れながら他愛の話をしたのが最後。それ以来、自分も進学のことがあったりで連絡も取り合えていなかった。

 

 

 斎賀玲。最初、自分と下の名前が同じで、それがキッカケになって交友関係が始まった相手。礼儀正しく、お淑やかで頭もいい。文武両道の少女であり、名門斎賀家のご令嬢。自分のことを当時、『玲姉さん』と呼んで慕ってくれていたのが今となっては懐かしいと思う。

 

 

 慧とも会ったことがあり、何故かはわからないが自分と慧が並んでいる時は目を輝かせて羨ましそうにしていたが、どうしてかは謎のままだったな。そう思いつつ、玲は目的の相手の番号をコールする。

 

 

「もしもし、久しぶり。玲ちゃん」

 

『お久しぶりです!えっと、玲姉さんや慧兄さんはお元気ですか?』

 

「うん、元気にしてるよ。慧とは今一緒に暮らしてる」

 

『い、いいいい一緒に!?わわっ、凄いなぁ……私もいつか……』

 

「どうしたの?」

 

『な、なんでもないです!えっと、慧兄さんにはまたよろしくお伝え下さい。ご活躍はよく拝見してます、とも。 それで、えっと……久しぶりに電話をくれたのは、その』

 

「うん。単刀直入に聞くけど、私今、慧や他の友人と一緒にシャンフロやってるんだ。 ……それで、実はある伝言を預かって。サイガ-0って、玲ちゃんだよね?」

 

『……はい、そうです。ごめんなさい、久しぶりの連絡がこんな形になってしまって。色々と事情があって』

 

「いいよ、久しぶりに話せただけでも私は嬉しい。それで、事情っていうのはシャンフロのこと? そもそもだけど、どうして私だってわかったの?」

 

『えっ、あー……ええと、それは』

 

 言えないだろう。オイカッツォにしても、レインにしても、アバターの見た目がかなりリアルに寄っている。特にレインなど、髪の色をリアルの銀灰色から白色にしただけだ。ただ、それだけでは本人かどうかまではわからない。彼女、斎賀玲がレインを熱田玲と判断したのは別の理由もあった。

 

 まず、一緒に居たプレイヤー。つまり、オイカッツォ。身内ならわかることだが、慧は基本的にキャラクターネームの中にカッツォ。鰹などいう言葉を多用する。そして、それを知っていたこと。次に、レイン本人の戦闘風景だ。実はレインは、ウェザエモン撃破前からとあるスレッドで話題になっていた。それが、『シャンフロ戦闘考察スレ』である。

 

 このスレッドは、様々なプレイヤーの戦闘風景からどんな戦い方をするのか、リアルで言う所のどんな動きをしているのかということを考察するスレッドだった。かなりマイナーなスレッドであり、普段見る人間は殆ど居ないのだが、斎賀玲はこのスレッドを見ていた。

 

 ある時、新人の刀使いについての話題が上がる。本人に無許可で動画やスクショを挙げるのは極めて失礼なマナー違反行為となるため、書き込みをした本人の供述だけだったが、そこにはこう書かれていた。『相手の攻撃を完全回避し、下がることもなく懐に飛び込み首や急所、致命部位を斬る』というものだった。そして討論となったのは、その刀使いの構え方や太刀筋。つまるところ、戦闘スタイルだ。

 

 そこでもしかしたら、と判断したのだ。オイカッツォという同伴者。レインというプレイヤーの戦い方。そして二人の見た目。交友のある人間からすれば、判断材料は十分であり、前からもしかしたらと思っていた。そこに、ウェザエモン撃破のワールドアナウンスだ。

 

 斎賀玲の所属している、クラン『黒狼』。トップクランの一角であり、姉がクランリーダーを務めるクランでもある。そして自分もまた、シャンフロを俗に言う廃人。やり込みをしているプレイヤーだと自覚はしていた。つまるところ、白羽の矢が立ったのだ。レイン、というよりは『旅狼』に。

 

『強いて言うなら、戦い方でしょうか。ただ、確信があったわけじゃなくて。でも、ユニークモンスターを打倒できるだけの実力に、私がよく知る太刀筋。だから、玲姉さんかなと思ったのが理由。後は、慧兄さんっぽい人と一緒に居たって話もあったから』

 

「ウェザエモンは私一人で戦ったわけじゃないよ。でも私も驚いた。私はまだゲームの中で見たことないけど、慧から大きな鎧の人って聞いてるよ。ちょっと玲ちゃんとはイメージが違って、びっくりした」

 

『あ、あはは……。色々と理由がありまして。 話したいこととかたくさんあるんです。でも、実はシャンフロのほうはちょっと緊急なんです』

 

「それは、慧や『旅狼』のみんなには言いにくいこと?」

 

『……はい。できれば、今は玲姉さんの心の内にしまっておいていただけると』

 

「ん、わかったよ」

 

『はあ……本当は、こんな話なしで玲姉さんとは色んな話したかったのに』

 

「私も沢山話せたら嬉しいな。そうだ、久しぶりに二人で何処かに出かけよっか。私、車あるから家まで迎えに行くよ。久しぶりにご家族とかに挨拶したいし」

 

『いいんですか!?是非、お出かけしたいです! ……あ、コホン。楽しい話は後にして、先にご報告を』

 

「そうだね。それで、どうしたの?」

 

『これは、斎賀玲としてではなく、シャンフロのサイガ-0としての言葉として受け取ってください。ギルド、『黒狼』はユニークモンスターについての情報を得るために、そちらに接触するつもりです。勿論、現在玲姉さん達がSF-Zooと同盟関係にあることも知っています。ある程度の衝突は承知の上で、と。姉は言ってました』

 

「……それは、ちょっとまずいね」

 

『ええ、PKなどの行為までには発展しないと思いますが、それでも圧力はかけてくると思います』

 

「えっと、そうじゃなくて。 ……百さんが、ちょっとまずいね」

 

『え?』

 

 困惑したような電話先からの言葉。それに対して、玲はといえばため息をつく。彼女の姉、斎賀百とも知らない仲ではない。だからこそ、恐らくそうなるだろうという予測から、ある言葉を伝えることにした。

 

 

「……これは久しぶりに話した玲ちゃんへの独り言。 『黒狼』の内部分裂、それをペンシルゴンが感づいてる。って言えば分かるよね」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 時を同じくして。シャンフロの面倒な話を終えて、二人が楽しく久しぶりに話している頃。慧はとあるVRゲームにダイブしていた。

 

 とある人気のある、フルダイブ型格闘ゲーム。その中でのプライベートマッチングシステムというものを利用して、慧はある人物と手合わせをしていた。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!駄目だ。これじゃ。もう一度頼む、ジンさん」

 

 読めない。届かない。圧倒的で、どの情報が真実なのか全く持ってわからない。

 

 既に数十戦行った試合で情報は頭に叩き込んだはずだ。その情報から相手の動き方やパターンを推測し、理詰めによって戦う。魚臣慧とはそういうプレイヤーだ。だからこそ理を詰めようとした。しかし、現実はどうだ。情報を集めるどころか、相手の動きが全く持って予測できない。一度たりとも、自分の拳は相手に届かない。

 

 休み無しでの3本先取を少なくとも既に20戦。その全てに慧は敗北している。それも、相手に攻撃すら通せず。恐らく、自分に何かを学ばせるために動き方の調整。言い方は少し悪いが、手を抜いてまでもらっている。それでなお、届かない。

 

「ダメよ、やるにしてもちょっとインターバルを入れなさいな。分析と冷静さはあなたの最大の武器よ。それを見失っては駄目」

 

「……わかってる。でも、俺は」

 

 ジンのため息の後、数メートル離れていた彼の姿が消えた。かと思えば、次の瞬間には、アバターの顔面スレスレの地点で拳が停止していた。

 

「――頭は冷えた? 今くらいなら最初は反応できてたわよ」

 

「ッ……。悪い、ジンさん、冷静じゃなかった」

 

 『困ったわねえ』、と。ジンはぼやく。発端は、自分が彼のGGCへの調整を買って出たことだ。だが、実際に彼と拳を交えてみてわかったことがある。

 

 焦っているのだ、彼は。

 

 焦り、不安、恐れ。そんな感情が魚臣慧という人物の拳からは伝わってきて、それがどうしてかということはなんとなくだが予想がついていた。

 

「厳しい言い方をするけれど、そんな迷いのある後ろ向きな拳じゃ私には届かないわ。それに、迷いや焦りがある分あなたの死角や無意識を取りやすい。 ……はあ、休憩がてらちょっと聞かせなさいな。あなたがそこまで焦るのは、レインちゃんが理由?」

 

 

「……はい。そうです」

 

「最近のあの子、すごく幸せそうよ。きっとそれは、あなたのお陰だと思うわ。 ……なのに、どうしてあなたはあの子とは逆でそんな焦ったような、不安に蝕まれたようにしてるの?」

 

「不安、なんだ。俺は」

 

 弱音とも取れる言葉。確かに聞かせろ、とは言ったがオイカッツォ。魚臣慧という人間から弱音が出たことに少しジンは驚いていた。

 

 総合戦績勝率9割。このとんでもない数字は、世界的に見てもトップクラスどころかその中の上澄みに入るだろう。日本のプロゲーマーの格闘ゲーム部門。その中での最強と言われるのが彼であり、全世界の中でも彼と戦える人間はそう多くない。

 

 格闘ゲームの『魚臣慧』、シューティングゲームの『時雨空』。日本における最強とまで言われる二人のプロゲーマー。そんな二人と交友関係があるなど、中々に奇縁とは思う。といっても、自分やレインについてもかなり異色な人間だとは思っているが。

 

 そして、少なくともジンの中では彼は前向きな、自信に溢れる人間だと感じていた。冷静な情報分析力、手にした情報からの理詰め。相手の動きや癖を把握して、徹底的に弱点を突く。その全てが最高水準であり、弱音など決して見せるような人間には見えなかった。

 

「ジンさんってさ。人生経験豊富そうだよな。 ……ならさ、ちょっと人生相談にのってもらえないかな」

 

「そうねえ、確かに少なくともあなたよりは10年くらい多く生きてるわね。そうね、リアルとかならお仕事じゃないとお断りしてるのだけど。あなたは特別よ。知らない仲でもないし、友人の相談に乗るなんてことはよくある話でしょ?」

 

「はは、確かにジンさんは大物だもんな。 ……聞いていいかな」

 

「ええ、どうぞ」

 

 

 

 

 

「誰かを好きになる、愛するってさ。どういうことなのかな、って」

 

 

 

 

 慧のその言葉、その言葉に対してジンは驚いたようにした。今までそういったことに停滞していたような彼から、そんな言葉が出るとは思わなかったからだ。

 

 そして。目を伏せ、思う。彼も前に進もうとしている、そのために悩んでいるのだなと。ならば、それを助けることは年長者の勤めでもあるだろう。と思い、ジンは常に浮かべる口元の笑みを更に強くした。

 

 

 






 もし玲と慧がそういう関係になって子供が将来的にどうなるかと言えば、軌跡シリーズに出てくるシズナみたいな性格になる。性格慧+アクティブにした玲、見た目玲みたいな格闘も剣術もできるバーサーカーになる。


 作者は楽玲派なので、プロットを大幅に修正しました。何を修正したかって?ヒロインちゃんの合流タイミングをですよ。2万字くらい修正入った。なのでGGC編にはヒロインちゃんにも関わってもらいます。オラッ、楽郎に差し入れとかして距離縮めるんだよ!GGC時点ではまだ慧と玲イチャついてないんだからお前らがイチャついて距離縮めろオラッ!

一応ヒロインちゃんは玲のところの関係者。斎賀家が関係者なので、玲は百さんのことも知ってます。ヒロインちゃんからの認識は

玲:下の名前が同じ、実姉とは違う方面での姉みたいな人
慧:姉のように慕う相手の相方。プロゲーマーとしての活躍はよく知ってる

 ヒロインちゃんは『旅狼』関係者をはじめとして色んな人から背中押されてクソザコ恋愛弱者レジギガスから進歩して貰いましょう。最大火力を現実でも発揮して外堀埋めろ。






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