「で、私の壮大な計画は置いておいて。 ……色々当日の話とか後確認とかあるんだけど。いや本当色々と驚いてる。え?サイガ-0ちゃんと京極ちゃん実は親戚で、なんならレインちゃんの知り合いだったってどういうこと?ちょっと頭が追いつかないんだけど」
ペンシルゴンの言うことは最もである。実際、彼女の頭の中は俗に言う、はるか昔に流行ったネットミームの宇宙猫のような状態になっていた。
意味がわからない。シャンフロの中でも有名な『最大火力』に、PKとして名を馳せている京極に、ウェザエモンと一騎打ちで死合をしていたレイン。その三人が実はリアルで知り合いだったと。
「それを言うなら私もペンシルゴンが天音永遠だっていうのは驚いたよ。慧から聞いた時最初冗談かと思った」
「あー、それは僕も。いやだって……シャンフロの中で悪逆非道の人間が、天音永遠って言われてもねぇ……」
「私も驚きました。ええっと……その……ぺ、ペンシルゴンさんと陽――じゃなくて、サンラクくんとはどんなご関係なんでしょうか?」
今回のGGCでの合流にあたり、全員が『旅狼』メンバーのリアルを知ることとなった。
特に反応が大きかったのは、ペンシルゴン、そしてジンだった。ペンシルゴンについては言わずもがな。有名なカリスマモデルであり、シャンフロ内の行動や言動からはまさか『天音永遠』だとは思わなかったことから、まだ正体を知らなかったレインとクゥ、そして京極とサイガ-0からは驚かれた。ジンは『なんとなく予想していた』と言っていたが。
そして次にジンである。彼が自分のリアルをバラした時は大半が職業に対する驚きの感想だったのだが、ペンシルゴンに至っては顔から血の気が引いていた。
『九条 蓮』。本職はデザイナー、ファッション・コーディネーターではあるが、芸能界では知らない人間が居ないほど有名な人物である。特に、ファッション関係のペンシルゴン。天音永遠としては縁が深く、雑誌などでの特集記事で着ているものは彼のコーディネートのものが多い。デザイナーとしても超一流であり、彼の手掛けたものを着て雑誌やテレビなどの舞台に立つことは、一流の証明とも言われ、界隈では大変名誉なことであるとも言われている。
尤も。当の本人はただ好きだからデザインやファッション関係の仕事をしているだけであり、時折来る飲食関係のレビュー記事や番組についても、気分でやっているだけなのだが。
なので正体を知った時はペンシルゴンはそれはもう慌てて敬語になったのだが、『ここでの私はあくまでジン。そんな畏まることもないし、今まで通り仲間として接してくれると嬉しいわ。そのほうが楽しいし』と言われ、慣れないながらも今までと同じ接し方をすることにした。
また、サイガ-0も身内しか居ない時は堅苦しいロールプレイの口調ではなく、素の口調で会話をしている。本人としては、無理にロールプレイの皮を被らなくてもいいのでとても楽だそうだ。
「あっちは仕事の顔よ仕事の顔。まあぶっちゃけゲームの私が私かな? あー、それからレイちゃん。私とサンラクくんはただの外道仲間。私とカッツォくん、それからサンラクくんで三人揃って色んなクソゲーをやったり馬鹿やったり、まあそんな仲だから、レイちゃんが心配することはなにもないからね?」
「わ、わわわ私は別に、その……あう……」
「やっば、なにこのかわいい生き物。レインちゃんとレイちゃんで永久機関完成して無限に働けそうなんだけど」
なお、此処にいる恋愛関係に疎いレイン以外の全員がサンラクの話題を彼女に振った時点でこうなったのを見て、『ああ、なるほど』と察した。
「なんでレイちゃんがサンラクくんのことをそう思うようになったのかとか色々と女子トークしたいところではあるけど……先にGGCの話だね。私は補充メンバーで出ることになったから明日辺りに現地入りするけど、みんなは?会場どうやって行くとか、色んなスケジュールは決まってる?今回、前夜祭もあるっぽいし」
これが今日の本題である。オイカッツォ、慧は既に現地入り。サンラクとペンシルゴンも明日には現地入りの予定となっている。そうして、GGCは前夜祭も含めると開催期間は4日間。当然、世界規模のイベントであることから会場は混み合う。なので、スケジュールについて確認をしておきたかったのだ。
「えっと……一応、前夜祭の前日から参加予定。私も木曜日の昼でやること終わるから、そこからジンね――蓮ねぇに拾って貰う予定」
「そうね。玲ちゃんのお家まで迎えに行って、そこから斎賀ちゃんと京極ちゃんも拾って、滞在予定先に向かう予定よ」
京極と斎賀玲の二人からも、『あまりこういったイベントにいったことがなくて……よろしくお願いします』と言われる。つまり、前夜祭の時点で『旅狼』メンバーが全員現地に揃うということになる。
「わーお……。レインちゃん達3人だと、こういったイベントだしちょっと色々心配だったけど、ジンさんが一緒なら大丈夫だね。滞在は?どこかのホテル?」
「私がたまに仕事とかで使ってるのだけど、個人的に持ってる一軒家が近くにあるから、そこを使おうと思ってるわ。ちゃんと綺麗にしてるし設備も充実してるから大丈夫だと思うわ」
「あ、あの会場の近ってとんでもなくお高いところじゃ……。でもジンさんだと納得しちゃうなあ。なら、前夜祭では合流できそうね。その時は、サンラクくんと楽しんでくると良いよ。なんだかんだ、彼今回のGGCの出展ブースとか楽しみにしてたから」
「そ、そうなんですか?でも……私、シャンフロ以外のゲームってあまりよくわからなくて」
「ならなおのことチャンスじゃない!サンラクくんはまあ、確かにサイガ-0がレイちゃんだって知って驚いてたみたいだけど、なんか色々納得してたし。いい?男の子ってのは頼りにされるとなんだかんだ嬉しいものよ。だから、ゲームのこと話したいってサンラクくんに言って色んな話してこればいいんじゃないかな」
「がんばりますぅ……」
大鎧のアバターで、素の声でそんなことを言う彼女のギャップは中々に激しいものだがペンシルゴンは心の中で『頑張れ』と言いながらも苦笑した。
「前夜祭はとりあえず合流して、各々適当に分かれて散策したりかな。1日目はクゥの試合があるけど……まあとんでもないことになるのは間違いないだろから、覚悟だけはしておかないとね。楽しみだけど。どんなことやらかしてくれるのやら」
GGCは、世界中から最新のゲームに関わる発表であったり、試遊であったり、宣伝であったりなどが行われる大規模イベントだ。開催期間は4日間。今週末から来週の月曜日は土日祝日合わせて3日間の連休となるため、金曜の前夜祭から始まり週末は全てGGCという状態だ。
その開催地というのもまた豪勢だ。都内湾岸に作られた、広大な人工島。基本的に複数のイベントが同時に開催できるようにと想定されていたそこをGGCのためだけに全て貸し切り。現地へのアクセスも、直通のモノレールやハイウェイが存在しており不便がない。
「レインちゃんは免許持ってるわよね?宿泊予定の私の所、車が何台かあるから別行動とか買い物したかったらそれ使ってくれていいわよ」
「じゃあご飯は私が作るよ」
「やったぁ姉さまの手料理だー!」
「わわっ、楽しみです」
その言葉を聞いて固まったのはペンシルゴンだ。今、この忠犬系後輩はなんと言ったのか。料理は自分が作る、と言わなかったか。
ペンシルゴンはオイカッツォから、レインがかなり料理上手だと聞いている。ホテルの料理と友人の料理、どちらが良いかと言われたらペンシルゴンからすれば後者だ。しかも、こうしてメンバーがリアルで全員集まる機会など滅多にないだろう。
「ジンさん、恥を忍んでお願いが」
「あら、どうしたの。 ……えぇ本当どうしたのペンシルゴンちゃん。なんかすごい形相してるけれど。その顔モデルがしちゃいけない形相よ……?」
「GGC期間中、私も泊めてもらえませんか」
「いや別に構わないけれど私の仕事場よ……?本当普通のところよ?多分、カッツォちゃんの泊まってるホテルのほうが設備は豪華だと思うけれど。後、多分誰かと相部屋になるわよ。各部屋ベッド2つあるからどこでもいいけれど」
「レインちゃん、私とお泊りしよう!」
すぐさまゲーム内のインターフェースを通して自分のメールを使用し、即座にホテルの予約キャンセルとオイカッツォへのメール。この間約1分で行った後、ペンシルゴンはレインへとそう言った。
「うん?いいよ」
「……ふふ。これなら私、全米一ともいい勝負できそう」
なお、この後空にもこの話が伝わり、かなり無茶苦茶な方法で滞在先をチームの自分だけジンの所に変更したのは別の話である。
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「それでは若、お気をつけて」
「大げさだよ。親父殿の代理でイベントに出席するだけじゃないか ……それじゃ、行ってきます」
家中の者。隻眼に白髪の老人、家周りのことをしてくれている、父のお付きの相手に礼を言うとその青年は自分の愛車に乗り込む。
自分の地元である九州から会場まではかなり距離がある。昔と比べて、高速道路などの交通機関が整備されて快適になったとはいえ、車で都心までとなるとかなりの時間はかかる。
にも関わらずこうして車で現地に向かうのは、純粋な趣味だ。自分にとっての車の運転とは苦ではない、娯楽なのだから。
「GGC、か。僕にはあまり縁が無いと思っていたんだけどな」
黒髪に黒い眼。背は180を超えるほど、夏場ということで半袖のシャツにジーンズという格好ではあるが、見えている素肌は筋肉が鍛えられていることがよく分かるほどだった。他人が見たらまるで優しそうな優男、という印象を抱くだろう男性。彼はそんな言葉を呟く。
今回、こうして都心まで行くのにはイベントのスポンサーとして、自分の父の代理で出席するためだけではない。GGCの後、都心方面に赴任することが決まっていたからだ。
自分は技術者だ。そして、実家。本家の関わる『技研』でごく普通の技術者として働く自分も、今の勤務先が何に対して力を入れているのか理解している。
VRとAR技術の研究開発。近年では娯楽関係において話題を集めているが、他方面でも現在研究開発が進められている。医療分野や教育分野、最近普及してきたが日時用生活へのARデバイスの普及等がそれにあたる。
特に、様々な分野への進出の中でも医療と教育分野においては話題になることは少ないが、技術関係者の中では現在かなりの注目を集めている。様々な病気や事情により身体に不自由があったとしても、VRでは自在に動くことが可能であり、ARは現実世界での補助機能として活躍する。
そんな最先端技術をより多くの形にする。それが自分の血族、今の時代の『島津家』が行っている事業の1つだ。
そして今回、GGCのスポンサーという形で協力していた父の代理として出席することになった。
「……元気にしているだろうか」
ふと。思うのは、自身の親友のこと、そして――初恋だった相手のこと。
思えば、自分はこれから向こうに赴任するわけだし、二人に友人として会える機会も増えるのではないだろうか。そう思うと、楽しくなった。
口元に楽しそうな笑みを浮かべ、車を走らせる青年の名は、『島津豊明』といった。
倒れました。
生きてます。が、色々大変なことになりました。
とにかく最終更新した6月頭以降激務でした。仕事以外にも色々あったせいで、疲れとか諸々溜まってたんでしょうか。倒れました。その結果、かかった複数の科の医者からは「血液検査アウト、休養しろ」「明らかに身体に不調が認められる、休んでください」などと言われました。結果、時間が取れていま更新できてます。
ただ、以前のように元気はなく。どんな形であれど時間ができていざGGC編だけでも添削終わらせるかと思っても元気が出ない。医師からも言われましたが自分でも気がついてないだけで、かなり身体に疲労が来てたようですぐには元気はでなさそうです。
まあその関係で色々と大変なことになってますが、ちゃんと作品は書いてます。ただ、前以上に不定期というか更新が安定しないことをご容赦いただければなと思います。
ともあれ、そんなご報告までに。いまでは少しは元気が出て、なんとかやってます。元気があるときはFF14の黄金のレガシーにて二刀流ジョブが実装されたので鳥頭に半裸のミラプリでサンラクごっこしてたまに遊んでます。
まあ作者のことは閑話休題。
作中でちらちらと名前だけ出してましたが、島津家の次期当主が登場しました。予告編でも出てきた彼です。昔、玲ちゃんに惚れてましたが諦めた人。脳筋要素を大人しくさせて知性が備わった島津豊久みたいなイメージ。
ジンさんはかなり凄い人。具体的にはペンシルゴンが素でも頭が上がらない。
後、原作との相違点としてはGGCの規模。拙作ではかなり大規模なイベントで、しかも開催時期は前夜祭と祝日を含んで4日間。主催側が人工島丸々使っての大規模ゲームイベントというような形になっています。