とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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GGC編メイン突入開始


GGC編:其れは、想いを伝う物語 其の一

「リアルじゃ始めまして、だね。会えて嬉しいよ」

 

「私もまさかGGCで会えるなんて思ってなかった、あーちゃ……真里亜さん?」

 

「あはは、いつも通りでいいよ。リアルの方でも親しい人からはあーちゃんとか言われてるから」

 

 前夜祭を終えてGGC一日目。会場が一般開放された朝8時過ぎ頃、玲はある人物と会っていた。

 

 その人物から連絡が聞たのは前夜祭の途中だった。シャンフロ外でも連絡が取れるように連絡先やチャットツールのIDを交換していたこともあって、玲は『今週末はGGCに行くからいないよ』と言った所。

 

 

 ――『え!?レインもGGC行くの!?私も一日目から行く予定だよ!』

 

 

 と返答された。

 

 そうしてその相手が、現在玲の眼の前にいる人物。『厳島真里亜』こと、『Animalia』である。

 

 背は玲より少し高く、肩ほどまで伸ばした濡羽色の髪に落ち着いた。いかにもお嬢様といったような雰囲気を感じさせる。実際、彼女はシャンフロの中では色々とぶっ飛んでいるが、リアルでは清楚なお嬢様である。

 

「あーちゃん、一人で来たの?なんというか、私としてはあーちゃんって動物好きでこういうイベント興味なさそうだったからちょっと驚いてる」

 

「大学の友人と後で合流する予定。うーん、普通なら興味ないんだけど、出店ブースに興味があってね。ほら、昨今のGGCってちょっとした技術発表会みたいなものだから。ゲームだけじゃなくてVR関係の発表ブースって結構あるでしょ、そっちに興味があってね」

 

 なるほど、と玲は思う。慧から聞いたこともあったが、元々GGCというのはそこまで大きくなくむしろ小さめのイベントだった。それが昨今のVRゲームや技術、シャンフロなどの台頭によって世界的にも注目されるようになり、規模が大きくなった。

 

 そうしてそのような場で、近年の研究や最新技術の発表ブースというのも設置される。今やGGCとはゲーム業界だけではなく、数多くの業界から注目されるイベントなのだ。

 

「ほら、私って動物アレルギーがひどいって話はしたでしょ」

 

「うん、アレルギーが酷くて動物が好きなのに殆ど触れないからシャンフロはじめたって話してたね」

 

「実は研究雑誌とかで読んだんだけど、私みたいな人って結構居るらしくて。そうじゃなくとも色んな理由で動物と関わりたいのに関われないって人は沢山居るみたいでね。シャンフロほどリアリティと言うか、現実感はないけどVRで動物を再現する研究っていうのが色々とあるらしくて。それで、その研究発表がGGCで先行公開されるらしくてね」

 

「確か人工島の西部エリアはそういった技術や研究の発表区画だったね。うーん……私も興味あるし、合間に行ってみようかな」

 

「やっぱり理工系の学生としては興味湧くでしょ?わかる、わかるよ」

 

 大学は違うが真里亜も学術、生物学に熱心な学生である。そういった技術方面には自分の趣味趣向以外でも興味はある。それは玲も同じであり、興味をそそられた。

 

「学術的な区画もあるから、本当は先生……えーっと、あーちゃんにはキョージュって言ったほうが伝わるかな。先生も初日から見に行きたいとは言ってたんだけど」

 

「そういえば、あの人と玲もリアルの知り合いなんだっけ?まさか名前通り、リアルでも教授とかそんなことないよね、あはは」

 

「先生、考古学の教授だよ。本とか研究発表とか結構出してる」

 

「滅茶苦茶すごい人じゃんそれ!?」

 

「先生の本、すごく面白いよ。私のおすすめ。 ……実は先生も初日から技術ブースには興味があるから行きたいって言ってたんだけど、考古学の討論会と一日目が被ったらしくて。それが終わったら二日目から奥さんと参加するって言ってた。すごいしょんぼりしてた」

 

「まさか奥さんもシャンフロやってるとかそんなこと」

 

「『黒狼』のマッシブダイナマイトさん」

 

「あの濃いゴリゴリの前衛職の人!?しかもあの人有名プレイヤーだよ!?どうなってるのぉ私の周囲の人達……」

 

 苦笑いしているがまだ序の口である。この時の彼女はまだそれを知ることもないのだが、後々身内関係のリアル事情を知り唖然とするのは別の話である。

 

「っと、そろそろ時間か。友達の所行く前に、ちょっとだけ報告。できれば、もしGGCに来てるならペンシルゴンさんとかの耳に入れてほしい情報が幾つかあって。改めて概要はメールするつもりなんだけど、GGC終わってからでも少し話したいって言ってたって伝えてもらえるかな」

 

「うん、わかったよ。 ……聞いていいのかわからないけど、シャンフロで何かあった?」

 

「んー……ちょっと集まって話し合わないとってところもあるけど、概要だけ伝えると」

 

 

 

 ――『プレイヤーではない存在。姿の見えないおそらくNPCか何かに、プレイヤーが辻斬りされてるらしいんだよね』

 

 

 

 そんなことを、彼女は言った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……ということらしい。詳しいことはメールするって言ってたよ、永遠さん」

 

「んー……なるほど。GGC中にとんでもない情報が入ったね、これは」

 

 GGC一日目午前。空の試合は昼前からのため、それぞれ自由行動をしている中、ペンシルゴン。永遠のもとに来たのはひとつのチャットツールでの連絡だった。それは、己の可愛がる忠犬系後輩、玲からのものであり『話したいことがある』とのことだった。

 

 玲が連絡を取ったのは、実質的に『旅狼』をまとめている永遠と、その永遠の運営サポートという形を取っているジンこと、蓮の二人だった。出来るだけ内密にという話をすると、蓮の伝手で人工島内にあるカフェの一室を取りることが出来た。

 

 そこでコーヒーが到着してから玲が話したのは、真里亜からもたらされた情報だった。

 

「どう思います、蓮さん」

 

「気になる情報よねぇ。GGC中でなければ、すぐにでも調査をしたいくらいには」

 

 真里亜からもたらされた情報は幾つかあった。

 

 ひとつ。正体不明の何者か。おそらく挙動が有り得ないことからNPCか何かにプレイヤーが辻斬りされているということ。それが行われる場所は多岐にわたり、可能性としてマップ上どこにでも出現することもありえること。ただ、辻斬りが行われる時間は決まっており、現実時間の0時から深夜2時の間に発生しているとのこと。また、天候が晴れかつ月の出ている間に起こるようだ。

 

 ふたつ。存在が確認されていた最強種、『天覇のジークヴルム』の活動が活性化したとのこと。元々ランダムエンカウントだったその頻度が上がっており、何やら探しているような様子が見られたとのこと。エンカウントしたプレイヤーによると、『黒い鳥、もしくは窮極の後継者を知らぬか』と尋ねられたらしい。

 

 他にも幾つか情報はあったが、特に注目すべきものはこのふたつだった。

 特に。ジークヴルムの件については、かなり緊急そうな案件だ。

 

「まず最初の案件だけど、結構の数の被害報告が出ているとして、もしそれが不具合やバグによるものだとしたらとっくに運営が修正や告知を行っているはず。でも、それがないということは……恐らく仕様。何らかのイベントか、NPC、モンスターの可能性が高い」

 

「問題は、その姿が見えないということね。そうして被害にあったプレイヤーは全て『斬られている』。軽装備のプレイヤーだけでなく、重装備のプレイヤーまで袈裟斬りにされるというのはちょっと妙ね。相当に切れ味の鋭い武器でなければ不可能よ、ましてや重装備を容易く切断するほどの、ね」

 

 永遠と蓮がそれぞれ疑問を口にする。とにかく総じて言えるのは、妙なのだ。

 

 プレイヤー対プレイヤーにおいて、相手の重装甲を貫通させられる武器というのは存在している。性能の高い槍によるスキルでの貫通刺突、ハンマーなどの打撃武器による破砕、大剣などの重厚剣による切断。だが、今回総じて言えるのは『袈裟斬りにされている』という点だ。

 

 つまり、打撃ではなく重厚な武器でもない。貫通属性攻撃でもない。鋭利な刃物で容易く重装備でも切断され、プレイヤーのアバターを真っ二つにしている。

 

「襲われたプレイヤーは、デスポーンする瞬間に必ず風斬りの音を聞いたらしいのよね、まるで『血振るい』の音のような」

 

「つまり、恐らく使用された武器は恐らく……刀」

 

 正体不明の存在による、恐らくだが刀を用いた辻斬り。情報が少ない以上、戻ったら調査は必須だろうと永遠と蓮は考えた。もし使用されているのが刀だとすれば、此方にはその方面に精通する人間が少なくとも二人いる。玲と京極だ。

 

 

 だが。この件以上に緊急度が高いのは、もうひとつだ。

 

 

「ジークヴルムが探している存在って、間違いなく」

 

「そうね。玲ちゃんだと思うわ」

 

 それは、玲もまた相談前から察していたことだ。ジークヴルムの探している『黒い鳥』とは、玲のキャラクターであるレインとともに行動しているクロのことだろう。そうして、クロがどんな存在なのかというのは『旅狼』のメンバーは知っている。

 

 本人があまり語ろうとしないことから不明点はあるが、確定していることだけでも、『終焉』や『名のない獣』と呼ばれていて、本人が望まずとも一度世界を滅ぼしかけた存在であり、ウェザエモンやセツナとも関わりの深い神代においてもとんでもない存在だったこと。

 

 そして窮極の後継者とは、レイン。つまり玲のことだ。ウェザエモンから神代に天津気刹那が作り出したという最高傑作の刀を受け継ぎ、本人から窮極の後継者と認められたのはシャンフロにおいてたった一人しかいない。

 

 玲、そしてクロをユニークモンスターであるジークヴルムが探している。これはあまりにも緊急性の高い情報だ。自分たち『旅狼』、そして『ライブラリ』、『SF-Zoo』から成る同盟、至星三天(トリニティ)の目的はシャンフロという世界を解明し、考察し、最強種である存在を踏破しまだ見ぬ未知へと進むこと。その目的において最強種であるジークヴルムの存在は無視できないものであった。

 

 ……とはいうものの。最優先は各々のリアルである。ゲームではゲームで優先すべき事柄や目的があるように、リアルでもまた同じだ。現在自分たちは目的があってGGCに来ており、最優先されるべきはリアルのことであるというのは同盟の誰もが承知の上だ。

 

「とりあえずシャンフロのほうの動向は、ライブラリとかSF-Zooのメンバーが情報収集してくれるらしいからGGCが終わったら要確認だね。……玲ちゃん、ジークヴルムと会ったことなんてない、よね?」

 

「ないよ、永遠さん。存在だけはあーちゃんとか先生から聞いたことはあるけど。リュカオーンと同じでランダムエンカウント型の最強種で、人の言葉を話して意思疎通が可能。とても大きな黄金のドラゴンで、たまにプレイヤー……開拓者に味方することもあるっていくらいしか知らない」

 

「そうよねー……。多分だけど、玲ちゃんがクロに認められたこと。そしてウェザエモンの後継者として認められたことによって、何らかのフラグが発生したとも考えられるけど、ジークヴルムも情報がないのよね。うーん困った」

 

 実際には後日の相談待ちなのだが、それ以前の問題として情報がなさすぎる。

 困った、というように永遠はため息を付くと。

 

「ねえ、永遠ちゃん」

 

「ん、どうかしましたか蓮さん」

 

「確かジークヴルムって……強い相手を求めてランダムエンカウントしていた、って説が濃厚だったのよね」

 

「あくまで仮説ですけど、行動から見て多分そうです」

 

「となると、可能性としてだけれど玲ちゃんと接触した際、戦闘になる可能性もあるってことよねえ」

 

「今までの動向からすれば、話を聞いてもらえるとしても戦闘後に……もしかして蓮さん」

 

 永遠はあることを察した。だが、しかし。今までの動向からしてジークヴルムとの戦闘になる可能性は高い。しかも、恐らくだがユニークシナリオにも関係してくる可能性のある前哨戦だ。

 

 ドラゴンとは、物語の中でも強大な存在として描かれる。それはシャンフロでも同じだろう。ならば、そんなドラゴン相手にぶつけるとすれば……それは、強者だ。そうして、少なくとも永遠も知る人外魔境の対人環境ゲームにおいて、頂点に君臨していた『最強』を知っている。

 

 森羅万象、全てを打ち砕き屠る拳。『神拳』と呼ばれる存在を。

 

「後日私からも提案するけれど、ジークヴルムとの接触……そこに私と空ちゃんも同行させて貰おうかしら」

 

 

 




■ジークヴルム
 レインに目をつけたと思ったらとてもまずい奴等に目をつけられた。なお、3人中二人はこの時点で特殊職業持ち。たくさんお話(肉体言語)しようね!

■真里亜
 リアルでは超お嬢様。清楚で深窓の令嬢みたいな存在に見えるけど実は猫かぶってる。シャンフロのほうが素で本性。アレルギーがなければ将来は獣医などを目指したかったのだが、体質の問題があるため断念して、別方面で動物と関われることを目標としているらしい。

■余談:レインにネフホロをやらせたらどうなるか
 やる前に慧と空が全力で止めようとする。止めるのに失敗すると、もれなく超高機動攻撃型のブレオンの武者みたいな機体が完成する。装甲悪鬼村正の村正みたいな機体に乗って相手を叩き斬りに行く。

 アバターはアーマースーツの上にくたびれた茶色のコート、黒茶色の髪の毛をオールバックにした長身の男性。『黄金のレガシー』のひろしみたいな見た目。声もボイスチェンジして喋り方も割とノリノリでロールプレイしているため、ぱっと見中の人が玲だとはバレない。

【あとがき】
 長かった。ここまで来るのに本当に長かった。ということで、GGC編のメイン、『其れは、想いを伝う物語』が開幕です。本当は昨年の夏頃くらいに突入予定だったんですが、作者に色々とあったり身体を悪くしたりでかなり遅れてしまいました。

 プロットと大体の内容は完成しているので、以前よりはペースは落ちると思いますがちまちまやって行きたい所存。慧と玲の二人の諸々に決着がつく章というのもありますが、この後に前後入れ替えたリュカオーン再戦とかクターニッドが控えています。勿論、その先もまた然り。

 結構ゆっくりとしたペースになると思いますが、今後とも拙作を楽しんでいただけると幸いです。
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