とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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GGC編:其れは、想いを伝う物語 其の二

 

「おいおい、GGCだけでも結構ハイテンションなのに中々にアツい情報じゃないかそれ」

 

「まあ気持ちはわからなくないけどね。後、今はいいけど変装してる時ちゃんと身内以外の人様の前では名前で呼びなさいよ。偽名のほう」

 

「わかってるよ、刹花。これでいいだろ」

 

「それでいいのよ、楽郎君?でもアレだよねえ、君玲ちゃんは断固として熱田さん呼びなのに私のこととかは躊躇いなく呼び捨てにするわよね。別にいいけど」

 

「いやまあ、お前や慧とは付き合いが長いけど熱田さんは会ったばかりだろ。それに……お家柄考えたら呼び捨てするのは流石にって気持ちに」

 

「君そんなに信仰深かったっけ……?まあわからなくもないけど。でも京極ちゃんとかは呼び捨てじゃない」

 

「あいつはなんというかシンパシーみたいなものを感じて」

 

「じゃあ斎賀ちゃんは?」

 

「同じ学校だけどあまりにも礼儀正しく接してくれるのでこっちも礼儀を尽くさないとと思ってさん付けだな」

 

「なんか律儀なのか適当なのかよくわかんないわね」

 

 現在は一日目の昼前、永遠と楽郎はGGCの大会関係者室に居る。というのも、顔合わせのためだ。GGCのエキシビションマッチは4vs4だったのだが、慧の所属するチームから事情により二人が欠場。そうして、その代役として呼ばれたのが楽郎、そして永遠だ。

 

 GH:Cは新発売のゲームである。対戦に用いられるこのゲームで慣らせるのは、こちらも、そして相手の全米一のチームも一日目の期間だけである。つまり、その短期間でこのゲームの操作に慣れ、どれだけゲームに対しての理解が深いのかが勝負の鍵となる。

 

 ゲームパッケージが使用可能になるのは正午からであり、練習もそこから開始できる。空の試合を見れないのは残念だ、と思っていた楽郎や永遠だったが関係者室には中継モニターも設置されており、初日に行われるプログラムはそのモニターで見ることが出来るので安心した。

 

 顔合わせ、というのは要するに最後の一人。慧のチームで残ったその一人と自分たちの顔合わせだ。自分たちのことについては、慧からその人物へと説明はされているらしいが会うのは初めてである。呼びに行った慧を待つ間、楽郎と永遠が話していたのはつい先程玲からもたらされた情報だった。

 

 この時点で永遠には情報元。つまり、真里亜から詳細についてのメールが送られており、その内容を確認しながら楽郎へも話を持っていった。

 

「それで、楽郎君。……玲ちゃんにも意見は聞いたけど、どう見る?」

 

「んー……俺としては、色々と情報が察しやすいジークヴルムよりその不可解な辻斬りってのが気になるな。いや、緊急性が高いのは前者なんだけどさ」

 

「というと?」

 

「クソゲーマーとしての視点で言えば、これやられてることはクソゲーそのものだ。相手が見えない、察知も出来ない、でも斬られれば真っ二つ。つまり即死でデスポーン。当然、ロストも発生する。これがもしバグじゃないならクソゲーだろ、だって何をされたか理解できずにやられてるんだぞ」

 

 そう、やられていることが余りにも理不尽。それを通り越してクソゲーなのだ。仮に一撃で倒されていたとして、その理由がわかればまだ理解できる。原因を追求して対策を練れるし、なによりそれが対応可能なものなのかという判別がつく。だが、何も見えずに一方的に斬り伏せられるのは論外だ。対策も考察もしようがない。

 

「けど、恐らくこれはクソゲーじゃない。諸々情報待ちなところはあるが……ヒントは幾つもある。恐らく武器は刀だ。そして、デスポーンの瞬間に必ず行われている、血振りの音。この発生時間ってのも気になるな。月に、夜中……。そもそも、なんで突然辻斬りみたいなことが始まったんだ?そんな疑問も出てくる」

 

「言われてみたら、そうだね。突然始まった辻斬りにしてはなんというか……不自然?な感じがする」

 

「ただ大問題なのは、使われている武器や発生時刻がわかっても……挙動がわからないってのが大問題だ。袈裟斬りと言っても、前なのか後ろなのか。そもそも、どのタイミングで発生してどれぐらいの時間で斬られるのか。重要な部分がまるでわからない。正直お手上げだ、もっと情報がほしい」

 

 うーん、と楽郎が考え込んでいると部屋の扉が開けられた。そこから入ってきたのは、慧。そして見知らぬ、一人の女性だった。

 

 強気そうな目にアップにした黒寄りの茶髪のポニーテール。慧に連れられてきたことから、恐らくこの人物が残った一人なのだろうと察した。

 

「悪い、待たせた……って、何か話し中だったか?」

 

「ううん、大丈夫大丈夫。で、そちらが?」

 

「ああ、話していたうちのチームの一人だ」

 

 すると、一歩前に出たその女性は永遠を見て驚いたようにしたが、すぐ二人に対して一礼した

 

「夏目恵です。よろしくお願いします」

 

「有名な子だよね。雑誌で結構君のこと見かけるよ。私は天音永遠、よろしくねー」

 

「そういえばカッツ……慧が出てる雑誌とかで見たことあるな。っと、陽務楽郎だ、よろしくな」

 

 挨拶を終えると、信じられないものでも見たようにしている彼女は落ち着かないようにしつつも、永遠を見た。

 

「あ、あの……失礼ですが、あの天音永遠さんですよね?」

 

「うん?モデルの天音永遠なら私のことだよ?後それから、その慣れない敬語別にいいよ。私も楽郎君も気にしないから」

 

「じゃあ……コホン、そうさせてもらうわ。少し驚いてしまって。ケイから聞いてはいたけど、本当にあの天音永遠だったとは信じられなくて」

 

「まあそうかもねえ。ゲーム仲間がモデルだなんて、何かの冗談に聞こえるよね」

 

「メグ、永遠のほうに驚くのもあれだがそっちの楽郎も大概なんだぜ?なんつっても、俺に勝率四割ある奴だから」

 

 信じられない、というように恵は楽郎を見た。対して楽郎はといえば、困ったようにして頬を掻いていたが。

 

「といっても、最近じゃゲームをお互いよーいドンで始めて三割半とかそんなもんだろ。慧、例の勝率上がり始めた時期から妙に動きが良くなったしさ。んー……なんていうんだ?パターンが不規則すぎて読み辛くなったというか、そんな感じか。それに最終戦績ならお前に研究し尽くされて勝率三割あればいいほうだったろ。いや本当、なんでいきなり動き激変したのか謎なんだよな」

 

 その動き方が突然激変したというのは、慧が玲から生活バランスについて色々と言われて改善し始めて、睡眠時間の確保や食生活を良くし始めたタイミングである。つまり、突然勝率が上がり始めたのは玲が原因とも言えなくもないのだ。

 

「でもプロゲーマーなら慧相手に勝率もっとあるもんじゃないのか?それと比べたら俺なんて未熟もいいところじゃ」

 

「……すごく言いにくいんだけど、元々格闘ゲーマーのプロでケイ相手に黒星をつけられるプロは正直日本には片手で数えるほどしか居ないのよ。それで今じゃ国内だと無敗、世界ランクで見ても勝率九割のワールドランカーよ」

 

「え、マジか?」

 

「特に一時期掲示板や界隈でも騒がれたけど、ケイの戦績が伸び始めた時期以降は国内でケイに勝てるプロは居ないの。 ……勝率が三割、四割でケイ相手に勝ち星取れてることがどれだけすごいことか、これでわかる?」

 

「ちょっと色々信じられないんだが。ええ……マジか、俺そんな相手に勝ってたのか……」

 

「ま、7割位俺に負けてるけどな」

 

「お?なんだやるのか?ギャラクシア・ヒーローズ:カオスならお互いよーいドンだから普通に勝つぞ?お?」

 

「おういいぜ、こっちも特訓の成果を見せるサンドバッグにしてやろうか?」

 

 お互い不敵な笑顔で睨み合う楽郎と慧。到底同じチームの味方同士とは思えないその様子に流石の恵も慌てたようにしたが、もういつものことだと慣れたようにしている永遠はパンパン、と手を叩いた。

 

「じゃれあうのもいいし、調整もいいけど先にやることあるでしょ。特に慧君」

 

「っと、そうだな。 ……それで、メグ。お眼鏡にはかなったか?正直、俺としてはこれ以上に信頼も出来るし、戦力にもなるやつは知らない」

 

「はぁ……オーケー、納得したわよケイ。確かにこのメンバーなら、『スターレイン』とも戦えるわ」

 

 恵としても、納得だった。楽郎の実力は今聞いた通りで納得の行くものだったし、永遠のほうはあの天音永遠と聞いて驚いたが所詮はモデルだろうと思っていた。だが、その実はカリスマのある指導者であり、策略家でもあり、自分たちはそれで散々痛い目を見て負けたこともあると慧から聞いた時は驚いた。

 

 今回のエキシビションマッチは、ただ単純に格闘ゲームが強いというだけでは駄目なのだ。実力、知略、理解力。あらゆる要素が勝負に直結する。それを考えれば、このメンバーは納得だった。

 

「永遠と楽郎には説明はしたと思うが、再確認だ。俺達はGGC二日目にアメリカのプロゲーマーチーム「スターレイン」と対戦する。日本チームとしては勝ちに行くのは当然だが……俺個人としても、どうしても勝ちにいきたい。どうか、力を貸してくれ。この通りだ」

 

 真剣な表情、覚悟を決めたような瞳で慧は三人に対して頭を下げた。慧がどうしてここまでするのか、どうしてこれほどまでに真剣で本気なのかという理由を聞いていた永遠と楽郎は『頭上げろ、俺も負ける気ねえよ。それにゲーマーとしてこんなチャンス滅多にないしな』『珍しく私も本気なのよね。全米最強に目にもの見せてあげるわ』とやる気を見せていた。

 

 対して、困惑していたのは恵のほうだ。慧からは、人数は代理を探してくるから、力を貸して欲しいとは聞かされていた。自分の中では、日本チームとして全米最強に勝つこと。それが全てだと思っていたのだが、どうやら他にも理由があるのだとここで察した。

 

 それがなんなのか、というのは気になった。なぜなら、今回の彼は今までにないほどに本気だったからだ。自分もプロだからこそ理解できる。今の彼、『K』というプロゲーマーは、全米最強にも匹敵するほどの気迫を持っている。

 

「……すまん、頼りにさせてもらう。GH:Cのプレイが可能になるのは正午からだから、後少し時間がある。それまでの間に、相手チームの要注意人物について話しておこうと思う」

 

 そうして、慧がテーブルの上にあった最新型のパッド端末に相手チームの情報を表示する。

 

「ハッキリ言うと、この内の三人は永遠や楽郎なら勝てる。お前ら二人の実力はよく知ってるから言わせてもらうが、いい勝負はするかもしれないが勝つことは出来ないと思ってる。問題は……こいつだ」

 

 そうして詳細表示したのは、四人の内唯一の女性。金髪碧眼にショートボブ、写真からは活発そうな印象を抱かせる、恐らく慧と同い年か少し上ほどの少女だった。

 

「こいつが、シルヴィア・ゴールドバーグ。全米一……名実共に最強のプロゲーマーで、今回俺が倒したいと思う相手だよ」

 

 

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