ウェザエモンって普通に会話できたらどんな人物だろうかと考えて、仏頂面で無愛想。でも、ちゃんと答えてくれる時は答えてくれる人と考えたらこうなりました。
また、今回の話はタグにもありますがオリキャラ注意となります。本作には、原作で言う『外道三人衆』のように、『脳筋三人衆』というものが存在します。その内の一人が出てきます。
結局、ペンシルゴンの質問は長い間続いた。そこで彼女がレインから得た情報は、どれもがとても貴重なものであった。
まず、レインはNPCである"生身のウェザエモン"と、いつでも会えるということ。ただし、そのエリアには転送式で送られる上にマップに自分の場所が表示されず、彼女以外侵入不可能であるということ。次に、そのウェザエモンとは会話が成立していること。レイン曰く、NPCである彼から指導を受けているということらしい。
戦闘面での情報についても収穫があった。どうやら、レイン曰くペンシルゴンが話した『墓守のウェザエモン』は、自分の知っているものと違うような気がするとのことだ。例えば【断風】や【雷鐘】という攻撃だが、NPCのウェザエモンはそれを連射してくるとのこと。意味がわからないとペンシルゴンは思った。
ただ、NPCの彼は【雷鐘】や【入道雲】といった遠隔攻撃をあまり好まないようで、『特訓』という名目の時にしか使わないのだという。レインが戦っているときは【断風】と純粋な剣技、そしてある特定の技だけを使用してくる。毎回、その技で叩き切られるそうだ。
多くの情報を得られたペンシルゴンだったが、とにかく一度情報を整理したいということとなり、結局一度解散になった。
そして、夕方の19時過ぎ。慧。オイカッツォの家からログインしているレインはといえば、とあるエリアに来ていた。
「――やっぱりまだ師匠には勝てない。くやしい」
「……今のは中々だった。精進しろ」
まるで、山の山頂を平らにして凹ませたようなエリア。その中央に存在しているのは、巨大な桜の木。草木一つないその平地の中、中央の桜だけが満開に咲き誇り、桜の花びらが舞っていた。
そこにある姿は、一人のプレイヤーと半透明の長身の男性の姿。中東系の顔つきに髭。腰にはレインのものとそっくりな。だが、彼女のものよりも長い赤黒い鞘に収められた刀。そんな仏頂面の彼は、ぶっきらぼうにだが称賛の言葉をプレイヤー。レインへと送った。
「30分戦って、一撃でも師匠に入れれば勝ち。でもその一撃が遠くて、毎回あの技で斬られる ――師匠もしかして、生前はすごい強い人だった?」
「……それなりにな」
「そうなんだ。でも、すごく強いのに『晴天転じて我が窮極の【天晴】』なんてなかなか面白いこと言うなんて思わなかった」
「……それは言うな」
仏頂面のまま、困ったように視線を逸らすウェザエモンに対してレインは悪戯が成功したようにサムズアップして見せる。
このエリアは、レインが最初にNPCのウェザエモンと戦闘を行い、その後敗北したが侵入可能になったエリアだ。
『征桜領域』。それが、このエリア名である。
エリアへの移動は至って簡単である。移動条件は、タウンエリア内ではないこと。そして、非戦闘状態であることだ。その条件を満たせば、転送ポーターが起動してレインをこのエリアへと転送する。
ただし、制約もある。まず、このエリアには彼女以外進入不可であるということ。このエリアの中ではレベルが50に調整され、アイテム類は一切使用できないこと。マップに自分の場所が表示されず、メールやチャットなどのシステムが使用できないこと。このエリアを出るまでの間、リスポーン地点が【征桜領域】に固定されること。そして、一度侵入すると30分間はこのエリアから出ることはできないことである。
といっても、最後の2つはレインは一度ここに入ると長時間このNPCのウェザエモンと戦ったり、指導を受けているため問題ないのだが。
「……だが、今のはよかったのは本当だ。後半23分。よくあの一撃を避けた。間違いなく死角だった筈だ」
「すごく嫌な予感と、引っかかる感じがあったから」
「……ならば。何故退かなかった?」
「退いたら多分、師匠の思う壺かなって思った。なら前に出て、その一手を台無しにするのが最善手。……それと、受けたほうがまた一手師匠の手を見れると思ったから」
「……恐れがないのか。まったく、呆れたものだ」
「斬れば大抵なんとかなる」
「……はは。確かに、その通りだ」
『大抵のものは斬れるし、斬れば大抵なんとでもなる』。どうやら、この考えについてはこの二人にとっては共通認識のようだった。
十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない。そんな言葉があるように、高度に発達したAIというのは殆ど人と変わりがない。変わるとすれば、その存在についてだ。人、つまりシャングリラ・フロンティアで言う所の運営開発に作られたという点だけだ。
七つの最強種と呼ばれる存在には特別高度なAIが搭載されている。それと同様、最強種ではないが、運営の調整という枷を外したこのNPCのウェザエモンもまた、高度なAIを搭載している。
つまるところ。このウェザエモンは、シャングリラ・フロンティアという世界に生きていた存在なのだ。
「今日は4戦やって全敗だね」
「……ああ。だが、お前は戦う度に強くなっている。それは間違いない」
「師匠の指導のおかげ。今の私の目標は、師匠を超えること」
「……俺を超える、か。それは楽しみだ」
口元に笑みを浮かべ、目を伏せた彼はどこか嬉しそうにしていた。それを見てレインは『期待してて』と言うと、
「ちょっと別にやることがあって、今日はこれくらいにしておくね。また来るから」
「……ああ。いつでも来い」
なお、最初にウェザエモンがレインから師匠と呼ばれた時はかなり彼は困惑していた。それはそうだろう。彼からすれば、『二号計画』の末裔、開拓者から突然無表情ながら目を輝かせて師匠などと呼ばれたのだ。それも、数十分に及ぶ全力の死合いの後、自分が全力の【天晴】で叩き斬ったにもかかわらずだ。最初こそどう接していいものかわからなかったが、レインが自分とある部分では同類とわかり、師匠と呼ぶのを許してある期待を持った。
そんな彼女を見送ると、彼は桜の木に背を預け、目を閉じるとただ、ある言葉と一言だけ呟いた。
「……継ぎ、託す。そう、きっと」
『――刹那』
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ペンシルゴンとの約束は、深夜0時の予定になっていた。一度ログアウトした玲はといえば、慧のマンション。その彼の部屋の横にある、いつのまにか彼が用意してくれていた自分の部屋でヘッドギアデバイスを外すと伸びをして、部屋にある小型の本棚の上にあるデジタル時計を確認する。
部屋を出てリビングに行くと、やはりと言うべきか慧の姿はない。恐らくまだ自室でダイブしているのだろうと考える。もうすぐ、グローバル・ゲーム・コンペティションという、国際的なゲームコンペにプロゲーマーとして出場するとは聞いていたので、あまり邪魔もしたくなかった。
既に時間は20時過ぎ。少し遅いが、夕食でも作ろうかと思い、ヘアゴムでいつもはストレートにしている髪をまとめてポニーテールにすると、キッチンに行く。冷蔵庫の中を確認すれば、まだ食材が結構残っていたためどうしようかと考える。
慧はいつダイブを終えるかはわからない。少なくとも、ペンシルゴンとの約束前には一度目を覚ますとは思うが、いつになるか不明な以上、冷めてもすぐに温め直せば問題ないもののほうがいいだろうか。などと考えていると、
「……ん?」
テーブルの上に置いていた、スマートフォンが鳴った。ディスプレスの表示を見れば、最近連絡を取っていなかった相手からのものだった。
「もしもし」
『もすもす終日ー?やーやー元気にしてるかなー!?私だよ?そう、わーたーしー!』
「新手の詐欺?」
『冗談だよ冗談』
「相変わらずテンション高いね、くーちゃん」
『そういう玲はいつも通りクールだね?そういうところが大好き!流石私の嫁!』
「私もくーちゃんも女性だけど」
『ふっ……玲のその返しも久しぶりすぎて滾ってきた……。ちょっとダクアヴェで世界滅ぼしてくる』
「まるでコンビニ行くみたいなノリだね。というか、くーちゃんが言うと本気に聞こえるけど」
『え?いや本気だけど。ちょっと対人の過密ワールド1つくらい殺戮パーティーでもやって滅ぼすつもりだったけど』
「ほどほどにしてあげて。また怒られるよ?」
電話の先で『あはー』などと、苦笑いしているような声が聞こえる。
電話の相手は玲にとっては久しぶりの相手だった。だから、彼女は久しぶりに話せたのが嬉しくて口元に笑みを思わず浮かべた。
「ダークネス・アヴェンジャー・オンライン」。外道三人衆から見ても対人魔境のVR神ゲー。そこには対人ランクというものが存在する。そこの第三位が"シマヅソウル"。つまり、玲である。といっても、バトルスタイルはゲームに合わせたもので今のシャンフロと同じような戦い方ではないが。
そして玲に少なくとも勝ち越しているプレイヤーが二人存在している。実を言えば玲は向こうのゲームをやっていた頃は、この二人と全力で戦うのは日常茶飯事だった。そして日課のように戦い続けていた結果、その二人と仲良くなっていた。だから対人戦をする時以外は他愛のない雑談をすることもあったし、なんならこの二人と現実。リアルでの交友もある。
そして現在、電話をしてきているのはその内の一人。ランク2位のプレイヤー"黒兎猫々"。本名『
なお、玲は休止してシャンフロをやることをこの二人にも伝えてある。なので、休止してからはあまり話す機会もなかった。
「それで、どうしたの急に」
『ん?ああ、実は玲にご報告がありまして』
「報告?この前のFPSの大会で優勝したこととか? 大会の中継、慧と見てたよ。優勝おめでとう」
『ありがとー!でも報告はそっちじゃないんだ。まあ報告は私、じゃなくて正確には私達の、だけど』
「私達?」
どういうことだろうか、それに私達ということは複数形だ。玲は疑問符を浮かべるが、電話先では『ふっふっふー』などと何やら楽しげな声が聞こえてくる。
「なんと、私とあいつ。ダクアヴェの【魔弾】と【神拳】がシャングリラ・フロンティアを始めることになりましたー!いえいっ!」
「ごめん本当になんでそうなったの?」
驚きよりも先にどうしてそうなったのだ、という思いが出てしまいすぐに玲はそんな言葉を返す。
向こうの世界における、『遠距離職最強』と呼ばれるのが、空である。そして、ランク1位に君臨しているのが、【神拳】。玲と並んで近接最強と呼ばれる存在であり、少なくとも玲が向こうの対人戦績で負け越している相手でもある。
『慧くんと玲がシャンフロで仲良くしているのを観察したかったから?』
「慧と私は仲いいよ?」
『うん知ってる。 ……やっぱり慧くんヘタレでは』
「ごめん最後よく聞こえなかったけど何か言った?」
『いやなんでもないよ!あー、実はね。玲が休止してから、あいつと話すことがあって。ほら、向こうでは私達って会ったら挨拶みたいに対人する間柄だったでしょ?まあ、それはそれで楽しいんだけどさ。 ……私達がやってるのは対人。つまるところPVPだ。それ以外にも面白そうなことあるんじゃないのかなーって思っててさ。例えば、一緒に冒険してみたり!それからずっと対人ばっかりだったけど、今度は協力プレイとかしてみたり!そう考えたら私もあいつも楽しくなって』
「……二人とは確かに、ゲームで会ったらPVPみたいな感じだったけど、リアルでも会ってるし、大事な友達だと思ってるよ。うん、私も二人ともシャンフロができたら面白そうだなって思う」
『あっむり玲が天使すぎて尊みが深くて尊み秀吉……しゅきぃ……』
「戻ってきて戻ってきて」
『ソロモンよ、私は戻ってきた!』
相変わらず自由奔放だなと思っていると、復活した空が言葉を続けた。
『まあ、私達が始めるのもうちょっと後になりそうなんだけど。その時になるのを楽しみにしてるよ。それじゃ、また始める時に連絡するね!』
嬉しそうな声の後、電話が切れる。いつものことだが本当に自由な、まるで風のようだなと思い苦笑しスマホをテーブルに置く。
「そっか、二人が来るんだ。 ふふ……」
一度目を伏せると、頭を切り替える。そういえば、夕食をどうしようかと考えていた途中だったのだ。
ひとまず再度冷蔵庫を確認してメニューを決めると、玲はそのまま調理に取り掛かった。
前書きでも書いたように、ウェザエモンの人物像を作るのはとても難しかったです。話し方はどんな感じなのかなということから始まり、シャンフロの世界観ではどう考えて、どう生きて、そしてどんな結論に至ったのかなとか色々と考えていました。
主人公の玲にとっての重要なキャラクターは、ウェザエモン、そして刹那と決めていました。二人が何を望んで、何を願ったのか。シャンフロという世界観の中で、開拓者であるレインと出会ったウェザエモンは何を考えたのかなとか思っていました。
後半はオリキャラとのお話。本作では具体的に、メインになるオリキャラは玲を含めて3名と決めていました。下道三人衆と同じような集まりで、全員の考え方が脳筋寄りになっている『脳筋三人衆』。クラン結成後、合流してくる予定。