とある格ゲーマーの幼馴染   作:無名のカヤ推し

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 感想、評価ありがとうございます。とても励みになっております。


 4/13追記
 作者緊急の事態につき、暫くの間投稿を停止します。落ち着いたらまた順次投稿の予定です。


君を想い、『永遠』に護る。されど己の誓いと約束は『未来』を望む

 

「ところで、師匠」

 

「……なんだ」

 

 片方の銀閃が、相手の急所を捉える。かと思えば、神速とも呼べる速度で放たれた急所へのそれを、僅かに身体をズラすことで回避。お返しだと言わんばかりに急所を狙われた側は同じように相手の急所。首を断つことを狙い、刃を振り下ろす。

 

 それをさせまいと、片方が前と進み出る。退くことを選ばなかったのは、退けば勢いを相手に持っていかれると判断したからだ。前に進み、今度は剣戟ではなく相手の体幹を崩すことを目的とした蹴り。体術を放つ。

 

 銀の光が舞い、刹那の時間に何度も刃と刃の応酬が繰り返され、時折体術によるものも繰り返される。

 

 一瞬でも油断すれば間違いなく相手にそこを狙われる。そうなれば、詰みとなる。相対する二人には互いに、そんな確信があった。

 

 だが。そんな戦いの中、まるで日常的な雑談でもするように片方が問いかける。相手のことを師匠、と呼んだのはレインだ。

 

 それに答えるのは、半透明の姿をしたウェザエモン。彼もまた仏頂面のまま、日常会話だと言わんばかりに言葉を返す。

 

 無論、ずっとこの二人は斬り合いをしている状況である。それも、サンラクやオイカッツォほどのレベルでなければ、何をしているのかさえわからないという速度でだ。

 

「聞きたいことがあるんだけど」

 

「……言ってみろ」

 

「うん。セツナ、って名前に聞き覚えは?」

 

「……む」

 

 会話が途切れる。レインの言葉に対して沈黙を保ったまま、暫くの間エリア内には風斬りの音と剣戟の音だけが響く。

 

 これは珍しいことで、ウェザエモンは仏頂面をしていて受け答えはすぐにしてくれる。しかも、アドバイスが必要なら的確に指摘をするし、雑談のようなものであってもすぐに返答がある。なのに、今回はそれがなかった。

 

 レインは返答を急かすわけでもなく、ただ待つ。

 そうして、暫くして。

 

 

「……そうか。辿り着いたか」

 

「師匠?」

 

「……話す。だが、その前に」

 

 

 『今回も俺の勝ちだ』と、その言葉の後。ウェザエモンが刀を上段に構えた。

 放たれるのは、全力の【天晴】。世界さえ切り裂く全力のそれを受けて、レインの意識は暗転した。

 

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

 

 【征桜領域】でのリスポーンの後。レインは再び桜の樹の下まで行くと、『少し長くなる』と言われ、桜の木の下に座るように促された。

 

 ウェザエモンの横に座り、師弟並んだ状態となってからまず話されたのは、セツナ。正確には当時の『天津気刹那』という人物が世界ではどう見られていたのかということと、昔。彼にとっては最早郷愁がとても遠くなる、神代の話だ。

 

「うーん……私は師匠のやったこと、正解な気もするけど。なんで刹那は怒ったんだろうね」

 

「……お前はわかってくれるか。使えるものをすべて使い、敵陣へと切り込み戦果と首級を挙げる。正しいやり方だと思ったのだが、刹那にはかなり怒られてしまった」

 

 彼から聞かされたのは、神代の頃の話だ。レインから神代について話も聞きたいと言われ、あまり多くは語れないと返したのだが、話せることだけでも是非聞きたいと言われた。『特に師匠の生前の武勇伝とか』と言ったのが原因かもしれないが。

 

 そしてウェザエモンから話された話にレインは聞き入った。『規格外戦術機獣』、『規格外武装』。今のシャンフロの世界にはまだ確認されていない兵装。そして。それを纏い戰場を駆け抜けた彼の話。

 

 規格外戦術機鳥【朱雀】と呼ばれるユニットは、制空権を奪取するというコンセプトで作られた。なので、"上空より敵陣を強襲し、ブレードで殲滅"。

 

 規格外戦術機虎【白虎】と呼ばれるユニットは、空気や物質を吸引・圧縮できる能力を持っていた。なので、"まずは敵の装甲を粉々に叩き割って敵の素材を吸引圧縮して敵を殴りつけることを繰り返した"。

 

 規格外戦術機亀【玄武】と呼ばれるユニットは、ホバー能力を持つ遠距離特化かつ防御に秀で、反重力ホバーで高速離脱もできる『支援用』ユニットだった。なので、"砲撃を至近距離から撃ったり、高速離脱用のホバー移動を利用して敵陣へと突っ込んで殲滅を継続した"。

 

 規格外戦術機龍【青龍】と呼ばれるユニットは、他の3機体と比べても特に特殊なユニットだったという。不可視の道を作り出し、空間を自由自在に駆け巡ることが出来る能力を持っていたため、"刹那に秘密で勝手に持ち出して、空を駆けながら晴天流をぶっぱして大戦果を上げた"。

 

 その話を聞いたレインはとても興味深そうに聞いていたし、ゲームにおいて彼女は攻めについてはとても攻撃的な考え方。つまり、脳筋思想でもあることから彼のやっていることについてまさに敵の殲滅と首級を挙げるためには正しいと思っていた。

 

 実際にはこの四聖獣をモチーフとして開発されたユニットの運用については刹那が全てについて頭を抱えている。特に【玄武】あたりで本気でキレて、【青龍】については悟りを開き諦めの境地に達していたのだが、そんなことをこの師弟は知る由もない。

 

 

「対人では首級を挙げてこそ誉れ」

 

「……うむ。その通りだ」

 

 実現不可能な話ではあるが、仮にもしこの師弟が同じ戦場に放たれるとどうなるのか。喜々として揃って敵陣へと切り込み大暴れしていただろう。撤退しろと指示を出しても、敵陣中央を突破してついでに敵の主力討ち取ってきました、などと言いながら戻ってくるということもやって、もし刹那が居てその戦況を後方で聞いたなら頭を抱えて胃薬を要求しただろう。

 

 敵からすれば、状況不利にも関わらず仏頂面とポーカーフェイスの二人組が鬼神の如く勢いで突撃してくるのだ、恐怖でしかない。

 

 

「もっと話を聞きたいけど、そろそろ本題に移らせて。 ――師匠、セツナとの関係と、できれば何があったのか教えて」

 

 それまで師弟揃って笑みまで浮かべて戰場トークを楽しんでいたが、その質問に対してウェザエモンは一度目を伏せた。

 

「……お前になら、いいか。そう、お前になら託せる」

 

「師匠?」

 

「……もうずっと前のことだ。神代の時代、俺と刹那は夫婦だった。世界はある事情で混沌としていて、多くの天才がその解決に乗り出した。俺と、刹那も同じだった。未来に希望を繋ぐために自分達の出来ることをやろう。刹那は研究者として。俺は、一人の武人として。そう、心に誓っていた」

 

 語り始めたウェザエモンは、空を見る。空には星空があり、桜の花びらが夜空に舞う。それを彼は懐かしむようにしていた。

 

「……ある時のことだ。戦況は絶望的な時があった。だが、もしそこで負けていれば未来が全て無くなっていただろうとういう状況。仮に良くても、今まで成してきたことの大半が水泡に帰す、そんな絶望的な状況。俺は、刹那と約束した未来を諦めたくなどなかった。だから、あることをしてしまった」

 

「あることって、何?」

 

 

 

「――嘘を吐いたのだ。刹那に」

 

 

 

 とても重く、後悔が籠もっている言葉だった。

 

 

「……俺はな。あの頃、戦えば戦うほど人ではなくなっていく実感があった。だが、それでも戦い続けなければならないと。戦い続けようと思っていた。俺がどれだけ変わろうと、どれだけ傷つこうと。刹那と、そして未来への希望だけは決して失わせないと誓っていた。だから、あの時刹那に嘘を吐いた。出撃しないという約束を破り、自らを犠牲にする覚悟で出撃した。それが、後悔に繋がるとも知らずにな」

 

「それで、どうなったの」

 

「……刹那は俺を追いかけてきた。止めるために。その結果、戦場での流れ弾が刹那に命中し、命を落とした」

 

 レインの中ですべてが繋がっていく。セツナの話とウェザエモンの今の話から、過去になにがあったのかということを理解する。

 恐らくこれが原点。もうひとつの謎に繋がる、原点なのだ。

 

 

「……俺は、ウェザエモン・アマツキであり、そうではないのだ」

 

「師匠が、師匠じゃない?」

 

 コクリ、と頷いた。

 

「……刹那を守りきれず喪ったことによる後悔と絶望。己の嘘で彼女を喪ったことへの贖罪として、俺という人間は未来永劫に刹那の眠る場所を守り続けようと決めた。今度は、もう喪わないようにと。だが、俺の中にはもうひとつ、捨てきれないことがあったのだ」

 

 そうして、ウェザエモンはレインを見た。今度は口元に笑みを浮かべ、優しい眼差しで。大切なものでも見るかのように。

 

「……どうやっても俺は、刹那と誓った未来を捨てられなかった。未来へと継ぎ、道を示し、育み、託す。それは最愛の妻との約束であり、俺もまた心から成したいと願ったことだった。ならば、それを成すことこそ刹那への贖罪であり、彼女の願いではないのかと」

 

「つまり……当時の師匠の中には、2つの思いがあったけど、どちらも捨てられなかった」

 

「……そうだ。結局俺は、彼女の墓を未来永劫守ることを選んだ。だが、それでも未来を捨てきれなかった。そこで俺は、ある禁忌とも言える方法を使って自分の意識を分けたのだ」

 

 目を見開いた。驚くが、確かにその言葉通りだとするなら、二人いるということにも納得がいく。

 

 

「……【墓守】に、墓を守ること以外の未練は残すべきではないとも思った。だからこそ、未来を願った俺を分離させた。いつの日か、そのもう一人の自分が認められる、託すことの出来る相手と巡り合うことを願って、切り離した自分自身を別の空間に封印したのだ。 ――その切り離された意識。それが、俺だ」

 

 そして、と。彼は言った

 

「……その願いは果たされた。レイン、お前が俺を見つけてくれた。何度も死合い、教えていくうちに確信した。お前こそ、俺と刹那が望んだ、未来への可能性。希望なのだと」

 

「でも、私はまだ一度も師匠に勝ててない」

 

 悔しいが、事実なのだ。ウェザエモンから教えを受けて強くなっている実感はある。今までの対人での動き、自分では気が付かなかった改善点。あらゆる状況において、どう行動するべきなのかということも再考させられた。

 

 それでもなお、まだ勝てない。いくら師と剣戟を交えて打ち合えても、彼の至った窮極。全力の窮極を超えられない。

 

「……正直に言う。俺から教えられることは、もう殆どないと思っている」

 

「――え?」

 

 どうして、と言葉が出そうになる。まだ自分は至れていない、窮極へと至れていないのにどうして、と。それをわかっていたのか、ウェザエモンは優しく笑みを浮かべ、諭すように言った。

 

「……レイン、お前の剣はほとんど完成されていた。そこに才能と経験で肉付けされ、足りていない所を俺が教えて補った。それで、もう殆ど完成していたのだ。それこそ、過去の俺に近いと言ってもいい。それもあの頃の俺と違い、未来があり、まだまだ先に至る可能性もある。 足りていないのは――覚悟だ」

 

「私の、覚悟」

 

「……俺にとっての刹那が居たように。レイン、お前に大切な人は居るか? かけがえのない、そんな誰かが」

 

 言われ、真っ先に思い浮かんだのは、もう長い付き合いになる幼馴染だった。

 自分に手を差し伸べてくれた相手。手を引いてくれた、相手。

 

 かつて自分は、彼を傷つけた。それでも、傍に居てくれた、彼。

 

 

 師のように、愛だとか。そういった関係で隣に居たいのか、というのはまだ正直わからない。ただ、幼馴染が近くに居ないというのは考えたくはなくて。その気持をどう表したらいいのか、というのはわからなかった。

 

 それでも。かけがえのない誰か。そう聞かれれば、きっと彼だと応えるだろう。

 

「師匠と、セツナの間柄にあったものと同じなのかはわからない。それがどういうもので、自分はどう思っているのかっていうのも……正直、わからない。でも、 かけがえのない存在かって言われると間違いなくそうだと言い切れる」

 

「……はは、若いな。ああ、それでいい。お前には、お前たちの世代には想いを形にする力がある。だから願え。この世界で、仲間と。大切な誰かと前に進んでいきたいと。そうすれば、道は拓く。それがお前達、『開拓者』なのだから」

 

 再び目を伏せたウェザエモンは、息を吸い、真剣な目で言葉を紡ぐ。

 

「……レイン。己を信じ、覚悟を決めろ。そうすればお前は、今のお前とその刀であれば、『窮極』へと到れる。俺は、願っていた希望を見つけた。ならば、未練はない。どうか、俺を眠らせてくれ。お前ならば、我が窮極を継承できる。そう信じている」

 

 

 ――『ユニークシナリオEX「雪月花の時、最も君を懐ふ」が進行しました。「彼岸より未来へ願いを込めて」を開始します』

 

 ――『職業クエストEX「継承」を開始します』

 

 

 

 窮極を継承する。とんでもないことを託されたものだ。

 そして、継承するためには、やらなければならないことがある。

 

「師匠。私は仲間とあなたを。【墓守のウェザエモン】を次の新月に倒しに行く。そこで示すよ、私の覚悟を」

 

「……ああ、それは安心した。なら、最期に。窮極へと至るために、その刀の真実を伝えよう」

 

 

 

 そうして、彼が語ったのは――神代の時代に起こった、ある出来事と【彼岸ノ太刀】が作られた理由。

 

 『最期だから』と言って彼が語った、かつての真実の一部。刀の真実を知ったレインは、目を見開いた。

 

 





 レインちゃんの刀は洒落にならないほどヤバイ刀です。セッちゃんの最高傑作。ゲーム的なことを言えば、NPCウェザエモンは本来遭遇することはほぼ不可能と想定されていたため、刀のバックストーリーも本来の性能もとてつもなくヤバイ。

 世界観的に言えば、この刀の存在はアリスやジュリウスなどの当時の主要人物は知らない上に、ウェザエモンが禁忌で意識分けして刀を封じたことも知りません。


 前回と今回の話は、作者がウェザエモンと刹那のバックストーリーについて色々考えたらこうなりました。最初はみんな未来を望んでいた。

 そしてレインちゃんの上位職業のジョブクエストも開始。『継承』なので、つまりはそういうことです。通称歩くプレイヤー版全盛期ウェザエモン。

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