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二人のリアルの日常の話。
ちょっと短いので、なんとかもう一話いけたらなと思っていますがいけるかは不明。
作者、ちょっと緊急の事態につきとりあえず更新はしましたが、暫く安定しないかもしれません。落ち着き次第、ストックの投稿や続きを書いていけたらなと思います。
「慧、お父さんから電話代わって欲しいって」
「ほわっ!?」
一度ソファから立ち上がり席を外した玲が戻ってきたと思ったら、突然そんな事を言われて慧は変な叫び声をあげてしまう。
ウェザエモン戦前のある日の休日。その日は玲も大学関係で特に忙しくなく、慧もまた大会前ではあるが自分で決めている休養日であったため、玲が慧のマンションへと遊びに来て、プロゲーマーの大会中継を見たり、話題になっていた映画をリビングのソファで並んで座りながら見ていたりとのんびりと過ごしていた。
なお、よく慧の住むマンションに出入りしている玲だが、管理人や同じマンションの住人からはいわば『公認』になっている。玲の現在住むマンションから慧のマンションまでは多少の距離があるため、車で来ているのだが、管理人は気を利かせてくれて駐車場所を確保してくれている。
現代では、VRゲームの発展に伴いゲームとは一大産業として見られるようになった。プロゲーマーというものが、ひとつの職業としてみなされており、社会的にも受け入れられている。それどころか、一種のエンターテイナー、スポーツ選手として見られているのが実情である。
そんな中、慧。『魚臣慧』もまたプロゲ―マーの一人。それも、世界レベルの実力を持つ人間でもある。
国内では有名なマルチプロゲーミングチーム「
元々彼は総合戦績の勝率は8割だった。それでも十二分に異常と言える戦績なのだが、ある時期を境に彼の勝率が伸びていった。当時、ゲーマー界隈では何故いきなり勝率が伸び始めたのかと議論され、様々な憶測が飛び交ったが結局は謎のまま。
これは彼の身内事情を知らない人間は知る由もないことだが、勝率が伸び始めた時期は丁度、慧が玲に色々と意見をもらって自身の生活やスケジュール調整、確実に休息を取り無理を極力しないといったことを行い始めた時期である。
そんな彼、慧のプロゲ―マーとしてではなく『魚臣慧』個人としての人間関係も、少し特殊なことになっていた。それも、恐らく一部の界隈や関係者から聞けば「なんでプロゲーマーなのにそんな方面と関係持ってるの?」と首を傾げられるほどの。
「も、もしもし。お久しぶりです、小父さん」
『やあ慧君。久しぶりだね、元気にしてるかな?それと、別にお義父さんと呼んでくれてもいいんだよ?』
「そのネタも随分久しぶりに聞きましたよ」
『うん?いやいや前々から言っているが真面目にだよ?』
魚臣家はごく一般の家庭である。強いて言うなら、慧には姉妹しかいない。上に姉が二人と、下に妹が一人。両親が玲の実家と昔から付き合いがあり、幼い頃に実家の近くに引っ越してきたことが、慧と玲の最初の出会いとなる切っ掛けだった。
昔から玲の家族、そして実家とは仲が良かった。慧の姉妹達も随分と玲のことを可愛がっており、一人暮らしをするようになってからもよく自宅に玲が来ているということを知った姉妹達は『もし玲ちゃん泣かせたら分かってるだろうな』と、かつてないほどの威圧感とドスの効いた声で言われたという。
魚臣家は一般の家庭である。そして、玲の家族も一般の家庭である。しかし、玲の両親の実家は少々特殊な立場なものなのだ。
熱田家。国内でも有名な、とある逸話がある御神体を祀る神社の関係者の家系なのである。
ペンシルゴンは玲の立ち振舞から何かを感じ取っていたが、それは当たりである。玲は両親の実家からも、彼女の兄と姉共々かわいがられており、宮司や神社というものに関わることが多かったのだ。
そして慧もまた、そんな玲の実家と関わることもあった。昔から毎年、初詣は玲の両親の実家へと足を運んでおり、つまるところ彼女の両親の本家とも交友があるのだ。彼は知る由もないが、この本家からも目をつけられている。具体的には、玲と二人で実家のほうに初詣に行った時に、関係者しか入れない境内の奥で、箒を手に掃除をしていた年齢の割に筋骨隆隆とした好々爺から『孫のことよろしく頼むのぉ』と言われている。
つまり、魚臣慧は完全に包囲されている上に本人達が知らない所で外堀を埋められているのだ。
「あー……その。俺、いえ。僕と玲はまだそのような関係では」
『ふむ。"まだ"ということはその気はあるということだね?それが聞けただけでも嬉しいよ』
玲がテレビを見ているのを確認し、小声で言葉を返した後、彼女に『ちょっと電話借りる』と一言言う。了承するようにコクリ、と頷きが返ってきたため、そのまま自室へと移動する。
慧とて男である。そして、幼馴染であるということを理解しつつも、自分の中でそういった感情がないというわけではないということも理解している。ただ、自分としてもその感情について、どう向き合えばいいのかまだハッキリとわからないのだ。
「それで、今日はどうしたんですか?」
『うん、実はさっき玲とは少し話はしたんだけどね。 ……慧君、君。娘と同居する気ない?ああ、君の所の家賃とか、金銭的なことについてはこっちからも出すようにするよ?』
「――はい?」
思わずそんな言葉が出てしまった。それはそうだろう。突然、幼馴染の父親からそんな事を言われたのだから。
現在、玲は一人暮らしだ。彼女の家族はかなり遠方に住んでおり、玲は大学進学を機にこちらで一人暮らしをしている。
『玲から色々聞いてるよ?結構な頻度で君のお家にお邪魔してるんだってね。それも、空き部屋に娘の部屋まで作ってくれたようで。ごめんね、うちの娘が色々と迷惑かけて』
「いえ、その。迷惑だとは思ってません。それに……色々と助けられてるのは事実ですし、玲のお陰で仕事の成績も良くなって、頭が上がらないのはこっちです」
『今度のグローバル・ゲーム・コンペティションだったかな?あれにも出場するんだったね。僕は応援に行けないけど、頑張ってね』
「はは、ありがとうございます。大会への調整にあたって、玲にもだいぶ気を使ってもらっていて。だから、結果を出せるように全力で臨みます」
『うん、その意気だ。でも、気負いはいけないよ?未来はわからない、どんな結果になってもその時の結果を受けてどうするか。それが大切だ。 ……さて、話を戻すけど。娘と同居する気、ない?』
電話先から返ってくるのは穏やかな、落ち着いた声だ。頭の中で彼女の父親がニコニコとしているのが容易に想像できた。
「いえ、ですから。どうしてそんな話に?」
『結果論だけど、君と娘の状況的にそれでもいいかなと思ったからだよ。娘は娘でかなりの頻度で君の所に行っている、実質今の住居は帰って眠るくらいの役割にしかなっていない。これがろくでもない相手なら問題にするけど、行き先は君のところだ。そうだね、一人暮らしへの不安が君が近くに居ることでなくなるというのがひとつ。それから、あの症状についての不安もあったというのがある。最近はどうかな、あれが起こったりはしたかな? ……こればかりは、本人には聞きにくくてね。すまない』
「……いえ、最近は一度も。本人にもちゃんと聞いたことはありますが、あの時ほどのことは起こってないと言っています。嘘ではない、と思います」
『ふむ、そうか……』
――『あれ、わたし……あなた、だれ?』
ギリ、と。思わず歯を噛み締め、スマホを持っていない右手で拳を作る。
ああ、本当に。自分の部屋でよかった。少なくとも、今の自分の表情は彼女に見せられない。
こんな。不安で、辛くて。弱々しい自分など見せたくなかった。
簡単に忘れられるものではなかった。当時のことを思い出すと、今でも胸が締め付けられるように痛くなる。
精密に検査をして、医師からは重症化の兆候はないと言われていた。
だが、既に起こり始めている症状についてはどうしようもないと。
「本人も意識して気をつけているとは思います。時折疲れてすぐ眠ってしまうことや、寝起きの後すぐ動けないことはありますが、それ以上のことは」
『本当を言えばね、僕は親元を離れて、一人暮らしをするのは反対だったんだ。いくらあの娘が優秀で、いい大学に進むとしても、親としてはあの件があって一人にさせるのは不安だった。いくらこれ以上の重症化はほぼない、と言われていてもね。 ……それでも認めたのは、君が居たからだ』
「僕が、ですか」
『娘はあの性格で、積極的な方ではない。だから、ほんのちょっとしたお節介だ。あの子がそっちに行くことを選んだのは、君が居たからだよ、慧君。あの時、一時的にとは言え君のことを忘れていたことを、あの子はとても悔いていた。どうして忘れていたのか、と自分を責めた』
「あれは事故で、自分を責める必要なんて――」
『だとしても、だよ。きっと、あの子は君への感情がまだよくわかっていない。でも、また忘れてしまうことをとても恐れていて、君に依存している。依存が客観的に見てどうなのかはともかくとして、君を必要としているのは事実だよ』
思い当たる節は、いくつもあった。彼女からの依存、と言われてそうであると言える部分も。それでも自分は、それでもいいと思っていた。自分もまた、彼女に依存している。そんな自覚はあったのだから。
息を吸い、慧は思う。何かしらのキッカケが必要なのではないのかと。今の関係を、少しづつ変えていくための。関係が変わる、というのは怖い。彼女にどう思われるのか、というのも怖い。
それでも、今のまま停滞するという選択肢はありえない。それは逃げであり、何も解決しない最悪の選択だからだ。
『男を見せろ、覚悟を決めろ魚臣慧』。そう自分に言い聞かせる。
いい加減、自分も己の感情と向き合わなければならないのだ。
「玲は、なんて言ってましたか」
『『慧のことは信頼しているから、彼がいいならそうしたい』、と言っていたよ。ちなみにだけど、僕達熱田家としても、君のところの魚臣家としても慧君のことは信頼しているのでオーケーだよ?』
「いつの間にうちにまで話し通したんですか……」
『昔からうちと君のところは仲いいでしょ、だから連絡なんてすぐさ』
恐らく、自分の姉妹達はノリノリだったのだろうと思う。少し想像すれば、その姿が容易に想像できた。
信頼は裏切りたくないと思っている。それに、彼女のことは大切にしたい、とも。
だからこそ、答えは決まっていた。
「僕としても、彼女がいいと言うなら構いません。……ちゃんと、責任は持ちます。 後、金銭的なことについては大丈夫です。これでも、結構仕事で稼いでるので。お気持ちだけ受け取らせていただきます」
彼女に自分を忘れてほしくない。
隣で彼女に笑っていてほしい。
そんな気持ちを最早抑えることなく。慧は覚悟の言葉を言った。
慧くん、覚悟を決める。
玲のお父さんは、髪が娘と同じ色、長身、いつもニコニコしていて口調は穏やか、眼鏡をかけているイメージでした。考えてて思ったのは「なんかゲームとかの裏ボスが平和堕ちして家庭持った感ある」でした。
二人の関係は幼馴染ではありますが、幼馴染より先の関係に発展しそうで発展しない共依存に近い関係。玲はそもそも自分の感情をよくまだわかっておらず、慧は理解はしているが、どう向き合えばいいのかがわからないという状態でした。
以前書いたように、玲の『直感』はVRゲームならともかく現実だとかなり危ないものです。実際、それで一度過去に事故が起こっていて本人はそれで幼馴染を傷付けたと思ってる。果たして慧くんはどうなんでしょうね。
玲ちゃんがやたらと接近戦強いのはだいたい血筋と両親の実家関係。お兄さんとお姉さんが一人ずつ居ます。
ところでこのまま話が進んで同居して隣にシルヴィアが引っ越してきたらどうなるんでしょうね