キヴォトスの生徒と先生がイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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杏山カズサ 〇

 

 シャーレ執務、先生は一つのSDカードを持って席に座る。SDカードをPCで読み込むと、VR機器をPCに接続し、息を飲んで頭へと装着した。

 

『だーれだ?』

「うお、凄っ、本当にカズサがそこにいるみたいだ……」

 

 先生が見ているのは、今度外の世界で行われるブルアカふぇすで使われるVR映像。カズサの「先生、今週もお疲れさま、です」コーナーで使われる映像だ。先生として、自身の生徒が多くの人に好かれる事は嬉しいことではあるが、それはそれとして、年齢にそぐわないことをしていないか心配だった。

 

「……いや近いな。それに……これは……」

 

 VRの中で、カズサは先生の頬に手を当て、顔を覗き込み、吐いた息が吸えそうな距離まで接近する。それに合わせて先生の鼓動は確かに早くなる。後少しで、唇が触れてしまいそうな距離まで近づいたその時、映像の中では放課後スイーツ部が割り込んで来る。

 

 同時に、実際のシャーレの部屋には……。

 

「せーんせ、遊びに来たよっ、て……何見てるの?」

 

 カズサが訪れていた。しかし、ヘッドフォンをしている先生の耳に、カズサの声は入って来ない。

 

「……VR? って、まさか」

 

 先生のパソコンの画面に移されている映像を見て、軽くカズサはため息を付く。

 

「これ、私のコーナーの映像じゃん……」

 

 自分が不特定多数のために録画した映像を、先生に見られるという妙な気恥ずかしさを感じるカズサ。しかし、動画を終えてもVRゴーグルを外さない先生に、段々ともやもやした感情が胸を支配していた。

 

「ふーん、先生は、動画の中の私のがいいんだ?」

 

 ムスッとした顔で、先生の呆けた顔を覗き込むカズサ。軽くため息を吐いた後、カズサは何か思いついたかのようにいたずらっぽい笑みを浮かべ、先生の背後に回り込むと、そっとVRゴーグルとヘッドセットを外す。

 

「あれ?」

 

 驚いた拍子に振り返ろうとする先生の椅子を止めて、手を顔へと回す。

 

「だーれだ?」

 

 先生の耳元傍で、カズサはそう囁いた。

 

「か、カズサ!?」

「お、はっやーい。すぐバレちゃったね」

 

 ほとんど反射的に声を上げてしまった先生。

 

「それとも……」

 

 さっきと同じように、先生の耳元でカズサは囁く。

 

「まだ、VR動画を見てると思ってるのかな?」

 

 ゾクッと背筋に心地よい震えが走り、慌てて距離を取りながら振り返る先生。

 

「あっはは! 先生面白すぎ、そんなにビックリしなくてもいいんじゃない?」

「普通に声をかけてほしかったな……」

 

 頭をかいて、椅子を元の位置に戻し、カズサからヘッドセットを受け取る。

 

「だって先生、私のVR動画なんて見てるんだもん、いたずら、したくなっちゃうでしょ?」

 

 PCのモニターに映る、自身の3Dモデルの映像を指さす。

 

「あ、いや、これは……」

 

 慌てて先生は何か言い訳を並べようとするが、諦めて軽く息を吐く。

 

「不特定多数の目に触れるものだからね、一応先生として確認しておこうかなと……」

「ふーん……それで、どうだった?」

 

 机に体重をかけて、再び先生の顔を覗き込むカズサ。その距離の近さに、先生の鼓動は再び早鐘を打つ。

 

「ちょっと、VR動画と言えど、近すぎるんじゃないかなと……」

「ふ~ん……いや?」

「嫌というか、もう少し節度を持って……」

「ああ違う違う、先生は私が近くにいるの嫌だった?」

 

 ずいっと顔を近づける。

 

「……嫌ではない」

「へへ、なら嬉しいかな」

 

 そのまま耳元まで自身の口を近づけると、ふっと息を吹きかける。

 

「でも私は……ちょっと嫌かな」

 

 そのまま先生の胸元に手を当て、鎖骨、喉、頬へと手を動かす。先生はその動作に頭の処理が追い付かず、硬直してしまう。

 

「VRなんかじゃなくてさ、本物の私と、もっと遊ぼうよ」

「遊ぶって……何を」

 

 それだけ口から零れる先生は、先ほどのVRと同じように、カズサの吐く息を据えてしまいそうな距離にあるカズサの顔から、目が離せない。

 

「ん~? VRじゃあ、出来なかった事、とか?」

 

 スルっと両手を再び先生の目元に移動させるカズサ。

 

「先生になら、あの動画の続き……してあげてもいいよ? あんなヘッドセットなんて使わずに、直接、ね?」

 

 先生からカズサの表情は見えない。だが確かに感じていた、蠱惑的に微笑み、舌なめずりする猫の温もり。

 

「先生の口から教えて、私に……何してほしい?」

 

《カズサEND:直接》

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