キヴォトスの生徒と先生がイチャイチャしたり、傷ついたりする話 作:古魚
執務室でいつも通り仕事をこなす先生。しかし、心なしかその表情は暗い。
「……終わらない」
どれだけやっても終わらない仕事の山が、机を占拠している。各学園の週間報告、別個での事件報告、金銭的報告、各生徒の成績、連邦生徒会の予算案、行動案。特にここ最近は仕事が増えている。
ここ1週間ほど、先生は寝る間も惜しんで仕事を進めている。エナドリをがぶ飲みし、気絶するまで仕事を薦め、数十分気絶すると、再び机に向かう。そんな生活を続けている。
「ダメだ、少し整理しないと、仕事が続かない」
さすがに机が散らかりすぎて、次する仕事すらわからなくなってきたため、先生は一度整理を始めることにした。書類をまとめ、筆記用具やPCを綺麗に整える。その過程で、何か冷たい金属に手が触れた。
「ん?」
気になって、その金属を持ち上げようと力を込めたその瞬間部屋の扉が開いた。
「うへ~、せんせい~。今日はおじさんがとうば―――ッ!」
発砲音。ホシノが扉を開けると同時に、先生の手に握られた金属は、鉛球を吐き出した。
幸いにも、弾は先生の頭の少し横を通り抜け、開いていた窓から外へと飛び出した。
血相を変えてホシノは先生へ飛び掛かり、先生の手に握られていた金属をはたき落とす。それと同時に地面へと押し倒し、両手首をがっちりホールドする。
「はぁはぁ……ッ、何してるの!?」
馬乗りの姿勢のまま、ホシノは先生を問い詰める。
「ほ、ホシノ。落ち着いて、これは違う――」
「何が!? 先生は今、自分のことを撃とうとした。分かってる? 私たちと違って、先生は非力なの、拳銃弾一発で死ぬかもしれないの!?」
いつもの眠そうな表情とはうってかわり、とんでもない覇気に、先生は驚きを隠せない。
「自殺するつもりだったの? 死のうとしたの? どうして!?」
「待ってくれ! 誤解なんだ、今のは事故で……」
先生が必死に宥め、説明すること数分。ようやくホシノは、先生の上から退いた。
「うへへ、ご、ごめんね~せんせい。おじさん早とちりしちゃったよ~」
少しぎこちなく、ホシノは当番の子用の席に着く。
「いや、私こそごめんね。勘違いさせるようなことしちゃって、まさか拳銃を机の上に出しっぱなしにしているとは……」
「本当だよ~。銃火器の管理はしっかりね?」
書類の中に埋もれていた金属の正体は、先生が自衛用に一応携帯している拳銃だった。二日ほど前に、外に出る時装備し、帰還した際、仕舞わず机の上に置いたままにしていたのだ。
「……せんせい?」
「どうしたの?」
仕事を進めていると、ホシノは藪から棒に話始めた。
「先生は、私の前からいなくなったりしないよね?」
「……どうしてそんなことを聞くの?」
「答えて」
仕事をする手を止め、ホシノは先生の前へと歩み寄る。
「先生は、私を一人に……しないよね?」
アビドスの皆の前では絶対見せないような、弱々しいホシノの姿。
「勿論だよ。私は、皆の青春を見届けるまで、いなくなったりしない」
その言葉を聞くなり、ホシノはその身を先生の身体へと体重を預けた。急に倒れ掛かって来た細い体を、慌てて先生は抱きとめる。
「ほ、ホシノ!? 大丈夫?」
「……うへ~せんせいの匂いがする~」
ぎゅっと先生の胸にしがみつくホシノは、そんな風に呟く。
「おじさんね、怖くなっちゃったんだ。さっきの光景を見て……おじさんたちが先生に負担をかけちゃってるのは分かってるからね。その負担で先生は疲れ切ったら……いなくなっちゃうんじゃないかって」
自身の身体にしがみついて小刻みに震える細い体。先生は、少し戸惑いながらも、その体を自身の腕で包んだ。
「大丈夫だよ。私は、負担だなんて思っていないから。それに、皆を置いてなんて行かないよ、それは「先生」の義務を放棄することだからね」
「……うん、そうだよね。おじさんその言葉を聞けて安心したよ~」
と、口では言うものの、ホシノは先生の身体から離れようとはしない。
「えっと、ホシノ? そろそろ仕事に戻りたいんだけど……」
「ダメ」
顔を上げないまま、ホシノははっきりと断る。
「流石に今の先生は休まな過ぎ。自分で仮眠室へ行くまで、おじさんはこうして引っ付いているよ」
「えぇ……」
先生はちらりと机の上を見る。ホシノの手伝いのおかげで、かなりの量が片付き、終わりも見えて来た。少し休んでも問題はないと結論付けると、ため息をつきながら先生は言った。
「分かった。そう言うなら少し休ませて貰うよ。だから、離れてくれないかな?」
「……うへ~その気になってくれておじさんは嬉しいよ」
ホシノは先生の身体から離れ、代わりに手を握る。
「それじゃあ仮眠室、いこっか」
ホシノに連れられ、先生は仮眠室へと足を運ぶ。
「うん、それじゃあ寝ようか」
成り行きに身を任せていた先生だったが、自身の入ったベッドの中に、ホシノが一緒に入って来たところで、ストップをかけた。
「ちょ、ちょっとまってホシノ。どうしてホシノまでベッドに入ってるの?」
「んー? だって先生、一人にしたら勝手にベッドを抜け出して仕事しに行きそうだからね、これは監視だよ、監視」
そう言って、ホシノは先生の片腕にしがみつき、すりすりと自分の頬を擦りつける。
「だとしても、流石に生徒と同じベッドで寝るのは……」
「ごめんねぇ~こんな貧相な体じゃ、一緒のベッドに居てもおもしろくないもんねぇ」
少し暗い表情でホシノがそう言うものだから、先生はたまらず答える。
「いや、別にホシノと寝ることが嫌とか、体がどうとかではなくて……」
その答えに、ホシノはにやりと口角を釣り上げる。
「へ~先生、おじさんと寝るの、嫌じゃないんだ? 言質とっちゃったからね」
「ほ、ホシノ……」
強引に先生の頭は、ホシノの胸の中へと埋められる。
布団の中で攻防を続けていた先生とホシノだが、先生の疲労はピークを迎えており、暖かい布団に、ホシノの鼓動と香りは、すぐに睡魔を呼び寄せた。
「おやすみ……せんせい。ゆっくり休んでね」
その言葉を最後に、先生の意識は遠のいていった。
「……さてと」
先生が眠りに落ちて数分、ホシノはゆっくりと先生から手を離し、ベッドから這い出る。
「少しでも、先生の負担は減らしてあげないとね」
そう言って一人、執務室へと戻るホシノ。先生が目覚めた時には、既に机の上から書類たちはなくなっており、そこにはソファーに寝転ぶホシノだけがいた。
【ホシノEND:お疲れ様】
読むとしたらどれがいい?
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1.第二次エデン条約編
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2.アビドス復興編
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3.ゲヘナ風紀員編