キヴォトスの生徒と先生がイチャイチャしたり、傷ついたりする話   作:古魚

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聖園ミカ 〇 誕生日特別編 前編

 

 5月8日になった丁度そのタイミングで、スマホから通知音が聞こえる。

 

 お風呂上りのミカは、髪を乾かす手を止めない。確認せずとも、誰が、どんな内容を送って来たのか分かっているからだ。

 

「ナギちゃんはいつもどおりだね~」

 

 ミカの一番の親友であるナギサが、誕生日を祝うメッセージを送って来たのだ。これは二人がスマホを使い始めた時からのことで、丁度0時になると、こうしてメッセージを送って来る。

 なんでも「私が最初におめでとうを言いたい」とのこと。

 

 そんな大好きな親友からのメッセージを見ることを楽しみにしながら髪を乾かすのを続けていたミカだが、再びスマホの通知音がなったことに気づいた。

 

 まだ時刻は0時00分のまま、ナギサの通知から数十秒開けてのことだった。

 

「誰だろう……もしかしてセイアちゃんとか?」

 

 もう一人のティーパーティー、セイアの名前を口にするミカ。しかしセイアはいつも、この時間は既に寝ていることが多いことを知っているミカは、送り主が誰か、検討をつけられずにいた。

 髪を乾かし終えたミカは、ボフッとベッドに飛び乗ると、そのままスマホを起動する。

 

「ッ~~~~~!」

 

 そして悶える。画面に映っていたモモトークの通知、その一つは勿論ナギサからのものだったが、こうして悶える理由となるのは、もう一人の通知。

 

「せんせぃ、ずるいよぉ」

 

 ミカが愛して愛して愛して止まないシャーレの先生からのメッセージだった。

 一瞬ためらったが、ミカはナギサからのメッセージより先に、先生のモモトークを開く。

 

『ミカ、誕生日おめでとう。今日一日が、君にとっていい日になることを願っているよ。それから、少し用事があって、今日の午後、トリニティにお邪魔するよ。その時、改めておめでとうを言わせてね。それじゃあおやすみ』

 

 文章を読んで本日二度目の悶絶。

 

「先生が、こんなに早くメッセージを送ってきてくれるなんて……というか、先生私の誕生日知ってたんだ……知ってて、くれたんだ……」

 

 数分先生からのメッセージを見つめていたミカは、『ありがとう先生。あした会えるのが楽しみ。おやすみなさい、先生』とだけ送った。

 早く先生に会いたいと、もう眠ってしまおうかと思い始めた時、まだナギサからのメッセージを開いていないことに気づいたミカは、慌ててもう一通のメッセージを開く。

 

『ミカさん、お誕生日おめでとうございます~~~~』

 

「な、長いよナギちゃん……」

 

 ずらっと並ぶ文字列に、ミカは苦笑しながら、ゆっくりと読み進める。

 

『~~~本日のお昼に、ミカさんのお誕生日を祝って、お茶会を開きたいと考えています。いつもの場所で、お待ちしています』

 

 ナギサはどうやら、ミカの誕生日会を開くつもりでいるようだった。

 

「えへへ、ありがとう、ナギちゃん」

 

 親友からのお誘いに、心が温まる感覚を覚えながら、ミカは『ありがとう。絶対に行くね!』と返信し、目を閉じた。

 

 ♦

 

 一方その頃……。

 

(ど、どうしましょう。ミカさんの既読が付かない)

 

 ナギサはベッドの上で硬直していた。

 

(毎年数分も経たぬうちに既読がついて返信してくれていたのに。今年は五分経ってもまだ既読すらつかない!)

 

 何も言わず、ただじっとスマホの画面を見つめ続けるナギサ。心が読めなくとも、動揺、焦りが見える。

 

(ま、まさかミカさんの身に何かが!? それとも、私のことを嫌いになってしまった?)

 

 ナギサの震えは、目が覚めて、セイアに声をかけられるまで続いた。

 

 ♦

 

 朝、日が昇り、いつもの学園生活が始まる。ミカはいつも以上にご機嫌ニコニコで、他の生徒の前に姿を現した。

 

「ね、ねえ、なんか機嫌よさそうじゃない?」

「なんか、ムカつくわね。魔女の分際で」

 

 ミカのことを悪く言う言葉も、もはや一切耳に入って来ない。むしろ一般生徒たちからは、薄気味悪がられるほどの上機嫌具合だった。

 そうして時間は立ち、約束の時間になると、ミカはダッシュでお茶会の会場へと足を運んだ。

 

「やっほーナギちゃん! あ、セイアちゃんもいる~」

「おはようございます、ミカさん」

「おはようミカ、相変わらず元気だね」

 

 二人に挨拶をして席に着くミカ。

 ナギサはその傍ら、お付きの生徒を呼び出す。

 

「私がいいと言うまで、火急の用と先生以外、ここには誰も通さないでください」

「はい、承知しました」

 

 ナギサは席を立ち、自らティーポッドを持って、ミカのコップに紅茶を注いだ。

 

「わーお、ナギちゃん自ら入れてくれるなんて、どうしたの?」

「いえ、今日はミカさんのお誕生日を祝ってのことですので、お茶会のルールは脇に置き、“お友達”として楽しみたいなと思っていますから」

 

 お友達をやたら強調してナギサは語る。その様子を見て、セイアも一言。

 

「そう言えば、まだ言っていなかったね、誕生日おめでとう、ミカ」

「セイアちゃんありがと~ナギちゃんも、メッセージありがとうね」

「勿論です。私はミカさんの一番の親友であると自負していますので」

 

 席に着いたナギサは、震える手でティーカップを口に運ぶ。

 そんな様子を不思議に思いながら、ミカは心からの言葉を口にする。

 

「うん! ナギちゃんは私の一番の親友だよ!」

 

 ナギサの顔に安堵の表情が浮かぶ。そんな様子を見て、思わず吹き出してしまうセイア。

 

「まったく、ナギサ。君はどれだけ心配していたんだい」

「せ、セイアさん!」

 

 腹を抱えて笑うセイア。顔を赤くして怒るナギサ。

 

「え、なになに? 何の話し?」

 

 興味ありげに、ミカは食いつく。

 

「今日の朝、目が覚めるとナギサが青い顔をしていてね、何があったのか尋ねたら『ミカさんに送ったメッセージに、既読が付くまで八分二十三秒もかかりました』って」

「それは言わない約束です!」

「いやー、ナギサのあんな顔を見たのは初めてだったよ。まるでこの世の終わりとでもいうかのような絶望顔だったぞ」

 

 ミカは「あー」と、その時のことを思い出す。先生のメッセージを優先して開いてしまったため、ナギサのメッセージを読むのが遅くなってしまった。

 

「ご、ごめんねナギちゃん。わざとじゃないんだ~。ちょっと、同じタイミングで別の人からもメッセージが来ちゃって―――」

「だ、誰ですか!? そんな真夜中に、私よりミカさんが優先する方と言うのは!」

「ほんと、今日のナギサはお茶会のマナーが成っていないな。私たちだけにして正解だよ」

 

 机から身を乗り出して、混乱と恐怖が混ざったような表情でミカに詰め寄るナギサ。

 

「えっとね……先生、だよ」

 

 やや顔を赤らめ、もじもじしながら答えるミカ。

 

「やっぱりな」「ああ……」

 

 二人は各々の反応を見せる。ナギサは納得、セイアは確信。二人にとって、「先生」だったらミカはそうするだろう信じることが出来た。

 

「それでね、それでね。今日先生が、トリニティに用事があるんだって。その後、私に直接おめでとうを言いに来てくれるんだって、きゃー」

 

 くねくねと身をよじらせて喜ぶミカの口に、ため息交じりにナギサはロールケーキをぶち込んだ。自分を心配させた罪と、先生への軽い嫉妬を込めての攻撃だった。

 

「これはミカさんのために作った、誕生日ケーキのロールケーキです。どうぞごゆっくりご堪能ください」

なひひゃんふぉれくひーふふぁいほ……(ナギちゃんこれクリームないよ……)

 

 ミカの口に入れたのは、生地のみのロールケーキ。いつものミカが煽って来た時によく使うお仕置きロールケーキだった。

 

「冗談ですよ、本当のケーキはこちらです」

 

 まだもごもごと口に入れられたロールケーキを飲み込めずいるミカの前に、コトンと一枚の皿が置かれる。そこには、ピンク色のイチゴが練り込まれた生地に、たっぷりと生クリームが詰まったロールケーキ。脇には、飴細工で作られた、ミカのヘイロー。

 ゴクンとお仕置きロールケーキを飲み込んだミカは、目の前に置かれたケーキに目を奪われる。

 

「わー……これ、ナギちゃんが作ったの!?」

「もちろんです、ミカさんのために、用意させて頂きました。あ、もちろんセイアさんの分もありますよ」

 

 そう言ってナギサはセイアの前にも皿を置く。

 

「ありがとうナギちゃん! 私、すっごく嬉しいよ!」

 

 目を輝かせながら、ミカはケーキを舐め回すように見つめる。

 

「それだけじゃないぞ、ミカ」

 

 セイアは楽しそうなミカを、温かい目で見守りながら伝える。

 

「え? まだ何かあるの!?」

「私とセイアさんで選んだんです。どうぞ、受け取ってください」

 

 差し出されたのは、片手に乗る長方形の小箱で、しっかりラッピングがなされている。

 

「これ、私に? 開けてもいい?」

「勿論です」

 

 ナギサが答え、セイアが頷くのを見ると、ミカは丁寧に包装を解き、小箱の蓋を開けた。小箱の中には、チューブ状のクリームが仕舞われている。

 

「これって……確かすっごくいいハンドクリームだよね?」

「ああ、今のミカでは、簡単には買えないようなものだ。ナギサはこれをひと箱君に送ろうとしていた。まあさすがに止めたがな」

「わ、わーお……」

 

 一本でも大きなお札が一枚飛んでいくようなものだ、箱で買えばいくらになることか。

 

「こうゆうのは気持ちが大切で、大量に渡すのはかえって相手に威圧感を与えると、セイアさんに言われてしまったので」

 

 ナギサは苦笑しながらカップに口を付ける。

 

「ありがとう、ナギちゃん、セイアちゃん。大事にするね」

 

 二人は、ミカが持つ銃と戦闘スタイルを考えてのことだった。ミカが持つSMGは、近接戦闘をメインに扱い、反動により手のひらを擦る回数が多い。そのため、手の肌へのダメージが大きいのだ。そこで、手のケアを行えるよう、ハンドクリームを送ったのだ。

 

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  • 1.第二次エデン条約編
  • 2.アビドス復興編
  • 3.ゲヘナ風紀員編
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