Fate/Answerer   作:pqrsman

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バゼット・フラガ・マクレミッツ、彼女は憧れていた言峰綺礼に裏切られ、真の英雄であったサーヴァント、クーフーリンを失った。

英霊の命を代価に、切り拓かれた道を走るしか彼女にはなかった。

敗走の後に、彼女と出会う存在が彼女の行く末を変え得ることを…

―――これは彼女が■■を見つけるまでの、そのための物語―――


1. 別離

己にとって真の英雄の願いだけで、走っていた。

己の浅はかさや醜さは疾うの昔に、知っていた。

 

ケルトの英雄は言った。逃げろと。狗のように未来へ駆けろと。

ただ、彼女はその様には捉えられなかった。負け犬であると囚われていた。

 

だから、彼女は最期の言葉に従って走るしかなかった。みじめに這いつくばるようにして尚。

 

彼の言葉を、遺言を無為にしてしまう訳にはいかなかったから。

そして、彼女は逃げ延びた。命を延ばした。しかし、希望は彼女にはもうなかった。

 

自身が尊敬してやまない英雄と過ごしてきて、これなら聖杯戦争に勝てると信じていたのだ。私達ならばやれると。だが、実際はどうだ。敬愛する人物に呼び出され、心が沸き立ちつつもその動悸を抑え、その戦友の前に姿を表した。

 

だが、戦友は同好の士ではなく代行者としてその場にいた。いや、代行者としての顔つきで冷酷に刃を振るった。その軌跡に割り込んだ紅い槍がなければ彼女の命は尽きていただろう。

 

そこからは、まとまらない思考をどうにか押さえつけながら必死に抗った。黒鍵を赤槍が弾き、勝機が見えたと思った時に代行者、言峰綺礼は嗤った。

 

自身の死を前に正気を失ったかと思ったが、その前に…

 

 

黒を赤が貫く前に、金が視界を横切り青に突き刺さった。

 

 

神父の黒いキャソックを赤い槍が貫くと思われた刹那の内に、視界の外からいつの間に現れていたのか眩い金の存在がなにかを撃ち出した。そして、青い英雄、クランの猛犬の脇腹に突き刺さった。

 

そこからは、より一層思考が散らかった。クラスを推測し、神秘を内包しつつも異質な存在に掻き乱された。何より、彼女バゼット・フラガ・マクレミッツを混乱させたのは自身の信頼する槍兵からの時間稼ぎによる逃走を勧められたことであった。

 

私と彼であればこの窮地すら乗り越えられるとそう思っていたのだ。どんなに敵が強大であろうとも。

 

しかし、クランの猛犬は冷静に判断を下していた。ここで共倒れになるよりは自身が犠牲となり主人を生き延びさせた方が可能性があると。ただ、惜しむべくは主人が持ち導くべきであった手綱を離してしまっていることであった。

 

であれば、狗は吠えることで主人を落ち着かせるしかない。それしかできないのだ。目を離せば、容易く喉元を食い破るであろう敵を前に。狗は威嚇を、戦闘を中断することなどできるはずがない。

 

突き放すしかない。

 

 

 

「疾くいけ!マスター!」

 

 

 

狗の言葉に、怒号に主人の反応は鈍い。主人の喉からはどもった空気が漏れるばかり。

埒が明かない。そう思った狗は槍のように鋭い言葉を突き刺した。

 

 

 

「この状況はどうにもならねえ。だから、マスターだけでも逃げろ。生きろ!あいつの喉笛をお前が噛み千切ってやるためにも生き延びろ!」

 

 

その決死の叫びは主人バゼットを動かした。弱々しい気配は遠ざかっていく。だから、青の槍兵は安堵した。後は抗うだけだ。守るべきものは逃がした。であれば後は戦士として華々しく散るのみだ。

 

そうして、槍兵の裂帛の気合と剣閃の音は遠ざかっていき、あたかも遠吠えの様に。

 

彼女には何の音も聞こえなくなった。

 

耳朶に残るは、負け犬の醜い喘ぎだけ。

戦場に残るは、惨めな敗残兵だけであった。




新年度が始まる内に書き上げたかった。だが、勢いこそが筆を進ませると信じている。
自分なりの運命を書いていけたらと思います。
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