キヴォトスの中心でわんわんおと叫んだケモノ   作:Aデュオ

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えがお(いみしん)




2話:狼の憤激 えがおあふれるげへながくえん

 

 

 

 ――――こちらウルフ。スネークしている。

 

 

 あっしは狼なのに、蛇とはこれ如何にと思わなくもない。

 だがあのレトロゲーのネタが浸透しすぎてるのが悪いんだ。

 この私のでっかわいいぼでーだと果てしなく厳しい戦いになるんだけどね。

 具体的には入れる段ボールの大きさで。

 洗濯機辺りからが実用ラインとか最早実用と謳うのに無理があるわい。悲しいネー!

 つまりさりげなく置かれた(あやしすぎる)ダンボールから飛び出して『待たせたな!!』なーんてプレイはできない。

 ネタでやるのはかまわんけど実戦では無意味すぎる。

 ならばどうするか。簡単な事だ。

 

 

「…………」

 

 

 天井のくぼみ部分に手足を突っ張って張り付けばいい。

 横からは見えない程度の深さがあれば部屋に入ってきたばかりの視野が広い段階でもそうそう見つからないもんだし。

 何かを警戒していなければ、わざわざ天井を見上げるなんてしないもん。

 一回限りの『アンブッシュ! イヤーッ!!』程度ならこれでいいのだよ。

 まったく、わてくしったら本当に賢いお方……!

 

 

「何してるの、シア」

 

 

 ただ問題があるとするなら、積み重なってるお仕事で疲れたのか、執務室の中で一人になった瞬間にふと天井を見上げちゃった、そんなヒナちゃんと目が合っちゃった事カナー?

 最高のタイミングを見計らって驚かせてあげようと頑張りすぎた結果、おまぬけな見つかり方をしてしまうとは不覚でござる。

 ヒナちゃんが一人っきりになって、そろそろかなーって思った矢先にこれは酷いではありませぬか! あたくしの一時間近くに及ぶ頑張りが報われないではありませぬか!!

 天井に張り付いたままでいるのって意外と大変なんだよ!?

 

 

 ――でも私はめげない女。シアちゃん負けない。返事をしなければ私がここに居るという結果は確定されないんだ。

 これぞ忍法シュレディンガー・ヌコの術である! 必要なのは勇気と分厚い面の皮!

 元手ゼロで結果をもたらす超高等忍術なのだよ!!

 

 

 

 がちゃり

 

 

 

「毎度毎度、開幕デストロイヤーで威嚇は反則でしょお!?」

「このまま終幕にしてあげてもいいのだけど」

「ヤダー!!」

 

 

 この超高等忍術、イズナちゃん辺りなら騙せたかもしれないけど、流石にヒナちゃんは無理でありました。

 いやイズナちゃんでも無理か? ……イケそうだな。

 でも本当にやって、あの子が真似でもしようものなら、場合によってはイズナちゃんが『無視かました嫌なヤツ』になりかねないから教えるのはやめておこう。

 あんなキラキラ純朴な子が周りの有象無象から嫌な誤解をされるのは流石の私でも心が痛む。

 

 

「……素直に降りてきたのは褒めてあげる」

「わっふわっふ」

「でも、デスクにアゴ乗せはやめて。気が散るわ」

「きゅーん……」

 

 

 駄目か。この溢れ出る長躯を活かしてのあざとさ(でっカワイイ)アピールを塩対応で躱すとはやはりデキるな、ヒナちゃん。

 でもおざなりとは言え、わしゃわしゃと頭を撫でてくれたから許しちゃう!

 はっ……!? これが所謂『撫でポ』という都市伝説のアレか!

 爽やかイケメンにしか許されぬ伝説の荒業と聞いていたのに流石ヒナちゃん! さすヒナ!!

 

 

「で、何か用があったの?」

「あそぼ!」

「仕事中なの」

「あそぼ?」

「聞こえなかったのかしら」

「あそぼ!?」

「この書類が終わったらね」

「いや山やん。もはや山脈やんその書類」

「仕方ないでしょう、決裁印とか必要な物が多いし」

「じゃあ決裁印の代わりに私の特製わんこスタンプ押してあげるから貸して?」

「どうしてそれでイケると思ったの?」

 

 

 可愛いのに。

 モモトークスタンプ風味な、仰向けになって白目剥いて『しらんがな』とかつぶやくわんこスタンプとか、肉球印と『よくわかんないけどおっけーです!』とかのたまってるスタンプとか。

 ロクな事書いてない書類とかこれを押してやるだけ有情ってもんじゃない?

 

 

「万魔殿からの無茶振りだけで一山あるし、そっちは放置すると更に面倒になるし……あっ」

「なーんだ、またやらかしてんのかー! ほんとにもーマコちゃんったらー!!」

「ステイ。シア、ステイ」

「やっ!!」

「や、じゃないの。ステイ」

「やーっ!!」

 

 

 聞かぬ。マコちゃんったら、たまーにまともな事も言うけど、大概ステキなブっ飛んだ思考回路でやらかすからなぁ。

 前に『風紀委員会(ヒナちゃん)に嫌がらせなんぞしてんじゃぬェイ!!』って文字通りのカチコミかけたのいつだっけ? そろそろ喉元過ぎちゃったかな? かな?

 とりあえずイロハちゃん辺りに話を通しておけば穏便に襲撃できるっしょ。

 イブキちゃんの教育的に見せるのもどうかと思う事しかしてないし。

 

 

 ――――ヨシッ!

 

 

「シア、いっきまーす!」

「…………行ってらっしゃい」

 

 

 勝利である。

 ヒナちゃんったら、場所によっては低めのラインを超えたら面倒くさくなっちゃって、放り投げるからね。

 そういう精神的省エネ思考は大事だと思います。

 

 

「帰ってきたら、あそぼ?」

あっち(万魔殿)で遊んできなさい」

「世の中には別腹ってものがあるんだよ、ヒナちゃん。それにカフェの予約席の時間もあるし」

「は? カフェ?」

トリニティのお友達(放課後スイーツ部)に教えてもらったトコー! じゃあまた後で迎えに来るからね!」

「予約ってな『待て、しかして期待セヨ!』……はぁ」

 

 

 私が誰かを連れて行きやすいように、ギリギリゲヘナって辺りをチョイスしてくれるあの子たちも気遣い上手よなぁ。

 ある意味ではトリニティらしさでもあるから、表裏一体だけど。

 言う方、受け取る方の心情って大事だと実感するわぁ。

 さーイロハちゃんのモモトーク欄どこいったー?

 

 

 

 

 

MomoTalk

_イロハ

わさびチップスで手を打ちましょう

シア_

おけおけ

既読

オデ 万魔殿 襲ウ!

_イロハ

はぁ、またですか?

ならイブキは避難させておきます

報酬はいつものでかまいません

シア_

イロハ様ったら本当に素敵なお方……

_イロハ

犯行予定時間は?

シア_

緊急発令!五分で撤収!!

_イロハ

早すぎでは?

これは報酬をはずんでもらう必要があり

ますね

シア_

ダースで用意しようじゃないか

オマケに新作チップスも進ぜよう!

_イロハ

シアちゃん先輩

そういう所、好きですよ?

シア_

やぁんシアちゃん照れちゃう!!

_イロハ

ドリンクもお願いしますね

もっと好きになっちゃいますよ?

シア_

そういうトコどうかと思うよ?

でも悔しいっ!用意しちゃうっ!!

 

 

 

 

 

 

 ――――ヨシッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぽってぽってぽってしゅたーんしゅたーんしゅたーんすたっ!

 おーぷん、せさみー!

 

 

「ここがあの女のハウスね!!!!!!」

「んなァッ!? 降雨シアァ!?」

「待たせたな!!」

 

 

 これが言いたかっただけだろ? ンなこたァないッ!!

 てか万魔殿の子たちも順応しすぎじゃん? 私がのんきにスキップしながら正面から侵入(ストロングスタイル)しても何も言わないし。

 いや、言われたか。でも『先日はコーヒー豆の差し入れありがとうございます。皆の評判も良かったですよ、あれ』じゃないんよ。

 警告じゃなくて世間話だからソレ。君ら一応万魔殿の護衛じゃないんか。でもそういう適当な所は好き。

 

 

「おいっ! 誰か! 誰か居ないのか!?」

「増援は、来ない……!」

「貴様、一体何をした!?」

「スキップしながら正面から入ってきて、世間話してきた?」

「本当に何をしているんだ、貴様ァ!?」

 

 

 別に万魔殿の子たちに悪いことしてないじゃん。少なくとも現時点での私は無実である。

 あ、事実陳列罪とでも言うつもりかね? でも、ただの心暖まるやりとりじゃん? たまにカチコミかける輩とかけられる方の護衛のやり取りじゃないって言われたらそらそうよねってモンだけど。

 マコちゃんのカリスマが有るんだか無いんだかよくわかんにゃい体制がいけないと思いまーす!

 

 

「ええい私がただでやられると思ったら大間違いだ! おいイロハ!! ――――ん、イロハ?」

「まこちゃんは なかまを よんだ! しかし たすけは こなかった!」

「き……キキキッ! まだだ、まだ終わらんよオ"ふッ!?」

 

 

 内線通信のボタンなんて押させなーい。てか喋りが長いんだよマコちゃんったら。

 私が部屋に入ってきてから、部屋のソファとかを避けて飛び掛かれるような位置取りをするまで律儀におしゃべりしてくれるんだもの。

 そう、マコちゃんに足りないものは!情熱思想以下略!! なによりも!!! 危機感が足りない!!!

 いや『速さだろ』ってツッコまれたら『そらそうね』ってなるけど。

 とりあえずお口にあいあん☆くろー!しちゃったけど、騒ぐだけなら別に構わなかったんだった。

 いやぁついつい。

 

 

「んふふふふふ」

「むご、むがァあ!」

「あはは~非力だねマコちゃんったら!」

 

 

 頑張って手をはがそうとしてるのは結構だけど、それじゃあ足りんよ。

 最低でも銃身を握りつぶすかヒン曲げるかできるくらいになってから出直してきなっ!

 まぁ叶わぬ願いを胸に努力してくれてる間に取り出しますはー? こちらっ!!

 

 

「じゃーん! ミレニアム製の『無駄に頑丈なただのヒモ』でーす!」

「むご?」

「いやマジでこれが商品名なんだよね。ミレニアムも大概、頭ミレニアムしてんよねぇ」

「むご」

 

 

 口をふさがれてるマコちゃんが思わず素で頷くミレニアム製品。

 流石、ミレニアムしてんな!

 さて頷いていただけた事だし、ちゃっちゃと梱包しますかー。

 

 

「は? ちょ、待て、やめろォ!!」

「お胸はつぶさないようにー? ほーらπスラ! πスラ!」

「貴様ぁああああ!?」

「じょうずにできましたー! 記念写真撮っとく?」

「やめんか!?」

「ちなみにヒナちゃんへの嫌がらせをやめるなら考えてあげても良いよ?」

「貴様のソレは本当にただ考えるだけだろうが!」

「ぴんぽーん! だいせいかい! 正解したマコちゃんにはご褒美として更なる緊縛と~」

「――――!?」

「こちらをぷれっぜんとぅ!!!」

 

 

 じゃーん☆ はぁ~ねぇ~ぼぉ~う~きぃ~!

 あの道具の登場ボイスは何か耳に残るよね!

 

 

「ハーイ、オキャクサン、ブーツハヌギヌギシマショーネー」

「待て、待ってくれ、まさか……」

「ものの本ではこれも拷問の一種だって読んだけど、まぁほら……」

 

 

 笑いすぎるとどうなるかってのを最初から最後まで事細かに観察記録じみた記載までされてたのには割とドン引きしたけどさ?

 おかげで加減ってものが何となく分かるようになるんだから、ある意味有用な本ではあったんだと思う。

 人生、何が役に立つかわかんないもんだよねー。ノンジャンルでの書籍雑食はこういう事があるからやめられないとまらない!

 

 

 

 

 

 ――――『真正』と『じゃれあい』の境界線上って、本当に便利。

 

 

 

 

 

「これでも私、結構怒ってるんだよ?」

「――――ぁ」

 

 

 お、ざーっと血の気の引いた顔になったねぇ。

 まぁこれから真っ赤になるんだけど。

 

 

「君がッ! 笑うまで!! くすぐるのをやめないッ!!!」

「キ、キキキキキィーハァー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……わァ……」

「イロハちゃん、照れちゃった!」

「照れてるのではなく、えげつなさに引いてるんです」

「失礼な。不肖、この降雨シアによる誠心誠意の説得の結果、偉大なる万魔殿の羽沼マコト閣下にいくつかの案件についてご快諾を頂いただけじゃないの」

 

 ほぅら、ある程度の事後処理も終えて、普段通りに威厳たっぷりなお姿じゃない。

 

「……キッ、…………キキッ…キャッ」

「…………ふぅー」

「ひゃぁんっ!?」

 

 

 ちょっと肌感覚が『見せられないよ』一歩手前なだけで。

 

 

「シアちゃん先輩、今後私のスペースには立ち入り禁止です」

「酷くない?! わさびチップス増量で許して?」

「それが交渉材料になると思ってるんですか?」

 

 

 ええい! ヒナちゃんの陰の異名、ゲヘナシロモップと対を成す、ゲヘナアカモップは伊達ではないか!!

 私だってスる相手は選ぶよ? 誰でもになんてしないんだからっ!!

 

 

「いや何でこの流れで抱き上げてモフりにかかるんですか?」

「せいしんせいいのせっとくこうい」

「そのサイズで小さな子供ムーブは無理がありますよ」

「ちいッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――カフェのコーヒーとスイーツはちょっとだけしょっぱかった。

 

 

 





しゅじんこーちゃん(に)

おなまえ:ふるう しあ
ぶき:もーぜるM712【ぎゅんしゅ】(ろんぐばれるのとくちゅーひん)
ぼうぐ:ねったいようおーばーこーと
ぼうし:とくせいみみだしあなつききかくぼう
おみあし:くろすとにぶーつ
すきなたいい:へるしんぐ

すきな たいい:へ る し ん ぐ


ももとーくすぺしゃるさんくす:江芹ケイ さま
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