もぐもぐもぐ けぷっ
「もっすもっす~ホシノちゃんや~い」
『どしたの~?』
「私のお腹の上でさ~? ねむねむしてるかわいすぎシロコちゃんが居るんだけどさ~?」
『……うん?』
「貰ってい~い?」
『だめ~』
「だめか~」
『だ~めだよ~』
ふかふかもふもふクッション付き特大ソファinシャーレカフェ。あてくしサイズでも楽にごろんちょできる、最近お気に入りのスポットである。
場所柄的に、他校の顔見知りと待ち合わせてお茶もできるし、良い感じの空調やらドリンクバーのおかげで快適に昼寝もできる。
快適すぎてガチ寝してたら、シロコちゃんが私のお腹に頭をうずめて寝てるという素敵シチュエーションが出来上がってた不思議スポットでもあるけど。
思わずホシノちゃんに映像つきで通信しちゃうくらいに可愛さあふれてるわー。
まぁ言うて私が持ってきて勝手に設置したんだけどね、このソファは。
こないだ
馬鹿でかいソファを、万魔殿襲撃作戦成功トロフィーの如く頭上に掲げて『獲ったどー!!』してまたもや正面から堂々と出てったのに、『うっわよく持てますねソレ!』で済ませた護衛の子らはやっぱりゲヘナしてると思う。好き。
マコちゃんの部下教育は行き届いていらっしゃいますわ~! こんなに快適ソファをぽんとゲットできちゃうなんて、万魔殿は良いとこ一度はおいでくださいませですわ~!
でもまたヒナちゃんに何かしたら『ゆるさんぞー!りくはちまあるー!』するだろうけど。特に理由もなく巻き込まれるアルちゃん概念は可哀そう可愛くていいと思います。
忘れたころにマコちゃんが何かしでかしたら『せーしんせーいのせっとくこーい』をせねばならぬ。
いや~! イロハちゃんに『いともたやすく行われるえげつない行為』だなんていじられちゃうな~! かなしいな~!! ――またやろっと。
「むぁ~さらさらヘアーにもふっとイヤーは気持ちえぃのぅ~」
『ま~たシアちゃんがセクハラしてるよ~! おじさんの可愛い後輩に毒牙が~!』
「ここかぁ~? ここがええのんかぁ~?」
割と遠慮なく撫でくりまわしてるのに気持ちよさげに『スヤァ……!!』してるし、この子も危機感と距離感バグってんな? まだ初対面からの遭遇回数そんな行ってへんよ?
口もとをこしょこしょした指を甘噛みしてくるしなにこのこかわいい。うちのこになりなさい? ……いやアビドスから引き抜くとか外交問題以前にそんな鬼畜な真似できんわ。ザンネン!
『お休みだから自転車で遠出する~って、昨日学校でふんすふんすしてたけど、
「……うん? え、アビドスからここまで自転車で来てんの? どんだけ距離あると思ってんのよ?」
『流石に途中で電車も使ってると思うけど……シロコちゃん、体力お化けだからね~。ライディング用の自転車で夜明け前から暗くなるまで走り回ってたりするし』
「このほそっこい体でよくやるもんだわ~……オネーサンびっくりよ~」
『シアちゃんと比べたらだれでもほそっこくてちっこい子になっちゃうでしょ~?」
「何さ、突然刺してくるじゃ~ん」
もしあてくしがこの大きさを隠れコンプレックスにしてたら『しょんぼりわんこ一個獲得』のアチーブメント開放されてたよ?
序盤に大量開放される中にあって、見返したら『こんなんあったんだー』って感じの難易度低めなヤツ。
まぁそんなコンプレックス、欠片も無いけど。
タッパどごーんバストどーんウエストきゅっ……ごめんちょっと盛った。ウエストぎゅっ。ヒップどーん。そしてウエイトどごーん。
自然に発達していく筋肉の上に、適度なお肉が乗ったワンだふるボディは公然の自慢でありますのよ。
ガチムチったりしないで、なんかこう『ギュッ……ミチィッ……!』って感じの高密度で細くて強靭になる方面だからシルエットは角ばったりしないんだけど。
「おっきいのは良い事だよぉ? 色んな子たちを存分に愛でられるし、ウエイトがある分だけ素の出力高いし。戦車なんてワンパンだッ」
『うへ、そっちはそっちでいきなり剣呑になるのやめよ~?』
「ロマンと筋肉の詰まった素敵ぼでー自慢してるだけでーす! 体重3ケタは伊達じゃないのさー!!」
『……3ケタ?』
「あるよ?」
『あるんだ~』
「あるともさ!」
『うへ、おじさん二人半……』
「ホシノちゃんはもっとおっきくなりな~?」
ヒナちゃんからは『そろそろ石器時代に帰ったら? 勇者になれるわよ』とか言われたけど。石器時代に戦車ないわ。
今のシロコちゃんみたいにお腹に乗っけてた時に腹筋に力入れる、そんなささやかなイタズラをしてみたら、肌ざわりの変化が気に食わなかったらしい。
ぺしこんぺしこんお腹を叩かれた悲しみのおもひでぽろぽろ……!
そのままずりずり上にスライドして、お胸を枕にされた。どえらいかわいかった。
「でも最近の賑やかなキヴォトスだと、これが役立つ事が多いからねー」
『……まぁ、そうだね~』
「暴れてもいい免罪符って素敵! 相手の戦力が充実してればしてるだけ『身を守るためにぃ……しかたなくってぇ……』って言えるしさ!」
『シアちゃんだけはそれ言っちゃだめじゃないかな』
「だから急に刺してくるのやめよ!?」
『うへへ~ついつい~』
「やだもうかーわーいーいー!」
「ん、私だって負けてない」
「ベクトルが違うんだよ! 偉い人にはそれがわからんのですっ!!」
『ん~?』
「ん?」
なんか混ざったぞぅ?
「ぐっもーにーんシロコおぜうさま」
「……じいや、モーニングエナドリはまだなの?」
「ないわそんなもん。てかいないわ爺や」
「残念」
いや、残念とか言いながら寝なおそうとするんじゃないよ。自由か。野生を思い出せッ!
てか起きたんなら動いてもいいのね。よっし。
「そいじゃまぁシロコちゃんも起きた事だし、ごはん食べに行こっか」
『あ~いいな~。おじさんも~』
「まずはシャーレに来なさいよ~」
『じゃあ無理だ~。残念無念また来週~』
「今度こっちに来た時に一緒に行こっか。柴関を教えてくれたお礼をさしあげましてよー!」
『うへ、じゃあその時はよろしく~。そいじゃまたねぇ~』
「う~い」
「ん、お土産持って帰る」
『お~、シロコちゃんありがとね~』
「じゃ~ね~」
通信終了ボタンぽちー。
ゆるゆるぐだぐだ喋ってられるホシノちゃんは良き友である。
まぁゆるゆるなだけじゃないのは何となく分かるけど、それはそれ、これはこれ。
「で、何系が食べたい?」
「お肉」
「寝起きでしょ君。気持ちはすっごく理解できるし、何なら私もしょっちゅうやるけど」
「鍛えてますから」
どやどやむふー? 可愛いんだけど? あざとすぎへんか?
何だろう、この同じドヤってる顔でもアコちゃんとは全然受ける印象が違うの。あっちはドヤってたら頬っぺた引っ張ってドヤキャンしてあげるけど。
その後にきゃんきゃん騒いで、いつの間にかヒナちゃんマウント合戦が始まるまでが様式美。ちなみにあっしは無敗のちゃんぴおん。
ヒナちゃんと同衾できるようになったら出直してこい、そこが最低ラインだよ。させないけど。
「んじゃあステーキ食べにいこっか。どうせなら先生も拉致って!」
「私が来た時、書類に埋もれて呻いてた」
「カロリー爆弾で発破するっきゃないネー!」
お腹の上から両手を伸ばしてきたシロコちゃんにぺしーんとハイタッチをかませば精神的な準備万端。
お出かけの準備を始めるシロコちゃんを眺めながら、こっちも準備をするわけだけどさ?
……何だろう、こう、いそいそと身だしなみを整えてるシロコちゃんが凄くふんすふんすしてるんですが。
「そんなにお肉が楽しみなん?」
「先生にもっと食べさせてふくよかにする。その方が気持ちいい」
「Oh……」
そういやこの子、先生のお腹もにもにして楽しんでた子だったね。
哀れ、先生のハラミのボリュームは……まぁいいか、先生だし。増量したくなけりゃ動けばいいだけなんだから楽なもんじゃんね。あの先生が動けるとは到底思えないけど。
準備万端な狼ペアにウルフパックされて美味しく頂かれるしかないみたいだよ? かぁいそうだねぇ、せぇんせぇ……!
「そういや今日のシャーレ当番誰だったの?」
「青っぽい髪の、ヴァルキューレの人。ソファで寝っ転がってドーナツ食べてた」
「んー? もしかしてちっこかった?」
「ホシノ先輩くらい」
「じゃあフブキちゃんか。ならイケるね」
先生が拉致られたから、
お土産にドーナツ買って帰れば言うこと無し。
◆
「やっほーせんせー! それじゃあいこっかー!」
「はい!?」
「ん、上着」
「え、あ、ありがとう?」
「いざ行かん、エデンの園へ!!」
「今日は帰さない」
ちなみに不良警官は任務どーとか言う必要すらなかった。目が合って一言、『ドーナツ』『いってらっしゃい』で済むってどーなん?
ソファからひらひら手ぇ振ってあっさり通したよあの子。適当すぎて先生が涙目になってたけど、いつもの事だからヨシッ!
大事にされてないわけじゃないけど、皆結構先生の扱い雑よね。
◆
「食事に誘ってくれるのは嬉しいと思うし、実際にここのお肉は美味しかった。それは認めます」
「むご?」
「ここがブラックマーケットだっていうのも、百歩譲って目をつむりましょう」
「んぐ。何が言いたいのさ、先生~? そんな苦虫噛み潰したような顔してさぁ」
「何でさっきの不良っぽい子達に突っ込んで行ったの?」
「食前の運動はスパイス」
「雑!? いや、そうじゃなくて……貴女が風紀委員のお手伝いをしているっていうのは知っているけど、あの子たちはまだ何もしていなかったでしょう?」
ふむん?
「せんせ、アレ、ゲヘナ生」
「…………」
「………………?」
パーフェクトな回答だ、シアちゃん。って言われるべき所じゃんね、これ。
何で沈黙が返ってくるんだろうか。
「え、終わり?」
「それ以上に何か必要あるの?」
「あるでしょ!?」
「何が!?」
いやゲヘナ生の、ブラックマーケットに居るタイプの不良よ?
思考回路は?
お小遣いは?
お前の物は?
まずはこうじゃ。
そして危機管理能力として?
踏んじゃいけない
触れちゃいけない
押しちゃいけない
―――あじとへ かえるんだな。おまえにも なかまがいるだろう……。
よりにもよって、ゲヘナなんて学校で好き好んで不良やってるんだから。
あっちだって分かってやってるんだよ。それがゲヘナ産イッパンフリョウセイトの嗜みだもの。
なら、結論は?
―――――よろしい、ならば
「何でそうなるの!?」
「先生はテレビを見てる時に、どうやってこのテレビは映っているんだろうとか考えるの?」
「え、私がおかしいのコレ? シロコ!?」
「一般的じゃないかもしれないけど、別にそこまで言うほどおかしい思考じゃない」
「うそでしょ」
ところがぎっちょん、現実です。
私やヒナちゃんにやられてるヤツらを見て『あーあ、出会っちまったか……』って顔しながら反射で逃走図るのがゲヘナ不良の生態。
私ら相手にしてる時のポジションの隠語、
誰にって? そりゃあ美味しく頂いた子たちに。
「治安が終わってる……遅すぎたんだ、私は……!」
「人間手裏剣されても『こっちくんなお前!』で済むんだから気にするようなこっちゃねーですわよ」
「気にして! 皆もうちょっと優しい世界に生きよう!?」
「……世界は、こんなはずじゃなかった事ばっかりだ……!!」
「あぁ……もう駄目なのかな……」
「失礼な。訴訟も辞さない」
「ん、弁護団は任せて。アビドスの皆で助ける」
聞いた話だけど、銀行強盗かましてるよね、君たち。
銀行強盗経験済み弁護団とか凄いよね。弁護(物理)とかやらかしかねん。
しっかし先生も難儀な事だねぇ。
お外の常識とやらに縛られて、キヴォトスに染まれないだなんて。
「まぁまぁ食いねぇ、先生。ヘイマスター! こちらの先生にこの店で一番高い肉を!」
「和牛の良い所だから値ぇ張るぜ?」
「え、和牛あんの?」
「あるよ」
メニュー表に載ってないじゃん?
何それ、裏メニュー? 私ココに結構来てるけど、知らなかったよ?
「まぁいいや、先生いるし。それくーださーい! 全員分ね!!」
「へい、まいどー」
「やめてよぅ!?」
「ありがとう、先生。ちゃんと味わって食べる」
さっきとはまた違った『この世の終わり』みたいな顔して叫んじゃってまぁ……。
流石に先生にタカるのは冗談だけど、正直興味が尽きないよね、肉が溶けるって噂のWAGYUなんてもんがあるって聞いちゃったらさぁ!
「貴女たち今までも散々食べたじゃないの!」
「何を言う。知らんのか、先生」
「……嫌な予感しかしないけど、言ってみなさい」
「他人の金で食う肉ほど美味いもんはネェ」
凄い! 先生の表情が死んだ!!
いや、心配しなくたって指名手配やらなにやらで荒稼ぎしてるんだから払いは全く問題のうござるよ?それ知ってるからこのマスターもあっさり出してくれるんだけど…………面白いからお会計まで黙ってよう。
でもちょっと心配げな雰囲気を出し始めたシロコちゃんにだけはー?
(いっぱいおたべ♡)
(ん♡)
――――ヨシッ!!
せんせー(いち)
せいべつ:じょせい
しんちょう:ほどほど
たいじゅう:もちもち
すりーさいず:まーべらす
いろみ:ろんぐへあー(からすのぬればいろ)
ゆきんこおはだ(まっしろきめこまやか)
せいかく:かわいそう