キヴォトスの中心でわんわんおと叫んだケモノ   作:Aデュオ

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きょうけんが ひをふくぜっ



4話:狼の日常 ゲヘナの涙雨

 

 

 

 小耳に……いや、私の場合は大耳になるのかな? ……まぁ大別して『耳』に挟んだ話になるんだけど、ここキヴォトスでは銃を持っていない状態は全裸に等しいらしい。

 なら考えようによっては、不幸な出来事で銃が旅立って、ホルスターだけになった状態だと半裸に等しいのでは?

 

「この難問の答えを求めて、我々捜索隊(総員一名)はゲヘナの奥地へと向かった……!」

『そのまま帰ってこないでください』

「おうおうおうつれない事言うじゃないのアーコちゃーん? 同じ雨女同士仲良くしよーよー」

『誰が雨女ですか!』

「あっしは降雨、アコちゃんは天雨。どっちも雨ふり女じゃないか! そこに何の違いもありゃしないでしょうが!?」

『強いて言うなら語感の美しさですかねぇ!』

 

 

 こやつめ、さらっとドヤって煽りおるわ。映像越しだからほっぺたむにっとドヤキャンできないじゃーん! ちくせうっ!! シロコちゃんの可愛らしいドヤを見習えー!

 でも思わず納得しかけたけど酷くない? ていうかそこは『違うのだ!!』って言ってほしかったなぁ。

 流石にレトロなサブカルは履修しておらなんだか……無念ッ!

 

 

「どうでもいいけど騒ぐなら他所でやってよ……」

「やぁんイオリちゃんつれないじゃん? 暇つぶしとは言え、お手伝いしてるのに冷たーい!」

「暇つぶしって言っちゃったよこの人!?」

「個人的に『実は全裸より恥ずかしいんじゃねーのあのファッションセンス』って思ってるヘルメット相手ならしゃーないっしょ」

『銃も持たずに風紀委員会の車の屋根で昼寝してた輩に言われちゃおしまいですね』

「持ってないんじゃない! ちょっとひねくれちゃって旅立ってるだけですぅー!」

 

 

 エンジニア部に『自爆機能でもなんでも付けてもいいから、いっとう頑丈に造ってね』って言っておいたのに。

 

 私のB級グルメ食べ歩きの邪魔をした美食研究会相手に、愛銃のスーパーロングバレルを活かした二刀流の脳天唐竹割りかましただけで、銃身がヒン曲がっちゃったんだもん。

 ただし涙目になってオロオロしてたジュンコちゃんは許した。あの子何だかんだで美食研究会の中じゃ常識人寄りよね。

 まぁ何だかんだ言うて、結局最後は『やっぱり美食研究会(テロリスト)だなー!』ってなるんだけどさ? もちもちほっぺたをみょいんみょいん引っ張って半泣きにさせちゃうのは仕様。

 

 何にせよ、使用用途外でやらかしてるから『不良品だー!』なんて言う気は流石に無いけど、もうちょっと頑丈になんなかったの?

 そもそも銃身で殴るな? せめてグリップで殴れ? うん、それはそうね。でもわざわざグリップで殴るくらいなら素直にゲンコツかますけど。

 

 

「シアちゃんさ、もう銃じゃなくて鈍器でも持った方が良いんじゃないか? 棍棒とか」

「あのイオリちゃんにまでエンジニア部の自爆マイスター共と同じ事を言われるなんて……!?」

「ちょっと待って、あのって何だよ、あのって」

「ライフルのストックのチークパッドをトゲトゲにしちゃう、謎改造マイスターの、あのイオリちゃん」

「ぶつよ、そのトゲで」

「それやるんなら、イオリちゃんこそ棍棒持つべきだよって返すけど?」

「ぐぬっ……!?」

『なに言いくるめられてるんですかっ!』

 

 

 久々に見たわイオリちゃんのぐぬぬ顔。なんでこの子、こんなにぐぬぬってるのが似合うの?

 ていうかどうせ持つなら、棍棒なんかよりも、そこそこの長さと重さのある斧がいいなー? ギャラクティックでヒーローでレジェンドなアレに出てきた炭素クリスタルでできてるヤツ。炭素クリスタルが本当に存在するのか知らんけど。

 ヒナちゃんから言われた石器時代の勇者が脳裏でマッスルポーズ取ってるわー! キレてるよーキレてるよー!

 いや待て待て待て、斧は流石に刃を潰さなきゃいけないかなー……ってそれもう鈍器じゃんね。

 …………棍棒、持つしかないかな! 殴ってよし割ってよし潰してよし。総じてヨシッ!!! あれ、普通にアリじゃないのコレ。

 いやでもやっぱり斧が欲しいッ! 勇者王に、私はなるッ!!

 

 

「シアちゃん。今更ではあるんだけど、聞いていい?」

「どしたどした~?」

「銃が無いのは分かってるし、無くっても強いのは知ってるけどさ。流石に人間砲弾で戦うのは人間やめてない?」

「だっていい感じに相手減ってくから楽なんだもん。砲弾(犠牲者)(犠牲者)で掃討すぴーどあっぷ! 倒れた的でもう一回遊べるドンッ!!」

「せめて、相手から武器を奪うとかさ。もうちょっと文明的になろうよ」

『相変わらずのゴリラ・ゴリラ・ゴリラっぷりですね。さっさと山に帰ったらどうです?』

「せめて学名くらいは人にして? ていうかゴリラじゃなくてオオカミですぅー!」

 

 

 人間手裏剣は先生にドン引きされたから自粛して、今回は人間砲弾で頑張ってるのに。

 スリケンッ!! した方が手足の幅の分だけ巻き込み範囲広いのになー。

 まぁ貫通力はこっちの方が上だけど。そういえば何か格ゲーにこんなんいたね。KUMADORIしたRIKISHIが水平にカッ飛んでいって頭突きするやつ。

 人間砲弾はまっことまーべらすでごわすな!

 

 

「げボっォぅ!?」

「あ、ごめん良いトコ入っちゃったね!? 横に転がってて良いからゲボだけは我慢して! いくら不良でも乙女の尊厳くらいは認めてあげるから!!」

 

 

 じゃいろぼーるじゃいろぼーる!って投げ方工夫して遊んでたらヘルメット(人間砲弾)が良い具合に突き刺さっちゃったヘルメット()がッ!

 ヘルメット越しに口を押えてるけど、それ効果あるのん? かわいそうに、だれがあんなひどいまねをー!

 あの中でゲボったらもうあのヘルメット使えないじゃんね。アイデンティティの喪失? それかフルフェイスヘルメットから半ヘルにジョブチェンジするの?

 てかヘルメットヘルメット言いすぎてゲシュタルト崩壊しそう。ヘルメットとは……人類とは……宇宙とは………!

 

 

「うわぁ……」

「ちょっとイオリちゃん、そんな得体の知れないナマモノ見るような目はやめてよー」

「その通りじゃないか! 委員長とは別ベクトルで敵に回したくないし!」

「ヒナちゃんを敵に回すなんてとんでもない! ヒナちゃんは愛でるもの! ヒナちゃんは愛でるッ!! ものォッ!!!」

「言ったそばから人間やめないで。突き刺さってるじゃん、壁に……」

「ついさっき鳩尾に入って、結局耐え切れなかった大惨事ヘルメットが脳裏をよぎってな……手元狂っちゃった♡」

 

 

 鳩尾とかお腹はやめよっかなーってちょこっと思ったらこれですわよ。

 あてくしったらついつい……お恥ずかしい限りですわ!

 

 

「良くわかった。やっぱ私手加減は向いてないわ。好きに投げる」

「はぁ……もう好きにしなよ」

『二次被害を出したらそっちに請求回しますからね』

「そのままたらい回してマコちゃんにツケとくわ」

 

 

 肩も暖まってきてるし、全力投球じゃーい!

 ――――別に全部投げてしまってもかまわんのだろう?

 

 

「これを機に消える魔弾でも練習しちゃうかっ!」

『ノーコンで真上に飛んでいくとかですか?』

「あっはっはっはー! 言うじゃんアーコちゃーん!! ――――お前で試してやろうか?」

『お断りします。隣のイオリでやってみたらどうです?』

「なんでこっちに振るんだよ!? やだからね!?」

「ちぇっ」

 

 

 仕方ないので、今回用意しましたのはコチラッ!! 足元で死んだふりしてるヘルメットの残党ちゃん。ヘイロー出てるからバレバレだって。

 嫌々と頭を振ってるけど見えませーん。でもにっこりと笑いかけてぎゅっと胸倉を掴み上げた途端に、ヘイローが消えた。

 なんでや……なんでや……!?

 

 

「……やっぱり、流石に可哀そうになってきた。やめてあげなよ、ほら、相手も白旗振ってるし」

「え、あの白旗って砲撃目標地点を示してくれてるんでしょ? 現地で『だーんちゃーく……今ッ!』してくれるんでしょ!?」

「鬼か!?」

「ざーんねーん……仕方ない。コヤツは解放してやろう……!」

 

 

 白旗振ってる子の隣の、あの赤ヘルメット相手に。

 

 

「スットラァーイクゥ! バッターアウッ!!」

「デッドボールじゃん。アウトなのはシアちゃんの無法っぷりだよ……」

「だってアイツ、見覚えあるし。前に暴れてた時、やけっぱちになってヒナちゃんに向かって銃を撃ってたもん。許さんっ」

『なら仕方ありませんね。もっとやってかまいませんよ』

「アコちゃん!?」

 

 

 たまーに手のひらドリルかますよねアコちゃん。でもそういうトコは好き。

 いくらダメージらしいダメージが入らなかったとは言え、ヒナちゃんを撃ったんだからさぁ?

 アレはゲボってもいいヘルメットだ。投げられた子はごめんだけど、私の足元に落ちてたのが悪い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はぁ」

「風紀委員長も大変ですね。朝の暴動の後始末が終わった傍から近距離パワー型の超大型犬に振り回されて」

「貴女もね」

「二人とも酷くない? 折角ゲヘナモフモフの集いを企画したのに……!」

 

 

 両手に紅白モフモフを抱えて私のおうちに帰っただけでこの言われよう。酷くない?

 左手に白いモフモフ、右手に赤いモフモフ。ヘブンアンドヘブン。楽園はここにあったってヘブン状態してたのに!

 私が中間色のピンクのモフモフだったら許されたのかなぁ……灰色ウルフカットじゃダメでありんすか?

 お耳と尻尾はモフモフしてるから、ここはこれで手を打ってくりゃれ!!

 

 

「いきなり小脇に抱えて拉致するのを企画とのたまうとは。流石、方々から『ゲヘナの精神を体現しているようだ。頼むから地獄に帰ってくれ』だなんて言われるだけはありますね」

「えっへん!」

「胸を張らないの」

「やーんヒナちゃんのえっちー♡」

「…………」

 

 

 胸を張ってアコちゃんばりにドヤドヤしてたら、ぺちんとお胸をはたかれたであります。

 それで揺れたお胸をまるで親の仇みたいに見るんじゃありませんよ、ヒナちゃん。貴女が始めた物語でしょっ!!

 

 

「まぁまぁ。訳もなく連れてきたんじゃないよ? ちょっと待っててねー!」

「む……中々の手触り。迷惑料に頂いていきますかね」

「別にいいわよ。クローゼットの中に山ほどあるし」

「では遠慮なく」

「いや、別にいいけどさ? 待っててねーって言った傍から部屋を物色し始めるのやめよ?」

 

 

 我、一応家主ぞ? ソヤツ、我が家のソファの警護を一手に引き受ける番ぬいぐるみ狼の精鋭ぞ? ヒナちゃんが良いって言ったから良いけど。幸せにおなり。

 手作りのモチモチぬいぐるみクッションが褒められたのは嬉しいわー! その子は何回か枕代わりにしたからちょっとよだれがついてるかもだけど。ヒナちゃんの。……あ、ちょっと惜しくなってきた。

 まぁそれを加味しても、素材にこだわって夜なべして産んだクッションが貰われていくのはなかなか感慨深いものにござるな!

 百鬼夜行産の布で作った化繊とは一味違う手触りの子も居れば、これぞ科学の勝利であると言わんばかりのミレニアム産の布で作った子も居る。みんなちがってみんないいんだよっ!

 端切れで作ったパッチワーク風味な子もまた可愛いし!

 布もさることながら、モツを綿にするかビーズにするか、はたまた軟質のチップにするか。中々に奥が深うありますのよ?

 

 

「ヒナちゃんが言った通り、そっちのクローゼットの中に居る子たちなら好きなだけ連れてってもいいよー」

「ほう…………何ですか、この無駄に几帳面に詰め込まれたクッションとぬいぐるみの山は」

「会心の出来な子はヒナちゃんのお部屋に連れて行ってるんだけど、流石にスペース圧迫しすぎって怒られたんだもん。捨てちゃうのは可哀そうじゃん?」

「……イブキにあげたらどうです? あの子はぬいぐるみとかの可愛い物は大好きですよ?」

「ならイロハちゃんチョイスで良さげな子連れてってあげてー」

 

 

 モフモフの山に突っ込んで行くアカモフモフと、さりげなくオススメなモフモフをチョイスするシロモフモフ。やだ、あの間に挟まってモフモフしたい。

 モフモフがでっかいモフモフを抱えてにこにこモフモフしてるとかポイントくっそ高いですわよ? 後でまとめてモフモフしよう、そうしよう。

 今朝の暇つぶしの運動ついでにトリニティまで走って買ってきたケーキと、美食研究会を蹴散らしてゲットしたコーヒーのセットがあればきっと許してくれるはず。

 しょっぱいもの好きなイロハちゃんのために、サイドメニューで百鬼夜行のお煎餅と緑茶もあるし、万全の布陣ですわ! 勝ったなガハハ用意してくるー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………シアちゃん先輩、相変わらず女子力が高いんだか低いんだかよくわかりませんね。普段あれだけ蛮族系女子やってるのに」

「否定はしないけど、ラインの内側に居る存在に対しては胸やけしそうなくらい甘いわよ」

「外側だとキヴォトスリーパーの方がまだ甘いんじゃないですか?」

「それも否定しないわ」

 

 

 

 

 

 





げへなしろもっぷ(いち)

しんちょう:ひくい
せいかく:めんどうくさがり
とくぎ:ましんがんそうしゃ

とくちょう:かわいい



げへなあかもっぷ(いち)

しんちょう:ひくめ
せいかく:めんどうくさがり
とくぎ:さぼり

とくちょう:ぴりりとしげきてき


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