たーべーてーるーだーけー
「ひっなちゃ~んとお~んせ~ん♪ ひっなちゃ~んとお~んせ~ん♪」
温泉ともなれば裸のお付き合いは避けて通れぬ道!
来たるその日に向けて体を絞らねばならぬ!!
そう、見せても恥ずかしさのカケラすら無い領域まで絞らねばならぬのである!!!
せんせーを。
温泉抜きにしても、先生を運動させる事に関してはリンちゃんたちも納得してくれたから、シャーレビルにトレーニングルームを作れたわけで。
せっかく作ったんなら活用すべきだよねぇ。
「ほらほら先生、ペース落ちてきてるよー? ランニングマシンの設定落としてるんだからこれくらい走りぬこう?」
「――――――ッぁああ!! しぃぬぅ!!! しんじゃうぅ!!!!!」
「まだ声出るじゃん? じゃあもーちょっとだけ上げていこー!!」
「むりィ!! もう、むり、だからァ!!!」
「ぱぅわーだけじゃなくて、スタミナも無いとは……」
「シアとっ!! 一緒にっ!!! しないでッ!!!!」
何だかんだでまだまだ声出てるし、もうちょっとイケると思うんだけどなぁ……本当に力尽きかけてる人間はまず声なんて出せないし。
ソースは鬼ごっこしたゲヘナ産イッパンフリョウセイト。ヒナちゃんに向けてグレポンしやがったから、運動がてらひたすらに追い掛け回し続けてやったらそうなった。
銃撃も格闘もせず止まりそうになったらおケツを軽く蹴り飛ばすくらいで、ただひたすら追い掛け回しただけなのに後からヒナちゃんに怒られたのは納得いかぬ。
ちゃんと最後はセナに連絡入れて緊急車両の中に放り込んだんだから有情も有情だと思うんだけどなぁ。
…………待てよ?
有情と名のつくものに、本当に有情なものは思い浮かばないからやっぱり無情か?
どこからともなく『テーレッテー!』って効果音が聞こえてくるし。
おまえのようなびょうにんがいるかー!
「ほーらせんせ、がーんばれっ♡ がーんばれっ♡ 頑張ったらちょー美人なケモミミっ子紹介するからさぁ!」
「どうせっ!『わたしだッ!』とか、いう、んでしょっ!!」
「その手がッ……!!」
「確かにシアちゃん顔立ちは美人さんだけどさ~? おじさん、シアちゃんを美人って言うのは何か違うと思うな~」
何か後ろから突然刺されたであります。酷いっ!!
そこは素直に美人って言ってよー?
「ホシノちゃんらっしぇーい! まだ約束の時間にはちょいと早いよ?」
「電車の時間的にこうなっちゃうんだよ~……アビドス、本数少ないし」
「あ~ね……まぁ終点だしなぁ」
「ホシ、ノッ!? きょう、とうばん、じゃなっ――――アッ」
「あっ」
「あ~…………」
悲報、先生射出。いや射出って程速くないか。精々ベルトコンベアで運搬くらい?
ってアッ…アッ!!!
「あらま、せんせったらえっちだわ……」
「お~……黒のすけすけ……先生流石~」
「やめ、みな、みない、でっ……」
素直に射出されてればこんな
最後の力を振り絞って手すりに縋りつくからこうなるんだよ。
噂には聞いてたけど、本当にランニングマシンにズボン巻き込まれる人なんて居るんだ……
「運動するんだからスポーツインナーにしとけばいいのに」
「シアが、とつぜん、いいだした、から……よういなんて、ないよ……!」
「あ~、そりゃシアちゃんが悪いわ」
「てへぺろ♡ とりあえず先生回収~!」
手すりに縋りついたままの先生を持ち上げてみたら、猫伸ばしみたいな状態になったでござる。
ぜーぜー言ってるし、思ったより体力ギリギリだったのかねぇ?
先生が事故った時用に敷いた衝撃緩和マットがこんな所で役に立つとは思わなんだ!
「……ねぇシアちゃん」
「……………うん」
「何かもうさ、この先生の状態だとさ、その……アレっぽく見えちゃうんだよね」
「そうね」
汗だくで、息を荒げて、ズボンは落ちて、すけすけしょーつがコンニチハしてるマットの上のぐったり先生。
うん、事後かな?
せめてもの武士の情け……先生殿のズボンくらいは直して進ぜよう……!
「――ヨシッ! んじゃあ先生の運動も終わったし、後は当番の子に任せよっか!」
「やるだけやってポイだなんて鬼かな~」
「言い方ァ!! ホシノちゃん何で私にはそんな急に刺してくるのさ?」
「いや~、ほら、シアちゃん刺しやすくってさ~」
「だから言い方ッ!! なんか猟奇的に聞こえるぅ!」
「うへへ~♪」
「鳴き声で誤魔化すのやめよ?」
へにゃっと笑ってそのなきごえを出せば私をどうにかできると思ったら大間違いだよ?
なんかぼうぎょが下がった気はするけど。
「ていうか今日のシャーレ当番誰なの~?」
「トリニティの誇る癒し枠、マリーちゃん」
「……うん、誰かな? おじさんあんまり他の学校の子は知らないんだよね~」
「シスターフッドっていう勘違いされる系のボスが君臨する『あやしいそしき』所属のかぁいらしい癒しにゃんこシスターちゃん!」
「説明する気ある~?」
「内情知ってるならここ笑う所だよ?」
あやしいそしきのボス、サクラコとかもう存在が面白い。意味深な言動っぽく見える
シスターフッドの子と話してる時に、サクラコからトリニティ風味のケンカを売り逃げされたから追っかけてったらキョトンとされたのは忘れられないわ。
二人してすぺーすにゃんこ背負いながら話してみたら最終的に爆笑したけど。
「大丈夫、マリーちゃんの癒しヂカラはもはや聖母クラスだから。良い子すぎて『私って汚れてるんだなぁ……』って自覚するレベル」
「それ本当に大丈夫? 先生もダメージ入っちゃうよ~?」
「アラヤダ! この子ったら先生まで刺し始めたワッ!? なんって恐ろしいコッ!!」
チラッ!! チラァァァッ!!!って先生を見たけど、駄目だわ。
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
未だに大きく上下するお胸をぽいんぽいんしても大して反応してくれないし。
でも二の腕をもにもにしてたら叩かれた。解せぬ……
「まぁ付け焼刃でちょこっとだけ運動したって、一週間でこのもにもにが落ちるわけないけど」
「…………!?」
「何で驚いてるのさ、先生……それが嫌なら禁断のシロコちゃんマッサージって手もあるけど……スるならシャーレ以外でやってね? また淫行がどうのって怒られるだろうし」
「おじさんの後輩を犯罪者にしないで欲しいな~」
「いや君らマジモンやん。銀行強盗」
「うへ~! 先生、シアちゃんに刺された~!!」
「それは、じごう、じとく……」
ツッコミ入れて力尽きるだなんて、センセったらいつから芸人にジョブチェンしたのよ?
◆
「さて、それじゃ予定通りのお食事会兼、人狩りもとい一狩り行こうぜの集いの決起会を開催する事をここに宣言しまーす!」
「うへ~開催しちゃった~」
「という訳で。まずはこちらがアビドスガァルたちの間で噂になってたわぎゅーさんでごぜぇますだ、ホシノどん! 見なせぇ、この霜降り具合をヨォ……最早芸術でっせ……」
「もう何キャラなのさ~」
「私にも良くわからんッ!! でもコイツがんまァいのは間違いない!」
「らしいね~? シロコちゃんったら事あるごとに『……ん……忘れられない』なんて恍惚としちゃうんだもん」
そりゃあんだけ食べれば忘れられないでしょうよ。
でもこそっとマスターにお値段を聞いてた先生が、どんどん真っ白になっていく姿を見ながらの食事だったのも忘れられない一因なんじゃないかな。
「そいじゃどんどこ焼いて貰おうか。マスターよろしくー!」
「あいよォ」
目の前にドーンとある鉄板で焼かれるお肉さんは何故こうも美味しそうに見えるのやら。
いや、実際に美味しいんだけどさ。
さっと表面を焼いて、味付けは塩と胡椒だけ。余計な装飾なんぞいらぬとばかりのシンプルさの極致。
だが、それがいい!
滴る肉汁!
まるで刺身を切っているかのようにするりと通るナイフ!
立ち上る芳醇なお肉の煙!
「うへ~~! 何か見たこともない柔らかさしてるんだけど~」
「へへッ……キクぜ、コイツはよォ……」
「おいこらシア、人聞きの悪ィ言い方すんじゃねぇ」
「ついこないだまであてくしにこのお肉の存在を隠してたのが悪いんですぅ! 何さ、あんなに足しげく通ってたのに何も言ってくれないんだもん」
「聞かれなかったしな」
「うわ、それ詐欺師の論法じゃん!」
このチョイ悪系犬親父め……キヴォトスじゃ珍しいイケメンわんこ顔してるからって許されると思うてか!
「それにおめぇ、いっつも来るなり『まずはステーキ1kgお任せで!』ばっかりだったじゃねぇか。続けてキロ単位で注文していくし、そんな注文の仕方をされりゃあ質より量だって思わぁな」
「うへ、そりゃシアちゃんが悪いわ~」
「やっべぇ反論潰されたわー!」
「おら、馬鹿言ってる間に焼けたぞ。まずはリブロースだ」
「ひゃっほーい!」
「うへぇ…………うわ、フォークがするっと入る……」
なんで美味しいお肉を前にして引いてんのよホシノちゃんったら。
そこはテンションブチ上げて『Fooooo!』って叫んでも良い所じゃん。
「んむ…………ふわぁ……」
「おおぅ、ホシノ殿がとろけておられる……」
「とけた~……本当にお肉ってとけるんだ~……」
「まだまだあるからどんどん食いな、お嬢ちゃん。払いはそこの馬鹿娘がしてくれるんだからよ」
「仮にも客に馬鹿娘とか酷くない? おかわり」
「こんないい肉を口いっぱいに頬張って貪るような輩は馬鹿娘で十分だろうが」
酷すぎじゃんね? 美味しい物は楽しく味わってこそでしょ!
お堅いテーブルマナーとか関係のない場所なんだから、周りの迷惑にならないなら好きなように食べたっていいじゃーん!
「いや、おじさんの分は「私が払う。これ、お礼も兼ねてるんだからね?」――――お礼をされるような事をした覚えはないんだけど」
何をおっしゃるかねこのアビドスオジサンモドキは。
「最近さぁ、どうも運動不足だったんだよねぇ」
「……うん?」
「カイザーPMCに殴りかかる動機をくれたお礼」
「あ~……そういう事か~」
胸糞悪い大人の理論で殴ってくるなら、どうしようもない餓鬼の理論で叩き潰してやる。
言い方はアレだけど、アビドスの事情があったからこそ好きなように殴り掛かれた。
「それがしたい、それができる」
許されるなら全力で暴れたい。やりすぎないように気を使い
「ならどうする? ――――ヤるでしょそんなの」
「うへ……」
「おいこらシア、飯食ってる時に殺気立つな。飯が不味くならァ」
「いひ、すいやせんおやっさん!!」
「誰がおやっさんだ」
確かにそりゃあそうだ。ホシノちゃんも若干顔色悪くなっちゃったし、悪い事したなぁ。
「私みたいな暴力装置も使い様とは言え、使い所が限られるのも事実でさ。ガス抜きに風紀委員のお手伝いなんてやってるけど、不完全燃焼は否めないんだよねぇ」
「…………シアちゃんでも悩む事があるんだね~? おじさんびっくりしたよ~」
「酷くない!?」
「妥当だろうが。ほらお嬢ちゃん、次はサーロインだ。この馬鹿娘なんぞ財布扱いでかまわねぇからどんどん食べて大きくなんな」
「うへ、おじさんもう高校3年だよ? ここから大きくなるのはウエストのサイズだけ~」
「なぁに、成長期なんぞ何時来るかわかりゃしねぇんだ!」
ふむ。成長期で大きくなったホシノちゃんとな?
「神秘の成長期ぱぅあーで大きくなったとして、ホシノちゃんはスレンダー美人になりそうだよね」
「…………」
「何その抗議の視線!?」
「どこ見て『スレンダーになりそう』って思ったかおじさんに教えてくれないかな~」
「ショットガンまで構えて言う!?」
「おら、いいから大人しく肉食っとけお前ら!」
言うて銃口でつんつんされてるだけで引き金に指すらかかってないから冗談なのは分かるんだけどさ。
「先生みたいに運動不足なもちもちにだけはならんでしょ、どう考えても。ホシノちゃん何だかんだで結構鍛えられてるし、そのまま縦に伸びるんじゃない?」
「あ~……」
「やめてやれよ……大人の女はその辺敏感になるんだから……俺も何度カミさんにどやされたか……」
チョイ悪犬親父が尻に敷かれたしょんぼりわんこに変身してるじゃん。ざまぁ。
それもこれも私にわぎゅーさんを隠してたのが悪いんだよ!
「ま、とりあえずお腹いっぱいになるまで食べてからにしよっか。この後は寿司ネタを狙う情報収集で歩き回るんだしさ」
「そだね~、じゃあおじさんサーロイン追加で~」
「ついでにそろそろ白米もちょーだい。シアちゃん盛りで!」
「おじさん盛りも~」
「馬鹿娘は良いとして、おじさん盛りって何だよ……」
「小さなお椀一杯分くらい~」
思ったより入らないんだねぇホシノちゃん。
ヒナちゃんよりはガッツリ食耐性あるけど、量自体は然程でもない感じ?
「ほれ嬢ちゃん、こんくらいでいいか?」
「大丈夫~」
「んで馬鹿娘、ほれ」
「いやマスター、あんたどんどん適当になるのやめよ? 仮にも客に家庭用炊飯ジャーそのまま出すのはどーよ?」
「どうせおかわりおかわり連呼すんだからそっから好きによそえ。珍しく予約なんぞ入れてきたからわざわざ用意してやったんだ」
「うわひっど……飲食店のマスターとは思えぬこの所業……!」
「素直によそいながら言う~?」
「つやつやの白米に罪はないもん」
美味しい肉に白米は正義。
「うへ、お腹いっぱい……もう入らないよ~」
「ご立派なぽんぽんになられましたな、ホシノお嬢様……!」
「美味しかったですわよじいや~」
「せめてばあやって言って? なんでシロコちゃんもホシノちゃんも性別無視すんの?」
小さくてスレンダー体系なせいか、余計にぽっこり膨らんで見えるわホシノちゃんったら。
さすさすしてみたらぎっしり詰まってる感がすげぇ。
「そういやよ、さっきテーブル席の客からお嬢ちゃんとシアにってコレ預かったんだが心当たりあるか?」
「…………!!」
「そのヒビ割れ柄の封筒と言ったら黒さんじゃん。え、いつの間に来てたの?」
「………………黒、さん?」
「お前らのすぐ後だな。肉も食べずに静かにコーヒーばっかり飲んでたぞ」
「黒さん? え、何シアちゃん、アイツと知り合いなの?」
「何かたまに指名手配犯の情報くれたりする割と愉快な……オニーサン?」
「やめなよ、ロクでもないヤツだよ、アレ」
うん。否定できん。
「ロクでも無いのはその通りだわ。指名手配されてたロボット集団相手に私が暴れまわってるのを、妙な恰好した人らと一緒にビルの上で観戦して盛り上がってたし」
「…………うん?」
「ロボットを潰したり蹴り飛ばしたりする度に『クククッ、素晴らしい!』とか『美しい放物線だ!』とか『インスピレーションが沸いてきましたね』とか『そういうこったァ!』とか、それはまぁ色々と褒めてくれてたのが聞こえてきてたから、ちょっと面白かったけど」
「……………………ん~~~~~?」
ホシノちゃんったら凄い微妙な顔で首捻ってるけど何やのん。
ロクでもない大人なのは間違いないけど、今んとこ私に実害無いしなぁ。
妙な気配を出したら、そん時は改めて考えればよろしい。
「ん~~~~~~~…………取引の時もやたらシアちゃん推してたし……え、そゆこと?」
「何かあったん? 処す? 処す??」
「……保留!」
たかなし ほしの(いち)
おなか:ぽっこり
おにく:とけた
せんせい:うへ、もふさんどされてたいへんだね~
しんぴ:おや? しんぴ の ようす が……?
くろふく(さん)
ふうとう:すいさんぶつみずあげちてん ひあ(ちず)
こーひー:すてーきはうすにしてはなかなか
おにく:くっくっく…………
げまとりあ(-1)(いち)
おくじょう:てーぶるせっとじゅんびずみ
せいしつ:おーでぃえんす
おてがみ:ぎろんちゅう
おくりもの:せっけいちゅう