『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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いつもより文字数少なめです。
もしかしたら加筆するかもしれません。


第三話。ドキッ♡ 男子禁制入浴タイムは波乱がいっぱい?

『俺達の物語になってください』

 

あれはどういう意味なんだろう‼︎

 

6月21日、私はこの日のことをずっと忘れないと思う。

生まれて初めての告白をされた日。ううん、告白自体はいろんな人からされたことがあるから初めてじゃないけど。この日にされた『告白』は今までされたどの告白よりも、私の心を乱していた。

私は大混乱なまま、誰もいない生徒会室の中をきょろきょろと見渡していた。

モンジ君はさっさ『俺の物語になってください』と言った。

どういう意味で言ったんだろう?

もしかして、わたしが……その、普通の人間じゃないことに、とっくに気づかれていた?

もしかして、実はモンジ君はわたしがそういう立場の人だって知ってたの?

 

 

いつから? どうして? 誰から知らされたの?

 

わからない。わからない。わからないよう〜〜。

 

今までそんな素振りは見せたことなかったのに。

従姉妹である『終わらない(エンドレス)千夜一夜(シェラザード)』との戦いで何かに気づいたの?

それともわたしの家に来た時に何か勘付いた?

確かに、高校生で一人暮らししてるなんて普通じゃないからおかしいと思われるのは解る。でもわたしの場合、本当に両親がいるから、キリカちゃんみたいに人間に寄生している訳ではないから、だから……そこからでは足は付かないはず……なのに。

そもそも、わたしのことを知っているのだとしたら……『何』として知っているのだろう?

 

 

「うーん……ぶくぶく……」

 

わたしはホテルにある大浴場に浸かって、ぶくぶくと顔半分をお湯の中に沈ませていた。

綺麗な海や空が一望できるスペース。ここでならいろいろ考えがまとまりそうだ、と思ったからだ。

ビーチバレーをきりあげたわたし達は各々ホテルに戻って休憩することにしたのだ。

瑞江ちゃんと鳴央ちゃんはモンジ君のとこに残ったみたいだけど、音央ちゃん、キリカちゃん、アリサちゃん、理亜()ちゃん、スナオちゃん、アラン君は各自に与えられた部屋に戻っていった。

わたしは汗を流したいなー、なんて思ったから浴場に来たんだけど……きっと、一人になっていろいろ考えたかったって想いもどこかにあったんだと思う。

今回の旅行は、とっても楽しい。みんなが全力で楽しもうとしてくれるし。

だけど、楽しい反面、どうしても気になってしまうのだ。

モンジ君の告白が……。

 

「どうしたものかなぁ。やっぱモンジ君に、告白の返事しないとまずいよねぇ……」

 

バレーでもそうだったけど、昔に比べて彼は女の子の扱い方が上手くなっていた。

いつもは昔と比べて引いたような態度をとってるんだけど、ここ一番の時の仕草や言動は女の子の心を惹きつけるのだ。そのギャップにやられる子は多いんだと思う。

モンジ君といえば……そこで思い出すのは、彼と一緒に帰ったあの日。

わたしをお姫様抱っこして街中を走り周った彼の姿だ。

 

男の子に抱き抱えられるなんていう経験はなく、しかも……女の子なら誰もが憧れるお姫様抱っこ。

彼に名前を呼ばれただけで、頭がぼーっとして。彼の言うことなら何でも聞きたくなるあの感覚。

今、思い出しただけでも顔が真っ赤になるのが自分でも解る。

な、なんでわたし、彼に逆らえなかったんだろう?

あの頃からだ。彼のことを意識し始めたのは。異性という意味ではなく、こっち側の人間として。わたしと同じロアと関わってしまった人間として。

その頃から、彼の姿を目で追うようになっていた。

 

「うーん、そういう意味でなら、気になるんだけど」

 

嫌いではない。むしろ、わりと好き。

比較的悪くないっていう感じだ。全く脈がないわけではなく、異性として、恋愛対象としてはわりとありかも? みたいな。

これからちゃんと育っていく熱さがある……そんな感じだ。

 

「でもにゃー……色んな女の子と仲良しだしにゃー……ぶくぶく……」

 

今日来ている女の子達だってほとんどは彼絡みだし。

妹ちゃんなんて、露骨に『兄さんは私のです!』オーラ出していたし。それはそれで可愛いんだけど……なーんて思ってしまうのは告白された余裕からなのかな? だとしたらわたしは嫌な子だよねー、なんて自己険悪して。

 

「うにゃー」

 

浴槽の中でゴロゴロしていると。

ガラッとドアが開いて女の子が入ってきた。

 

「うわぁ、本当に凄ーい! 広ーい大浴場だね。アラン君やモンジ君がいたら大欲情しちゃうね!」

 

赤い綺麗な髪を靡かして、胸元に巻かれたタオルにはお見事過ぎる谷間が出来ていた。

うーん、やっぱ大きいなー。肩こりそうだね。でもわたしよりは楽そうかな?

 

「あは、こんにちは、詩穂先輩っ」

 

「あ、さっきぶりだね、キリちゃんっ」

 

体にバスタオルを巻いて手をパタパタ振ってくれるのは、仁藤キリカちゃんだ。

ロア界隈でも五指に入るほど、胡散臭くて侮っちゃいけない『魔女』のロア。

 

「お部屋で休んでいなくていいのん?」

 

「大浴場が凄い! って聞いたから見に来たのです」

 

ザバーッ、と掛け湯をしながら辺りをきょろきょろ見渡すキリカちゃん。

その体形は女のわたしから見てもセクシーで。そんなキリカちゃんに抱きつかれたらモンジ君が欲情してしまうのも解る気がする。大きさとかではなく、バランスで勝負! みたいな。

そんなスタイルを持つのがキリカちゃんなのだ。

 

「綺麗な海、綺麗な空、そして綺麗な先輩の体ゲットですねっ! モンジ君が食べたくなるのも解るなー、先輩ってば」

 

「ふふっ、ありがとねん♪」

 

同じようなことをキリちゃんも考えていたんだね。

キリカちゃんはそのまま湯船に入ると、わたしの隣にスススッとやって来た。

 

「ふむ。ボイン祭りになりそうな予感だぜ」

 

突然、そんな声が聞こえて。洗い場を見ると、いつの間に入って来たのだろう?

そこには女の子がいた。綺麗な銀髪をこれでもか! ってくらい伸ばした長い髪の女の子が。

……ついさっきまではわたし一人しかいなかったのに。

 

「洗わないで入っていいのかよ、キリカ?」

 

「こうゆう温泉系では掛け湯をすれば入っていいんだよアリサちゃん」

 

ワシャワシャと髪を洗いながら、そうキリカちゃんに告げるアリサちゃん。

あんなに長い髪だと、洗うの大変だろうなー。

 

「よう、『管理人』。いつの間にかお邪魔してその体を満喫させて貰ったぜ」

 

「うわぁっ、そんなことされちゃったのね」

 

彼女は『予兆の魔女アリシエル』。通称アリサ。

このロア界隈でも五指に入るほど、意地悪っぽくて侮っちゃいけない『魔女』だ。

 

「詩穂先輩がうわぁっ、って言ってるよ、アリサちゃん」

 

「ま、お前さんみたいな胡散臭い魔女がいきなり風呂に来れば、そりゃ嫌だろうさ。食べられるんじゃないか、って。色んな意味で」

 

「あははは! そりゃ、食べちゃいたいくらい素敵な体だけどね、色んな意味で。でも、詩穂先輩と私は前からとっくに仲良しだから、やっぱり意地悪で有名なアリサちゃんに対しての『うわぁっ』なんだと思うよ?」

 

「つまり、そんな私たち魔女が二人して来れば、誰でも嫌ってことか」

 

「かもしれないね」

 

ニコニコニヤニヤ笑いながら言い合う二人を見て、私は思わず苦笑いをしてしまった。

 

「わたしみたいな子は、キリカちゃんやアリサちゃんみたいな子達には嫌がられるかなー、と思っていたけどね?」

 

「あはははっ! 私は平気ですよ、詩穂先輩。私とは仲良く遊んでくれますしね?」

 

「私だって平気だぜ? お前らみたいな胡散臭くて猫被ってる連中は好きだしな」

 

「悪い魔女さん二人にそう思って貰えるならいいのかな?」

 

二人の事を知っているロアやハーフロア、ロアの関係者なら絶対一緒に入りたくないかもしれないね。

二人ともロアの界隈では五指に入る、胡散臭くて、侮れなくて、油断出来ない、とーっても恐ろしい『魔女』だしね。

 

「こっちに来るといいよ、アリサっちも。ここの温泉にはきっと胸がおっきくなる効果もあったりするよん」

 

「……それは本当ですか?」

 

「うん、多分だけどねー」

 

「私はこのサイズでいいんだよ。お前さんたちみたいにボインボインしてると、新しいマスターにエロい目で見られまくるからな」

 

「……それも本当ですか?(ペタペタ)」

 

「あー、でもアリサちゃん。モンジ君はこないだ、私の胸をバッチリ見られるタイミングで我慢したくらいだから、もしかしたら小さい方が好きなのかもしれないよ?」

 

「……やっぱり、そうなんでしょうか?」

 

「それはないんじゃないか? キリカの話しを聞いてる限りだと、一番好きなのはやっぱそこの『管理人』なんだろ? ってか、バッチリ見られるタイミングってなんだよ?」

 

「……やっぱり、小さい方が好きなんでしょうか?」

 

「んふふ、そこは二人だけの秘密だね」

 

「なるほどな。さすがは胡散臭くて油断出来ない魔女だよな。人に言えないことをやっているとは……ところでキリカ。……さっきから気になっていたんだが」

 

「あはははっ! 意地悪で侮れない魔女のアリサちゃんがいるから言えないんだよー。ところで私もさっきからちょっろ〜と気になってたんだけど……」

 

「「貴女(お前さん)誰(だ)?」」

 

二人の視線は私の隣に向けられた。

今、この浴室にいるのは私、キリカちゃん、アリサちゃん三人のはず。

なのに、さっきからいるはずがない声が聞こえてきたのだ。

キリカちゃんの視線は私の左隣に向いている。

きっと、そこに誰かがいるのだろう。

ジジジ、と何やら機械音が鳴ったと思ったその時。誰もいないはずの空間から人が突然現れた。

うわぁ、ビックリした! 現れたのは……女の子?

緑髪、短髪の小さな全裸の女の子が突然現れた。

その手には何故か……狙撃銃を持っているけど。あれってモデルガンだよね?

まさか、本物? ってそんな訳ないよね?

 

「えー………っと、どちら様?」

 

「私は一発の銃弾。銃弾は人の名を持たない。故に答えられない。……災厄の時が迫っています。もうすぐ、災厄が復活します。気をつけてください。

災厄は貴女のすぐ側にある、そう、『風』は言っています」

 

えっと……何を言ってるの、この子?

会話になってないよ。

 

「それと……キンジさんにはもう近づかないでください。これ以上キンジさんを巻き込まないでください。もし、巻き込んだら……風穴開けますよ?」

 

そう言い放ち、手元にある狙撃銃を構えてくる緑髪の少女。

え? 何これ? 何でわたし、銃口を向けられているの?

 

「うわぁぁぁあああ!!! 見て見てアリサちゃん。緑髪のロリっ子が全裸で詩穂先輩に銃口向けてるよ!

これはあれだねー! 美味しい光景ってやつだよねー!」

 

「ああ、凄まじい光景だよな。エロゲでもこんなシュチュなかなかないんじゃないか? あの銃、ドラグノフだろ? 狙撃手が温泉で全裸になって銃を構える姿とか……萌えないか?」

 

ちょっと二人とも何言ってんの? 助けてよ⁉︎

 

「……今日は警告だけにしておきます。ですが、もしキンジさんに何かあれば、その時は……私は貴女達を撃ち抜きます」

 

そう言って銃を下ろして湯船に入る謎っ子ちゃん。

ひぇぇぇん怖過ぎるよー!!!!!

キリカちゃんやアリサちゃんの魔女コンビは頼りにならないし、味方いないし。

もう、嫌だ!

上がろうかな。

そう思っていた私に緑髪の女の子が話しかけてきた。

 

「ところでさっきの話しは本当ですか?」

 

さっきの話し?

えーっと……どのことを言ってるのかなー?

 

「この温泉には本当に胸を大きくする成分が含まれているのですか?」

 

そう問いかけてくる彼女の目は真剣だった。

何やらその目には凄まじい覚悟があるような気がした私はコクコクと首を縦に振っていた。

……そうしないと撃たれる気がした。

 

「う、うん、わたしはそう聞いた。お母さんに。昔からよくここの温泉入ってたし……」

 

そう言ったわたしを見つめる緑髪の子。その視線はある部分を凝視して。

 

「……まいりました」

 

声のトーンは下がってしまった。

表情は無表情なんだけど、若干、落ち込んでいるような。生徒会長をやってるだけあり、色んな人を見ているわたしはこの子の表情の些細な変化に気づけた。

 

「だ、大丈夫だよ! まだまだこれからだよ!」

 

いけない。励まさないと。

なんかよくわからないけど励まさないと。

 

「そうそう大丈夫だよ。女の子は胸の大きさじゃないから!」

 

ほら、キリカちゃんもそう言ってるよ?

キリカちゃんに視線を向けた女の子。そして、自分の手を自身の胸に当ててペタペタ触ると。

 

「……」

 

む、無言になっちゃったーーー!!!!!

ど、どうしよう。これ。

この雰囲気どうしたらいいの? 誰か助けてーーー!!!!!

 

「胸が小さくても大丈夫だぜ。世の中には胸が小さい女が好きっていう特殊な思考をした奴もいるし。きっと、わたし達の新しいマスターもそんな嗜好している。そう予兆したぜ!」

 

「……確かにキンジさんなら胸の有り無し関係なさそうですね。アリアさんみたいな体型でもなれ(ヒスれ)ますし」

 

おおっ! アリサちゃんの言葉で元気が出たみたいだ!

よかった。よかったよー。何がよかったのかよくわからないけどよかったー。

安心した私にキリカちゃんが話しかけてきた。

 

「詩穂先輩よかったですねー。撃たれなくて。お話ししようと思ってきただけなのにあやうく惨劇の現場に居合わせるところだったよー。アリサちゃんなら撃たれてもいいけど」

 

「私も撃たれるのは勘弁だぜ。そもそも戦いに来たわけではないしな。いくらこいつがある業界では有名な狙撃手(スナイパー)で、私やキリカがいるとしても、今の『管理人』には敵わないからな」

 

「ま、そうだよね」

 

 

……あれ?

 

 

 

「……えっと、それって謙遜か何か?」

 

「いんや、事実さ」

 

「ほらね。やっぱり知らないんだよ」

 

魔女である二人は二人だけで何やら納得していた。そんな魔女達のニヤついた顔を見ていた私はとても不安になった。




完結まで______残り98話。
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