『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします。


第十二話。悪魔召喚士、キンジ?ドキドキ添い寝は命懸け⁉︎

2010年5月12日午後19時。

 

一之江と別れた後、俺は自室のベッドの上でDフォンを眺めていた。

私立十二宮中学校からの帰り道、一之江から『貴方がすっかり勘違いしているのでなければ、Dフォンが壊れているかもですね』と言われたりもしたが、もし壊れているのだとしたら、初期不良だ。

交換とか、返品とかできるのか?

 

「うーん……」

 

ベッドに横になり仰向けになりながら天井をDフォーン越しに眺めつつ、俺が唸っていると______

 

「兄さん、夕飯ですよ」

 

「あー、すぐ行く」

 

わざわざ部屋の前まで来くれた従姉妹の理亜がドア越しに声をかけてくれた。

呼びに来させておいて何だが、ドア越しではなく部屋の中に入ってくればいいのにな。

そんな事を思いつつ、体を起こした俺は『そう言えば……』とドア越しに会話している理亜が十二宮中学に通っている事を思い出し声をかけた。

 

「そうだ理亜?」

 

「はい、なんですか兄さん?」

 

返事を受けて立ち去ろうとした理亜がドア越しに聞いてきた。俺は理亜にふと思った事を聞いてみた。

 

「『花子さん』の噂って知ってるか?」

 

「花子さん……?」

 

「ああ、学校の怪談でよく聞くアレだ」

 

「はい。そちらなら聞いた事ありますよ。小学校のトイレなどによく出るとか」

 

ん?あれ?

 

「理亜が通ってる中学にも、その噂があるはずなんだが」

 

「え、そうなんですか?

……2年間通っていますが、聞いたことはありませんね……」

 

その口調からして、本当に何も知らないようだ。一文字が通わなくなってからまだ一年ちょっとしか経過していないが、その間に噂が廃れた、という事だろうか。

駄目だ、解らん。

ヒステリアモードが切れている今の俺ではさっぱり解らん。なので何故『花子さん』の噂が突然消えたのかについては俺よりも都市伝説(こういった事)に詳しい、一之江やキリカにでも聞いてみるか。

そう思っているとドア越しから理亜が聞いてきた。

 

「花子さんの噂がどうかしましたか?」

 

「ちょっと最近、民俗学に興味があっただけだ。ありがとうな」

 

「兄さんが、民俗学?

どんな学問かご存知なんですか?」

 

「あー、いや、都市伝説を調べたり、解決したり……みたいな」

 

「解決……?

兄さんつかぬ事を聞きますが最近、変わった事とかありませんでした?」

 

「変わった事?」

 

「ええ。例えば、見知らぬ女の子から何か渡されたり(・・・・・)、何かに追いかけられたり(・・・・・・・・)、何かにとり憑かれたり(・・・・・)……しませんでしたか?」

 

理亜の言葉に心臓が鷲掴みされたように呼吸が早くなり、冷や汗も出てきた。

そんな……という言葉やまさか理亜が?

という言葉が喉から出そうになる。

 

(コイツ、何か知ってるのか?

いつからだ⁉︎

一体いつから彼女は解っていたんだ。

俺が抱えている問題に……)

 

「……何もなかった、ぞ」

 

内心では動揺しながら、しかし表面上は何もないかのように振舞って俺はそう返事をした。

 

「……そうですか。変な質問してすみません。

すぐに下りてきてくださいね、ご飯冷めてしまいます」

 

「ああ」

 

彼女がドアの前から去っていく気配を感じつつ、俺は考えもしなかった可能性を考える。

もしかしたら俺や一之江を狙う『ロア喰い』の正体はキリカや詩穂先輩ではなく、『魔女』の標的(ターゲット)になっている俺にもっとも近い人物で、すぐ側にいる存在……従姉妹の須藤理亜ではないのか、という事を。

 

2010年5月12日。午後23時50分。

 

 

家族で夕飯を取った後、俺はインターネットで『花子さん』や『魔女』について検索してみた。

どちらも大量にヒットするし、かなり詳しい情報もたくさん見つかる。

書籍や映画もあったりするくらいにメジャーな都市伝説だと解る。

それと似たような噂の『トイレの花子さん』が一文字の出身校から、消えている……

これはどういう事なんだろうか?

 

「……解らん。明日一之江と相談してみるか」

 

理亜の事もその時聞いてみよう。

そう思った俺はベッドに寝転がりながら、Dフォンの一つをカチカチと弄った。

このDフォンだが、何気に『8番目のセカイ』に繋がらないのだ。

それも2台ともな。本当に初期不良なのかもな。

その辺りの事も一之江に相談してみるか。

 

「あの時は『人形』を読み取ったから……一之江に繋がったんだよな」

 

俺とアイツにはそういう『因果』と呼ばれる縁があったという事なんだが、そう考えると俺と『花子さん』には縁がなかったという事にもなる。

それならそれで別のコードを探すっていう流れになるからいいっちゃいいんだが……などと考えながらDフォンを弄っていると、データフォルダにヤシロちゃんと会った日に、あの時撮った人形の写真が残っていた。

 

「ああ、ここに記録されるのか」

 

写真に写っているのは、校門にひっそりと佇む、寂しそうな人形の姿。

 

「これが一之江とはなあ……」

 

正確には、一之江のロア『メリーズドール』の『コード』だが。

とてもこの人形と一之江が同一人物だとは思えない。

一之江の印象は、クールな無口お嬢様からクールな面白毒吐き娘へとその印象は変わっているからな、俺の中では。

 

なんの気なしに、そのデータを読み込んでみる。

と、その時。

 

 

 

 

ピロピロリーン♪

 

 

 

 

 

 

Dフォンから軽快な音がなった瞬間。

俺は背後から恐ろしく冷たい気配を感じ取った。

直後、Dフォンが熱くなり、赤く明減を、開始した。

 

(この感じ……まさか⁉︎)

 

「……ふぅ」

 

その溜息を耳のすぐ後ろから聞いた時、ゾクッと背筋が凍り付いた。

 

「……もしもし私よ。今、貴方の後ろにいるの……」

 

「え、あ、あれ?も、もしかして……」

 

このDフォンの機能がなんとなく解った瞬間だった。

 

「そのDフォンは『百物語』の主人公の特別仕様のようですね。貴方はそうやって、攻略した都市伝説のデータを呼び出し、私達ロアを召喚出来るのかもしれません」

 

「す、凄えな!悪魔召喚士みたいだなー俺」

 

「ええ、そうですね……」

 

Dフォンはめちゃくちゃ熱いままで、赤い光は今にも『お前、殺されるぞ!』と光り輝いて警告しまくっているが前世で散々、相棒(アリア)から『風穴!』と実銃を向けられていた俺の経験上、このくらいで慌てたりむやみやたらと怖がったりはしない。

こういった相手に対して有効なのは______

気を反らして逃げる。

この一手に尽きる。

 

「しかも我々は、自分の意思に関係なく、無理矢理呼び出されるみたいですね……」

 

地獄の底から響くような、イライラとした声が背後から聞こえる。

そのイライラが俺に向かう前に俺は行動を起こす。

何か物を、気を反らせられる物を投げれば……桃まんを投げれば……って駄目だ。

今手元とに桃まんなんかねえし、桃まんを投げて気を反らす技はアリアにしか使えねえ!

遠山金次(一文字疾風)、絶体絶命……

 

「え、えーと……怒ってるのか?」

 

恐る恐るそう尋ねると、一之江からは______

 

「ベッドで、うとうと幸せ気分でいる時に呼び出されて、マジで殺したい気分満々なんで、是非振り向いて、私を見てくれませんか?」

 

そんな返事が返ってきた。

うわぁ。機嫌悪っ⁉︎

 

「振り向いて、姿を確認するまでが、一之江(メリーズドール)のロアだから、だよな」

 

「ええ。スイッチみたいなものです。『振り向いて確認』したら絶対殺害出来ます。ですが、その行動をしなければ、こうやって後ろにいるままです」

 

絶対殺害ときたよ。

なんとかして命を繋がないと、俺の人生はここで終わる。

 

「……いつまでですか」

 

つい、敬語で聞いてしまったが(タマァ)取られるよりマシだ。

矜持(プライド)?何だそれ、食えんのか?

 

「こういうのは大抵朝までと決まっています。なので、貴方を殺さないと私は家のベッドでぬくぬく寝れないわけです。なので殺す」

 

「丁寧語がいきなり断定になった⁉︎」

 

「殺す」

 

「2度も⁉︎」

 

寝る直前の一之江はかなりの危険人物のようだ。

 

「いやいや、ちょっと待てくれ、一之江」

 

「知らなかったんだから仕方ないと思いますが、知らなかったんだからこそ、2度とやらないように躾けるのって大事だと思いませんか?」

 

「き、きっと2度とやらないと思いますよ」

 

「でも何かの間違いで2度目があるかもしれない場合、その可能性が残っているならやっぱり殺すべきじゃないでしょうか」

 

「い、命は地球より重いんだぞ!」

 

「私の睡眠もそれだけ重いのです」

 

「地球規模の自信満々さだな……」

 

「何か?」

 

「いや、重い。重いですとも」

 

常に背後を取られているというのは、大変マズイ状況だ。

後ろを確認したくてもできないというのは危機管理的にも大変マズイ。

背後に何があるのか、確認しようにも振り向いてうっかり彼女(一之江)の姿を確認してしまったら本当に殺されてしまうかもしれないしな。

もしかしたら、後ろを振り向いて姿を確認したら一之江の意思とは別に、意思とは無関係に殺されるのかもしれん。

ロアというのは、そういう独自のルールに縛られているようだから朝になるまで俺はなんとか生き延びるしかない。

元の世界みたいに防弾物置とかがベランダにあれば一晩中入って過ごすんだがそんな物はないしな。

だから朝までなんとかしてやろう。

なんとなくだが……一之江にはもう誰も殺して欲しくないからな。

 

______グサ。

 

(って痛てえ⁉︎痛てえー⁉︎

背中に何か刺さってるー⁉︎)

 

「何か良い事を考えていい話に持って行こうとする空気を感じました」

 

「痛い!何かチクチクした物が背中をチクチクしてやがる」

 

「優しいツンツン攻撃ですよ。グサグサ」

 

「言葉が全然優しくないんだが……」

 

「ザク、ザクだと弱そうでしょう?」

 

「そうかもしれんが」

 

背後に怖い気配があるが、会話のやり取りは本当にいつもの一之江と同じだ、と判る。

……ロア状態だからと言って性格までは変わらないんだな。

 

「はあ……まあ、仕方ありません。今回だけは特別ですよ。私とのドキドキ添い寝を楽しんで下さい」

 

「……はい?」

 

 

 

 

神様。

一つ聞きたい。

俺が何をした?

何でこんな目に遭わなきゃならないんだ。

あともう一つ。これなんてエロゲですか?

 

 

 

 

 

 

2010年5月13日。午前0時30分。

 

 

そして、それから黙って過ごす事数十分。

 

「起きてますか?」

 

「まあ、な。眠れないからな……」

 

毒舌クール娘とはいえ、一之江は間違いなく美少女と言われる分類に入る。そんな一之江と添い寝しなきゃならないとか、一体どんな罰ゲームなんだよ!

普通の男なら喜んで添い寝したいだろうが、病気(ヒス)持ちにはただの拷問だぞ、これは。

 

「それは良い心がけです。手を出したら殺します」

 

「絶対手は出さん」

 

病気(ヒス)持ちな俺が手を出すわけないだろうが!

それが無くても、一之江の殺します、は信憑性もあるだけに逆らえないしな。

 

「しかし……Dフォンが壊れていない事だけは解ってしまいましたね」

 

「……まあ、な」

 

一之江を不可抗力とはいえ、呼び出せたのがその事実を示している。

多分、俺が持つ2台のDフォンうちの1台、このDフォンは『百物語の主人公』専用のDフォンなんだろう。

Dフォンはそれぞれのロアによって違いがあるのだろう。

様々な制限がかかっていたり、別の機能が付いていたり、な。

 

「まさか取り込んだロアを召喚する能力が、『百物語の主人公』にあるとは思いませんでした。

______ある意味、最強アイテムですね、未来では」

 

そうだな最強だな、未来では、な。

 

今は一之江を呼び出せるだけだが、俺が無事に生き延びれば合計百のロアを呼び出せるはずだ。

 

悪魔召喚士。

 

さっき自分で言った言葉だが、本当にそうなる可能性がある。

ただし、懸念事項もある。

 

「『百物語』の主人公役は他にも百人くらいいたらしいが……」

 

「そうですね、確かに『百物語』の主人公が存在している事は、『8番目のセカイ』にも記載されています」

 

「それなのに、能力は解らなかったのか?」

 

「そこは詳しい内容はありませんでしたから。あるのは、『ロアを統べる可能性がある』というもので……脱落率も高いという事だけが記載されていました」

 

「百人の主人公がいて、その全員が脱落しているって事か?」

 

脱落率100%かよ⁉︎

今まで誰も無事に物語を完成できなかった、完成『不可能』なロアという事か。

 

「はい。そしてそれぞれの物語は詳しく語られませんでしたからね」

 

謎が多い物語でもあるようだな。

あのモードになってない俺さえも最近になって自覚が出たところもあるからな。

何も知らない状態で主人公に選ばれた人や主人公の自覚を持てないままロアにやられた人とかもいたのかもな。

 

「どうにか、無事にやり遂げないとな」

 

「そうですね。私もあっさりやられる主人公に捕らえらた、間抜けな最初のロア、とか言われたら大損です」

 

「失敗したら……そうなるのか」

 

「なので、モンジには見事『百物語』を完成させて貰わなくてはなりません。『素晴らしい主人公と最も縁のあったロア』となれば存在も安泰ですから」

 

一之江に何かしてやれる事はないのかと考えていた俺だったが、こいつ自身の為に何が出来るかを知った。

 

______無事に百個物語を集める事。

 

俺が百物語を完成させれば一之江はもう、他のロアやハーフロアを襲う必要はなくなる。

存在性を世界にアピール出来れば一之江は消えなくて済むのだからな。

そうすれば一之江は戦わなくてもいいんだ。

だから手助けしてやろう。俺は正義の味方にはならないけど______一之江の味方にならなれるから。

 

 

そんな事を考えていた俺だがお約束のようにソレはやって来た。

思えばこれも『主人公のロア』の能力の一つだったのかもな。

 

 

一之江との会話中に微かに甘い香りが部屋の中に漂うのを俺の敏感な嗅覚は感じていた。

 

(それにしても、何で女はこう、甘い匂いとかが身体から出てるんだよ!

一之江からも、背後から良いニオイが……って俺の馬鹿)

 

ああ、ダメだ……なっていく……あのモードに……。

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