原作一巻分のストーリーはひとまずここで終わりです。
2月から2巻の内容に入りたいと思っていますので引き続き応援よろしくお願いします!
ではまた。
「冗談は存在だけにして下さい」
「存在を否定された⁉︎」
「流石にお家に行くと、従姉妹さんが気にするだろうからね。私はお家に帰るよ」
「え? お家って、ええと……」
キリカのような魔女に家と呼ぶべき場所はあるのだろうか。
童話に出てくるような森の中にあるひっそりとした小屋や洋館だろうか?
「この街には長居する事になるみたいだからね。少なくとも残り98個の物語を集めないといけないんでしょう?」
「あ、あー、うん。そうだね。そうなるな」
残り98個。
まだ98個というべきなのか、もう98個というべきなのか。
どちらにしても全て集め終わるまで先は長いな。
「モンジは女を口説くのは得意ですが、それ以外はきちんと教えていかないとなりませんからね。私達の主人公になって貰う為に」
「そうだね。一緒に叩き込んでいこうね、瑞江ちゃん」
「ええ、ザクザクグサグサ叩き込みましょう」
「うんうん。モグモグムシャムシャ叩き込むよ!」
「ははっ、可愛い2人に教えて貰えるなんて光栄だね。
だけど2人が言う言葉の擬音が大変嫌なものな件について、ちょっと異議があるんだけど」
「「却下(です)!」」
2人同時に却下された俺は、肩をがっくりと落としながらもすぐ様2人に話しかける。
すぐめげるだけでは女の子を幸せになんて出来ないからね。
それに、こんなに可愛い2人が俺の側にいてくれたんだ。
俺だけが落ち込んでるわけにはいかないからな。
「よし、それじゃあ帰ろうか!」
直ぐに思考を切り替えて、正面のキリカと背後の一之江に告げる。
「うん。そうだ……あ!」
「うん?
どうしたんだい、キリカ?」
「ちょっとモンジ君に聞きたい事があるんだ」
「私もあります」
黙ってキリカが喋るのを聞いていた一之江がそう告げた。
「瑞江ちゃんも?」
「ええ、おそらくキリカさんと同じ事です。
ですからキリカさんが言って下さい」
「うん。それじゃあ、私が聞くね」
「うん。何かな?」
「モンジ君。
そもそも君って結局、何者なのかな?」
俺に近づいて来ながらキリカは何が面白いのかニコニコ笑って、俺の顔を覗き込んできた。
魔女として、調べずにはいられない興味対象を見る瞳で。
その目で見つめるキリカは、少し機知に富んだ答えを求めているみたいだ。
でも、良かった。それには決まり文句があるからね。
「______ただの高校生だよ。わりと偏差値高めな、
俺がそう答えると、キリカは……
小さく笑ってくれた。良かった。良かった。
俺の背後からも「クスクス」と小さく笑う一之江の声が聞こえる。
「あはははははー!モンジ君ってやっぱり面白い!
うん、うん。君となら色んな物語が見れそうだね」
「そうか。じゃあ今回の件は、これにて一件落着、って事で」
「うん!それじゃまた、学校でね」
「ええ。私がいない時にコード探しとかはしてはいけませんよ」
キリカは、自分が生み出した霧に隠れるように消えて。
一之江は、まるで忍者のように音もなくいなくなっていた。
そして、早朝の公園に一人残された俺は……
「……ふう……どうなるんだろう。本当に」
背伸びをしながら呟いた。
一之江の『メリーズドール』の能力は、かなり半端ないものだった。
キリカの『魔術』や『知識』も、きっと凄いものなんだろう。
そんな2人と共に生きていけるのは心強いし、嬉しいのだが……。
『俺の物語』としては、どうなっていくのだろうか?
『
思うが……まだ能力を把握しきれていない分の不安がある。
まだまだ底が知れない能力という不安が……。
それに、『
普通の百物語なら解る。
だが、101番目の百物語って何だ?
百物語なのに、101番目の時点で異質だろ。
「どうなるんだろうな、本当」
「どういう物語にしていくのか、とっても楽しみだよ。お兄さん」
突然、真横からそう声をかけられて声がした方に振り向くと______
「や、やあ。ヤシロちゃん。おはよう」
俺の真横にヤシロちゃんが立っていた。
「おはよう、お兄さん。上手く2人をたらしこんだね?」
「ヤシロちゃんみたいな年頃の女の子がたらしこんだとか言ってはいけないよ」
「ふふっ、はーい」
ヤシロちゃんは注意すると、素直に返事をしてくれた。
ヤシロちゃんの見た目は7、8歳くらいだが年齢は知らない。
本当の年齢はもしかしたら見た目よりも上なのかもしれないけど、女性に年齢なんて聞けないからね。
まあ、外見は幼女だし幼女枠でいいか。
それにしてもヤシロちゃんのなんと言うか、仕草とか、雰囲気が誰かに似てると思ったらあの人にソックリなんだよなあ。
この前会った時も白い帽子被っていたが、そういう帽子好きなところとかも似ている。
ひょっとして知り合いとか、親戚だったりするのだろうか?
「それでお兄さんはどんな物語を作っていくつもりなの?」
「そうだなあ……かなり難しいんだけど……」
「あれ? 何か思う事があるんだ?」
ヤシロちゃんは不思議そうな声を上げて俺に向き直った。
幼女に不思議そうに見つめられる俺って……なんと言うか。
『この人、ちゃんと考えてたんだ⁉︎』って言われているような気がして何か嫌だな。俺の考え過ぎだとは思うが。
俺もヤシロちゃんを向く形になり、せっかくなのでしゃがみ込んだ。
この角度でもギリギリ顔は見えないが、愛らしい口元は見えた。
「うん。『不可能を可能にする男』の物語はまだ解らないけど『百物語』は終わりのない物語、ネバーエンディングなストーリーにしようかな、と思っているよ」
「ふえ? ハッピーエンド、とかじゃないんだ?」
「それだと全部終わっちゃうからね。キリカも、一之江も。
ハッピーエンドだと彼女達の身が危ないかもしれないだろう?」
ハッピーエンドは一見すると、全てが解決してめでたし、めでたしとなる、と思われるが、俺達ロアからして見ると『存在性』のアピールを終わらせる場所としての意味合いも含まれる。
物語が終われば、俺達ロアは消えるのだから。
「うん、そうかもしれないね」
「だから、俺はこの物語を終わらせない。百の物語を集めても、俺の物語はずっと続けてみせるよ、ヤシロちゃん」
「へえ……」
「百物語なのに、俺は101番目の物語なんだよね? つまり、規格外のハンドレッドワンなわけだ。だから、俺の物語はそのまま繋げてもいいはずだ!」
「出来る、って思ってるの?」
「うん。俺は『不可能を可能にする男』でもあるからね。
だから終わる物語を終わらせないように変えてみせるよ、ヤシロちゃん」
「ぶっ! あははは‼︎」
俺の発言の何処かが、笑いの琴線に触れたらしく大笑いを続けるヤシロちゃん。
「ほんっと、面白いね、お兄さんって」
「そうかな? ヤシロちゃんみたいな可愛い女の子が喜んでくれるのなら良かったよ。
可愛い女の子は笑顔が似合うからね!」
「ふふっ、私まで口説いちゃうんだ。お兄さんったら」
「女性を幸せにするのに、年齢なんて関係ないからねっ!」
ヤシロちゃんに微笑みながらそう伝えると彼女は、身につけている帽子をつい、っとちょっと上げて。
「なら、期待してるよお兄さん。私の事も幸せにしてくれるっ、って」
帽子の下にある、とっても綺麗な顔でニッコリ微笑んでくれた。
「……え?」
だが、やっぱりその帽子の下にある顔に覚えがある気がして、俺は戸惑う。
「お兄さんのDフォンを、『8番目のセカイ』に接続出来るようにしといたよ」
「え、あ、ありがとう」
「ふふっ、それじゃあねお兄さん。バイバイっ」
ヤシロちゃんはそのまま手を振ると、スーっと空気に溶け込むように消えてしまった。
ロアには、瞬間移動や突然消える能力が標準装備されているのだろうか。
「……帰るか」
一人公園に置いてけぼりにされた俺はランニングしながら公園を後にした。
家の近くに帰ってくると、ヒステリアモードが切れた俺は
(ヒス俺の馬鹿野朗ー‼︎
何やっちゃってくれてんの⁉︎
何が「俺の大事な物語だよ」だ!
何が「女性を幸せにするのに年齢なんて関係ない」だ!
ああ、もう……死にてえ。
誰か俺にもう一度『羅刹』とか、『メリーさん電話』をかけてくれー!
糞、朝っぱらから変な女に『死ぬ』とか言われて、キスされてヒスった挙句に、魔女に襲われてプロポーズしちまうとか。ああ、チキショウー!二度寝してやるー‼︎)
一人、内心で絶叫していると通りかかる人々に不審者を見る目で見つめられた。
ああ、なんつうか……不幸だ。
『幸せの前兆』とかの加護なんて嘘だな。
朝から女子達に絡まれるとか不幸としかいえんし。
プロポーズとか、誤解しか与えてないしな。
その後、帰宅した俺は宣言通りに二度寝したが、夢の中で和服を着た少女に話しかけらせるという不思議な夢を見る事になる。だが俺はその夢が新たな騒動の始まりだという事に、この時、まだ気づかずにいた。
原作一巻 完。
後日、後日編及び番外編を投稿予定。