『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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101番目の百物語 畏集いし百鬼夜行を書いているbiwanoshinさんとの初コラボです。
あちらは完全オリジナルの101番目の百物語ですので、ぜひ一度読んでみるといいんじゃないかなー、という宣伝しときます。


コラボ編。biwanoshinコラボ
コラボ編① 逢う魔が時


2010年6月16日。コンビニ近くの路上にて。

 

 

それはある日の夕方に起きた。

不思議な夢を見た事から始まった『神隠し』事件が解決し、境山ワンダーパークに行ったあの日から2日が過ぎたある日の夕方。

学校から戻った俺は近所にあるコンビニを目指して歩き慣れた道を歩いていた。

時刻は午後6時。

西の空に夕焼けの赤さが残るも、ふと空を見上げるとその赤さもやがて失う。

藍色の空が広がっていく時間帯でもある。

 

空を見上げながら思うのはこの世界で出会った少女達のこと。

始まりは……そう。

目覚めた俺が、クラスメイトの仁藤キリカという少女と都市伝説のトークをしたことから全てが始まった。

実体化した都市伝説。

通称『ロア』と呼ばる都市伝説のオバケ、『呪言人形』のロア。

『月隠のメリーズドール』である一之江瑞江に狙われて襲われたり。

親友だと思っていた少女が、『最悪の魔女』。

『ロア喰い』こと、『魔女喰いの魔女・ニトゥレスト』であって、再び襲われたり。

不思議な夢を見たと思ったら先輩から『神隠し』の調査を依頼されて。

『人喰い村』に紛れ込んで死人や人喰い村のロアに襲われたり。

中学時代の友人が神隠しを起こしていた妖精のロアで、妖精と入れ替わった本物の彼女がずっと神隠しを起こしていたり。

何も知らない妖精は真実を知って消えようとしたりしていたり。

と、そんな怒涛の展開がこの日の数日前まであった。

今は落ち着いて。

そんな彼女らと仲良くしていた。

まあ、仲良くと言っても。

普通に会話するだけだが……普段の俺は。

残念な事になって(・・)しまうと、あっちの俺は自重しないので彼女達にいろいろやらかさないか、いつもビクビクしながらならないように過ごしている。

特に今日は大変だった。

神隠しを起こした少女が転入生として俺が通う学園、『夜坂学園』に入学したからな。

困った事に悩まし過ぎる豊かな胸を持つ彼女はヒステリア地雷の塊だった。

いつ爆破してもおかしくないプロモーションを誇る彼女はヒステリアモードを持つ俺の天敵と言っても過言ではない。

 

「……凄かったなぁ」

 

彼女の豊か過ぎる胸元を思い出してしまう。

D……いや、Eは楽々いってるな。

戦艦で例えると戦艦クラスのキリカを楽々と越していた。

弩級戦艦胸を持つ音央と同じくらいの大きさだ。

 

(まあ、元々同じ存在だったという事もあるから……同じなのは当然かぁ。

って、何考えてんだ俺は……いかん、ヒスる)

 

ヒステリアモードになりたくない俺は何とか自重する。

と、そんなバカな事を考えながら角を曲がったその時だった。

 

「ねえ、お兄さん。『逢う魔が時』って知ってる?」

 

呼ばれて背後を振り返ると、そこにはヤシロちゃんが立っていた。

いつもの白い帽子に、真っ白なワンピース。それに白い大きな傘を差している。

 

「久しぶり、ヤシロちゃん」

 

「うん、久しぶりだね」

 

「こんな時間にどうしたんだ? ヤシロちゃん」

 

まだ明るい時間帯とはいえ、ヤシロちゃんみたいな可愛い小さな女の子が一人で出歩いているのを見ると、心配になる。昨今はいろいろ危ないからな。

日が出てるとはいえ、危険がいつあるかなんて誰にも解らないしな。

 

「わたしまで心配してくれるなんて、お兄さんって本当スケコマシだよね」

 

「うぐっ」

 

一之江とかに散々言われてるが、違う……と思いたい。俺はスケコマシではない。

ただ、小さな女の子を放っておけない善良な小市民だ。

 

「最近、声かけ事案とかってあるけどもしかして……お兄さんって」

 

「違う! 俺は普通の一般人だ。小さな女の子が好きとかそんな事はねえ!」

 

「うん、解ってるよ。お兄さんは『逸般人』でしょ? 『逸般人』」

 

あれ? 何か知らんが思いっきりディスられてるような気がするのはなんでだろうな。

 

「それでね。こんな日の夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わる時刻。黄昏時は魔物に遭遇する、あるいは大きな災禍を蒙ると信じられているんだよ」

 

「災禍?」

 

「うん。大禍時とも言うけど一般的にはこう呼ばれているよ?

『逢う魔が時』って」

 

「逢う魔が時?」

 

さっきも言っていたが、どういう意味だ?

俺が疑問に思っていると、ヤシロちゃんが直ぐに説明してくれた。

 

「逢う魔が時っていうのはね、読んで字の如く、「妖怪、幽霊など怪しいものに出会いそうな時間」、もしくは「著しく不吉な時間」を表していて、昼間の妖怪が出難い時間帯からいよいよ彼ら『妖』や『魔物』の本領発揮といった時間となることを表しているんだよ。逢魔時の風情を描いたものとして、鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』が有名だね? それは夕暮れ時に実体化しようとしている魑魅魍魎を表しているとも言われているよ。

まあ、簡単に言うと不吉が起きる兆候だね」

 

「不吉……?」

 

「うん。わたしが知る都市伝説はまたちょっと違うんだけどね。

でね、何でこんな話をしているかというと……お兄さんはこのまま進めばその不吉な兆候に出くわすことになるの」

 

「うん? 不吉な兆候に出くわす?」

 

「そう。だからこの先に進めば、お兄さんは『主人公』として異界の怪異に挑むことになるよ?」

 

「主人公として……?」

 

「その結果、いつもより大変な目に遭ったり、死んだりするかもしれないけど。今なら引き返せばそうならなくてすむよ?」

 

「そうか。わざわざ教えに来てくれたのか?

ありがとうな、ヤシロちゃん」

 

「うん。わたしはお兄さんのことを気に入ってるからね、だからなのか。妹にお兄さんを取られるのがちょっと嫌だなー、なんて思っちゃたよ。

おかしいよね、わたし」

 

「いや、おかしくはないさ。それよりヤシロちゃんには妹がいるのか?」

 

「うん。わたしも最近知ったんだけどね。後2年くらいしたら嫌でもみんなもその存在を知ることになると思うよ?」

 

「うん? 2年後に何かあるのか」

 

「ふふふっ、2年後のお楽しみだよ、お兄さんっ!」

 

ヤシロちゃんの表情は帽子に隠れているせいか見えない。

ただ、その声色から何か良からぬ事が起きるというのは伝わってきた。

 

「で、話を戻すけどこのまま進めばお兄さんは大変な目に遭うことになるけどどうする?」

 

「そっか。じゃあ、引き返すか」

 

「あれ、主人公らしく先に進むじゃないんだ?」

 

「『行く』か『行かない』かを決めるのも主人公の特権だからな。

選択肢を選んで進むのも主人公の醍醐味だろ?」

 

「ふえ? その答えは予想外だったよ。流石はお兄さん。理を、因果を壊してしまう不可能を可能にしてしまう(・・・・・)男らしい意外な行動だねっ!」

 

プログラムのバグのような発言をするヤシロちゃん。

 

「ふふっ、まあ、今のお兄さんならそうするかもなぁー、とは思ってたけどね。

そっか。それじゃ、気をつけて帰っ……⁉︎」

 

ヤシロちゃんが言葉を言い終わる前に、ソレ(・・)は現れた。

俺とヤシロちゃんを囲むように空間が渦巻き、その渦から白い手のようなものや、人の手じゃない鬼の手のような化け物の手が現れた。

ニョッキ、と何もない空間から無数の手が現れるその姿はかなり不気味だ。

 

「……まさか、わたしの預言が外れた⁉︎

ううん、外されたんだね、流石はお兄さん。

不可能を可能にしてしまう男、だね!」

 

「言ってる意味がよく解らないんだが、この状況は一体?」

 

「ふふっ、どうやらお兄さんは逃げられないみたいだよ?

お兄さん一人を攫う為に百鬼の力を使うなんて……あの子もお兄さんが気になるんだね!」

 

「なっ⁉︎ ちょっ、は、離せ______!」

 

ヤシロちゃんの言葉通り、無数の手が伸びてきて、俺は巨大な鬼の手に捕まり、渦巻いた異空間の中に吸い込まれてしまう。

 

ズブズブと足の先から異空間の穴に吸い込まれていき、やがて抵抗むなしく俺は巨大な鬼の手に握られたまま、異空間の穴に吸い込まれてしまった。

吸い込まれていく最中、ヤシロちゃんの言葉が聞こえたような気がした。

理由は解らないが、頭の思考力が低下し、瞼が重くなっていき俺の意識はそこでプツリと途切れてしまった。

 

「ふふっ……予想外な行動を取られたけど、お兄さんがあっちの物語の中でどういった活躍をするのか楽しみだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

2010年5月20日。

 

目を覚ますと俺は知らない場所にいた。

最初に目に入ったのは鉄筋コンクリートの建物。

そして、門と思わしきもの。

そこには、『◯◯県立八霧高等学校』と刻まれている。

そう、何故か知らんが俺は身に覚えがない学校の校門前に立っていた。

校舎はパッとみ、どこの町にもある鉄筋コンクリート建ての普通の校舎だ。

これといって目立つものはないが、校舎には垂れ幕が下がっており、『祝! 射撃部 全国大会出場!』といった文字が書かれている。

 

「射撃部……?

そんなものがあるってことは……武偵みたいな戦闘職を育成する教育機関か?」

 

射撃と聞くと、やはり思い出すのは前世での出来事。

戦闘職、武偵を輩出する専門総合教育機関、『東京武偵高』に通っていただけあって。

俺はほぼ毎日のように銃を撃ちあっていた。

一年の三学期までは強襲科(アサルト)のSランクに格付けされていて、当時は将来の首席候補生とまで言われいた。

まあ、いろいろあって三学期の途中からは探偵科(インケスタ)に転科したりしたわけだが。

銃の扱いにはちょっと自信がある。

ほぼ毎日のようにパートナーに銃口を突きつけられていたしな。

と、そんな風に懐かしさで俺が射撃という文字に目を奪われていた、その時。

にゃー、と猫の鳴き声が聞こえた。

振り返るとそこには一匹の黒猫が佇んでいて。

じーっと、俺の顔を凝視していた。

なんだ?

と思ったその時。

猫は高い塀を飛び越えて学校の敷地内に入ってしまった。

残された俺はなんとなく猫を追いかけないといけない……そんな気持ちがして学校の敷地内に足を一歩踏み入れた。

その時だった。

俺は夢を見た。

グランドを走る女生徒が突然、俺の方に駆け寄ってきて。

その手に持っていたナイフで俺を刺す!

刺された俺は右の脇腹から大量の血を流して死んでしまう。

そんな夢を見た。

 

「……はっ! 今のは……?」

 

明晰夢?

夢に若干トラウマがある俺は学校のグランドを見渡した。

どこにでもありそうな普通のグランド。

そこを体操着姿の一人の女生徒が走っていた。

少女を見ているとその少女と目が合って……思わずドキリとしてしまう。

薄い茶色の髪を腰まで伸ばし、ツインテールに結っている何処か、強気な印象を与える少女だった。

俺の知り合いでいうと、音央に似ていた。

ただ、残念な事に胸の大きさは音央の圧勝だが。

そんな事を思ったその瞬間。

ゾクリとした感覚が俺を襲った。

胸ポケットと、ズボンに入れていたDフォンが熱く発熱していて、俺に身の危険が迫っている事を知らせてくれた。

この背筋が凍るような感覚には身に覚えがある。

そう、一之江に追いかけられたあの時のような…。

 

(熱く発熱してるって事は、俺に危険が迫っているという事で。

危険を与えるのはやはり……?)

 

そんな事を思っていると、目の前にいた少女の姿が一瞬消えて。

気づいた時には。

 

「……ごめんね」

 

少女が一言言って、右手に握るナイフを俺に突き刺していた。

 

つかの間の静寂。

学校の中にもかかわらず、人っ子一人いる気配がしない。

誰もいない学校。

そんな場所で突然ナイフを腹に刺された俺だが……死んでいなかった。

なんて事はない。

ナイフが刺さる瞬間、空いていた両手を使い白羽取りをして刺さるのを防いだ、ただそれだけだ。

そう、俺はなっちまったんだ。

ヒステリアモードに。

 

「そんな⁉︎ 刺さるはずだったのに!」

 

「君みたいな可愛い女の子がこんなものを振り回したらダメだよ?

君のその綺麗な手はこんなものを握る為にあるのではないのだからね?」

 

アリアや一之江並みの可愛い(幼児体型な)女の子が目の前で汗だくで走っていたら、それは興奮しないはずはないだろう?

 

「なっ……か、可愛い⁉︎」

 

可愛いという言葉に予想以上に反応した少女。

美少女が赤面する姿はいつ見てもいいものだね。

 

「ああ、君みたいな可愛い女の子に刺されるなんて体験は普通、なかなか出来ないけどね。

君のようにほぼ毎日ナイフで刺してくる女の子やら銃で風穴を開けてくる女の子とかの相手をした事があるからなんとか反応できたよ」

 

「何そのバイオレンスな日常⁉︎」

 

「それが俺にとっての日常だよ?」

 

うん、我ながら言っていて悲しくなってきた。

一之江はその日の気分でグサグサ、ザクザクしてくるし。アリアはアリアで機嫌が悪いと口より先にガバが出たからな。

 

「『夢予告(デス・ノウティス)』!」

 

そんな事を思っていると、さっきとは違う夢を見た。

今度は目の前の少女に銃で撃たれて死ぬ夢だ。

 

「今度こそ」

 

少女の言葉で目が覚めると。

少女は夢の通り、手にしたマスケット銃で俺を撃つ。

亜音速で飛来する弾丸。

このままでは弾丸が俺の頭部に当たって潰れたトマトのようにグシャーとなる。

それはごめんこうむりたい。

なので俺は……!

『桜花』気味に右手を引いて……ソッと飛んできた弾を摘んだ。

 

「『銃弾掴み(ゼロ)』……熱いな、このカイロは」

 

夢の通りに死なない俺を見て、少女は口をぽかーんと開けた。

 

「あ、あんた、本当に人間?」

 

失礼な子だな。俺はれっきとしたただの普通の人間だ。

 

「くっ、それならこれはどう?

死夢(デス・エンド)』」

 

少女が技名を叫んだその瞬間。

俺の頭の中にイメージが思い浮かぶ。

それは『死』のイメージだ。

一歩前に出れば墜落してくる隕石に当たって死ぬ。

後ろに下がれば何故か地雷を踏んで爆死する。

右に動けば学校の敷地に入ってきたダンプカーに轢かれて死ぬし、左に動けば日本刀を持った怪人に斬られて死ぬ。

前後、左右どこに動いても死ぬ。

そう告げている。

逃げ場はない。

 

「あははっ、どう? 動けないでしょう?

負けを認めるなら解いてあげるわよ!」

 

「それは魅力的な提案だけど断るよ」

 

「そう? ならさっさと死んで!」

 

「散らせるものなら……散らしてごらん」

 

一歩も動けない。

動けば死ぬ。

見たイメージ通りに殺される。

……ん?

見たイメージ通りに?

そうか。それなら……!

 

「武偵憲章10条。諦めるな。武偵は決して諦めるな」

 

「何を言ってるの? おかしくなったの?」

 

「君は言ったね、動けば死ぬと。

逆に言えば動かなければ死なないんだよね?」

 

「そうだけど、そのままじゃ何も出来ないよ?」

 

「そうだね、じゃあ、こうするよ!

羅刹(らせつ)』!」

 

俺は右手の掌を心臓に当てて、ノーモーションでの掌底を放った。

自分自身に向けて。

 

直後、俺は突然死した事を理解して。

そして……!

 

(……ッ……!)

 

______パツンッ______!

 

左手を背に当てて、続けて右手で『桜花』を、全く同じタイミングで発動させて______亜音速2発、合計およそマッハ2の衝撃を心臓のど真ん中で衝突させた。

『羅刹』からの自己蘇生技『回天(かいてん)』を放ち蘇生したのだ。

 

グランドに片膝を着くように倒れる俺だが、よかった。生きている。

動けば死ぬとイメージで見たが、イメージ以外の死に方をすれば、逆に死なない。

その思いつきは上手くいったようだな。

一度『羅刹』を喰らって死んだからか、一撃で死ぬならこの技だと思いつき、咄嗟に放ったが上手くいった。

『回天』(心肺蘇生技)が使える今の俺なら心臓が止まってもすぐに蘇生できるしな。

 

「なっ、そんな……」

 

「ははっ……」

 

俺が生きている事が信じられないといった俺と戦った敵がよくするような顔をした少女の姿が目に入り、思わず笑ってしまった。

 

「……夢と違うことをするなよな!」

 

少女の呟きが聞こえたが……どうしようもないだろう?

ただ忠告はしておこう。

 

「これ以上、俺を殺さない方がいいよ?」

 

俺は……遠山キンジは殺せば殺すほど、強くなる!

そして、今のでヒステリア・アゴニザンテにもなったのが解る。

 

「そんなわけにはいかないわ!

夢を見させて、夢の通りに行動させて殺害する!

それがわたし、『日影市の正夢造り』のロアだから」




シャーロックから歩く矛盾とか言われてるキンジならこんな解決方法もあり……だよね?
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