『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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タイトルに深い意味はありません。
なんとなく、つけました。
本編より先に書き終わったのでこちらから投稿します。


コラボ編② 恋と戦は突然に……

「正夢……造り?」

 

正夢なら解る。

だが……正夢造りってなんだ?

聞いたことのない都市伝説に戸惑う俺を他所に、目の前の少女は語り始める。

 

「訳がわからないっていう顔してるわね?

特別に説明してあげるわ!

元々、私のロアの原点となった物語は『夢と違うことをするなよな』とか、『夢違い』と呼ばれるものだったのよ!ある日コンビニに行く夢を見て、夢の中で知らない男に刺されて死ぬ夢を見た。

ただの夢だと思っていたら、実際にコンビニに行った時に夢の男と出会ってしまいそこから逃げ出したら背後から男の声が聞こえて。

背後の男は『夢と違うことをするなよな』と言っていた、とかね。

元々そういう物語だったんだけどロアとして過ごしていくうちに、いろいろな尾ひれがついて呼ばれるようになったのが私のロア『正夢造り』よ!」

 

「なるほどな。噂されたことで元々あった物語が変化して生まれたのが君という存在というわけだ」

 

一之江やキリカの講義でも散々言っていたな。

ロアは噂されればされるほど、尾ひれがつけばつくほど強くなっていく、と。

元々あった『夢と違うことをするなよな』という都市伝説に『様々な夢を相手に見せる』とか、『一度に多くの夢を見せてその通りに行動させると相手を殺すことができる』、といった尾ひれや噂がついて誕生したのが、彼女のロア『正夢造り』なのだろう。

 

「凄いんだなー、正夢造りって」

 

「そうよ。凄いのよ、あたしは!そんな凄いあたしに狙われたことに感謝して殺されてください!」

 

「お断りだ!」

 

殺されるのに、感謝も何もあるか!

 

「悪いがそういうのは間に合っているんだ」

 

俺を殺す奴は既に決まっている。

ソイツは俺を殺すまで決して逃してはくれないからな。

 

「ふーん、売約済みかぁ……まあ、いいや。

どっちみちアンタは今ここで死ぬんだし」

 

少女がそう呟いた直後。

俺は再び夢を見た!

空から巨大な隕石が堕ちてきて、躱さなければ俺を潰す……そんな夢だ。

 

「無茶苦茶だろ⁉︎」

 

俺はその場から飛び跳ねようと体を動かそうとした。

直後、また夢を見る。

俺が飛び跳ねると何処からともなくレーザービームが飛んできて、俺を射抜いて殺す!

そのレーザービームは孫が使うものと同じくらいの太さだ。

 

(ッ⁉︎ 矛盾を……盾にする武器はないな……仕方ねえ)

 

飛び跳ねるという動作をキャンセルする。レーザービームの攻略は諦めて、空から堕ちてくる隕石の対処に専念することにした。

隕石の大きさは直径1メートルほど。

通常なら大気圏内で燃えるはずだが、燃えたような形跡はない。

あくまでもロアが生み出した幻の隕石ということか。

スピードは其れ程早くない。

マッハ1くらいか?

だが、運動エネルギーが働いているのなら、破壊するには少なくともその倍の力が必要だ。

普通の『桜花』では破壊出来ない。

なら……

 

「散らせるものなら……散らしてごらん」

 

俺は堕ちてくる隕石にタイミングを合わせて『桜花』を放つ。

インパクトの瞬間、『秋水』も加えて。

ただの『桜花』では威力負けをしてしまう。

だから俺は『桜花』の力の出し方を工夫する。

通常の人間は拳を突き出す際、全身の筋骨を『一気に』動かす。

しかし、『桜花』は全身の筋骨を『順番に』動かす。

体内で後ろから前へ速度を次々とパスし、加算していく術理だ。

通常の桜花に必要なパスの回数は4〜6回。『つま先→膝→胴→肩→腕→手首』でやっていた。

ワトソン戦の時は『左手首→左肘→左肩→右肩→右肘→右手首』でやっていた。

だが、俺はこの瞬間通常の桜花を放つのに必要なパスの回数、4回分を『右肩→右腕→右手首→右五指』と『左肩→左腕→左手首→左五指』に分けて実現する。

片腕だけの桜花が放てるのなら、同時に突き出せばマッハ2の桜花が出来るはずだからな。

右腕でマッハ1、左腕でマッハ1。

足せばマッハ2になる。

 

(______2倍桜花ッ______!)

 

隕石に手が触れたインパクトの瞬間、『秋水』を使って押し出すように掌を突き出す。

______ドゴォォォォォッッッッッ______!

そして、放った瞬間理解した。

失敗した、と。

確かに上半身だけなら隕石を押し返す力がある。

だが俺は下半身を全く考慮していなかった。

両足がズキズキと痛み出す。

隕石の撃力に、ヒステリアモードとはいえ俺の足は限界にきている。

諦めるしかない。

隕石は俺では破壊出来ない。

そう、破壊は出来ない。

 

(______マズイ、このままじゃ……)

 

そう思いながらも俺は下半身に力を入れて反撃した。

右足だけでの桜花と。

自分の力だけではなく……相手の力を利用して。

 

(______絶牢ッ‼︎)

 

隕石の撃力を右足に乗せて蹴りを放つ。

 

「おりゃあああぁぁぁぁぁぁぁ______ッ‼︎」

 

 

______ドゴォォォォォッ‼︎

 

俺を押し潰さんとしていた隕石だが……真下に堕ちるのではなく真横に弾かれるように逸れていった。

 

「はぁはぁ……隕石逸らし(スラッシュIV)

二度とやりたくない大技だな」

 

右足で放った蹴りにより、軌道をなんとか逸らすことが出来た。

ヒステリアモードとはいえ、ただの人間だった俺ではできなかった。

だが、今の俺はハーフロアでもある。

人間を超えた力を持つハーフロアの身体能力にも助けられてなんとか死を回避した。

動けばレーザービームに貫かれるとあったが、逸らした隕石にレーザービームは阻まれて……俺には被害はなかった。

どうやら夢と違うことをすれば回避出来てしまう、みたいだな。

 

「夢と違うことをするなよな……」

 

「違うことをするに決まってるよ!」

 

死ぬと解っていて同じ行動を取るものか!

ただでさえ、毎日一之江に殺されそうになるくらい痛めつけられているのだ。

危険察知くらい出来て当然だろ?

 

「あんた、実は人間じゃないでしょ?」

 

「とことん、失礼な奴だな君は。

俺はただの人間だよ?」

 

「絶対、嘘よ! ただの人間が私の夢予告や死夢を回避出来るわけないでしょ!」

 

「俺はただの一般人だ!」

 

「あ、もしかして。今朝の8番目のセカイに載っていた『逸般人』って……?」

 

「違う! 俺はただの一般人だ!」

 

「解ったわよ。『逸般人』ね、『逸般人』」

 

「全然解ってない⁉︎」

 

とそんなやり取りをしていたその時だった。

俺と少女の前に猫が集まりだした。

一匹ではない。

たくさんの様々な種類の猫が集まってきた。

 

「あー、アンタも来たのね? ティア」

 

「はい……ケホケホ。なんだか面白い人が来たみたいですから」

 

猫が一箇所に集まったかと思えば、猫の体が光輝き光が収まるとそこには1人のこれまた凄い可愛い美少女が立っていた。

 

「ケホケホ……始めまして『(エネイブル)』さん。私は『黒死斑(ペスト)の魔女・ケオプスミ』です」

 

少女はちょっこと、スカートの裾を広げるようにしてご丁寧に挨拶してきた。

話す前に咳き込んでいたけど風邪かな?

それにケオプスミってなんだか噛みそうな名前だなぁ。

ヒステリアモードの俺でも三回に一回は噛むぞ。きっと。

 

「ああ、そういえばまだちゃんと自己紹介してなかったわね!

さっきも言ったけどあたしは『日影市の正夢造り』のロア、夢宮天樹。テンって呼んでもいいわよ」

 

「ふふっ、私の名前が言いにくいならティアと呼んでください。

学校とかではそう名乗っていますから」

 

先ほどまで命の取り合いをしていた少女とは思えないくらいの可愛いらしさでテンと名乗る少女も挨拶し、魔女と名乗る少女も人間としての名前を名乗ってきた。

これはなんと言うか。

命を狙う相手に挨拶をしないといけないとはなんとも妙な気分だが、名乗らせておいて自分は名乗らないなんてことは出来ない。

特に今の俺は。

 

「俺は『不可能を可能にする男(エネイブル)』と『101番目(ハンドレッドワン)の百物語』の『主人公』のロア。一文字疾風だ!

よろしくね、お二人さん」

 

「一文字疾風……じゃあ、モンジね!」

 

「待て! 何故そのアダ名を知ってる⁉︎」

 

何故、初対面のはずのテンがそのアダ名を知っている?

そんなに解りやすいか、モンジって……。

 

「ケホケホ……なるほど、イチモンジ、略してモンジ君ですか。可愛いアダ名ですね〜」

 

「初対面の人にまでモンジ呼ばわりされんのかよ……」

 

「いいじゃない。似合うわよモンジ」

 

俺の背をバシバシ叩きながら笑うテン。

しかも、手で叩くのではなく金属の棒状のようなもので叩くのは如何かと思うぞ?

さっきまでの戦いはなんだったのか、気まぐれな子なのかもしれないな。

俺の命を狙っていたのが男だったらきっとわだかまりとかが残るかもしれないけど。

それが可愛い女の子なら許せてしまう。

理屈や理解が出来ない存在。

まあ、それがいいんだけどな。

 

だって……女の子ってそういうもんだろ?

 

「しかし、モンジがあの『百物語』の主人公とはねぇ。『不可能を可能にする男』なんていうロアも同時に持っているなんて……あんた、本当に人間辞めてるよね」

 

「『百物語』の主人公ですかぁ?

ケホケホ……それも存在しないはずの『101番目』の物語なんて……興味深いですね〜」

 

やはり101番目の百物語は異質な存在のようだ。

普通の『百物語』は有名で『百個物語を集める』と怪異が起きるというのは都市伝説や民俗学に詳しくない人でも知っていることだろう。

だが、『101番目』が付いた俺の『百物語』は元々存在しないはずの物語だ。

魔女であるキリカや一之江でさえも、警戒したほどの。

 

「『不可能を可能にする男(エネイブル)』なんていう都市伝説があることは先ほどDフォンを見て知りましたが凄いんですね?

物語を変えてしまう能力を持つなんて……」

 

「そんなに凄い存在なのかな?」

 

自分だとよく解らん。

自覚もなしに気づけばなっていたからな。

 

「無自覚であの強さって……まあ、いいわ。

あんたが人間辞めてるのはよく解ったから」

 

「ふふっ、ですね。ところで……ケホケホ」

 

「ん? どうしたんだ?」

 

心配になり、激しく咳き込むティアに声をかけるとティアは「大丈夫です」と言って言葉を続けた。

 

「ちょっと場所を変えませか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアに連れてこられたのは校舎の屋上だった。

落下防止用のフェンスがある以外、何もない無機質な空間。

コンクリートと防水処理されたモルタル以外には何もない。

給水タンクがさらに高い位置に設置されてはいるがあるのはそれだけだ。

 

「随分と派手にやりましたね……」

 

ティアの視線は階下のグランドに向いている。

そこには隕石が衝突した余波で出来た穴とかが出来ていた。

 

「あれでも隕石を逸らしたから被害は軽くなったんだけどね……」

 

「私もまさか、逸らされるとは思わなかったわ」

 

直撃してたら、と思うとゾッとするな。

1メートルの直径の隕石だろうと当たれば間違いなく死んでいただろうし。

 

「今まで逸らした中でも一番難しかったな、アレは」

 

「他にも何か逸らしたの?」

 

聞いてきたテンに俺がこれまで逸らしてきたものやこれまでの戦いを簡単に話した。

もちろん、前世やらヒステリアモードの事は避けて。

 

「銃弾ならまだしも……ミサイルに、戦車の砲弾って……あんた、やっぱり人間じゃないわよ!」

 

「きっとやろうと思えばテンも出来るよ?

ロアなら身体能力が高いはずだからな」

 

「あたしはハーフロアよ! それでも……無理よ。

人間辞めてるあんたと同じにすんな!」

 

「ケホケホ……魔女の私も無理ですね。

魔術を使えば出来るかしれませんが代償がキツそうですし」

 

「死ぬ気でやれば出来るんだけどなぁ……」

 

「そんな事あんた以外に不可能よ。出来る方がおかしいわ……というか、あんたの存在自体がおかしいわ」

 

「それは流石に言い過ぎだろ?

だけど……まあ、そうだな。

『不可能』って言ったテンに面白いものを見せてあげるよ!」

 

「うん?」

 

首を傾げるテン。

ワクワク顔をするティア。

その反応は違うが、どちらも次は何をしてくるのだろう、と期待感を示している。

期待されているならそれに添わないとな。

 

そんな彼女達に俺は自分の能力を見せることにした。

 

「不可能を可能に変えてみせよう!」

 

直後。

Dフォンから和風のメロディーが流れて。

勝手に動作したDフォンが俺自身をそのカメラに写す!

直後、俺が着ていた服は夜坂学園の制服から東京武偵高の制服に一瞬で変化し、Dフォンはスクラマサクスにその形を変えた。

 

「変身したのね!」

 

「ケホケホ……『死』が遠ざかりましたね」

 

「主人公は『変身する事で強くなる』からね、これが俺自身のロア『(エネイブル)』の能力だよ!」

 

「へー、という事はさっきまでのアンタは……」

 

「ああ、あんまり生身と変わらなかったな」

 

「やっぱり人間辞めてるわよ!」

 

「私が狙う前に会えて良かったです。

……ケホケホ、『逸般人』を襲うにはそれなりの準備がいりますから」

 

大変失礼なテンの物言いと、なんだか物騒な事をいうティア。

 

「……はあー、まあいいわ。

それよりそれがあんたの全力なのね?」

 

「ああ。今はこれしか出来ないな」

 

「そう、それじゃ始めましょう」

 

ん? 始める?

何を、という前にテンは呟いた。

 

死夢(デスエンド)

 

直後、俺は夢を見る。

一方前に動けばレーザービームに貫かれて死ぬ。

後ろに下がれば『妖刀の静刃』に斬られて死ぬ。

右に動けば屋上の給水タンクが落ちてきて死ぬし。

左に動けば金棒を持った鬼に殴られて死ぬ。

前後左右、どこに逃げても死ぬ。

そんなイメージが見える。

……というか、このイメージ悪意が入ってるだろう。

『妖刀』とか、『鬼』辺りに。

 

一歩も動けない俺だが、それはなす術がないから……ではない。

どのイメージを覆せばテンが満足するか。

それを考えていた。

 

「なぁ、テンちゃんや」

 

「何よ?」

 

「どれを攻略してほしい?」

 

「うーん、そうねぇ……じゃあ、レーザービームで!」

 

「了解!」

 

俺は一歩前に出た。

直後。俺の胸に向かいレーザービームが放たれた。

光線が放たれた瞬間、ヒステリアモードの俺の視界は、世界がスローモーションに変わる。

それは超々高感度カメラで撮影しているかのようなウルトラ・スローの世界だ。

この世の何もかもが今、ほぼ静止しているように見える。

その世界で俺は、レーザーに対抗する為にスクラマサクスを軽く放り投げた。

極々精密に。

直径が7ミリしかないレーザービームを防ぐには、レーザーの射線に、先端から柄に覆われている金属部分______中子の後端までを正確に乗せなければならない。

ヒステリアモードの俺なら集中力を高めれば簡単に出来る。

 

______矛を、盾にする。

剣を垂直に投げてその長さを厚さに変える事でレーザービームを防ぐ大技。

 

矛盾の傘(デイスコルダンツア)ッ!」

 

スクラマサクスを軽く放った俺だが、このままでは貫かれる事を知って(・・)いる。

長さが足りないのだ。

刀身から柄までの長さではレーザービームを防ぐには……。

だから、俺はそのイメージをする。

 

(伸びろ______ッ!)

 

俺のロア、『(エネイブル)』は物語や事象を改変出来る存在だ。

それは何も物語を変える事だけではない。

物理法則すらも捻じ曲げることが出来る……そういう存在のはずなんだ。

 

頭の中でスクラマサクスの刀身が伸びるイメージをすると、スクラマサクスの剣先がグングーンと伸びて長さ約2メートルくらいにまで伸びた。

直後、レーザーがスクラマサクスに直撃し、融解を始める。

そして、そこで____________時間の流れは戻る。

バッと刀鍛冶の側にいるようなもの凄い熱風が吹き荒れ。

スクラマサクスは刀身の半分くらいを熱で溶かされたせいか、膨れ上がって先端は傘のようになった。

柄が異様に長い傘のように。

孫の時は失敗したが今度は上手くいったようだ。

 

「……Dフォンの交換とかってやってるのかな?」

 

俺がそんな心配をしていると。

 

「「心配する事ってソッチ⁉︎」」

 

テンとティアの二人に突っ込まれた。

いや、重要でしょ?

 

「レーザービームを剣一本で防ぐとか……『夢と違うことをするなよな!』」

 

そう言われても防がなかったら死ぬからな。

 

「どう? 楽しめたかな?」

 

「ええ、とってもドキドキしたわっ!」

 

「ゴホゴホ……ワクワクしました」

 

「ははっ、どうかな? 俺の物語になればもっとワクワクドキドキ出来るよ?」

 

「なっ⁉︎ 何バカな事言ってんのよ」

 

「パラメーターは少し上がりましたけど、それはないです」

 

「おや、好感度が上昇したのかな?」

 

「「残念、友好度よ(です)!」」

 

パラメーターが二つあるタイプか。

手強いな。

 

「ケホケホ……だけどこれは珍しい技を見れました。

さっきの技は『峰搦め』の応用ですね」

 

「知っているのか?」

 

「はい。ケホケホ……こう見えても私は『魔女』ですから」

 

黒死斑(ペスト)の魔女。

それがどんな物語かは詳しくは知らない。

ただ、見た目とは違いかなりおっかない存在だという事は解る。

キリカと同じ『魔女』だしな。

俺が魔女について考えていたその時。

 

「こんにちは、お兄さん」

 

俺の背後から声が聞こえて。

振り返るとそこにヤシロちゃんが立っていた。

全身白づくめな幼女。

白いドレスに、白い帽子。

白い傘。

見た目はまんまヤシロちゃんなのだが……。

なんだろ、何か違和感を感じる。

 

「ヤシロ、ちゃん……だよな?」

 

「え? ヤシロ……? ______だよね?」

 

テンの声が途中から聞こえなくなった。

というのも俺の体が透け始めたからだ。

 

「っ⁉︎ 体が……」

 

「え、なんでモンジの体は透けてるの?」

 

「いえ、『全身』は透けていませんよ。アレは……」

 

「ふふっ、もう帰る時間だよ。『逢う魔が時』は時間で発生するロアだからね!

今日はこれにて、お終い。『また』ねっ! お兄さん『達』っ‼︎」

 

突然、眠気に襲われて瞼が重くなった俺は薄れ行く意識の中でテンやティア、ヤシロちゃんに似ている女の子の声が聞こえたような気がした。

彼女達だけではない……。

 

 

「『もしもし、私よ。今貴方の後ろにいるの』。

ふぅ……全く。何他所様の世界に迷い込んで死にそうになっているんですか。

殺しますよ?」

 

「この背中の(硬い)感触……ああ、一之江だな」

 

グサッ!

背中に金属の棒状なものが突き刺さり意識を失ったが。

それは、よく知る少女の声が聞こえ、その声にホッとしたまま深い眠りに入ったからだ。

そういう事にしてほしい。

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