『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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第四部突入〜♪
さあ、ついにみなさん大好きな『妹』回始まりますよー!
第四部ではあのキャラにもスポット当てていきます!


第四部。 変わる日常
プロローグ。『終わらない千夜一夜』


よう! 待ったか? 前回の続きを話すぜ。

ん? 何だ?

もう待ちきれない〜、っていう顔してるな。

あれか? やっぱりお前も『妹大好きー、妹萌えー』とかいう奴なのか?

いやぁ、実際の妹はそんなにいいもんじゃないんだけどな。

異性とちょっと会話しただけで『私以外の女とは話さないで!』とか、『妹は兄の物』とか、『妹は最強』とか、『私が触わられても不快に思わないのは、兄さんだけなんです』とか言うんだぜ?

ん? 前半はともかく。後半は羨ましい?

そうなのか。よくわからん。

俺にはいつものことだからな。

……って、おいおい。

どうしてそこで『はいはい』みたいな顔をすんだよ。

そんなに羨ましいのか? 妹がいる俺が。

その気持ちはほんのちょっとしかわからんが。

今回語る妹は実際の妹……も少しは関わりあいがあるんだが、メインは『従姉妹』の方だ。

民俗学的にはイトコとカタカタで表記するみたいだぞ。

『結婚できるし、血も繋がっている』その手の属性が大好きな奴らからしたら、大変美味しい存在。それが『従姉妹』だったりするんだが。

ん? 何故ここで従姉妹の話に入るのかって?

 

それはだな……

 

前回のラストで、可愛い妹が実はかなりの強敵で、なおかつ宣戦布告までされた! っていうところで終わったんだが、覚えてるか?

忘れた?

なら、もう一度思い出してくれ。

仕方ねえな。簡単に言うぞ。

『百物語』の『主人公』として目覚めた『哿』の前に、いきなりいろんな意味で勝てそうにない相手が名乗り出てしまった、というわけだ。

どうだ? 思い出したか?

うん? まだわからんか。

まあ、時期に思い出すだろう。

俺もそうだったからな。

……ま、それはともかく。

可愛いがっていた妹に対して暴力的な行為は出来なかったんだ。

ん? 本当に手を出したことはなかったか、だって?

……あー。別の意味でなら手を出しそうにはなったな。あっちの俺は……。

……なんだよ。その目は。

いいんだよ。そんな昔のことは。

と、ともかく。

大事なのはここからだ!

世の中には『お前が敵対するなら仕方ない、キリッ』とか言って容赦なく妹を殴る奴もいるかもしれんが、この物語の主人公はそんなことはできない。

むしろ、『君のような可愛い子を殴るくらいなら、君の望みを叶えてあげるよ』くらいのことを言いそうな奴だからな。つうか、もし、俺がその兄に殴られる妹側だったら、殴る兄のことを許したりできないな。

うちの妹なら、絶対に殴られたことは忘れないな。

根に持って、確実にやり返すな、絶対。

 

おっと、悪い。また話が逸れたな。

と、まあ。そんなわけでこの物語の主人公は、妹を殴ったりはできないんだ。

ほら、女性には基本優しく接していたろ?

まあ、だからこそ。『従姉妹』はそんな彼に対して宣戦布告なんてしたんだけどな。

 

 

ん? こんなにピンチっぽく話てるのに、随分余裕そうな顔をしてるな。 ははーん、解ったぜ。

さては俺が最初に『この物語の主人公はハーレムを作った』ってオチを話していたから、どうせなんとかするんだろう? なーんて、思ってるんだろう。

まあ、確かにその通りなのだが、だが俺はまだお前に語っていないことがある。

それは……

 

 

 

______奴はハーレムを作る前に、とても大事な何かを失うんだよ。

 

 

 

 

ははっ、ちょっとシリアスな顔付きになったな。ああ、そうさ。俺が話している物語には、意図的に語っていない部分もあったりするんだよ。だから、このまま最期まできちんと付きあってくれよ?

さもないと、お前自身も『物語』に食べられてしまうかもしれないぜ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

などと、脅したところで。

早速続きを語るとするか______。

 

 

 

さあ、百物語のエピソード4を語るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2010年6月19日。夜霞市内路上。

 

 

 

 

「私の物語になりなさい、兄さん」

 

 

 

 

理亜の口から、そんな言葉が紡がれる。

妹のように可愛いがっている従姉妹からその言葉を聞かされ、俺はあまりの衝撃を受けて動けなくなる。

自分自身で動揺しているのが解ってしまう。

何故だ。何でこんなことになってしまったんだ!

混乱するあまり、頭は正常に働かず、ただひたすら『どうして』とか、『なんで』という疑問ばかりが頭の中でぐるぐる巡っている。

何がいけなくて、どこで選択を間違えたのか。

どうしてこんなことになってしまったのかが解らない。

 

「り、理亜、は、話を聞いてくれっ」

 

俺の顔をただただ冷たい目で見下すように高い場所(フェンスの上)から見下ろす理亜。

その視線には『怒り』や『悲しみ』といった感情が浮かんでいるのがなんとなく解る。

終わらない(エンドレス・)千夜一夜(シェラザード)』の主人公。

『絶対に関わるな』と一之江が忠告したほどの存在。

そんな存在が俺の従姉妹だなんて、誰が予想出来ただろうか?

 

「物語になる、とか……理亜と戦うとか、俺は、絶対に嫌だ!」

 

一文字疾風が大事にしてきたたった一人の妹のような存在。

何がきっかけかは解らないが、俺は今一文字の体を奪っている。

理由は解らない。望んでそうなったわけではない。

ただ、変わらない事実はある。

憑依し(乗っ取っ)て存在している。

その事実は変わらない。

そんな一文字が大事にしていた妹。

困っていたら助けたいと常々考えていた、仲良しな妹。

須藤理亜の存在。

 

______本当の兄ではないけど。

 

______血が繋がっている従姉妹だけど。

 

それでも、一文字が大切にしていた大事な存在だ。

だから。

 

______俺は一文字ではないけど……

 

 

______ずっと、彼女を見てきたから。

 

だから、こそ。

理亜と戦うとか、危害を加えるなんて、絶対に出来ない。

一文字に代わり、理亜を守る。

それは俺が負うべき『義務』であり、『責任』だからだ。

 

「俺には絶対に、無理、だっ」

 

「兄さんには無理でも、私には出来ます」

 

あくまでも冷酷な言葉で、理亜は俺に語りかける。

今、目の前にいるのは本当に理亜なのか?

俺の知っている、一文字が大切にしてきた妹なのだろうか?

自問自答する俺に向かって一之江が。

 

「モンジ。しっかりしなさい」

 

鋭い言葉をかけてくれた。

その視線はあくまでも、理亜を見つめたままだ。

 

「貴方が呑まれてしまっては、私たちはどうすることも出来ないのですよ」

 

一之江が言う、私たち。

それはつまり、俺の物語になった彼女たちを指している、ということだ。俺がきちんと立ち向かう意識を待たなければ、一之江たちも立ち向かえない。俺が凹んでしまっていたら、彼女たちは動くことすら出来ないということだ。

そうだ。しっかりしろ! お前は今まで何をしてきたんだ、遠山金次。

皆んなを守れる『主人公』になると覚悟したじゃないか。

一緒に仲間と戦い、理不尽な物語を変えていく、という決めたばかりだろ?

それに、さっき戦った『氷澄』達とは和解できたじゃないか。

だったら。

それこそ、いつも一緒に過ごしていた理亜となら分かり合えるはずだ!

物語になる、戦う以外の選択肢があるはずだ!

そう思って、理亜に話しかけようとしたが。

 

「実力行使してしまった方が早いのでしょうか?」

 

だが、理亜はいかにも怜悧な表情で、淡々と語り、俺と、俺の物語である少女達を見つめた。

そこには、話し合いが全く通じない雰囲気を醸し出していた。

視線には、いつもの優しさや温かみは存在しない。俺の肝を冷やすレベルの、それこそ、死んだ(オルゴと呼ばれた)父さんやカナ……切れた兄さんが放つレベルの殺気を放っている。

まだ中学二年生なのに。

あまりにも、威厳がある大人びた態度。

これが『主人公』という分類でも、特に危険視されている______

 

「これが『終わらない(エンドレス・)千夜一夜(シェラザード)』ですか」

 

俺の隣で一之江が呟く。

その呟きで『終わらない(エンドレス・)千夜一夜(シェラザード)』がどんな物語だったかを思い出す。

そうだ。俺が『百物語』を集める主人公だとすれば、理亜は『千の物語』を語る存在。

物語としての(スケール)が違うのだ。

 

「マスター。メリーズドールはわたしがやっつけようか?」

 

と、そんな理亜を見つめていると彼女の隣に立つ少女。理亜の『物語』の一つである『夜霞のロッソ・パルデモントゥム』のスナオが強きな眼差しを一之江に向けていた。

『赤マント』のロアである彼女は一之江に強いライバル心を持っている。

前回、一之江とスナオが戦った時は『引き分け』だった。

一之江は『最強』と名高いロアらしいので、最強を目指しているスナオからすると越えたい壁、目標なのだろう。

だが、当の一之江はそんなスナオには目もくれず、今も視線を理亜に向けたままだ。

スナオよりも、理亜を警戒しているのだ。

臨戦態勢に入ればいつでも戦えるように。

一之江と理亜が戦う……そんな可能性がある。

それは避けたい可能性だ。

そもそも、今の一之江にマトモに戦える力はない。

『ロア』状態が解除されてるという理由ではなく、昨日の『赤マント』、『ターボロリババ』と連戦続きで体に傷があちらこちらにあるからだ。

疲れきっているはずなのに、背筋を伸ばして凛と佇む。

全く隙を見せる気はない。

そう、理亜に宣言するかのように、理亜の一挙一動を見逃さないようにしている。

一之江がただひたすらに注目しないといけないほど、理亜は『強い』ということだ。

 

「必要ありません、スナオさん。兄さんの物語たちは、全て私が倒しますので」

 

冷たい眼差しのまま、理亜は一之江、音央、鳴央ちゃんを見回した。

 

(おいおい、いくらなんでもそれは無理だろ⁉︎

一之江は最強と詠われるほどのロア『月隠のメリーズドール』だぞ。

それに、音央は『神隠しの妖精』、鳴央ちゃんはそのままの『神隠し』だ。

噂が広がっていたり、有名であればあるほどロアとしては強くなる。

そんなことは理亜もハーフロアになっているのなら知っているだろう……それなのに)

 

『全て倒す』だなんて。何で言いきれるんだ?

 

もし、それが______俺に対する怒りで我を忘れて、感情的になっている言葉だとしたら慌てて止めないといけないのだが。

……今の理亜を見る限り、落ち着いているように見える。

それこそ、単なる事実を口にしただけ、当たり前のことを告げているだけ、という感じだ。

 

「兄さん、兄さんみたいな心優しい人が、こんな世界でやっていくのは不可能です」

 

「そうか? けっこう上手くやれてるのだけどな」

 

「今だけです。いずれ仲間が傷ついたり、命を落としてしまったりした日には、兄さんはぜーったいに、立ち直れません」

 

「ぜーったいに、って。そんなことは……」

 

「前科あるよね? お兄ちゃん」

 

それまで黙っていたかなめが口を開く。

かなめが言う前科。

それは……兄さん。カナが『消えた日』のことだ。

秘密組織伊・U。そこに潜入する為に俺の兄……というか姉……やっぱり兄である遠山金一は世間的に『死に』。真実を知らなかった俺は無気力な状態になり、武偵高からの転入を考えるようになった。

 

「いや、確かにあれはそうだが。だけど、そんなことはもう……」

 

「ありそうでしょう?」

 

……一之江が傷ついた時。俺はかなりショックだった。

音央や鳴央、キリカやかなめ、リサ、そして……理亜がいなくなってしまったら。

 

 

強くいられる自信、本当にあるか?

 

 

 

「無理でしょう?」

 

「いや、だけどな!」

 

だけど、ここで抵抗しなかったら、それこそ全てを失ってしまう。

理亜だって、本当はそんなことはしたくないはずだ。

だから俺は抵抗する。

 

「だけどな、俺は理亜にだってそんな想いはさせたくないんだ!」

 

拳を握り締めて叫ぶと、理亜は一度目を丸くして驚き。

 

「いいでしょう、兄さん」

 

そう目を伏せて頷いてくれた。

 

「おっ、解ってくれたか」

 

俺は説得が出来たと内心喜んだが。

理亜が放った一言は、そんな喜びを一瞬で吹き飛ばした。

 

「それなら実力行使で行きます!

兄さん、私は貴方の物語を倒す『千の夜話(やわ)』を持っています。ですから、降参して私の物語になってください」

 

「やわ?」

 

聞きなれない単語に、首を傾げながら尋ねると。俺のすぐ後ろで鳴央ちゃんがビクッと体を震わせた。

 

「そ、そんな……ロアを消すだなんて……そんなことが出来るロアが疾風さん以外にもいた、だなんて……」

 

「え、ちょっと、鳴央、どうしたの⁉︎」

 

ガクガクと震える鳴央ちゃんを、音央が戸惑いながら抱き締める。

一之江を見るとその頰を汗が一つ流れていた。

俺は驚いた。

一之江がこんなにも緊張している姿は初めて見る。

其れ程までに恐ろしい、ということなのか?

理亜のロア『終わらない(エンドレス・)千夜一夜(シェラザード)』という『主人公』は。

 

そんなにも格が違うのか?

俺と理亜は。

 

「あら、そっちのツインテールボイーンとおにいさんは知らないみたいねっ」

 

「何を、だ?」

 

「んー、つまり相性っていうヤツよ」

 

昨日、その相性のせいで一之江と引き分けたスナオは、まるで知った言葉をすぐに使いたがる子供みたいに、その大変慎ましいお胸様を張って告げた。

 

「兄さんは『対抗神話』という言葉をご存知ですか?」

 

「対抗神話?」

 

聞いたことあるような……キリカが確か教えてくれたな。

 

「ええと。確か『広がった噂』を沈静化させる為の噂だったかな」

 

「その通りよ! 例えばー、そうね。この街で流れている『隙間女』の場合を教えてあげるとね? その『対抗神話』はこんな感じなの!」

 

得意げに話すスナオ。こんな状況じゃなければ微笑んでいただろう。

それが出来ない。

 

「この街の場合、単に長年引き籠りをしていた女の子がいて、その子の事を両親が周りの人に話して『うちの娘は臆病者ですぐに押入れの中に引き籠る子だったんだけど、外の世界に出れるようになった』と話しただけで。それ以来、彼女は実際はちょっと臆病者なだけの普通の女の子、そんな都市伝説のオバケはいなかったんだー、って噂が広がったという感じよっ」

 

「そして、今その人はどうなっているかと言えば、すでに、普通に学校に行って、普通の生活を送っている。外の世界に出て活躍されている______そこまで語って、対抗神話は完成するんですよ、スナオさん」

 

「はーい、マスターっ」

 

理亜が引き継ぎの言葉を言ったのを聞いた瞬間。違和感しか感じなかった。

理亜はそういう都市伝説にまるで詳しくない。知っていても誰もが小耳に挟んだレベルしか解らない。

都市伝説にあまり興味はない、そんな風に勝手に思い込んでいた。

だから、理亜が『対抗神話』を語るのを聞いて、違和感を感じたし、それを当たり前のように語ってほしくはなかった。

 

「そういうのもあるのね……」

 

「ああ、『隙間女』のロアを消し去る方法だ、って俺はキリカに聞いたよ」

 

音央の呟きに答えながら俺はその方法がどんなものだったのかを思い出す。

噂が流れてロアが発生した場合、その物語を弱める手段として噂を流してロアを弱体化させてしまう、というもの。

その方法が、『対抗神話』だと言っていた。

いつだかの放課後の特別講習を思い出す。

 

『こういう噂が流れるとね。『隙間女はいなかったんだ、なんだー』ってみんなの間に広がりまくって。結果……』

 

「『隙間女』のロアは消えて無くなる」

 

キリカがちょっぴり怖そうに、眉を下げながら教えてくれたのを思い出す。

純粋なロアであるキリカにしてみると、ロアが消える話はやはり恐怖を感じたのだろう。

 

「そんな感じだったか?」

 

「はい、その通りです。多少は知っているようなので何よりです。さて______」

 

俺の反応を見て把握すると、理亜は一之江を睨みつけた。

一之江は負けずに理亜を睨み返すと。真剣に理亜が持つロアの噂を語り始めた。

 

「『千夜一夜(シェラザード)』の語る『夜話(やわ)』______それが全てのロアにとっての『対抗神話』になる、という噂があるのです」

 

いつもは飄々としている、どんなシリアスなシーンでもおふざけを忘れない一之江。

そんな彼女が、今はただただシリアスな表情と声で理亜を見つめている。

______まるで。

 

「はい。それが私の能力の一つ『千の夜話(アルフ・ライラ)』です」

 

まるで、目を離した瞬間に自分が殺されるとでも言うかのように。

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