とある魔術の大遊園地≪カーニバル≫   作:natsuki

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序章 それは単なる偶然で     Welcome!!
第一話


 ツンツン頭の高校生、上条当麻は朝食を作りながらテレビを見ていた。正確には見るというよりは聞いていた、というのが近いのかもしれない。

 学生にとって、朝の時間は貴重である。

 だから、こうやって朝食作りと情報収集は兼ねたことをしているのだ。……別にテレビをいつも同居人であるインデックスが占領しているから、自分が見ることの出来る時間がインデックスお気に入りのアニメ『超機動少女カナミン』がやっていない時間しかないからとか、そういったことではない。

 テレビではニュース番組が流れている。朝の時間は、こうやって一日に何が起きたかを教えてくれるから有難い。新聞というメディアもあるといえばあるのだろうが、上条当麻は新聞代すら惜しい。スマートフォンを持ってはいるが、それをどう使えば良いのかも全く分からないのだ。

 科学技術の最高峰、学園都市に住んでいるにも関わらず、である。

 

『——さて、本日やって来ましたのは、一週間後にプレオープンを控える大遊園地「アーク・アイランド」です! この遊園地は第三学区の北部に作られた人工湖に浮かぶ島になっておりまして、島全体が大きな遊園地となっているのです! ついに完成した遊園地ですが、なんとメディアには公開出来る箇所が殆どないとのことなんです! どうしてですか?』

 

 アナウンサーが興奮しがちにリポートしていた。

 背景には、大きなゲートがある。閉ざされているが、ゲートの上には英語でアーク・アイランドと書かれていた。

 

「ふうん、遊園地ねえ……。ま、どうせ上条さんには無関係の場所だろうけれど」

 

 因みに同居人のインデックスは、珍しくニュース番組なのにテレビに齧り付いて見ている。

 やはり遊園地だからか。遊園地は、人種を越えて楽しめる代物なのかもしれないし、インデックスは修道女だからそういった娯楽は知らないのかもしれない。

 しかしながら、上条家の家計は常に火の車である。

 学生一人暮らし分のお金で、居候と三毛猫一匹の分も賄うということ自体が無理難題のような気もするが、それはある種致し方ない。

 それに拍車を掛けるのが、上条の不幸である。

 昨日もお金をATMから下ろそうとしてキャッシュカードが吸い込まれていった。

 しかも、土曜日だったために、銀行が開いているのは早くても明日の月曜日と来た。

 

「今日……、今日を乗り切れば、何とか! 何とかなるはず……!」

 

 とはいえ。

 今日も今日とてちくわばかりでは、流石のインデックスも怒りそうなものだが……?

 一先ず、見えている地雷は踏み抜くしかない——上条も多少は理解し始めた。

 避けられるなら、避けたいものではあるが。

 

 

 と、思った時——玄関のインターホンが鳴った。

 

 

「……誰だ? こんな朝っぱらから」

 

 上条は調理の手を止め、手を洗ってから玄関へと向かう。

 テレビでは、未だ遊園地のリポートが続けられていた。

 

『——何と、一週間後のプレオープンには、学生から無作為に選んだ百名が招待されるとのこと! 招待された学生も、学園都市に住んでいれば一名までは追加で入場オーケー!! そんな大盤振る舞い、許されるんでしょうか?』

「え?」

 

 お届け物です、と言われた上条はそれを受け取った後に、封筒の中身を見て硬直する。

 そこには、明朝体でこう書かれていた。

 

 

 ——世界最新最高技術の遊園地『アーク・アイランド』招待状の送付について

 

 

 

 

 時を同じくして、常盤台中学校。

 その学生寮、二〇八号室。

 

「……遊園地ぃ?」

 

 竹を割ったような性格をした少女、御坂美琴は封筒の中身を見て苦々しい表情を浮かべた。

 

「正直、遊園地に興味はあるけれど……」

 

 美琴はチラシを端から端まで眺めながら、呟く。

 

「えーと、なになに、遊園地のプレオープンに参加いただいた皆様には——限定ゲコ太グッズをプレゼントします、ですって?」

 

 それを見た瞬間、彼女の目が変わった。

 何としてでも、手に入れねばならない。

 どんな理由をつけてでも、遊園地に足を運んでやる——!

 

「お姉様?」

 

 声を聞いて、我に返る。

 ルームメイトであり、風紀委員の白井黒子だ。

 慌てて取りなすも、もう遅い。

 

「く、黒子? 居るなら声、掛けなさいよ」

「あらあら。掛けたはずですけれどね、声は……。というか、別に良いじゃありませんの。ここはわたくしとお姉様の部屋、愛の住処ではありませんか」

 

 後半の文言は明確に否定すべきだと美琴は考えるが、そういう場合でもない。

 

「何か用事があったから声を掛けたんじゃないの?」

「ああ、そうでした」

 

 ぽん、と手を叩き、黒子は美琴の持っているチラシを指さす。

 

「今度、遊園地がプレオープンしますでしょう。その警護に風紀委員も参加することになりまして」

「如何して? 別に、学園都市の人間だけならそこまで重要なことには見えないけれど」

「わたくしにも分かりません。正直、断ろうと思っていました。……お姉様がそのチラシを手にしているのを見るまでは」

 

 何故? と思う美琴を余所目に、黒子は話を続ける。

 

「お姉様も招待状を受け取っている。つまり、遊園地に足を踏み入れることが出来る! わたくしも警護に行けば、お姉様とデートが出来ると……。そう思った次第でございますよ」

「いや、あのね……」

 

 遊園地に行くのを否定しようと思った美琴だったが、ここで天啓が舞い降りる。

 これはチャンスではないか——風紀委員を助けるという名目があれば、堂々と遊園地に足を踏み入れて、限定ゲコ太グッズを手に入れることが出来る、と。

 

「まあ、お姉様はこういった場所には行きたがりませんわよね……」

「いや、行くわ。あたし」

「へ?」

 

 黒子は、あまりに予想外な反応だったためか、気の抜けた声を出してしまった。

 

「だから、行くって言ってんの。あたしはこれで入って、アンタは風紀委員の権限で入場出来るんでしょ。だったら、それで良いよね」

「お、お姉様……! よもやわたくしの愛情についに気付かれたということなのですか……!」

「いや、そんなんじゃないから」

 

 理由は言えないが、ここは黒子に乗っておくしかない。

 美琴はそう考えながら、遊園地に行くことを決定するのであった。

 

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